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あれから何とか助けを呼ぶために地上へと脱出したビビは、そこでサンジと合流に成功する。ビビに案内されやって来たサンジは、ルフィ達の目の前でバナナワニを一頭蹴り倒してみせた。
そして、ビビに連れられて来たのは、サンジだけではない。
「ファル子も頑張るよー!! しゃい☆」
可愛らしいかけ声と共に足を振り下ろしたファル子。しかし、その威力は決して可愛らしいものではなかった。
ザパァン! という音と共に、ファル子の蹴りは床に溜まり始めていた水を斬り裂き、そしてそのままバナナワニの胴体を両断する。その威力の高さに皆絶句する中、フクキタルだけはファル子の足が一瞬黒く染まったのを確認していた。
「ふぁ、ファル子さん!? もしかしなくても、本格化の2段階目を既に終えているんですか!?」
「本格化? 詳しいことはよく知らないけれど、ファル子、こう見えて結構鍛えてるんだ☆ 歌を歌うにも体力は必要だし⋯⋯。毎日腹筋と背筋とスクワット1000回に、最近はトトおじさんのお手伝いして砂を掘っていたからね!!」
キラキラとした笑顔を浮かべてピースサインをきめるファル子は、とてもじゃないがさっきの蹴りを放ったとは思えない程可愛らしい。
だが、その強さはバナナワニが本能的に恐怖を感じて後ずさりを始めるほどだ。それを見たサンジとファル子は、慌てて鍵を飲み込んだというバナナワニを探すのであった。
「⋯⋯行け。だが、今回だけだぜ。おれがてめェらを見逃すのはな」
あれから、何故かバナナワニの体内に居たMr.3に合鍵を作らせて無事脱出に成功したルフィ達。一緒に助け出したスモーカーは、ルフィ達をまた捕まえようとするのかと思いきや、何か考えることがあったのか、ルフィ達を見逃してくれた。
「おれ、お前きらいじゃねーなァ~!! しししし!!」
「さっさと行けェ!!!」
スモーカーの怒号を背に、ルフィ達は走り出す。途中でヒッコシクラブという巨大なカニを連れてきたチョッパーと合流し、反乱を止めるべく『アルバーナ』へと急ぐ。
「よーし、行くぞーっ!! 出発!!」
チョッパーがヒッコシクラブの手綱を引く。その瞬間、遠くから飛んできたかぎ爪が、ビビを捕らえて引っ張っていこうとする。
「ビビ!! あいつだ!! この⋯⋯!!」
そのかぎ爪を見てそれがクロコダイルであると確信したルフィは、ビビの代わりにクロコダイルのかぎ爪へと掴まった。
「お前ら先に行け!! おれ1人でいい!! ちゃんと送り届けろよ!! ビビを宮殿までちゃんと!!!」
「ルフィさんっ!!!」
敵はおそらく、クロコダイルとミス・オールサンデーの2人。ルフィの身を案じたビビは身を乗り出してルフィの名を呼ぶ。
しかし、ルフィはにっと笑みを浮かべており、相手が八武海であることなど恐れてはいない様子であった。
「大丈夫よビビ!! あいつなら大丈夫!!」
「はい!! ルフィさんにはシラオキ様の加護が付いていますので、あんな砂ワニさんに負けるはずありません!!」
ルフィに絶対の信頼を寄せているナミとフクキタルは、ルフィの勝利を疑っていない。そして、ゾロやサンジ、ウソップもまた、その思いは一緒であった。
「いいかビビ。クロコダイルはあいつが抑える。“国王軍”と“反乱軍”がぶつかればこの国は消える!! それを止められる唯一の希望がお前なら、何が何でも生き延びろ!! この先ここにいるおれ達の中の⋯⋯誰がどうなってもだ⋯⋯!!」
「ビビちゃん⋯⋯コイツは君が仕掛けた戦いだぞ。ただし⋯⋯もう1人で戦ってるなんて思うな」
「び、ビビビビ!! 心配、スンパイすんなよ!! オレガツ、ガッツいて⋯⋯」
そんな仲間達の言葉を受けて、ビビもまた、ルフィを信じることを決めた。
「ルフィさん!! 『アルバーナ』で、待ってるから!!!」
「おォオ!!!!」
ビビの声に、ルフィも大声で応える。そして、クロコダイルの相手をルフィに任せ、ビビ達は『アルバーナ』へと急ぐのであった。
〇〇〇〇
途中ヒッコシクラブのハサミ(ナミ命名)が川を渡れないトラブルがあったものの、勝手にルフィの弟子になっていたクンフージュゴンの助けもあり、無事川を越えることに成功した。──制限時間は、あと3時間。
「順調に来てるぞ。間に合いそうか?」
「難しいわ。マツゲくんに乗っても間に合うかどうか⋯⋯!!」
「うーん、私とファル子さんの足なら間に合いそうですが、背負うにしても1人が限界ですからねぇ⋯⋯」
ここまで来れば、あとは時間との勝負。フクキタルとファル子は何とか両肩に2人ずつ乗せることは出来ないかと色々イメージトレーニングをしたりしたが、それをせずに済む救世主がやって来てくれた。
「クエ~~ッ!!」
「カルー!! それに「超カルガモ部隊」!! 来てくれたのね!!」
そこに現れたのは、ナノハナで1度別れ、王宮へとビビがバロックワークスに潜入して分かったことを伝えてくれていた、カルーであった。しかも、仲間の超カルガモまで一緒に引き連れてきてくれている。
「ただこれ、1人乗れないですね⋯⋯。私が走りましょうか?」
「ううん、ファル子が走るよ! ファル子の方が、砂の上を走るのには慣れてるし☆」
そして、その言葉通り、ファル子はアラバスタ最速と呼ばれる超カルガモの走りにも、余裕で併走することが出来ていた。この速度ならば、十分に間に合う。目的地、『アルバーナ』まではあともう少しであった。
──制限時間まで、残り約1時間。レインベースの方角からアルバーナへと入る位置にある西門では、バロックワークスのオフィサーエージェント達が、ビビを始末するためにその到着を待ち構えていた。
「オイオイオイオイ!! それ大丈夫かい!? やれ大丈夫かい!? 本当に来るんだろうね、王女と海賊共は。これじゃ先に反乱軍が到着しちまうよっ!!」
「⋯⋯間に合わないってケースも十分あるのよ。何しろ『レインベース』で彼らは大幅に時間をロスしてるんですもの」
「じゃあ、反乱が先に始まっちゃっタラバ、あちし達はドゥーすればいいのう!?」
「どうもしなくてもいいさ、ボン。俺達はただ舞台に上がってきた花々を手折るだけ⋯⋯!」
「⋯⋯消せと言われたヤツを、おれ達は消せばいいんだ⋯⋯!!」
オフィサーエージェント達は、流石というべきかどこか余裕すら窺える態度である。そして、ずっと双眼鏡を覗いていたMr.4は、ゆっくりとした喋り口調で、待ち構えていたその瞬間が訪れたことを告げた。
「きぃ~て~る~ぞぉ~」
その報告を受け、Mr.4が指し示す方向を見たオフィサーエージェント達は、目を見開く。その中でもリアクションが無駄に大きいボン・クレーは、声を出して驚いていた。
「んげげ!! あいつら全員同じマントを!! オノレ、これじゃあどいつが王女なんだか⋯⋯“あやふや”じゃないのようっ!!」
視線の先に居るのは、超カルガモに跨がった6人の人影。その誰もが顔を隠すようにマントを羽織っており、真っ先に始末するべきであるビビの見分けがつかない。
その6人を乗せた超カルガモは、Mr.4の放った爆弾をよけ、それぞれちりぢりの方向へと駆け出していく。そして、それを追いかけるようにして、オフィサーエージェント達もまたバラバラの方向へと駆け出した。
「⋯⋯ありがとう、皆。急がなきゃ、反乱はすぐそこまで来てる」
そして、その様子を遠くから見守っていたビビは、オフィサーエージェント達が居なくなったのを確認し、西門へと向かう。ビビを乗せているのはカルー。そしてその隣には、ふんすっとやる気満々で両手を握り締めるウマ娘が1人。
「やろうね、ビビちゃん。一緒に反乱を止めよう!!」
「ええ、行くわよ。カルー、ファル子!!」
2人と一匹は、皆の無事を祈りながらも、反乱を止めるべく先を急ぐのであった。
〇〇〇〇
「ここまで来ればもう正体を隠す意味もありませんね⋯⋯! ドンドコワッショイニホンバレ!! マントに包まれたピカピカの王女もどき⋯⋯その正体はなんとこの私、マチカネフクキタルなのでした!!! 残念ながらハズレです!!」
一方その頃。ビビのふりをしてオフィサーエージェントを1人引きつけていたフクキタルは、満を持してその正体を明かしていた。
しかしながら、フクキタルの目の前にいるその相手⋯⋯Mr.2、フィーネ・ダカーポには動揺した様子はなかった。
「ああ、知っていたよ。その可愛らしい耳と尻尾は、マントで隠しきれるものではないからね⋯⋯。俺は、君だと知っていて、あえて追いかけたんだ。俺と一緒の舞台に上がるのに、君以上に相応しい華は居ないと思ったから」
「⋯⋯? 何を言っているかは分かりませんが、とりあえず倒させて貰います!! “
ビビとファル子の安否が気になるフクキタルは、いち早く2人の元へと駆けつけるためにも、最初から全力で向かう。ウマ娘の速度で懐に潜り込み、顎を突き上げる強烈な一撃を放つ。
「な⋯⋯!?」
しかしながらフクキタルのその渾身の一撃は、ダカーポの腕によって軽々と止められてしまった。フクキタルの掌とダカーポの腕がぶつかり、衝撃が風を産む。その風によってダカーポの被っているシルクハットが巻き上げられ、フクキタルは驚きに目を見開いた。
「その耳は⋯⋯。まさか、あなたもウマ娘なんですか!?」
「ふふふ⋯⋯。驚いたかい? だから言ったろう? 君と俺は一緒の舞台に上がるのに相応しいと!!」
シルクハットの下から現れたのは、フクキタルと同じウマ娘の証である耳。腕を一振りしてフクキタルを後方へとはね飛ばしたダカーポは、華麗にターンを決め、そしてフクキタルへと優雅に手を差し伸べた。
「さあ、終わらない舞台を二人きりで踊り明かそうじゃないか! 君が死ぬ、その時まで!!」
ついにフクキタルの戦闘パート。アラバスタ編で1番書きたかった箇所となります。おそらく決着まではあと2話ほど。じっくりしっかり戦います。