「間違いない、砲撃手はあの時計台の中にいるわ!!」
ビビは、ウソップからの合図を受けて集まった仲間たちに、砲撃手がいるであろう場所を告げる。
しかし、場所が分かっていても時計台はかなり高い位置にあり、残り僅かな時間では間に合わない。空を飛べるペルがいればすぐたどり着くことが出来るのだが、そのペルは時計台に居た砲撃手に銃で撃たれてしまい、今この場には居なかった。
「ビビ!! 場所は分かっても1分じゃあんなとこまで登れないわよ!!」
「うう⋯⋯。ファル子も階段はちょっと自信ないかも⋯⋯。流石にあの高さまでジャンプすることは出来ないし⋯⋯」
ウマ娘の身体能力でも、流石に間に合わない距離にある時計台。ここに来て間に合わないのかと思われたその時、頭上からビビ達へと声がかけられる。
「おーい、ナミさーん♡ビビちゃーん♡フクちゃーん♡ファル子ちゃーん♡」
「よぉ! 探したぞお前ら!!」
なんと、ウソップのメッセージを受け取ったサンジとゾロが、既に時計台を登っていたのだ。(なお、ゾロは北へ行けと言われたので上に向かっていただけで、メッセージは受け取っていなかった)
「ねえファル子、サンジ君が今居る場所まで、ビビを背負った状態でジャンプできる!?」
「なるほど☆ ナミちゃんの考えていること分かったよ! ファル子に任せて!!」
「頑張ってくださいファル子さん! 私は動けませんが、しっかり地上から応援していますよぉ!!」
ナミからの短い指示で全て理解したファル子は、フクキタルからの応援に手を振って応え、ビビをしっかりと背負う。
「それじゃあ行くよ~!! やー☆」
キラキラした気合いの声と共に、地面が凹む程の力強い跳躍で、ファル子は一気にサンジが居る場所まで距離を詰める。
「サンジ君、後は分かるでしょ!? 時間が無いの!!」
「⋯⋯だいたい見当はつくものの、ファル子ちゃんもナミさんも思い切ったことするなぁ。⋯⋯おし、まぁやるしかねェか!!」
ナミの声を聞き、その作戦を理解したサンジも、時計台から飛び出す。そして、空中でファル子の方へと右足を差し出した。
「ファル子ちゃん! おれの足の上に!!」
「ありがとう、サンジさん!!」
サンジの足の上に乗ったファル子は、サンジの足に押し出される形でさらに上へと飛ぶ。その様子を上から見ていたゾロも、作戦を理解し準備を進めていた。
「よし任せろ! 刀に乗れ!!」
「ええ!? 切れたりしない!?」
「バカびびんな。峰でいく。しっかり乗れ!! あと気をつけろよ。上に変なのいるぞ」
「⋯⋯ええ、顔なじみ」
ゾロの忠告通り、時計台には砲撃手であるMr.7とミス・ファーザーズデーが砲撃の準備のために時計台を開けており、ビビとファル子がこちらへ跳んでこようとするのに気付いていた。
「アジャスト、“ゲロゲロ
「アジャスト、“黄色い銃”!!」
狙撃手ペアはビビとファル子目掛け躊躇無く銃弾を撃ち、とっさにファル子とビビを打ち上げたゾロがもろにその銃弾を喰らう。
「“
「ファル子、パーンチ☆」
しかし、そのおかげで無事時計台へとたどり着いたビビとファル子は、狙撃手ペアを時計台からたたき落とすことが出来たのであった。
「おいおい大丈夫だろうなぁ!? あともう数秒しかねぇぞ!?」
「だ、大丈夫なはずです! ビビさんとファル子さんを信じましょう。⋯⋯シラオキ様も守ってくださるはずです!!」
フクキタルは、砲撃を止められることを信じ、手を組んで天に祈る。ウソップにチョッパー、ナミ、そして落下してきたサンジとゾロもまた、揃って時計台を見上げ、砲撃が止まったかを心配していた。
砲撃の予定時刻は過ぎた。それでも、広場は爆発していない。砲撃は無事阻止出来たのか。フクキタルがそう思いほっと胸をなで下ろしたその時、時計台から真っ青になった顔を出したビビが、衝撃の事実を告げた。
「大変みんな!! 「砲弾」が“時限式”なの!!! このままだと爆発しちゃう!!」
『な、何だとォ~!!?』
砲弾が時限式、しかも直径5kmの破壊力があるとなれば、たとえ大砲から広場に直接撃ち込まれなくとも、結局広場も町も助からない。クロコダイルの人を嘲笑うかのようなその悪辣な策に、ビビは慟哭する。
「一体どこまで人をバカにすれば気がすむのよ、クロコダイル⋯⋯!!」
そんなビビの隣で、ファル子は何も言わずにじっと砲弾を見つめていた。そして、そんな2人の居る時計台にやって来たのは、先程撃たれた傷跡から血を流すペルであった。
「懐かしいですね、砂砂団の秘密基地⋯⋯。まったく、あなたの破天荒な行動には、毎度手を焼かされっぱなしで⋯⋯」
「ペル⋯⋯! ペル、聞いて! 砲弾が時限式で今にも爆発しそうなの!!」
ビビから状況の説明を受けたペルは、ふっと優しい笑みを浮かべ、ビビを見つめた。
「ビビ様私は⋯⋯あなた方ネフェルタリ家に仕えられた事を、心より誇りに思います」
そう言うとペルは、ビビが止める前にハヤブサの姿へと変わり、砲弾を持ち上げ飛び上がった。ペルが何をしようとしているか悟ったビビは、必死にペルの名前を叫ぶ。
「ペル!!!!」
しかし、ペルは止まらない。愛するアラバスタを守るため、彼はアラバスタの守護神としての最期の務めを果たそうとしていた。
「──もう、ペルったら、ビビが救いたい皆には、あなたもちゃんと入ってるんだよ? だから、ファル子が⋯⋯誰も死なせない!!」
ペルは、聞き慣れた声が頭上から聞こえたことで、目を見開く。そこには、いつの間にかペルの背中に飛び乗っていたファル子が、笑顔でピースサインをしていた。
そして、ファル子はペルの足から砲弾を無理矢理奪い取ると、ペルの背中の上に立ち、全身全霊の力を込めて、砲弾を宙へと放り投げた。
「しゃいしゃい、しゃーい☆」
ウマ娘のフルパワーで投げられた砲弾は、ペルが飛行している高度からさらに上へともの凄いスピードで上昇していき、そしてその直後、巨大な爆発を起こす。
「きゃーーー!!!」
「何て無茶を!!!」
爆発の最も近くに居たファル子とペルはその余波を受け吹き飛ばされる。ペルはとっさに翼でファル子の身体を覆うようにして包み、ファル子を爆発の衝撃から守った。
「ファル子ぉ!! ペルぅぅぅ!!!!」
爆発で吹き飛ばされ地面へと落ちていく2人を見て、ビビが悲鳴を上げる。しかし、そんな2人を見て、既に仲間達は動き出していた。
「くじを出せるくらいには体力は回復しました!! お2人の落下位置はあそこです!!」
「ここからじゃ間に合わないわね⋯⋯! チョッパー、飛ばすわよ! “サイクロン=テンポ”!!」
「うおおおお!? “
フクキタルのくじを元に落下地点を割り出したナミは、チョッパーを“
「よかった⋯⋯。鳥の人は火傷もあって重傷だけれど、ファル子は軽傷だ。それに、2人とも生きてるぞ!!」
チョッパーの言葉に、仲間達から歓声が沸き上がる。その声を聞き、時計台にいるビビもほっと胸をなで下ろした。
こうして、無事犠牲者を出さず、砲撃を止めることに成功したのであった。