麦わらの一味『占い師』マチカネフクキタル   作:赤葉忍

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最近サンジの曇らせが辛い


はっけよーい!

「殺せっ!!!!」

 

「のーー!? 殺さないでくださいぃぃ!!」

 

 建物の上にいるゾロとフクキタルを指さし、仲間に合図を出すMr.8。一斉に向けられた銃口に悲鳴を上げるフクキタルは、隣にいたはずのゾロが消えていることに気が付かなかった。

 

「⋯⋯聞くが、増やす墓標は二つでいいのか?」

 

 いつの間にかMr.8の背後に降りてきていたゾロは、特徴的な巻き髪に刀を突き刺し、そう問いかけた。

 

 圧倒的な人数差にも関わらず、どこかこの状況を楽しんでいるようにも感じられる余裕がある。その証拠に、敵に囲まれた状態にも関わらず、ゾロは呑気に建物の上のフクキタルに声をかけてみせた。

 

「うし、おれが9割やる。残りの1割はお前に任せた。⋯⋯ウマ娘の力とかいうやつ、この機会に見せてもらうぜ?」

 

(こ、この人まさか、私を起こしたのはわざと!? なんという鬼畜の所業!!!)

 

 ゾロのぎらつくような視線に、フクキタルは自分が起こされここに連れてこられたのは偶然ではなかったことを悟る。

 

「たかが海賊2人に舐められてたまるか! さっさと殺せぇ!!」

 

 しかし、気づいたところでもう遅い。暴れまわるゾロに敵の注意はかなり向かっているが、フクキタルの方にも少なくない数の銃口が向けられたままだ。

 

 このまま抵抗しなければ撃ち殺されてしまうのは必然。クジを引かなくても分かることだ。当然、フクキタルも黙って殺されるような趣味はしていない。

 

“八卦”(はっけ)、よーい⋯⋯」

 

 両手を下に付き、腰をぐっとおろしたフクキタルは、いまにも走り出さんといった様子で構える。

 

「撃てぇ!!」

 

「のこったぁ!!!」

 

 フクキタルに向け、銃弾が放たれる。その瞬間、爆発的なスピードで駆けだしたフクキタルは、銃弾が先程フクキタルが居た場所に当たるよりも先に、銃を構えた男の前に接近していた。

 

「は、はや⋯⋯」

 

(けん)!!」

 

 驚きに目を見開く男の顔面に、高速で掌を突き出すフクキタル。その衝撃に、見開いた目ん玉をぐるんと回転させ、白目を剥き男は倒れる。

 

「むむむ! 今の一撃、感覚的には中吉ですね。これは幸先よし!」

 

 バロックワークスの社員を1人倒し、むっふー! と喜びつつも、フクキタルの攻撃の足は止まらない。

 

「それでは次のおみくじタイム! 当たるも八卦、当たらぬも八卦。“八卦発勁(はっけはっけい)”、じゃんじゃんいきます!!」

 

 ぐっと足に力を込めると、地面に一瞬、八角形の陣が浮かぶ。その八角形のうち一角がかすかに光り、直後、その方角に向って目にも止まらぬ速さで駆けたフクキタルは、目前の敵目掛け再び高速の突きを放つ。

 

「ふんぎゃろぉ!? 今度は“凶”!! 外しちゃいましたぁ!!」

 

「へ、どんなに早い攻撃でも当たらなきゃ意味ないぜ!!」

 

 攻撃を外し、体勢を崩したフクキタルに、すかさず男が切りかかる。しかし、回避のしようがないと思われたその一振りは、フクキタルの身体に当たることなく、するりとすり抜けた。

 

「な、なんで俺の剣がすり抜け⋯⋯ぐへぇ!!」

 

「なるほど! 確かに、当たらなければ意味がありませんね!!」

 

 ──フクキタルの食べた悪魔の実、『クジクジの実』は、それを食べた者にクジや占いで運勢を占うことのできる能力を与える。

 

 しかし、この悪魔の実はそれだけでなく、“運”を味方につけ、それを力へと変換することもできるのである。

 

これを利用した技が、フクキタルの“八卦発勁”。自分の攻撃や回避の確立を運に任せることで、通常よりも強い一撃を叩き込んだり、絶対に回避できない攻撃を回避することもできるのだ。

 

「まあ、あまり頼りすぎると時々痛い目見ちゃうこともあるんですけれどね⋯⋯」

 

 ふぅ、と息を吐き、フクキタルは一旦能力を解除する。先程は銃口を向けられて切羽詰まった状態なので使用したが、凶や大凶を引いてピンチに陥る可能性もあるこの技はあまり多用するものではない。

 

「あんたらどきな。そこの耳の生えた小娘は、あたしが相手するよ」

 

「み、ミス・マンデー!! ああ、頼んだ!!」

 

 フクキタルの強さに怖気ずくバロックワークスの社員たちをかき分け現れたのは、筋肉の目立つ巨漢の女、ミス・マンデーだ。その腕には折れた梯子を抱えている。

 

「うおおおお!!!」

 

 ミス・マンデーは雄たけびと共に、フクキタル目掛け梯子を力いっぱい薙ぎ払う。その巨体には見合わぬ速さで振られた梯子は、回避の暇すら与えず、誰もが頭から血を流し倒れるフクキタルの姿を想像した。

 

「ぬおおおお!!? いきなりそんな危ないモノぶつけてくるなんて、何考えているんですかアナタぁ!!」

 

「な!? こんな細腕の小娘が、私の力を受け止めただって!?」

 

 しかし、驚くべきことに、フクキタルはぐにに⋯⋯とうなりながらも、ミス・マンデーの薙ぎ払った梯子を、両手でしっかりと受け止めていた。力自慢のミス・マンデーは、自分の渾身の一振りを受け止められたことに驚愕し、目を見開く。

 

 その一瞬の隙をつき、ぱっと梯子から手を離したフクキタルは、姿勢を落とし、ミス・マンデーの足元まで一気に詰め寄る。

 

「! しまっ⋯⋯」

 

 気づいた時には既に遅し。フクキタルは、落とした姿勢をぐっと立ち上げ、その動きに合わせ掌を突き上げる。その一撃はミス・マンデーの顎に直撃し、彼女を天高く打ち上げた。

 

「『天脳衝(てんのうしょう)(はる)』!!!」

 

 ガシャーンと音を立て、打ち上げられたミス・マンデーが地面へと落下する。顎を突き上げられ脳を揺らされた衝撃で、意識はない。フクキタルの完全なる勝利であった。

 

「ふ~! なんとか勝てました。さて、ここら辺はもうやっつけちゃいましたし、ゾロさんの手伝いを⋯⋯いや、あの人私をはめましたし、手伝わなくてもいいのでは?」

 

「おお、そっちも片付いたみてぇだな。こっちもちょうど終わったところだ」

 

「え、ゾロさん、早すぎませんか!? 私、まだ十数人しか相手していませんが⋯⋯」

 

「言ったろ。1割任せるって。⋯⋯それにしてもこれホントにお前がやったのか。ウマ娘が強いってのは本当みてぇだな」

 

 フクキタルはゾロがあっという間にあれだけの人数を相手にして勝ってみせたことに驚愕したが、ゾロも予想以上のフクキタルの強さに驚いていた。

 

(今度改めて全力を見せてもらうのもいいかもしれねぇな⋯⋯。あの“鷹の目”と同じ王下八武海にウマ娘がいるって話も、納得がいく強さだ)

 

 そんなことを考えるゾロは、この後自分が船長であるルフィと本気の殺し合いをすることになるとは、想像だにしていなかったのであった。

 




クジクジの実、運ゲーを自分にも相手にも強要する結構いやらしい悪魔の実。
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