「ゴチャゴチャうるせぇな」
「勝負の⋯⋯」
「「邪魔だァ!!!!」」
「「ああああああ!?」」
「ふんぎゃああ!? ルフィさんとゾロさんが喧嘩を始めたと思ったらグラサンと傘の人をぶっ飛ばしたぁぁ!? 何を言っているか分からないかと思いますが私にも分かりません!! お助けくださいシラオキ様ぁ!!」
ゾロとフクキタルがバロックワークスの社員を倒したその数刻後。ミス・ウェンズデーがアラバスタ王国の王女であるネフェルタリ・ビビであることが判明したり、バロックワークスのオフィサーエージェントであり、悪魔の実の能力者であるMr.5とミス・バレンタインデーが襲ってきたりと、かなり色々なことが立て続けに起こり、フクキタルの脳は既に容量を超えて限界ギリギリであった。
そこにきてさらに、何故かルフィが激怒してゾロと本気で戦い始めるという謎の事態に陥り、フクキタルはどうしていいか分からず涙を目に浮かべていた。
「あ、あわわ⋯⋯。ルフィさんにちゃんと説明すべきでしょうか。あ、でも私もあの人達倒しちゃってますし、下手に弁解すればこっちまで怒りの対象にされてしまいます! も、もうダメです~~っ!!!」
終わった。きっとこのままではルフィかゾロのどちらかが死んでしまう。この島に上陸した際に占って出た『大凶』はきっとこのことを指していたのだろうと確信し、そして事前に分かっていたはずの運勢を変えることができなかった自分を責める。
「やめろっ!!!」
なので、たった一撃で2人を止めてみせたナミが、フクキタルには救いの女神のように見えたのであった。
「なーんだ早く言えよ~! おれはてっきり、あのもてなし料理に好物がなかったから怒ってあいつらを斬ったのかと思ったよ~っ!!」
「てめぇと一緒にすんな! そもそもおれだけじゃなくてそこに居るフクも⋯⋯」
「い、いや~! 兎に角お二人が仲直りされてよかったです。これにて一件落着ですね!!」
「何も解決してないわよ! あんた王女なんでしょ? なんで10億払えないのよ」
「それは⋯⋯」
ビビがルフィ達に語ったのは、アラバスタで起きている内乱の話であった。ここ数年の間に民衆の間に革命の動きが現れ、国が乱れている。その原因を作った組織こそ、バロックワークスだというのだ。
「私がバロックワークスに潜入したのは、我が王国を脅かす黒幕とその目的を見つけるため。奴らの狙いは、アラバスタ王国の乗っ取り! 早く国に帰って国民の暴動を抑えなきゃ、バロックワークスの思うツボになる」
「なるほど、そういうことね。これでやっと話が繋がったわ。内乱中ならお金もないか」
「おい、その黒幕って誰なんだ?」
ルフィが尋ねたのは、単純な興味からだろう。口角が上がっていることからもそれが分かる。
「ボスの正体!? それは聞かない方がいいわ! もし聞いたらあなた達も命を狙われることに⋯⋯」
「い、命!? それはごめんです! 私はまだお天道様にご面会したくはありません~!!」
「大袈裟よフク。ま、わたしも聞くつもりないけれどね。なんだって一国を乗っ取ろうって奴だもん。きっととんでもなくヤバい奴に違いないわ!!」
「ええそうよ。いくらあなた達が強くても、“王下八武海”の一人、クロコダイルには決して敵わない!!」
ビビがその名を口にした瞬間、かぽーんと全員が固まる。ビビは慌てて口を閉じるが、もう遅い。
「言ってんじゃねぇか⋯⋯」
ゾロが呆れたように呟く。そう、言ってしまった。そしてこの場にいる全員が黒幕の名前を聞いてしまったのである。
さらに運の悪いことに、この様子を建物から見ていたのは、アンラッキーズと呼ばれる、バロックワークスの任務失敗者への仕置人兼伝達係。謎のラッコと謎のハゲタカで構成された謎過ぎるコンビは、ルフィ達の似顔絵をささっと描きとめると、そのまま颯爽と飛び去っていってしまった。
「ちょっと何なの、今の鳥とラッコ! あんたが私達に秘密を喋ったことを報告に行ったんじゃないの!?」
「ごめんなさいごめんなさい⋯⋯」
「ふんぎゃろー!? “八武海”に狙われるなんてもうおしまいです!! 大凶の占いはこのことだったんですね⋯⋯」
突然降りかかったとんでもない事態に、パニックになるナミとフクキタル。そんな二人にひたすら謝り続けるビビ。
「へぇ、八武海か。さっそく会えるとは運がいいぜ」
「どんな奴だろうなー」
混沌と化した女性達を尻目に、ルフィとゾロは先程まで殺し合いをしていたとは到底思えないほど呑気な会話を繰り広げていた。
「とりあえず⋯⋯これでおれ達4人、バロックワークスの抹殺リストに追加されちまったわけだ」
「なんかぞくぞくするなーー!!」
しっしっし! と楽しそうに笑うルフィ。フクキタルはこの時ばかりは、その笑みに安心感を覚えることは出来なかったのであった。