ポケットモンスター~WORLD TOUR~ 作:ゼクスバーナー
ふたごじまでの一件の後、1日かけて僕達は海を渡ってマサラタウンの南に位置するグレンタウンへとやってきた。
「よっと……。お疲れミニリュウ、ニョロゾ。ボールに戻って休んでね」
ミニリュウから降りてグレンタウンへ踏み入れたナツキさんはしっかり休んだからか元気になった。僕もナツキさんに続いてラウスから降り、ラウスとキャンをボールに戻した。
「さてと……そろそろ日が暮れる時間だしポケセンへ行こうか」
「うん、そうだね!」
僕達は軽く伸びををしてからポケセンへと向かい、今日はしっかり身体を休ませた。
翌日、ポケセンのエントランスで僕達は今日の予定を決めていた。
「さてと、ハルトくんジム戦する?」
「したいところだけど、どうやら今日はジムが開いてないらしいんだよね。だから……」
僕は自分のバッグからカズマさんから貰ったコハクとシドが持っていたディスクを取り出した。
「てことは……研究所に行くってことだね?」
ナツキさんの質問に僕はうん、と答えた。
「コハクの復元とディスクの中身の確認、それが終わったら街をぶらぶら探索しようかなと」
「じゃあそうしよう!!」
僕は頷くと荷物をまとめ、ジョーイさんに預けていたポケモン達を受け取って研究所に向かった。
「コハクの復元をお願いできますか?」
「んー?」
研究所に来た僕達は化石からポケモンの復元を行っているという部屋に行き、そこに居た白衣を着た若い男の人にコハクを差し出した。
「ひみつのコハクってとこかな?OK、任せてよ。ただ時間がかかるから適当にぶらぶらしてて」
男の人はコハクを受け取ると部屋の奥にある大きな機械の元へ行ってしまった。
「あれ?ハルトくんにナツキちゃん?なにやってんの?」
「「!?」」
僕達は後ろからいきなり声をかけられて驚いた。後ろを振り返るとクチバで再会したあの人が立っていた。
「レッドさん!コハクを復元してもらうのと他にも用事があって来たんです。レッドさんもですか?」
僕はレッドさんに尋ねた。
「いや、俺は違うな。とある人と会う約束をしててここが待ち合わせ場所なんだ」
レッドさんはそう言うと自分のバッグから1つのディスクを取り出した。
「ディスクですか……?実は僕もシオンタウンで似たようなものを手に入れたんですけどここでなら調べられると聞いたんですけど」
僕もディスクを取り出してレッドさんに見せる。
「へぇ~。そうだ、折角だから今から会う人にそれを調べて貰おう!」
「えっ!?勝手に決めて大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。ところでハルトくん、グレンジムのジムリーダーとは会ったことは?」
「え?いや、昨日の夜に着いたのでまだ会ってませんけど」
そう言うとレッドさんは少しニヤッとして口を開いた。
「じゃあ初対面ってことになるな」
僕もナツキさんも何のこと?と言わんばかりに首を傾げると、男の人が部屋に飛び込んで来た。
「おぉ、レッドくん待たせたね」
部屋に飛び込んで来たのはこれでもかと言わんばかりに輝くツルツルの頭に口元に白い髭をたくわえ、小さな丸のサングラスをかけたおじさんだった。
「いや、俺も今さっき着たところですよカツラさん」
……カツラさん?……って、えぇ!?
「グレンジムのジムリーダー、カツラさんですか!?」
僕は大声をあげて驚いた。するとカツラさんはレッドさんにこの子は?と僕の事を尋ね、レッドさんが答えた。
「マサラタウンのハルトくん、ジム巡りの旅をしているんだ。横にいる女の子はナツキちゃんです」
するとカツラさんは何かに驚いた表情を見せ、口を開いた。
「君がハルトくんか。レッドくんやグリーンくん。他のジムリーダー達からも君の話は聞いているよ。そういやタマムシジムを愉快に吹き飛ばしたそうじゃないか」
カツラさんは笑いながらそう言い、僕は苦笑いする。
「で、カツラさん頼みごとなんだけど」
レッドさんがそう言うとカツラさんは真剣そうな表情をした。
「俺の持ってきたディスクと、オマケでハルトが持っているディスクの解析その他諸々を頼みたいんだけど」
「うむ、いいだろう。というか元々そういう約束だったしな。じゃあ2人ともディスクを出してくれ」
カツラさんにそう言われ僕とレッドさんはカツラさんにディスクを手渡した。
「よし、じゃあすぐに調べよう。隣の部屋が私の研究室だから来たまえ」
こうして僕達はカツラさんの研究室へと案内された。
「まずはレッドくんのから……」
研究室に到着し、カツラさんはレッドさんから受け取ったディスクをパソコンに取り込み解析を始めた。
「どうですかカツラさん、何か分かります?」
「少し待ってくれ……。よし、これでどうだ!」
レッドさんの問いにカツラさんは答えつつキーボードのエンターキーを勢いよく叩きパソコンの画面上にレポートを表示させた。
「なになに……?」
僕達は1台のパソコンをぎゅうぎゅうになりながら見つめる。
画面上に表示されたレポートの題名は……『クチバ湾に沈む進化の石と自由に進化と退化が出来るイーブイとの関係』
「「「「!?」」」」
僕達全員は驚いた……と言ってもレッドさんとカツラさんは僕やナツキさんとは別の意味で驚いたみたい。
「クチバ湾に沈む進化の石と言えば……何度使ってもなくならないっていうアレですよね?」
「あぁ……そうだな。しかし本当にあるのか?」
レッドさんとカツラさんがなにやら考え込んでいる一方僕達は、
「自由に進化と退化が出来るイーブイって……」
「うん、僕のブイのことだろうね……。レッドさん、このディスクどこで手に入れたんですか?」
僕はレッドさんに尋ねた。
「クチバシティでパーティーがあったろ?あの時にマチスさんから貰ったんだ。本人が言うにはクチバジムに保管してあったのを見つけたらしいけどなんのディスクか分からなかったんだそうだ。ジムでの仕事もあるからグレンに来て調べる時間もないからな」
「けど、そのパーティーって2ヶ月以上前のことですよね?その間何やってたんですか?」
ナツキさんがレッドさんに尋ねるとレッドさんはピキッと硬直し冷や汗をダラダラと流し始めた。
「いや……うん、あのパーティーの後調べようと思ったんだけどな?シロガネ山に行って修業しててすっかり頭から抜けてました」
僕とナツキさんはうわぁ……と言わんばかりの表情でレッドさんを見つめた。
「それはさておき、クチバ湾に沈む進化の石とハルトくんが連れているイーブイをどう関係があるのか調べようじゃないか」
カツラさんは咳払いをしてから本題に戻し、僕達はパソコンの画面を見つめレポートを読み始めた。
『クチバ湾に沈む進化の石と自由に進化と退化が出来るイーブイとの関係』
通常、ポケモンに使われる進化の石の類は1度使用すると消滅する。しかしクチバ湾には何度使っても消滅することがない進化の石が存在するらしい。
我々はそれが本当に実在するのかどうか調査した。
結論から言うならばそれは実在した。クチバ湾の海底の奥底に存在する海底ドーム、そこに鎮座する台座に4つの石が置かれていた。ほのおのいし、かみなりのいし、みずのいし、リーフのいしの4つだ。
我々はそれらを持ち帰ろうとしたが、4つの石は台座から離れなかった。まるで強力な力によってその場に押さえつけられているような、もしくは石に認めてもらえずそこから持ち去ることを許してもらえなかったか……。
いずれにせよここで諦めるわけにはいかず、本当に使っても消滅しないのか確かめるべくイーブイをボールから出した。
4つのうち3つの石には反応するはず。そう考えイーブイを台座の近くまで連れて行くが石はまったく反応しない。またイーブイも進化の兆しすら見せなかった。
もしかしてと思い、ある記憶を手繰り寄せる。すべての進化形態に自由に進化し、また退化が出来ると言うイーブイがこの世界のどこかに存在するという話を思い出した。
そのイーブイならこの石に反応するのか……?と考えたがそんなイーブイを我々は持ってはいない。悔しいが我々は調査を断念することにした。
もし、いつかそんなイーブイを連れている人が現れるのなら海底ドームへの行き方を記すので調べて欲しい。
初代クチバジムジムリーダー、ここに記す。
読み終えた後僕達はお互いの顔を見合わせ……
「「「「なぁにぃぃぃぃぃ!!??」」」」
と叫んだ。
「初代クチバジムジムリーダーって誰だよ!凄いなこの人!!」
「お、お、お、落ちつけレッドくん!」
「カツラさんも落ち着いてくださいよ……」
テンションの上がるレッドさん、慌てふためくカツラさんをよそに僕はワクワクしていた。
「凄いね……海底ドームってどんなとこだろう……」
隣でそう呟くナツキさんもどこか嬉しそうだった。
「行こうよハルトくん!ブイの進化に関係するかも!!」
「そうだね!海底ドームへの行き方まで書いてあるしこれは調べるしか!!」
僕はブイをボールから出してブイに進化の秘密が少しは分かるかもと言った。するとブイも嬉しそうだった。
「よ、よし海底ドームへ行って調べたいところだが……先にハルトくんが持ってきたディスクの解析をしよう」
カツラさんはそう言うとレッドさんが持ってきたディスクの情報を保存し、今度は僕のディスクの解析を始めた。
「ところでハルトくん。このディスクはどこで手に入れたんだい?」
カツラさんは解析を進めながら僕に尋ねてきた。
「それならシオンタウンで捕まえた僕のポケモンが持ってたんです。フジさんがグレンタウンの研究所でなら中身の解析が出来るんじゃないかと言うので持ってきたんです」
そう答えるとカツラさんのキーボードを叩く速度が落ちていった。カツラさんはそうか……と答え、エンターキーを押しパソコンの画面にレポートを表示させた。
「通りで変な違和感を感じるわけだな……」
カツラさんがそう言い、僕達が画面を覗き込む。表示されたレポートの題名は。
『ミュウツー作成プラン』
「「ミュウツー……?」」
僕とナツキさんはなんだそれと首を傾げる。
「ミュウツーって言えばどこぞの科学者が幻のポケモン、ミュウの細胞の一部から作り上げたポケモンとは聞いたことはあるが……その作成プランってことか?」
「いや、それだけじゃない」
レッドさんの疑問にカツラさんは首を横に振って答える。
「ミュウツーを使った実験のレポートでもある……」
「「「!!??」」」
カツラさんのその言葉に僕達は全員驚いてしまった。
「ポケモンで実験……?そんなことしていいの?」
「実験自体は珍しくはないかな。ポリゴンも人によって作られたポケモンだし、インターネットを使った実験にもよく使用される」
ナツキさんの問いにレッドさんが答える。
「だが、この実験はそんなやさしいものじゃなかった……」
カツラさんは続けて話す。
「人体実験に近い事をやっていた……結果、途中で不具合が生じミュウツーは暴走しどこかへ飛び去った」
「やけに詳しいですねカツラさん」
レッドさんがカツラさんに尋ねるとカツラさんの口から衝撃的な事実を聞かされた。
「ミュウツーは私とフジが作ったポケモンでこの実験も私たちが行っていたのだよ」
「「「!!??」」」
驚く僕達をよそにカツラさんは続ける。
「この研究室の窓から見える廃墟……あそこで私とフジは研究や実験を行っていた。しかし、ある日ミュウツーは暴走し建物を破壊し続けどこかへ飛び去った。今はどこに居るのか分からないがきっとどこかで生きているはずだ」
「一体、なんでミュウツーは暴走を?」
「分からない。だが、その事件以後、私たちは命の重さを考え私はジムリーダー、フジはシオンタウンのポケモンハウスでポケモンの保護や供養をしている」
僕の問いにカツラさんはどこか寂しげな表情で答えてくれた。するとナツキさんが何かを思い出したのか口を開いた。
「そういえば、シオンタウンでのロケット団の騒動の時だったんですけど、団員が多分そのレポートのことだと思うんですけど探してました……何か関係があるのでしょうか?」
「「ロケット団?」」
今度はレッドさんとカツラさんの表情が曇り始めた。
「ロケット団は何故このレポートを……?」
「分からないが……フジはディスクの中に入っていたこのレポートは知っていたはず。それをハルトくんに託してグレンへと持っていくよう頼んだ。何かしらの意図はあるんだろうが……」
レッドさんとカツラさんはうーんと唸りながら考え込んでしまった。するとブイが僕のズボンを下から引っ張っていた。
「どうしたのブイ?」
僕はしゃがみこんでブイと話す。
「多分だけどね……ハルトならミュウツーとも仲良く出来る、そう思ってハルトにディスクを託したんじゃないかな?ハルトは僕達ポケモンの声が聴けて会話が出来るでしょ?それをあのおじいさんが知っていたかはどうかは分からないけど、ミュウツーが凶暴になっていたとしてもハルトならきっと……って」
「仲良くか……なれるかな?」
「なれるよハルトなら。マサラで僕を、トキワでボスを、そして色んな街で沢山の人を助けた優しいハルトならきっと大丈夫!!」
「……ありがとう、ブイ」
僕はブイを撫でた後、ブイを抱きかかえて立ち上がった。
「ハルトくん、ブイと何を話してたの?」
ナツキさんが不思議そうに僕の顔みながら訪ねてきたので僕は少しニヤッと笑って答えた。
「秘密だよ」
えーいいじゃーん!と言うナツキさんを見てレッドさんとカツラさんの表情が少し明るくなった。
「さてと、ディスクの中身も分かったことだしハルトくんどうする?」
「え?どうするって?」
レッドさんの問いの意味がよく分からず答えられなかった。
「ジム戦すんの?それとも先にクチバの海底ドーム?」
僕はあぁ!と手をポンッと叩いて質問の意味を理解して答えようとしたその時だった。
ズドオォォォォォォンッ!!!!
とてつもない轟音が鳴り響いたかと思えば窓ガラスが割れ、吹き飛び、開いた窓から暴風と共に煙が入ってきた。僕達はいきなりの衝撃と暴風で耐えきれず部屋の奥へと吹き飛ばされてしまった。
「ごほごほっ……一体なんなんだ……」
レッドさんがいってぇーと頭を手で押さえながら立ち上がった。
「うぐっ……多分火山が噴火したんだろう……。だが相当な強度に作られている窓ガラスがこうも容易く割られたということは最大級の大噴火か!!」
カツラさんは急いで立ち上がり、僕達に外に避難するように伝え、僕達はカツラさんの案内の元急いで研究所を飛び出した。
そこで見たのは地獄絵図だった。
前中後編の3編にしようかと思ったけどやめました。