〇〇家の兄は勇者だった 作:四国在住 勇者部
朝早くから自転車を転がしてきてやってきた、ここ大赦。昔は1度も来る機会のなかった大赦は並大抵の建物が貧相に見えてしまうほどの立派な建物だった。
こんなことのために金を使うのか、そう思うひともいるかも……
そんなことを思いながら大赦の扉をくぐる。中に入るとエアコンの丁度いい適温設定の風が肌に当たって気持ちがいい。
受付カウンターで事情を話して担当の呼び出しをしてもらう。待機室で椅子に座って5分程度待っていると急いで走ってくる男性が現れた。
椅子に座る俺を見つけると肩で息をしながらこちらへ歩いてくる。
「随分、急いでましたけど大丈夫ですか?」
「いや……大丈夫です。ちょっと時間も押してるので手早く案内と説明を終わらせますね。あぁ担当の三好春信です、今日一日は私が国土さんの対応をさせていただきます」
「俺の名前知ってるんですね」
「まぁ、そうですね国土さんは例外中の例外の部類ですから前もって色々と調べてあります。あぁプライベート関係のものは勿論こちらでも調べてはいませんので」
人のことを調べたとかそういったことを本人の前で言うのはどうなんだろうか……?
「あぁ、そうですか……」
少しだけ気のない返事をどう取ったのか彼は頷いて俺に少し厚みのある紙の束となにかのパスポート的なものを手渡してくる
「これは?」
「それはここ大赦で働くに当たっての注意事項と各部屋に入るためのパスです。パスは再発行出来ますが、くれぐれも無くさないよう。注意事項に関してはこれから少し大赦内を案内しますのでその間に目を通しておいてください」
なるほどなるほど、このパスポートはキーの役割と同時に身分証明書的な何かなのかもしれない
再発行出来るけどなくさないでくれに関しては、まぁ当然だろう
注意事項が書かれた紙の束は……1度見るのをやめておこう。いま見ても頭に入らないかもしれない
目だけは通しておこう
「それじゃあ、案内します。まずは大赦職員の共用スペースなどから──」
── ──
大赦内を歩いて、数時間。
歩いていて感じたことは部屋や使えるような場所、色々多くて覚えきれないかもしれないなってこと
いまはお昼になったので一旦案内を休憩、大赦に複数ある1つの共用休憩スペースにて腰を下ろしているところだ
三好さんは少し用があると言って席を外している
「それにしても足が痛いこれ1日で周りきれるんだろうか、はぁ……」
思わずため息が出てしまう。
机の上に置かれた、更に増えた紙の束を見てもう一度ため息を吐きそうになる。増えた紙の束の正体はこの大赦の成り立ちについてだ
一般には出回らない情報をポンと意図も簡単に俺に手渡してくる三好さんは一体何者なのか……。
それはともかくとして、実際どんな風に大赦が出来上がったのかは少し興味があった
聞いた話とこの資料によるとだ──
現在新世紀300年、世界に破滅をもたらした災厄のあの日からおよそ300年余り
神樹様の庇護のもと四国は外部との関わりを断つための壁を作り上げた。四国以外の地はウィルスが蔓延しておりそのため人が出ないよう、そしてウィルスが入ってこないように壁を作り上げたと表立ってはそう伝えられている
そして過去になにがあったのか災厄の日とは?
新世紀ではなくまだ西暦と呼ばれていた時代。突如、空から飛来した謎の白い生命体が日本に攻めてきた。巨大なマシュマロに歪な大きな口だけを付けた見るからに異様なその生命体を、いまでは通称 星屑と読んでいる。
銃火器なども効く様子も見えず、決死の覚悟で一体仕留めたとしても蛆のようにいくらでも湧いてくる。人間達は徐々に生活圏を奪われていった。
そしてその対抗手段として用いられた方法が神樹という神々が集まり形作られた集合神を奉りその神から力を授かり敵を撃退するという方法だった。その力を授かった人間は後に勇者と呼ばれる存在となった
そうして時を得て名を変え、いまある大赦となったらしい。元は大社という名で活動していたが何故変えたのかは知らない
こんなところだろう。大分、随所随所省いている気もするが概ねこれで間違いはないはず
そして俺が働くことになるここ大赦香川支部について
現在は上層部、中下層部の二つに分かれていて
中下層部は勇者になるためのシステムの改良アップデート案を出したり、上層部から回されたりする雑用をこなしたりしているところのよう
俺がアルバイトととして入るのはこの中下層部だという。暫くは雑用係として職員のサポートなどをするらしい慣れてきたら他の仕事も割り振られるとか
やっていけるだろうか
「……はぁ」
「お疲れですか。宜しければこちらどうぞ」
突如、休憩室に入ってきたのは両腕に袋をぶら下げて、両手に缶飲料を持った三好さんだった
どうやら用事というのは終わったようだ。言っていることからして、飲み物のプレゼントらしい。
三好さんが手渡してきたみかんジュースを有難く受け取り缶のプルタブを開ける。子気味のいい音と共にみかんの香りが漂ってくる
「ありがとうございます三好さん。用事の方は大丈夫なんですか?」
「えぇ、何も心配はありません。あとこちらの方もどうぞ。お昼ですしお腹も空いているでしょ? まぁ大赦内で売られている職弁ですけど」
「あ、ありがとうございます」
どうやらぶら下げていた袋の中身はお弁当だったよう。中身は至って普通のお弁当だ、中に入っている唐揚げに少しワクワクする。
あれ、そういえば……?
「三好さんの分はないんですか?」
「ん? あぁ、お……私のはこれです」
そう言って見せてきたのは男性が持つには少し小さめのお弁当箱。まさか自炊系男性なのだろうか……。
俺も出来ないこともないが、多少出来る程度。さて三好さんのお弁当の中身は……?
見た感じ至って普通だが、栄養に偏りが出ないよう3色の彩りに少しの茶色を加えたバランスのいいお弁当箱だった。この人、出来る!
謎の対抗心を燃やしてしまったため、少しみかんジュースを飲んでクールダウン
一口飲んで一息着いたところで、疑問を三好さんに問いかける
「このお弁当、ご自分で作られたのですか?」
「えぇ、毎朝自作して持ってきています」
「へー、凄いですね。でも毎日となると大変じゃないですか?」
「そうですね、忙しいときなんかはコンビニとか職弁で済ませちゃう時もあります」
「そうなんですねー、あっ頂きますね」
「どうぞどうぞ、私もいただきます」
……ふむ、美味しい。
それにしても三好さん、食べる姿勢がスゴく綺麗だな。育ちがいいのだろうか。しかし、気遣いができて自炊が出来るそして顔がいい。大層モテるのではないのだろうか?
俺の顔も悪い訳でもないが、うぅむ少し劣等感を感じる。俺の顔はどちらかと言うと女性より男性に好感を持たれやすいし
少し昔言われたことを思い出してしまうな
『え? 貴方って男だったの……?』
『何をそんなにモジモジしてるんだ? え? 男……!?』
『ほら、大丈夫。大丈夫だから、安心して大丈夫。だからお姉ちゃんのとこにおいでー?』
うっ、懐かしい記憶とともに嫌な思い出が……。
湧いて出てきた記憶を振り払いつつ、お弁当の中身を平らげていく
「よし、国土さん。それじゃあお昼からも頑張っていきましょう」
「はいっ!」
── ──
帰宅後そうそう自室のベットに着替えずに飛び込む
「あ゛ー、つっかれたぁ」
あの後、夕方まで説明と案内で時間を潰してしまうとは思いもしなかった。お陰で身体はくたくた精神はボロボロだ。
「……眠い」
身体の疲労からか眠気が襲ってきた。思わずこのまま寝てしまおうか、そんな考えが浮上してくる
そんなとき、自室の扉が開かれる。ベッドに倒れ込んだ状態では扉の方を見れない。
「ヒナタさんおかえりなさい」
「あぁ……亜耶ちゃんか」
どうやら部屋に入ってきたのは亜耶ちゃんらしい。そういえば最近は用事があるとかで良く家を出たり帰ってくるのが遅かったりしている。学校ではないらしい
「あぁ、じゃないですよもう……。ご飯もお風呂も入ってないんですから寝ちゃダメです!」
んむ、怒られてしまった
俺も重々承知の上だが、しかしいまベッドから起き上がることさえもダルい。人間眠気には勝てぬ……
「でも眠い」
「むぅ、仕方ない人ですねヒナタさんは。ほら上着は脱いでください」
「うぁ〜」
お世話になっている家の年下の娘さんに上着を脱がされて介護されている現状は如何なものか、そんなことを思いつつ本格的に眠気に襲われ意識が落ちていく
── ──
「あっ、ヒナタさんお布団は掛けてから寝てくださいね。風邪をひいて……もう寝てます」
ヒナタさんの上着を脱がして片付けている間に、ヒナタさんはあっという間に寝てしまったみたいです。
今日は疲れていたんでしょうか。あんなにぐったりとした姿を私に見せるのは本当に久しぶりな気がします
「ふふっ」
普段は毅然とした態度でしっかりしているヒナタさんがほんのちょっとだらけている姿を思い出して少し笑ってしまう
揺れている男性にしては長い綺麗な黒髪を少し撫でてからヒナタさんにお布団を掛けてあげる。
「おやすみなさいヒナタさん」
「……お……や、すみ」
こんにち、愛媛か香川か高知か徳島かどっかに住んでます勇者部支援サポート窓口 大赦です
ヒロインを決めかねてます以上です