〜遺跡平原・崖下の洞窟〜
ミレイ(あの野郎、ちょっと説明しただけでどっか行きやがった。何が“この世の破滅”だ。僕がやったモンハンのゲームにそんなのなかったぞ。……いや、考えてても仕方ない。僕の目的は、ミラルーツが前に言った“犯罪者”をどうにかしないといけない。バルパレなら人も多いし、情報を集めなきゃ)
ミレイはバルファルクが残した「予言」について考えることを一旦止め、目の前の目的――バルパレへの到達と情報収集に集中しようと意識を切り替える。
しかし――
ミレイ「うぐっ……!?」
突如、全身を襲ったのは、重く、鉛のような脱力感だった。
膝から崩れ落ち、地面に手をついたミレイは、自分の体が完全に力を失っていることを悟る。
ミレイ(な……なんだこれ……。体が……動かない……)
確信した。
さっきの「竜巻」。太古の剣と古代の盾がもたらした白銀の翼による力――
それが引き起こした反動だった。
ミレイ(……くそ、あんな技、初めて使ったんだ。そりゃ……疲れも来るよな……)
意識はどんどん遠のき、瞼が重くなっていく。
ミレイ(駄目だ……寝たら……ダメだ……でも、眠い……)
そのまま、静かに意識を手放していった――。
アクセル「兄貴!? ミレイの兄貴が倒れたニャ!!」
トール『……!? おい、ミレイ!!』
アクア『これは……意識を失っておるのか?』
駆け寄る3体。だがミレイは何の反応も示さない。
アクア『さっきまであれだけ力を使ったのじゃ。当然、体に限界は来る……いくら強くとも、身体はアイルーなのじゃからな。』
トール『……チッ、分かってるよ。分かってるけど……』
トールは拳を握りしめ、歯を食いしばる。
アクセル「アクアさん、あそこに洞窟があるニャ!あそこで兄貴を休ませるのニャ!」
崖下の少し奥。森の影にひっそりと口を開けた洞窟があった。
アクア「よし、そこへ運ぶのじゃ。案内を頼むぞ、アクセル。」
アクセル「分かりましたニャ!」
2体は協力してミレイを担ぎ、洞窟へと向かっていく。
……だが、その場にトールの姿は無かった。
アクア『……トール? お主、何をしておる。』
トール『……俺は、ちょっと外の様子を見てくる。』
アクア『何を言っておる。この状況で主様の傍に居ずに何になる。』
トール『……一竜にしてくれ。』
アクアが鋭く睨みつける。
だが、トールはその視線を背に受けたまま、森の奥へと消えていった。
〜遺跡平原・林の奥〜
トール『……くそっ』
一人、林の奥を歩くトールの心は、もやのように濁っていた。
トール(……兄弟、お前はいつだってそうだ。誰よりも真っ直ぐで、無謀で――でも、強かった)
イビルジョーとの初戦、アクアとの初対峙、そしてバルファルクとの死闘。
すべてにおいて、自分は守られる側だった。
トール(何が“守る”だ。何が“兄弟を支える”だ……! 結局俺は、何も出来なかった)
地面に拳を叩きつける。
トール「ちくしょおおおおおお!!」
大地が鳴動するような咆哮が、森の静寂を切り裂く。
――しかし、それは同時に“招かれざる者”たちを呼び寄せることにもなった。
ハンター1「今、ジンオウガの咆哮が聞こえたな……!」
ハンター2「この先か!? 行ってみようぜ!」
トール(……! やべぇ……!)
一瞬の焦りの後、トールは低く唸りながら、身を隠す場所を探し始めた――。
〜遺跡平原・崖下の洞窟〜
アクセル「兄貴、まだ目が覚めないニャ……」
アクア「無理もない。あれほどの力を使っておいて、無事で済むわけがなかろう。……全く、もう少し妾達を頼ってくれても良いというのに」
ミレイの呼吸は安定していたが、意識は戻っていなかった。
アクセル「アクアさん、一つ聞いていいニャ?」
アクア「なんじゃ?」
アクセル「アクアさんって、なんで人語が話せるのニャ?」
アクアは少し黙り、洞窟の奥を見つめる。
アクア「……その答えは、主様の意識が戻ってから話すとしよう。今は……それが良かろう」
アクセルは「分かったニャ」と静かに頷いた。
〜白い空間〜
ミラルーツ『……あなた、本当に自覚あるの?』
(えーと……すいません)
ミラルーツ『“すいません”で済めば龍はいらないわよ!? 今回はたまたま意識が飛んだだけで済んだけど、次また無茶したら――カミナリ10発落とすわよ!!』
(そんなの落とされたら死ぬ!)
ミラルーツ『じゃあやめなさい!』
その怒声に、ミレイは身をすくめる。
(……はい、気を付けます)
ミラルーツ『全く、あなたって子は……。』
空間に漂う雰囲気が少しだけ穏やかになったところで、ミレイは気になっていたことを問いかける。
(……ねえ、バルファルクが言ってた“予言の子”って、何なんですか?)
ミラルーツ『……』
(聞こえてます?)
ミラルーツ『あ、いけない。もう時間みたい。また会いましょう。』
(おい!逃げるな!)
白い空間が静かに閉じていく。
(あの野郎……。……いや、待てよ)
(……僕だけ、モンスターの言葉が分かる……それも普通じゃない。……まさか)
(……ミラルーツの仕業か……)
ミレイの中に、また一つ疑問が増えたまま、暗闇がその思考を包み込んだ。