アクセル「兄貴達、遅いニャ〜……」
アクセルは、大木の影に身を隠したまま、じっとあたりを見張っていた。耳はぴくぴくと反応し、何かが聞こえないかと神経を尖らせている。
アクセル「小型モンスターとか狩ってきてくれたかニャ? もしそうなら僕が腕によりをかけて調理するのニャ。器材はニャいけど、なんとかするニャ!」
そう独りごちるも、二匹は帰ってこない。
アクセル「まさか、大型モンスターに遭遇して時間かかってるのかニャ……でも、ミレイ兄貴が負けるはずないニャ! トールも一緒ニャんだから!」
自分に言い聞かせるように前向きな言葉を繰り返すアクセル。
――そして、それは訪れた。
トール「ウオオオオオオン!!」
アクセル「これは……トールの声! やっと帰ってきたニャ!」
アクセル「トール! こっちニャ! ここだニャ!」
遠くの茂みからトールが突進してきた。
アクセル「ニャ!? ちょ、ちょっとストップニャ!? ぶつかるニャー!!」
トールは急停止し、アクセルの目の前でギリギリ止まった。
アクセル「び、びっくりさせるニャ……よし、持ってきた物を僕に見せるニャ」
トール「がふ……がふ……」
アクセル「ん? 何してるんだニャ?」
トールは、咥えていたミレイをそっと地面に下ろす。
アクセル「ニャ!? ミレイ兄貴、どうしたのニャ!?」
アクセル「兄貴! 兄貴! 目を覚ますニャ!!」
トール「がう、がう!!」
焦った様子で吠えるトール。アクセルは直感で、尋常ではない事態だと悟る。
アクセル「急がないとニャ……! 近くに薬草があれば……あったニャ!」
アクセルは急いで薬草と素材を集め、手早く調合する。
アクセル「よし! 出来たニャ。これを兄貴の体に塗れば……!」
薬を丁寧にミレイに塗りながら、アクセルは首を傾げる。
アクセル「ニャにがあったのニャ……傷は無いのに、疲労が大きすぎるニャ……」
トール「くぅーん……」
アクセル「……兄貴が目を覚ますまで、隠れる場所を探さないとニャ」
周囲を見回すと、奥に小さな洞穴を発見。
アクセル「あそこなら隠れられるニャ!」
ミレイを背負い、ふらつきながらも歩き出す。
アクセル「ふーっ……重いニャ……でも……頑張るニャ……!」
洞穴に到着したアクセルはミレイをそっと寝かせた。
アクセル「ここで一夜を過ごすニャ。トール、見張りお願いニャ!」
トール「アオン!」
トールは頷き、洞穴の外へ走っていった。
アクセル「兄貴……また無茶したのかニャ? 今度無茶したら許さないニャよ……お願いだから……目を開けてニャ……」
~白い空間~
ミレイ「……ここはどこだ?」
見覚えのない白い空間。まるで夢の中のような感覚。しかし、意識ははっきりしている。
ミレイ「さっきイビルジョーを倒したんだ……そのあと……」
ミレイ「ぐっ!」
電流が頭に走った。
???『やっと会えましたね』
不意に響いた女の声。どこからともなく、しかし確実に耳に届く。
ミレイ「!? 誰だ!?」
???『そこには誰もいませんよ? ここは次元の違う場所ですから』
その声には、どこか挑発的な響きがあった。
ミレイ「……ミラルーツ、か?」
ミラルーツ『あったり〜♪ 当たったご褒美に、太古の剣を一段階解放してあげる。それと、いつでも出し入れできるようにしておいたから、うまく使いなさいな』
ミレイ「……あれって龍封剣じゃなかったのか!? あの剣はいったい――」
ミラルーツ『それは次の機会に説明するわ。もう時間だし、それじゃ、またね〜』
ふざけた調子で空間が崩れていく。
ミレイ「おい、ふざけんな! 説明になってねえじゃねえか!!」
視界が白から現実の色へと戻っていった。
ミレイが目を覚ますと、洞穴の中にアクセルが寝ていた。
ミレイ「アクセル……ここまで運んでくれたのか。起きたら礼を言わないとな」
ゆっくりと立ち上がり、外へ出る。
ミレイ「ん~! やっぱり外の空気は最高だな。……って、このセリフは似合わねぇか」
トール「グオオオオオオ!!」
ミレイ「あ? トールか?」
ミレイ「おーい! トールー! 起きたよー!!」
トール『このバカ野郎ッ!!』
ミレイ「うおっ!? ごふっ!」
ミレイは突然トールに突進され、大木に激突。
ミレイ「いてぇ……マジでいてぇんだけど……」
トール『どれだけ心配させたと思ってるんだよ!!』
ミレイ「あはは、ごめんって……」
トールは顔を伏せながら言葉を絞り出す。
トール『本当に……お前が死ぬかと思ったんだぞ……。お前までいなくなったら……俺は……』
ミレイ「トール……でも、あのゴーヤを見たらさ……怒りがこみ上げてきて、放っておけなかったんだよ」
トール『俺がこんなにも言ってるのに……お前ってやつは……!』
その怒声が、森の奥へと響き渡った。
アクセル「んー……うるさいニャって……兄貴!? 起きたのニャ!?」
ミレイ「ああ、さっきな」
アクセル「良かったニャ〜! 本当に良かったニャ〜!!」
トール『それより、あの武器は一体なんなんだ? 見た目も途中で変わっていたが』
ミレイ「正直、俺もよく分からない。ただ……なぜか、戦ってると勝手に体が動いて、剣も応えてくれた気がしたんだ」
アクセル「ニャんの話ニャ?」
ミレイ「ああ、実はな……」
ミレイはイビルジョー戦のこと、白い空間、そしてミラルーツとの邂逅を語った。
アクセル「剣が勝手に伸びたり、出し入れできたり……聞いたことないニャ」
トール『ミラルーツだと!? あの伝説の祖龍か!?』
ミレイ「知ってるのか?」
トール『知ってるも何も、幻とまで言われてる龍だぞ!? なんでお前が……!』
ミレイ「知らねえよ。でも、あいつが言ってた。“太古の剣を一段階解放する”ってな」
トール『太古の剣……それが、あの妙な感覚の正体か……』
ミレイ「たぶんな。雷の力に敏感なトールだからこそ気づけたのかもな」
ミレイは、静かに手を差し出すと、空間から太古の剣を出現させた。
トール『うお!? どこから出した!?』
ミレイ「さっき言ったろ。いつでも出せるって。……でも、なぜ俺なんだろうな」
トール『……運命、ってやつかもな』
ミレイ「だとしたら、悪趣味すぎるぜ」
そう呟いて、ミレイは太古の剣を消し、空を見上げた。
ミレイ「まあ、考えたって分かんねぇ。今は、前に進むしかない」
トール『ああ! お前が進むなら、俺もどこまでもついていくぞ、兄弟!』
アクセル「ちょっと待つニャー! 全然説明になってないニャ!?」
ミレイ「この剣はただの剣じゃない。それだけだ」
アクセル「説明になってないニャー!!」
――アクセルの叫びだけが、森に反響していた。