ミレイ「大分食材が手に入ったな」
アクセル「はいニャ! お肉はトールが狩ってくれたおかげニャ!」
トール『ふん、小型の奴らなど相手にならん』
陽が射し込む密林の獣道。三匹は、袋いっぱいに詰め込んだ食材を背負い、足元の柔らかな土を踏みしめながら歩いていた。
ミレイ「これだけ食材があれば十分だな。あとは、調理できる場所を探さないと……出来れば村が近くにあれば良いんだけどな」
アクセル「んニャ~……」
しばらく歩いた先――
ミレイ「あれ、見ろ。あれって出口じゃないか?」
アクセル「ほんとニャ! やっと出られるのニャ~!」
トール『ふっ、やっとここから抜け出せるな』
密林を抜けた先には、小さな集落が見えた。
アクセル「あれは……アイルー村ニャ!」
ミレイ「アイルー村か。まずは少し休んで、それから飯にしよう」
それぞれの期待を胸に、三匹は村へ向かって足を速める。
ミレイ「……村にしては、随分静かだな。活気がまるで感じられない。てか、誰もいなくないか?」
アクセル「もしかして、みんな遠足にでも行ったのかニャ?」
トールは鼻をひくつかせ、地面を嗅ぎ回っていた。
トール『いや、少ないが微かに匂いはある。どこかに隠れてるみたいだな』
ミレイ「隠れてる? なんで……?」
トール『分からんが、匂いが動いていない。恐らく、怯えてじっとしているのかもしれん』
ミレイ「うーん、気になるな……とりあえず他も見て回ってみよう」
そう言って、ミレイは一人で歩き出した――
???「喰らうニャー!!」
ミレイ「!?」
突如、茂みの陰から槍が飛来した。
トール『ミレイ!!』
電光が閃き、トールの電撃が槍を迎撃――火花と共に、槍は炭化して砕け散った。
アクセル「ミレイ兄貴! 無事ですかニャ!?」
ミレイ「ああ、なんともない。トールが助けてくれたな。……それより」
三匹の視線の先、約10メートル離れた地点に、アイルーが一匹、尻もちをついて座っていた。
アイルー「た、旅の方ニャ!? ご、ごめんなさいニャ! 槍を投げるつもりじゃ……その、そんなつもりではニャいのニャ!」
トール『貴様ぁ……! ミレイに向かって攻撃とはいい度胸だな!?』
アイルー「ギニャーー!! ごめんなさいニャあ!!」
トールの怒声にアイルーは恐怖で腰を抜かし、地面に這いつくばる。
ミレイ「トール、ちょっと落ち着け」
トール『落ち着ける訳あるか! 槍があと少しでもズレてたら……!』
ミレイ「分かってる。でも理由を聞かないと判断できないだろ? いきなり攻撃してくる理由があるはずだ」
トール『……分かった。話を聞いてやる。ただし、納得できなかったら、この足で踏み潰す』
(それはそれでヤバいだろ……)と心の中でツッコみつつ、ミレイは座り込んでいるアイルーに向かって問いかけた。
ミレイ「なあ? なんでいきなり槍を投げてきたんだ?」
アイルー「ニャ、それは……ジンオウガが見えたからニャ。《またアイツの仲間が来たのか》って思って、つい家にあった槍を持って飛び出してしまったのニャ……!」
ミレイ「アイツ……って誰だ?」
アイルー「タマミツネっていう大型モンスターニャ」
ミレイ「タマミツネがどうしたんだ?」
アイルー「アイツは僕達の仲間を連れ去ったのニャ。しかもこう言ったニャ――「妾に従わぬと、今ここにいる者達を殺す」って……」
ミレイ「……なんだって?」
ミレイの顔が曇る。明らかに尋常ではない話だ。
ミレイ「ちょっと待て。お前、モンスターの言葉が分かるのか?」
アイルー「違うのニャ! アイツの方が僕達の言葉を喋ってきたのニャ!」
ミレイ「!?」
ミレイ(モンスターが人語を……? しかもアイルーに直接話すなんて……そんな話、聞いたこともないぞ)
考えを巡らせるミレイだったが、次の瞬間、ぱんっと手を叩きながら声を上げた。
ミレイ「よし、飯にするぞ!」
アクセル「……え?」
トール『……は?』
アイルー「……ニャ?」
ミレイ「腹が減っては戦はできぬ、ってやつだ。まずは腹ごしらえだな」
三匹「今の話を聞いて言うこと、それ!?!?」
ミレイ「うん。……だけどごめん、マジで腹減ってるんだ。先に飯だ!」
アクセル「……実は僕も、お腹ぺこぺこだったニャ」
トール『……ふん、確かに俺も飯が欲しい。怒鳴って疲れたしな』
ミレイ「どうせなら、お前も一緒に食べてけよ」
アイルー「え!? い、いいんですかニャ!? でも、仲間のことが……」
ミレイ「飯を食ったら、すぐにタマミツネのところへ行く。そのための力をつけるんだ」
アイルー「……ホントにニャ!? お願いしますニャ!」
アクセル「それでは、僕が腕によりをかけて調理するニャ! 楽しみにしててニャ!」
料理の香ばしい匂いが、村に久々の温もりを取り戻していた。
ミレイ「……うまっ……想像以上だな。さすがコンテスト優勝者……」
アクセル「えへへ、照れるのニャ~」
トール『肉以外にこんな旨いもんがあるとはな。正直、期待してなかったが見事だったぞ。今までで一番だ』
アイルー「美味しかったニャ!」
ミレイ(アクセルが仲間で本当によかった……もし出会ってなかったら、俺は何もできずに野垂れ死んでたかもしれない)
アクセル「ミレイ兄貴、なんかずっと僕の顔見てどうしたのニャ?」
ミレイ「いや、なんでもない。さあ、タマミツネの所に行こう。……そうだ、お前、名前は?」
アイルー「ニルって言いますニャ」
ミレイ「じゃあ、ニル君、案内してくれるか?」
ニル「……」
アクセル「兄貴……あの……」
ミレイ「ん? どうした?」
ニル「……僕は……メスだニャーーーー!!!」
ミレイ「なにーーーーー!?!?!?」
トール『……今さらかよ』
そんなやりとりもありつつ、四匹――いや、三匹と一頭はタマミツネの元へと向かって歩き出した。