レベル
キャラクターの育成要素のあるゲームには概ね搭載されているシステムである。
普通は、その人のステータスというものは数値化が難しく。
握力や持ちあげられる重量、走る速さ、試合の成績などで類推するのが普通だ。
だが、ガイア連合によっては霊視をシステム化したアナライズで30レベルから40レベルの間くらいならば具体的な数値として換算可能だ。
これは、とても残酷なシステムで簡単に言うと
「レベル0 戦闘力5かカスだな」
「スカウターが壊れやがったレベル30以上だとぉ」
というヤツである。
レベル0の未覚醒者だからと言って事務方や経営陣が軽く見られている訳では無いが、組織の方針を決定する投票権を持つのは例外なく高レベルの覚醒者のみである。
支部を任される支部長、各部門を纏める部長などはレベル20以上の中堅覚醒者が多い。
この組織で成り上がるには、ある程度のレベルが必須である。
何故かと言えば単純で、ガイア連合は人類文明が滅びる終末を乗り越え。
ある程度文化的な生活を維持しつつ、ある程度の平和を確保しよう。
という、ある意味において保守的な方針を掲げており。
想定される脅威に対して、ある程度抵抗できる力が無い者を決定権のある上に据えても『いざという時』に混乱するだけであると断じており。
悪魔という脅威に対して先陣を切るだけの能力が求められた。
それでは電源を切っておやすみください。
おやすみのあいだ悪魔に肉体を乗っ取られぬようお気をつけて・・・
この言葉の通り、情報生命体である悪魔は、しばしば人の体を乗っ取り悪さをする事に余念がない。
神託と称してメッセージを送り、加護という紐付きのパスを通し。
デスクトップに常駐するアクセサリーの如く警告や指令を送ってくる神々と名乗る悪魔ども。
どれほど意志力の強い人間でも四六時中耳元で騒がれてしまうと
『それが正しい事だ』と思ってしまうのは詐欺や洗脳の手口としては実にありふれている。
故にガイア連合において覚醒者に対して最初に次ぎの三か条が厳命される。
『不信なメール(神託)が届いても開かない』
『あからさまな加入特典(加護)に飛びつかない』
『契約書(シキガミ)を通していない口約束はしない』
やってる事は悪徳業者と変わらない世知辛い世の中である。
支払い(信仰)が要求されるパスを組合員から確認した場合。
専門の者がオハナシをして契約内容や支払い、それによって得られる利益を精査。
電圧次第であるが、正直になるのに10分とかからないらしい。
末世だね・・・お辛い。
精査の結果、リターンが釣り合っていると判断されたら契約書(シキガミ)を持った交渉担当者が業務契約を結びにいき。
リターンが釣り合っていない場合は、怖いオニイサン達が契約書を連れて、相手の事務所(異界)にカチコミに行く。
ヤクザかな? ヤクザ(カルト)だわ。
さて、結構話が脱線してしまったがレベルの話に戻そう。
レベルは重要である。
実際は、そこまで単純なモノでは無いのだが乱暴にレベルというものを表現すると
レベル×ステータス(身体能力)である。
悪魔に対する能力はレベル0の未覚醒者の場合、いくら身体能力が優れていたとしても0である。
レベル2だとすれば常人の二倍、レベル3であるのなら常人の3倍、正に超人としか言いようのない身体能力で悪魔と戦う事ができる。
レベル5くらいの覚醒者ならば武道の達人であれば力や技でもって打ち勝つ事もできるかもしれない。
だが、レベル10を超えてくると銃弾を目で見て避ける。
武器で打ち払ったり、手で掴んだりしてくる。
北斗 二指真空把とか言いながら指二本で矢を受け止めて投げ返してくるのやめよう、やめよう。
ステータスは、大雑把に力、知力、魔力、耐久力、速さ、運の6つに分かれている。
まぁ、当たり前の事だが、レベルが上がったからといって自由に能力が割り振れる訳ではない。
力や速さを上げる為には鍛錬が必要だし、知力を上げるには勉強をしなければならない。
運は、そもそもどうやって上げれば良いのかわからない。
これが上げれる人間は、余程世界から愛されている人間だろう。
ゲームでは、力と速さを中心に上げる脳筋型、魔力と知力を中心に上げる魔法型、運と速さを中心に上げるラッキータイプなどがあったが現実的では無い。
魔法は弱くてもいくらか覚えておきたいし、実際に戦うとなれば力と速さを疎かにするのは殺してくれと言っているようなものだろう。
覚えた知識や鍛えた体は自分を裏切らない。
耐久力は殴られれば殴られるだけ根性と共に鍛えられていくものだ。
故に、このような地獄が顕現する。
四方を仲間・・・いや、あれは鬼だ!!鬼が囲み。
空には霊鳥イツマデ、地上には邪鬼オーガ、魔獣ガルムがボクを食い殺し、この囲みを破ろうと猛っている。
霊鳥イツマデは、人の頭蓋骨を持つ鳥のような姿をしており。
疫病や飢餓で見殺しにされた人間が妖怪変化してなったとされる怪鳥である。
彼らは葬られることすらなかった自分を憐れむと共に見殺しにした者に恨みを込めて「いつまで、いつまで」と囁くのだという。
邪鬼オーガは分かりやすい。簡単に言えば西洋版の鬼である。
人肉を好み、特に若い女の肉が好物だそうだ・・・処するしかないね。
魔獣ガルムはヘルヘイムにあるヘルの館「エーリューズニル」の番犬だと言われている。
牛ほどもある巨体の犬、うん普通に死ねる。
古代、リングとは拳闘などの賭け試合で聴衆が取り囲んで輪になり闘士を逃がさないようにしたのが語源であるという。
そして、聴衆が試合に手を出さないようにロープを張ったのが今の四角いリングの始まりだ。
ならば、今の状況は正しく古代のリングだろう。
イツマデの放った魔法、ザンによって生み出された風の刃がボクの腕を切り飛ばす。
「腕を拾え、傷口を合わせろ魔法による治療の違和感は早ければ早いほど少なくて済む『ディア』」
オーガの怒りの一撃が、ボクを地に叩き伏せようと大上段から放たれる。
「倒れれば死ぬぞ、動きを止めれば死ぬぞ、敵に背を見せるな囲まれるのを避けろ『スクカジャ』」
ガルムの毒かみつきでつけられた傷から寒気と悪寒が広がる。
「呼吸だ、呼吸を整えるんだ波紋の呼吸で毒を中和するんだ『アムリタ』」
センパイ、あからさまな派閥への誘いは、やめてくださいよ。
「気を用いた遠当ては格闘家にとって貴重な遠隔攻撃の手段だ。
長じていけば、物理攻撃の全体化、スキルに昇華して『破邪の光弾』などになる場合がある。
波動流は、いつでも門戸を開いているぞ!!」
いえ、大凶化を習得して殺意の波動って言ってる方々はちょっと。
って言うか、死にたくなくて力を手に入れる為に頑張っているのに力を手に入れる過程で死にかける必要があるのは矛盾してますよね。
だが、死んでも安心できないのが女神転生のクォリティ。
真Ⅲの人修羅を思い出せ、マガタマを埋められて人間を卒業。
真ⅣFを思い出せ、死んだ主人公がどうなった!!
真IFの主人公!! 死んだらガーディアンが取り憑いてパワーアップして復活ってなんだ!!
死ぬのが前提かよっ、ハズレを引いたらポイントを貯めた後、死になおしてチェンジでって命が、かるーい。
「ボクを転生させた神様に一撃いれるまでは死ねるかぁぁぁぁあああ!!」
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ジュネス地下に存在するシェルター。
その中にある支部長室に5人の男が集っていた。
一人は、この部屋の主である支部長。
細められた目に緩い曲線を描く口は笑顔のようであるが、そこに喜びは無く。
むしろ、諦めに似た何かを漂わせていた。
「さて、彼が異界で修業を始めて一ヶ月がたつけれど具合はどうだい?」
その言葉にチェック柄のスーツを着込んだ男が答える。
「すでにレベルは20を超えているよ。
ゲームであれば、数日で超えているレベルだが、この世界では何年も修行して到達するベテランのレベルだ。
レベルを上げるには格上に挑むのが一番だと僕らがやらせた事だけど・・・。
正直いって背筋が冷えるね。
僕ら転生者は一度死を経験しているせいか命を軽く見る傾向があるがアレは違う。
途方もない覚悟を感じるよ」
スーツの男の意見に同調するようにハチマキをまき道着を着た男が言葉を重ねる。
「そうだな、何処かで助けを求めるものだと思っていたし。
その為に何時でも乱入できる用意はしていた。
だが、彼は骨を折られても、腕を食いちぎられても闘志を失わず戦い切った。
何が彼をそこまで駆り立てるのか・・・」
その疑問に悠然と腕を組んで壁にもたれかかる鋲打ちされプロテクターのついた革ジャンを着込んだ筋骨隆々とした男が答える。
「愚問よな。
ヤツの拳には激しい怒りと悲しみが満ちている。
悪魔が人知れず現れ人を喰らう世だ。
答えは見えている」
そう言って支部長に流し目をおくれば、最後の男が手持ちのカバンから書類を取り出して皆の前に置く。
デモニカ・ベイダーカスタムを着込んだ、その男は淡々と語り始める。
「彼の覚醒の切っ掛けとなった事故の調査書。
それと、その周辺をデモニカ・トルーパー部隊が調査した結果だ」
「結果は?」
「間違いなく悪魔事件だ。
まるで動物を撥ねた時のようなバンパーのへこみ。
されど撥ねた動物は見当たらず車内に残った彼の家族の遺体は動物に食い荒らされているようだったとある。
見鬼シキガミやデモニカのセンサーで周囲を調査した所、歪な霊脈の流れを観測、それを手繰っていくと異界があったそうだ。
異界から彷徨い出た悪魔が彼らを襲ったのだろう」
その報告に支部長は天井を見上げる。
「運が悪い。
いや、これが当たり前の世の中が来る事は分かっていた。
どのような異界でしたか?」
「かなり高レベルの異界だ。
中はかなり暑く異界の中の木が松明のように燃えていた。
精霊フレイミーズ、妖精ジャックランタン、地霊カハクと炎系の異界だな。
魔獣オルトロスと遭遇して撤退した。
ボスでは無いようだった」
その報告に額に手を当てて唸る。
「30オーバーの大悪魔。
さすがに見過ごせませんね精鋭で探索。
本部に増援を求めるのも視野に入れて討伐隊を組みましょう。
はぁ、嫌な世の中だ」
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ガチャリと鍵を開けて家にはいる。
「ただいまー」
声をかけて入るが返事はない。
当然だ、この家の住人はもうボクしかいない。
ガイア連合に入れてよかった。
異界に入って悪魔を倒して入手したフォルマやマグネタイトが良い値で売れる。
初心者セットですと渡された低級のシキガミとアガシオンを強化するには全然足りないが一人で食べていくには十分だ。
ジュネスの社員としての席もくれたので基本給も入ってくる。
なにより、つけてくれた弁護士のおかげで親戚の家を出て、この家に帰ってこれた。
売店で、ヒノエ島という所でとれた米で作った施餓鬼米を買ってきた。
それを炊いて同じくヒノエ島産の清め塩でオニギリを作る。
黄昏時
古くは「たそかれ」。 「誰(た)そ彼(かれ)は」と、人のさまの見分け難い時を刺す言葉だ。
黄色く染め上げられた視界は深く影を映し人の顔を影の中に隠してしまう。
クイッ、クイッと袖を引っ張られる。
悪魔は自分よりレベルの低い者には従わない。
同時に自分よりレベルの低い者からは認識されにくくなる。
レベルが上がった影響か、以前はノイズがかかって見えにくく何を言っているのか理解できなった悪魔や霊。
それらの言葉や姿をはっきりと見聞きできるようになってきた。
『おにいちゃん・・・・おにいちゃん・・・』
その幽鬼は、そう言ってボクの袖を引いていた。
ボクが発見されたのは車からだいぶ離れた下流だった。
車が沢に転げ落ちた時、連日の雨で増水していた川に投げ出されて流されたのだと聞かされた。
その時にボクは腕だけになった妹をしっかりと握りしめていたそうだ。
だから、連れてこれた。
「あの日から、何も食べてないだろう。
オニギリを作ったんだ。
とても美味しいお米だそうだよ。
一緒に食べよう」
そう言って妹にオニギリを渡し、居間のソファーに二人で座って食べる。
『おいしいね』
「そうか、おいしいか」
そういって、オニギリを食べ終えた妹は金色の黄昏が、夜の深い藍色に染まる頃には溶けるように消えていた。
あの妹にダダ甘だった両親が妹を残して先に行っているとは思えない。
ありえないのだから、そういう事なのだろう。
事故を起こした場所の先に悪魔どもの住処である異界があるという。
レベル一桁のオバリヨンやカブソが電車を脱線させるような世界だ。
車一台を道路から放り投げるなど容易い事だろう。
「最後の親孝行だ」
ああ、ボクが涙を流す資格など無いのは分かっているが、今だけは泣かせて欲しい。
必ず落とし前はつける。