ガイア連合で学ぶ 真・女神転生   作:ウェルディ

3 / 5
第三歩 異界

 

その歪みは、鬱蒼とした森の中に静かに佇んでいた。

 

「ここだね。

 調査隊が調べた中で最もボスの神殿に近い突入ポイントだ」

 

そう言って、波紋センパイはカンテラ型のキルリアン振動機が放つ青い光を歪みに向ける。

リィィィンと音叉を鳴らしたかのような音が響き、歪みが広がり黒い楕円の穴へと変化する。

 

「レディ、入口の確認を頼む。

 問題ないようなら戻ってきてくれ」

 

「わかったわ、マスター」

 

羽飾りのついたバンダナを巻いて、頬や肌に呪術的な赤いペイントを施した女性型シキガミが躊躇なく穴に飛び込む。

彼女は、シキガミの元となったスライムがレベルアップを繰り返した結果、元の霊格を取り戻し進化した存在らしい。

真・女神転生3ではピクシーなど特定の悪魔がレベルアップする事で存在を進化させる事ができた。

コレもその類らしい。

妖魔シワンナという北アメリカのブエブロ族に伝わる精霊で「雲の人」という意味だそうだ。

この「雲」は、精霊と死者を表している。

彼らは池または泉の下にある山の中や、海辺の町の中などに住むとされている。

破魔が得意で、相手から放たれた破魔を反射することができるので天使などの破魔を得意とする相手と戦うときは心強い仲魔だ。

 

また、元の霊格を取り戻したとは言ってもレベルアップによってシキガミ自体にも自我が芽生えており魔界にいるシワンナの本体の命令で、こちらを裏切るという心配は無い。

今のところ、シワンナの属性が中立・中庸を旨とするニュートラルなので特に問題はおきていないそうだ。

 

「さて、軽く異界というものが、どういったものか説明しておこう。

 一言でいうと、異界のボスという強力な悪魔の住処であり。

 彼の者が存在しやすい水槽でもある。

 

 強力な悪魔という存在は、この世界に存在するために多量のマグネタイトを必要とする。

 マグネタイトが無くなれば、どのような強力な悪魔であろうとも、その存在を維持する事ができず消滅かスライム化の二択が待っている。

 まぁ、例外的にボスの存在が維持できなくなるまで削ってスライム化させてシキガミに封じる。

 そういった対処をする場合もある。

 

 世界には、異世界からの侵略者である悪魔を否定する力が働いている。

 世界とは、この世界に住む人々の認識によって構成されているからだ。

 悪魔が存在する為に感情や生命の力を含む生体マグネタイトが必要なのも、この辺りが原因では無いかと言われている。

 この世界の感情や生命力を纏う事で『この世界に存在するものである』と世界からの認識を誤魔化しているのではないかという説だ。

 この悪魔の存在しやすさをガイア連合ではGP(ゲートパワー)と呼んでいる。

 

 このGPが低い内は、人々が『悪魔は存在しない』と信じており強力な悪魔は、この世界に存在することができない。

 否定されマグネタイトをゴリゴリと消耗させられる事を嫌った悪魔が作り出すのが異界だ。

 この世界と近しくありながら、この世界では無い世界。

 異界を作り出した悪魔に合わせてカスタマイズされた世界では彼らが存在するためのコストが、とても安くなる。

 異界のボスとされる悪魔は手下を生み出し、自分の世界に人々を引きずり込みマグネタイトを生産させる。

 そうして、人を喰らって力を増し、手駒を増やし、信者を増やして人々の認識に自分の存在を刷り込み。

 『あの恐ろしい悪魔は存在するのだ』と人々に認識されることで得たマグネタイトと自分を否定するエネルギーを減少させることで、この世界に顕現し地域を支配する。

 

 異界とは、この地域を支配する神を生み出す揺籃であり、彼のモノの神殿。

 この世界を侵略する為の前線基地だ。

 その先にあるのは、世界征服・・・・人類が今に至るまで否定し続け決して叶えてはならない野望だ」

 

一旦、会話が途切れ、重い沈黙がおりる。

するとタイミングを見計らったように異界の入り口からシワンナが戻ってくる。

 

「問題無かったよマスター」

 

「ありがとう、レディ。

 続きは彼の神殿に進みながら話そう。

 今、この異界では各所で攻撃が行われ、この異界に接続された龍脈を切断する儀式が行われている。

 僕らの役目は、異界のボスを弱体化するまで足止めする事だ」

 

そう言いながら、波紋センパイは異界の入り口をくぐり中へと入っていく。

それに続いてボクも異界へと勢いよく飛び込んだ。

 

 

 

---------------------------------------------------------------------------

 

 

 

燃え盛る木々の陰に身を潜めながらバケツヘルムが特徴的なデモニカと呼ばれる戦闘服に身を包み銃で武装した一団が駆け抜けていく。

 

『こちら、ブルー小隊。

 ブルー1、ブルー2、ブルー3、所定の位置に到着。

 これより龍脈破断用のキルリアン振動機の設置に入る』

 

彼らは四方に杭を打ち、しめ縄を張ると機械でできた剣のような物を中央に突き刺す。

その剣からコードを伸ばしノートパソコンに繋ぐとプログラムが起動し、後 98パーセントと表示されカウントダウンが開始される。

 

『こちら、ブルー3。

 エネミーソナーに感あり。

 1キロメートル先から、こちらに飛行物体、速度推定時速120キロ。

 接敵までおそよ10秒』

 

『ブルー2、木上に上がった。

 遠隔モードで敵影を確認。

 ジャックランタンを先頭にウィルオウィスプが十体以上、すごい数だ』

 

ジャックランタンは、ハロウィンでお馴染みのカボチャ頭の幽霊で、火の攻撃を無効化し火の魔法を得意とする。

ウィルオウィスプは、簡単にいえば人魂で物理攻撃に耐性を持つが属性攻撃全般に弱い。

 

ブルー1は、素早く起動までのパーセンテージを確認、隊員に指示を出す。

 

『残り58パーセント、初撃さえ凌げば破断結界が起動する前進、攻勢防御。

 ヤツラが祭場に接敵する前に叩く』

 

『ラジャー』

 

『手当は弾んでください、オーバー』

 

ブルー3が地上からスプリンターもかくやというダッシュで前に駆け出していく。

その速度は、100メートルを5秒で走破しようかという人外の加速だ。

 

それに続く、ブルー2は木の上から跳躍、木から木へとスーパーボールのように跳ね回りながら敵集団の側面に回り込む。

 

行動開始からわずか2秒、400メートルまで接敵した両者は、デモニカ側が先制攻撃。

パラドDと呼ばれる、ポーランドが設計したアンダーバレル式グレネードランチャーから有効射程430メートルの榴弾が放たれる。

重量255グラム、被害半径5メートルの対人榴弾は、前方と側面からジャックランタンとウィルオウィスプを捉えて爆炎に飲み込む。

 

悪魔を目視できて、銃があれば悪魔退治は簡単にできるかと言えば否である。

相手は時速120キロで飛んでくる鋼鉄並みの強度があるカボチャとソフトボールである。

覚醒していない一般人であれば頭に喰らえば頭蓋骨が陥没し、胴体に喰らえば、あばら骨がへし折れるだろう。

ブロック塀ですら粉砕する凶悪な弾丸だ。

1秒で100メートル進む剛速球を撃ち落とせと言われても一般人ではお手上げだろう。

 

『ブルー2、ウィルオウィスプは多少減った。

 リーダーのジャックランタンは健在、目標をこちらに変えた。

 交戦しつつ術式より引き離す』

 

『良い仕事だ。

 帰ったら一杯おごってやる』

 

ブルー2は、尾栓部分の右側に配置された大型のレバーを下に倒し空薬莢を排莢するとパラドDに装着されたAK-47で7.62mm弾をフルオートでばら撒きながら陽気に答える。

AK-47とは、ソ連を代表する自動小銃である。

実戦の苛酷な使用環境や、戦時下の劣悪な生産施設での生産可能性を考慮し、部品の公差が大きく取られ、卓越した信頼性と耐久性、および高い生産性を実現した。

基本設計から半世紀以上を経た今日において。

本銃とその派生型は、砂漠やジャングル、極地などあらゆる世界の地帯における軍隊や武装勢力の兵士にとって、最も信頼される基本装備になり。

『世界で最も多く使われた軍用銃』としてギネス世界記録に登録されている

 

『いいね、家族と親分のシェルターのローンで晩酌すら覚束ねぇ。

 ガイア学院は、授業料と給食代が無料で助かるが、簡易礼装として使える制服類が高いし。

 小遣いも子供が優先だ』

 

『ははは、お父さんは大変だな。

 俺はつまみを奢ってやるよ。

 ブルー3、敵集団を右側面から突く誤射に注意されたし』

 

転生者のガイア組員は、『一人だけ』ならば終末を乗り切るのは容易だ。

初期配布されるシェルターにデモニカ、ガイア連合内で安全な仕事も紹介してくれる。

だが、自分以外も助けようとするとハードルが上がる。

シェルターも初期で配布される十畳3LDKも家族で使うとなれば少々手狭で、親に嫁や子供がいると3部屋くらいは欲しくなる。

そして、部屋の料金は高層マンションの一室ぐらいは普通にする。

レンタルもできるが、後々を考えるとローンを組んで買ってもレンタル代と大差ないとなれば購入一択になる。

 

戦闘職は確かに危険だが、一回の出撃で数百万の手当がつき。

怪我には回復魔法、カバーしきれない程の欠損にはシキガミのパーツを移植。

死亡したとしても、回収部隊が遺体を回収して蘇生するアフターケア・・・・・欠損が酷い場合は性別が女になるのはご愛敬。

終末後の自由度を考えると家族を護れるだけの力は欲しい。

 

そして、多いのが子供が覚醒してしまう場合が結構あるということである。

悪魔が見えると正直に言えば周囲に引かれ、内緒にするとストレスが溜まる。

癇癪をおこして、覚醒者の身体能力や魔法を使って暴れられると非覚醒者では止められない。

 

息子や娘の癇癪が怖くて顔を伺う親になど絶対になりたくない。

 

そんな訳で戦う、お父さんやお母さんというのは結構多い。

 

『山よりも高き父の強さを思い知れ』

 

 

---------------------------------------------------------------------------

 

 

『ヒィィホォォォォ』

 

ジャックランタンが四体、雄たけびを上げながら上下左右から襲い掛かってくる。

ボクが、センパイ達から最初に習った事は四つ。

 

『怖くても目をつぶるな』

 

『常に状況を把握して、切り抜ける道を探れ』

 

『隙あらば攻めろ』

 

『やられる前にやれ』

 

前に出る。

ダッシュした勢いのままスライディングして下から攻めてきたジャックランタンのさらに下を潜り抜ける。

腕力を使ってバク転で起き上がり、着地した足のバネを使って高く飛び上がる。

目標を見失い上空に上昇したジャックランタンを両足で挟み、そのまま地面に叩きつけた。

 

「まず、一つ」

 

『アギラオ』『アギラオ』

 

左右から攻めてきたジャックランタンが大きく円を描いて旋回し魔法でこちらを狙ってきた。

敵単体に対する中威力の火炎属性攻撃。

その威力は車一台を飲み込みローストするのに十分な威力を持っている。

火属性に対する備えは、もちろんしてきている。

幽鬼ガキと妖精ゴブリンのフォルマから作られるゴールドベストは火に対して耐性を持っている。

 

射線が重ならないように放たれた二つの火球の内の一つにあえて飛び込む。

 

「おぉぉぉおおおおお」

 

狙いは、上から襲い掛かってきて地面に着地し、動きを止めているジャックランタン。

火球を突き破り、『突撃』数百メートル距離を数秒で詰める。

 

『まずは、己の五体を極めよ。

 気を漲らせ、意識を集めた手足は鋼鉄が如く岩を砕く。

 五体を極めてこそ手足の延長たる武具を極める礎となるのだ』

 

転生者には才能がある。

レベルはすぐに上がるし現地霊能者のような限界も今のところ見えていない。

故に急激に上がる身体能力についていけない。

1キロを数秒で駆け抜ける事ができる脚力。

二階建ての家の屋根にひとっ飛びで飛び上がれる跳躍力。

あまりのスピードに足をとられて転ぶ。

飛びすぎて着地に失敗し犬神家する。

 

このノリで剣や槍を振り回すと武器に振り回されて自爆してハラキリしかねない。

 

故に最初の武器は、扱いやすいナックル系か短剣系が推奨されている。

 

だから、ボクの攻撃はシンプルだ。

 

近づいて、力を込めて、ぶん殴る。

 

それだけで、ジャックランタンのカボチャ頭は、はじけ飛んだ。

 

背中を見せているボクに追撃をすべく、二体のジャックランタンが飛来しようとした瞬間。

 

『マハ・ブフ』

 

波紋センパイの放った中威力の氷属性攻撃が周囲に吹雪を巻き起こし周囲一帯を凍り付かせてる。

 

「これで周囲の悪魔は、粗方片付いたようだね。

 どうやら、あそこが神殿の入り口のようだ」

 

センパイの指さした先には岸壁に明らかに自然のモノではない大型トラックでも入りそうな四角い入口。

壁面は緑とも金色とも見える六角形のタイルが張り巡らされている。

 

「行こう。

 どうやら下り坂のようだ。

 さしずめ黄泉平坂といった所か」

 

そう言ってセンパイはランタンをかざし、洞窟の中へと入っていく。

中に飾られているのは焼け焦げた人体のレリーフ、そこから赤い光が漏れ出し洞窟の奥へと光の粒が流れていく。

 

「これは、マグネタイト・・・いやマガツヒか」

 

レリーフにカンテラを近づけると輝きが強さを増す。

 

「レリーフから強い熱、レリーフに捉えた人の魂を封入して炙りマガツヒを絞っているのか!!」

 

『真・女神転生Ⅲ』に登場する「マガツヒ」(禍つ霊)は、意識存在が持つ精神エネルギーのことである。

過去の作品における生体マグネタイトに近い。

苦痛を与えると放出されるもので、空間にも一定量存在している。

赤く小さいオタマジャクシのような外見をしており、大量に吸い取られると死に至る。

この場合は霊的な消滅を意味するのだろう。

 

「ならば、この光の先に異界のボスがいる」

 

「ああ、急ごう」

 

ボク達は警戒を緩めず、速足で神殿を駆ける。

つづら折りの通路を抜けて巨大な扉の前へと到着した。

 

その扉からは、谷底を覗き込んだ時に感じる怖気、肥料や海に感じる強い生命力の匂い。

コンクリートとアスファルトで舗装され消臭された街では嗅ぎなれない汚物に近い匂いがする。

強すぎる生命の香りとは人にとっても毒たりえるのだ。

 

「いくぞ」

 

「はい」

 

ここまで来て引き返すという選択肢は無い。

二人は、力を込めて扉を開き、シワンナは奇襲に備えて後ろに下がる。

そこは、広いホールのような場所だった。

 

『よく来た。愚かな人間たちよ』

 

まるでパイプから音を響かせながら発せられたような不思議で悍ましい声。

 

柱に囲まれ高くなった壇上に牛の頭を持つ人型の化け物。

その胴体は青銅色の炉のようであり、七つの戸棚と見られる場所からは火が噴き出ている。

 

「魔王モロク、中東のカナアン地方で崇拝されとされる火の神だ。

 女神転生において、度々ボスとして登場している有名どころだよ」

 

波紋センパイが額の汗を拭いながら、そう教えてくれる。

 

『我が名を知るか人間、ならば我が炉にて我が糧となるがよい。

 そして知るが良い、誰が支配するべき者となるべきかをな!

 我ら悪魔の偉大さを知るがいい!』

 

ああ、イラつく。

感じる・・・その腹の中に誰がいるのかを!

 

「死ね、死んで消え去れ。

 貴様の首は吊るされるのが、お似合いだ」

 

『不敬だな人間如きが!

 燃えて、噴いて、輝いて

 おのれらを焼き尽くしてくれようぞ!』

 

 

 

 

 

 

 

---------------------------------------------------------------------------

 

森の中に迷彩を施された異様な物体が鎮座している。

それは軽自動車に六本の脚をつけたような物体で、その外見は蜘蛛のようにも蟹のようにも見えた。

いや、実際に蜘蛛や蟹なのだ。

悪魔に対抗できるのは霊能に覚醒した人間か悪魔、または『そのように作られたモノ』のみ。

血や骨が神々の領域であるのであれば、油と鉄骨は人間の領域だ。

鉄と油、鋼鉄の皮膚をスライムを材料としたシキガミで肉づけする。

有名な所でいえば『ゴーストバスターズ2』で自由の女神を動かした原理に近い。

そうして形づくられたボディにツチグモやバケガニといった地霊の属性を付加したものが『対悪魔戦闘車両T95D』

 

地上戦用のツチグモタイプと海戦も可能なバケガニタイプの二種が現在、試作運用されている。

 

ツチグモとは、当時の大和朝廷に従わなかった覚醒者や異能者ではないかと言われている。

だが零落し、その魂を貶められた彼らは現在では蜘蛛の化け物として伝承に残され悪魔としてその残滓が残っているのみである。

 

バケガニは全国の寺院などに伝わる妖怪伝承の一つであり、蟹坊主とも呼ばれる蟹の妖怪である。

巨大なカニの姿をしており、相手に禅問答を問いかけ、失敗した者をハサミで掴んで食い殺すとされている。

 

そのような彼等を模し宿した戦闘車両であるT95Dが、五角形の星を描く配置で天幕を囲んで龍脈破断の儀式を粛々と進めていた。

 

「ベイダー卿、龍脈破断の杭が打ち終わりました。

 四方型結界の八芒星 篭目の紋の形成が完了。

 ボス本陣への突入部隊が交戦を開始。

 予想通り、龍脈による強化が為されているようです」

 

宇宙戦争に出てくるトルーバーの外装を施されたデモニカを纏った隊員が上司である黒づくめの甲冑にマントといったデモニカを纏う男に報告する。

一般人に見られる頻度の高いパトロール部隊は一般人を誤魔化しやすい装いを強いられる。

まぁ、彼等の趣味が多く加味されているのは否定しない。

 

ガイア連合で使われるデモニカは、ガイアアニメーションで制作された作品の外装をする場合が多い。

人間ほどにサイズダウンした戦闘ロボや変身ヒーロー、戦闘員、武装していても不思議に思われないのが良い。

 

「自衛隊ニキによる神楽舞の用意を」

 

四角い天幕に階段がかけられ天井に八卦の刻まれた天井が敷かれる。

四方に突き刺さった桃木の木剣にしめ縄が括り付けられ、塩で清められた簡易の聖域と化す。

 

階段を粛々と登る巫女装束を纏った女性は、女性型に悪魔変身した自衛隊ニキ。

信仰の力を集める為に神楽舞の練習映像や今行われている儀式はライブで掲示板に放映されている。

神秘的な雰囲気で霊験な笑みを浮かべている。

だが見世物にされている中の人は『あー、最悪』と思っている。

 

舞台の中央で立ち止まり、手に持った鈴をシャランと鳴らす。

 

「八杭の標杭を以って奇門を定めた。

 よって、この場は現世の法に括られる。

 唄と踊りと鍵をもって龍脈閉門の儀式を開始する」

 

祭主であるベイダー卿の宣言と共に唄が唱和される。

 

『たかあまのはらに 高天原爾

 かむつまります  神留坐須 

 かむろき     神漏岐

 かむろみの    神漏美乃

 みこともちて   命以知氐』

 

七支刀と呼ばれる木の枝のような形をした剣を振り。

鈴をピラミッドのような三角錐に組んだ祭具を鳴らして踊り唄う。

 

『すめみおやかむいさなきのおほかみ

 皇親神伊邪那岐乃大神

 

 つくし      筑紫

 ひむかの     日向乃

 たちばなの    橘乃

 をとの      小門乃

 あはきはらに   阿波岐原爾』

 

これは清めを願う歌。

古来より地に染み込んだ平穏を願う唄の一つ。

 

『みそきはらひたまふときに

 禊祓比給布時爾

 

 あれませる          生坐世留 

 はらへとのおほかみたち    祓戸乃大神等

 もろもろまかことつみけかれを 諸々禍事罪穢乎

 はらへたまひ         祓閉給比

 きよめたまふと        清米給布登

 まをすことのよしを      申須事乃由乎

 あまつかみ          天津神

 くにつかみ          地津神

 やほよろつのかみたちともに  八百万神等共爾

 あめのふちこまの       天乃斑駒乃

 みみふりたてて        耳振立氐

 きこしめせと         聞食世登

 かしこみかしこみもまをす   畏美畏美母白須』

 

唄の終わりと共に陣の中央に誂えらえた鍵穴に七支刀を突き刺し施錠する。

八卦の陣より光が走り。

八杭の標杭と繋がり異界を囲む巨大な魔方陣が形成される。

 

ガチャンという音が周囲に鳴り響き。

ここに龍脈の施錠は完了した。

 

直後、周辺を索敵していたエネミーソナーが真っ赤に染まる。

 

『結界内に悪魔反応!!

 真っ赤です・・・・数えきれない凄い数だ』

 

「エサの供給を断たれたのを感じて苛立っているな。

 鬼門と裏鬼門を抑えている北斗ニキと波動ニキに絶対に結界の外に悪魔を出すなと通達せよ。

 総員、戦闘準備!!

 結界を破る為にココに悪魔が殺到してくるぞ。

 異界のボスを討ち、異界もろともヤツラが消え去るまで、この地を死守せよ!」

 

設置された五機のT95Dのスピーカーから圧縮された聖歌が流れだす。

それは圧縮されながらも荘厳なハミングとなり周囲の大気を揺らす。

ビリビリと肌に感じる唄声が即席の聖域を生み出し、殺到する悪霊を分解していく。

 

「この地の荒廃は、この一戦にあり。

 皆、奮起せよ」

 

この時より、地獄に等しい三十分が開始された。

 

 

 

---------------------------------------------------------------------------

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。