『鳴上悠は鬼殺の夢を見る』   作:OKAMEPON

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第六章【何時かは醒める夢】
『過去からの言伝』


◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 各々の日輪刀を受け取り全員の体調も回復した事で、目覚めてから三日後には、随分と長い事お世話になった刀鍛冶の人たちに別れを告げて蝶屋敷へと帰還する事になった。

 無一郎は自分の邸に、玄弥は師匠である悲鳴嶼さんの下へと帰ったのだが。拠点となる場所が無く半ば根無し草状態の炭治郎たちはと言うと、隠れ里を発つまでの間に任務が入る事が無かった為に一旦蝶屋敷に身を寄せる事になったそうだ。

 何時もなら回復したら直ぐに任務が入るものなのに、珍しい事もあったものだ。

 まあ、任務が無いと言う事は、それだけ鬼の被害が報告されていないと言う事なので、そう悪い事では無いのだけれど。

 

 思えば、蝶屋敷に帰るのも随分と久し振りの事になる。

 隠れ里から蝶屋敷までは隠の人たちがバケツリレーの様に運んでくれるので何処かで蝶屋敷の皆へのお土産を買ったりする様なタイミングは無いのだけど。

 隠れ里の人たちが、「大したものではありませんが」と言いつつも、日々の手慰みとして作った様々な細工物などをお土産代わりにくれたので、それを後で皆にあげようと思う。

 あんまり嵩張るものや重たい物は、運んでくれる隠の人たちの事を考えると受け取れなかったが、つまみ細工やらちりめん細工などの小物はきっと蝶屋敷の皆の好みにも合うのではないだろうか。

 皆、喜んでくれると良いな。

 

 そして、お土産と言うとまた少し違う気もするけれど。

 しのぶさんの役に立てる様に、倒した玉壺の血を回収してある。

 二セット回収したそれの一つは既に茶々丸に託し、もう片方はしのぶさんの為に取ってあるのだ。

 黒死牟の刀も役に立っているらしいし、この玉壺の血も毒の研究などにきっと役立つだろう。

 よくよく考えると猗窩座の血も回収出来ていたら尚良かったのかもしれないが、残念ながらあの乱戦の中だとその余裕が無かったのである。

 ……まあ、『鬼を人に戻す為の薬』の完成には既に目処が立っているらしいので、無理に猗窩座の血を集める必要は無いのかもしれないけれども。

 

 それにしても、茶々丸は本当に賢い猫だ。

 一体何時何処で移動する里の人たちに付いて来ていたのかは分からないけれど。

 目覚めてから少しして、周囲に人気が無い事を確認してから物は試しとばかりに茶々丸の名を呼ぶと。

 当然の様に鳴き声と共に部屋の陰から姿を現したのである。

 それも、珠世さんへ以前相談していた件に関しての返事の手紙も伴って。

 姿を隠している間は見えていないので分からないが、もしかして茶々丸は瞬間移動の血鬼術でも使っているのでは? とちょっと思ってしまう程である。

 珠世さんたちが今何処に潜伏しているのかは分からないが、小さな猫の足だと、任務であちこちに移動する炭治郎を追いつつ、拠点と炭治郎たちの居る場所とを移動するのも大変だろうに。

 茶々丸は凄いなぁ、と撫でると。もっと撫で給えとばかりにゴロンと横になってくれるので、とても癒される。

 猫は幸せの形をしていると思う。勿論、猫だけでなく動物全般が良いものであるが。

 

 茶々丸の魅力はさておき、重要なのは珠世さんからの返事の内容だ。

 珠世さんから提供して貰えた情報を、どの程度までお館様に……ひいては鬼殺隊全体に共有して良いのか、と言うその許可である。

 普段の手紙のやり取りならもっと早くに返事が返って来るのに、ここまでそれが遅くなったと言う事は、やはり珠世さんにとって、自分たちの存在はそう簡単に明かされて良い事では無いからだろう。

 数百年もの間、鬼舞辻無惨からも鬼殺隊からも、悲願を果たすその日まで倒れる訳にはいかないとばかりに、その身を隠し続けていたのだ。

 例え何としてでも珠世さんたちの身の安全だけは確保する事を約束しても……お館様は鬼舞辻無惨を討つ為に「使える」なら非道極まりない手段以外は文字通り何でも使おうとするのだとしても。そう易々とはそれを信じ切れるものでは無い。

 ……だけれども。

 返って来たその手紙には、ただ一言。

「悠さんと炭治郎さんを、信じます」と。

 それだけが記されていた。

 ……その覚悟と信頼の重さの意味を分からない程、愚かでは無い。託されたそれの「重さ」に、思わず心が武者震いしそうになる程である。

 必ず、その「信頼」に応えなくては。

 

 黒死牟と猗窩座の両名と戦った際に無惨の根城を完全に吹き飛ばした事である程度の期間は無惨の動きを止める事が出来るだろう事と、自分が囮となる事で鬼舞辻無惨を釣り上げようとしている事などを記した手紙を玉壺の血と共に茶々丸に託し送り出して。

 それから、お館様へと向けた報告書の他に、『継国縁壱』なる剣士を知っているかどうかを訊ねる手紙も記す。

 

 産屋敷家は千年程鬼舞辻無惨を追い掛け続けている一族なのだ。

 長い時の流れの中や或いは幾度もあったと言う鬼殺隊の危機の際などに喪われたものはあれども。

 しかし恐らくは、最も「鬼舞辻無惨」や「鬼」や「鬼殺隊」などに関する情報を有しているのも間違いなく産屋敷家であろう。

 炭治郎が夢で見た縁壱さんの言葉が正しければ、縁壱さんは当時のお館様にお目通り叶う立場……今で言う所の「柱」に相当する存在であったのだろうし、そもそも『呼吸』の祖とも言える存在である。

 その存在に関して何かしら文書や口伝などの形で産屋敷家にその情報が残っている可能性は十分に考えられるだろう。

 そうであるなら、多少は話を通しやすい。

 縁壱さんがもしかしたら鬼舞辻無惨との戦いに関して何かを伝え残してくれている可能性だってあるし、どうかしたら珠世さんの事も何かしら伝えてくれたのかもしれない。

 珠世さんの存在を把握しているらしいのも、それが原因なのかもしれないし。……まあ、希望的観測でおいそれと突っ込んではいけないが。

 お館様が縁壱さんを知っていれば、炭治郎が『夢』の中で新たに得た情報なども合わせて色々と話を進めやすくなる。

 まあそんな感じの手紙と報告書を鎹鴉に託して見送って、何らかの返事が帰って来る前に、里を離れて蝶屋敷へと帰る事になったのであった。

 

 蝶屋敷までの道中は、行きと大して変わらない感じであった。

 前の里よりも蝶屋敷から遠いのか或いは近いのかも分からない。

 真っ直ぐに向かっている訳では無いので、中々に移動は大変そうである。

 ……と言うか、真昼間に目隠しと耳栓をされた人間が顔を隠した黒子みたいな人たちに背負われて運ばれてるのって相当目立つ気がする。……まあ、人目に付かない道を選んで運ばれているのだろうけれど。

 禰豆子はと言うと、既に陽光を克服している為に皆と同じ様に運ばれても問題は無いのではあるけれども。しかし、禰豆子が陽光を克服している事を知る者は可能な限り少ない方が良いので、窮屈そうで少し申し訳なくはなるものの、以前と同じ様に箱の中に縮んで入って貰っている。

 何時も使っているあの箱は半天狗との激戦の中でも奇跡的にあまり壊れていなかった様で、ちょっと修繕するだけで元通りになったそうだ。

 炭治郎の師匠から贈られた大切なものであるそうなので、ちゃんと無事に元通りになった事を炭治郎はとても喜んでいた。

 禰豆子としても、陽光を恐れる必要は無くなったからと言って箱の中に入るのを嫌がるでもなく、それを促すとあっさりと箱に収まった。

 禰豆子にとっても何時もの定位置であるそこは、落ち着く場所であるのかもしれない。

 そんな感じで、禰豆子が陽光を克服している事は、可能な限り伏せられる事になったのだ。

 尚、よくお世話になる先である蝶屋敷の皆は既にそれを知っているので隠す必要は無いのだけれども。

 

 そんなこんなで、朝一で里を出立して蝶屋敷に辿り着いたのは昼過ぎであった。

 自分たちを運んでくれた隠の人たちに礼を言って別れ、屋敷の玄関に入ると。

 

 誰かが屋敷に入って来た事に反応してひょっこりと顔を出した三人が、パァっとその表情を明るくして勢い良く駆け寄って来た。

 

「悠さんお帰りなさい!」

「炭治郎さんたちも、お久しぶりです!」

「しのぶ様たちも中で待ってますよ!」

 

 三人が一斉に喋るのをうんうんと頷いて聞きながら、随分と久し振りな気がする言葉を口にする。

 

「ただいま、みんな」

 

 そうやって「ただいま」と言える事に、温かな幸せを感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 しのぶさんたちにも挨拶をして、しのぶさんに玉壺の血を渡した後で、皆にお土産代わりの細工物を渡して。

 それから何時もの様に負傷した隊士たちを癒したり、洗濯物などの日々の家事をこなしたり。

 そうしている内に何時の間にかアオイが夕食の準備を始める頃合になっていたのでそれを炭治郎と一緒に手伝う。

 そう言えば、今日は随分と療養中の隊士の数が少ない様だ。

 洗い物の数も何時ものそれよりも随分と少なかったし、用意された膳の数も自分たちの分を抜けばそう多くは無い。

 いや、療養が必要な隊士の数が少ないのは良い事なのだけれど。

 

 何時もはもっと療養中の人が居るので、何かあったのだろうかとしのぶさんに訊ねてみると。どうやら鬼と遭遇する事自体がここ数日で相当減ったらしく、毎晩の様に運び込まれて来ていた隊士たちがめっきりと減った様だ。

 そして鬼との遭遇が激減したのは、丁度里が襲撃された日のその次の夜からの事であったらしい。つまり一週間弱の間、新たな負傷者が殆ど出ていないそうだ。

 今居る療養者に関しては、自分たちが隠れ里に行っている間に運び込まれて来ていた者達なのだとか。

 これで鬼と遭遇出来ていないだけで、鬼による被害が拡大しているとかなら大問題ではあるのだけれども。

 しかし、鬼によるものだと断言出来る様な被害の報告もめっきりと減っているそうだ。尚、鬼によるものなのか或いは人によるものか或いは偶然の事故なのかがハッキリとはしないものは今も少なからず報告はされているらしいのだけれど。

 これは、鬼全体がその動きを不活発化させていると捉えるべき事態なのだろうか? 

 

「やっぱり、その根城を消し飛ばされたのが、鬼舞辻無惨にとっては相当堪えたのでしょうか……?」

 

 或いは黒死牟と猗窩座に仕掛けた精神異常を来す力の影響が長引いているのか、それとも「青い彼岸花」を人質ならぬ「モノ質」に取られている事への対応に追われているのか、もっと別の理由なのか。

 ……禰豆子が陽光を克服した事はまだ鬼舞辻無惨にはバレていないとは思いたいけれど。

 

 うーん、と唸りつつそう零すと。

 話を聞いていたしのぶさんとカナヲが物凄く吃驚した様な顔で此方を見てきた。

 

「根城を消し飛ばしたんですか?」

 

 鬼舞辻無惨の? と、そう驚いた様な声で訊ねて来たしのぶさんに頷く。

 上弦の弐……童磨を消し飛ばす寸前までに至ったものと同じ力で一切の加減無く消し飛ばしたので、間違い無く跡形も無く吹っ飛んだ筈だ。

 以前、全力で放ったメギドラオンで、直斗の心が作り出した迷宮が跡形も無く消し飛んだ事がある。……まあ、流石に心から生まれたものがそうやって消し飛ぶのは幾ら何でも不味いのでは? と後日恐る恐る確かめに行くと、戦隊ものの秘密基地の様なその迷宮はちゃんと(?)元通りになっていたのだが。

 何にせよ、メギドラオンであの範囲が無に帰すならば、あの根城がどれ程の規模だろうと『明けの明星』で跡形も無く消し飛んでいるだろう。

 ……尤も、黒死牟も猗窩座も童磨も鬼舞辻無惨も、ついでにあの根城を血鬼術で維持していた鬼も、根城を消し飛ばしたとしても多分まだ生きていると考えた方が良いだろうけれども。

 

「……まあ、悠くんのやる事に驚くのは今更ですね……。

 何はともあれ、全員で生きて帰って来れたのは何よりです。

 煉獄さんたちからも話は既に聞いていますよ。

 よく頑張りましたね」

 

 そう言って、しのぶさんは頭を撫でてくる。

 しのぶさんとは一つしか歳は違わないし、自分の方が背は高いのだけれども。もしかして弟扱いされているのだろうか? 

 まあ、少し気恥ずかしくはあっても悪い気はしないし、寧ろ嬉しいので良いのだけれど。

 

「それは、煉獄さんたちが助けに来てくれたからですよ。

 ……多分、お館様の采配のお陰ですね」

 

 鬼殺隊を支え導いてきた「先見の明」が凄いものである事は知ってはいたけれど、今回の一件で改めてその凄さを思い知った感じだ。

 その言葉に、しのぶさんは「そうですね」と頷く。

 そして、寧ろここから先が本題だとばかりに、しのぶさんは話の流れを変えた。

 

「……あの鬼は、やはり生きていたのですね」

 

「はい。上弦の壱と参……黒死牟と猗窩座のあの様子だと、上弦の弐は生きているみたいですね。

 あの襲撃の場に現れなかった事を考えると、以前に削った分がまだ完全には回復しきれていなかったのかもしれませんが……。

 …………恐らく、いえ確実に。

 次に会う時には、以前とは比べ物にならない程に、あの鬼は強くなっている筈です」

 

 猗窩座と二度戦った煉獄さん曰く、二度目に戦った際のその強さはまさに桁違いにも等しい程に強くなっていたらしい。

 鬼舞辻無惨によって更に強化される前の段階で、既に人がどう対抗すれば良いのかも分からない程に圧倒的な強さであったと言うのに。

 今の上弦の弐がどれ程の『化け物』になっているのかを考えるだけで恐ろしい話である。

 一体どの様な変化を遂げているのかも分からないし、強化されていると言うのなら以前の情報では太刀打ち出来ない可能性もある。

 

「猗窩座の頸は、煉獄さんと無一郎の二人がかりで全力を出しても落とし切れませんでした」

 

 確かにあと一歩、ほんの僅かな助力が間に合っていれば、その頸は落ちていたとは思うのだけれど。

 何にせよ、柱が二人がかりであっても「上弦の参」の頸を落とせなかったというその事実は重い。

 そして、単に柱が二人がかりでも駄目だったと言うだけでは無い。

 二人とも「タルカジャ」で強化された上で、しかもその日輪刀は『赫刀』の状態であったのだ。

 ……ならば、「上弦の弐」であるあの鬼の頸を落とすには、それを遥かに超える力が必要であると言えるのだろう。

 その事実が示すものを理解し、しのぶさんはグッと感情を堪える様な顔をする。

 

「……私に、『復讐』を諦めろ、と?」

 

『約束』をしたのに、それを諦めさせるのか、と。

 しのぶさんのその目はそう訴えて来る。

 だが、それには当然首を横に振った。

 

「いいえ、まさか。

 ……『約束』したそれを、破ったりはしませんよ。

 自ら選んだ事には、最後まで責任を負わなくては。

 俺は、しのぶさんの『復讐』に最後まで手を貸します。

 それがしのぶさんにとって必要だと言うのであれば、何としてでもあの頸をしのぶさん自身に落とさせてみせます」

 

 ただ、それが更に困難な道程になった事だけは伝えなくてはならなかった。それだけだ。

 想定する相手の戦力を過剰な程に見積もってやっと、と言う状況であろう。

 

「……鬼舞辻無惨にも知られていない切り札は、まだ沢山ありますから。

 ですが、尽くせる限りのありとあらゆる手を尽くす必要はあるのかもしれません」

 

 あの強烈な氷の血鬼術からしのぶさんたちを守る方法はある、血鬼術を封じる事が出来るかどうかはちょっと賭けになるがそれでもどうにか出来るかもしれない手立てもある、大いに弱体化させる方法もある。

 それらの手札の全てを掻き集めて、可能な限りの手を尽くしきって。

 それでも、しのぶさんの手で童磨の頸を落とせるのかは確証は持てない。それでも、やるしかない。

 しのぶさんの心がその身を焦がす程の怒りと憎悪の呪縛から解き放たれる為に、それが必要だと言うのであれば。それを成し遂げる為にありとあらゆる手を打たなくては。

 

「師範……! 

 私も、あの鬼を倒す為に協力します……! 

 だから絶対に、あの鬼を討ちましょう」

 

 カナヲが、グッとその手を両膝の上で強く握り締めながらそう力強く言う。

 出会ったばかりの、心の声がとても小さかった頃からはとても想像も出来ない程に。

 カナヲはとてもしっかりと自分の意志を持ってそれを表明出来る様になっていた。

 まだ決断する事に時間が掛かる物事も多いけれど。

 この蝶屋敷の皆……特にしのぶさんに関する事柄ではとても決断が早いし揺るがない。

 かつて何も出来ないままにカナエさんを喪ってしまったからこそ、今度こそはと、そんな気持ちが強いのだろう。

 カナヲが童磨討滅に向ける想いは、しのぶさんのそれにすら匹敵するものであった。

 しのぶさんにとって童磨が最愛の肉親の仇であるのと同様に、カナヲにとっても童磨は大切な家族の仇であるのだ。その怨敵への感情も、並々ならぬものであるのだろう。

 そんなカナヲを見て、しのぶさんは随分とその心を表に出す事が出来る様になった事に喜びを感じている様だった。

 選択を委ねていた硬貨はお守りとして大事に持っているが、それを弾いて物事を決める事はもう無くなっていて。そう言った成長を本人以外に一番実感しているのは、誰よりも長く姉としてその傍に居たしのぶさんであるのだろう。

 

「ええ、カナヲ。必ずあの鬼を討ちましょう」

 

 そう頷いたしのぶさんの目に、以前の様な酷く思い詰める様な感情は見えない。

 きっとそれは良い方向への変化なのだと、そう思う。

 だからこそ、その目を曇らせなくても良い様に、出来る事をしなくては。

 

「これは刀鍛冶の里で確かめて来た事なのですが……──」

 

 そう前置きをして、『赫刀』や『透き通る世界』についてしのぶさんに説明する。

 特に『赫刀』に関しては、無一郎の日輪刀が僅かにとは言え黒死牟の頸に食い込めた事や、猗窩座の頸を煉獄さんと無一郎があと一歩の所まで落とし掛けた事を考えると、上弦の弐である童磨にも有効である可能性が極めて高いだろう。

 そもそも、対峙したのが色んな意味で規格外の存在だったのであろう縁壱さんであった事を差し引いても、『赫刀』は鬼舞辻無惨にすら有効であったのだから、それから生み出された上弦の鬼たちにも有効であると言うのは当然の事であるのかもしれない。

 日輪刀にその様な力がある事は全く知らなかった二人は、『赫刀』の説明を何処か半信半疑で聞いていたが。しかしそれが童磨との戦いに於いても有効であろう事は伝わった様で、ならば自分達がその『赫刀』を発現させられるのかと言う事が気になる様だ。

 

「現時点で分かっている日輪刀を『赫刀』の状態にする為の方法の一つは、凄まじい握力で握り込む事です」

 

 煉獄さんや甘露寺さんや無一郎ですら『タルカジャ』で補助しなくてはならないと言う時点で、尋常では無い握力が必要になる。

『タルカジャ』の補助を加味したとして、しのぶさんとカナヲがそれを発現させられるのかとなると、かなり難しいかもしれない。

 とは言え、あくまでも「握力」は『赫刀』を発現させる為の方法の一つでしかない。

 

「ただ、恐らくは握力以外にも発現させる方法はあるのだと思います。

 例えば、炭治郎たちが上弦の肆と戦った際には、禰豆子ちゃんの血鬼術によって日輪刀が『赫刀』の様に変化したらしいですし。

 後、煉獄さんと無一郎が猗窩座の頸を落とし掛けた際に、その日輪刀を打ち合わせた時に少しだけ『赫刀』の色が更に深い赫に変わったのを確認しました。

 もしかしたら、熱や衝撃などの要素でも『赫刀』に出来るのかもしれません」

 

 其処に関してはまだちゃんと検証出来ていないので、何処かで確かめてみる必要はあるのだが。握力以外の要素でも『赫刀』に出来るなら、それは間違いなくより戦力を押し上げる事にも繋がるだろう。

 そして、まあ当然と言えば当然なのだが、一度『赫刀』の状態にした日輪刀は、握力を多少緩めてもある程度の時間は『赫刀』の状態を保てる。

 自分が握った場合だと、三分程度は日輪刀を手放しても『赫刀』状態を保てる様だ。

 あまり実戦的とは言えないかもしれないが、自分がギュッと握って『赫刀』にした日輪刀を誰かに渡す事だって出来るだろう。

 激しい戦闘の最中にそうやって日輪刀の受け渡しをやる暇は殆ど無いのが問題にはなるけれども。

 

「そして、『透き通る世界』の事ですが。まあ正直これに関しては俺はあんまりよく分からないんですよね……。

 無一郎はその状態に入ると上弦の鬼相手でもその動きの先を見切って予測する事も出来たと言ってましたし、炭治郎は分身の身体の中に潜んでいた上弦の肆をその状態に入ると見付け出す事が出来たと言っていたので、多分あの鬼との戦いでもとても役に立つとは思うのですが……」

 

 何せ自分には全く分からない「感覚」の話になるのだ。

 無一郎と炭治郎だって、結果として知覚するレベルとしては同質だとしても、それをどの様に捉えているのかと言う部分に関しては違うだろうし。

 炭治郎にとってはそれは匂いであるらしいし、無一郎にとっては視覚と言うべきか勘と言うべきかというものであるそうなのだ。

 まあ、そこに関しては個々人の資質や感覚によって変わるものであるのだろう。

 

「……花の呼吸の終ノ型『彼岸朱眼』の様なもの?」

 

 カナヲにそう言われても、正直その終ノ型とやらを知らないので、よく分からないと首を傾げた。

 

「『彼岸朱眼』? それはどういったものなんだ?」

 

 そう訊ねると、カナヲは少し言い辛そうな顔をする。

 何か危険な技なのだろうか……。

 

「『彼岸朱眼』は目に全神経を集中させる様にして、限界まで動体視力を引き上げる技です。

 ……ですが、限界を超えたその力の代償に、失明の恐れがあります」

 

 カナヲの代わりに説明してくれたのはしのぶさんであった。

 刺突に特化した蟲の呼吸を編み出す前は、確か花の呼吸の使い手であったと言っていたので、花の呼吸の事にも詳しいのだろう。

 が、そんな事よりも。

 

「失明ってそんな……」

 

 その代償に思わず絶句してしまう。

 ……「痣」にしろ、その『彼岸朱眼』にしろ。鬼を倒せるならそれで良いと言う事であるのかもしれないけれど。

 しかし、己の寿命にしろ視力にしろ、そうやって捧げて良いものでは無いと思うのだ。……それ以外にどうしようも無いと言う事は当然あるのだろう。しかし、と。感情の面ではそうやって自分の身や命を削る行為を厭わないその姿勢は、中々受け入れ難いものだ。

 

「歴代の記録に残る花の呼吸の使い手の中でも、終ノ型を習得出来る程の使い手は稀だった様ですし、更に言えばそれを使った後の記録と言うものも数少ないので、ハッキリとそうなるとは言い切れませんが……」

 

 しかし、そんなリスクがある事は確かな事実である。

 余程の負担を、目や視神経などにかける技であるのだろう。

 ……当然の事ながら、そんな技は使って欲しくはない。

 

「『透き通る世界』がそれと同じなのかは分かりませんが……。

 しかし、それに至った人たちにそう言った何かしらのリスクがある様には見えませんでした」

 

 規格外の縁壱さんは評価の対象外にするとしても、話を聞いている限りでは炭治郎のお父さんが失明だとかのリスクを背負った様な感じでは無いし、無一郎も炭治郎も全く以て元気なのだ。結果としては同じ様な力なのかもしれないが、『透き通る世界』とはまた別のものであるのだろう。

 ならば、カナヲが『透き通る世界』とやらに至れる様になれば、そんな失明するかもしれない様な技に頼る必要も無くなるのだろうか。

 ……なら、自分がやるべき事は決まっている。

 

「しのぶさん、カナヲ。

 俺も手伝える事は何でも手伝うので、炭治郎たちの言う『透き通る世界』とやらに到達しましょう。

 そうすればきっと……」

 

 先ずは、その『透き通る世界』とやらを理解している無一郎や炭治郎から話を聞くべきなのかもしれないけれど。

 揃えられる限りの手札は予め揃えておくべきだろう。

 そうすれば、少しでも皆が何かを喪わずに、童磨を討って復讐を遂げて、更には鬼舞辻無惨の居ない夜明けを迎える事が出来ると……そう信じたい。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 相変わらず美しく整えられた庭を眺めながら、此処を訪れるのももう三度目にはなるのだけれども、どうしても緊張してしまう。

 横に居る炭治郎も、ここを訪れるのがまだ二度目だからなのか或いは前回に良い思い出が無いからなのか、とても緊張している様だった。

 しかも、今回は庭先では無くて室内に通されているのだ。中々に緊張する。

 まあ……流石に何か悪い事が起きるなんて事は無いと思うのだけれども……。

 それにしても、本来ならば柱ですら半年に一度の柱合会議の時位にしか直接顔を合わせる機会がほぼ無いらしいのに、半年どころか四ヶ月経つかどうかと言う期間の中でもう三度もお館様と顔を合わせていると言うのは中々に異例の事態であるのではないだろうかと思う。

 ……まあ、それだけ色々な事がその短くも無いが長くも無い期間の中で起こったと言えばそうなのだけれども。

 

 蝶屋敷に帰ったその日の夜。

 本当に鬼の活動が鎮まっているのか、誰にも任務が入る事も無く。なら今夜はもうそろそろ寝ようかと言う頃合いに。

 お館様からの使いの鎹鴉がやって来て、明日にでも詳しく話を聞きたいので産屋敷邸に来て欲しいと頼まれた。何故か、炭治郎も一緒に、と。

 いや、確かに縁壱さんの事に関しても珠世さんの事に関しても、炭治郎は当事者であるのだしそこから話を聞くと言うのは何も間違ってはいないのだけれども。

 しかし、二体もの上弦の鬼の討伐に関わり、しかも上弦の肆に至っては最終的にその『本体』の頸を落とした者であるとは言え。一応炭治郎は扱いとしては平隊士だ。その階級は今回の刀鍛冶の里の防衛の功績によって、柱以外では最も高い階級である「甲」にまで上がっているらしいのだけれども。

 尚、伊之助や善逸などもその階級は「甲」にまで上がっているそうだ。まあ、柱と協力していたとは言え、上弦の鬼を相手に五体満足に戦えてしかもその討伐に大いに貢献したとあってはそれも当然なのかもしれない。

 そして、自分に関してはどう扱われているのかに関しては物凄く曖昧な気がするけれど、一応柱では無い。

 手紙や報告書などは何度か送ってはいるけれど、まあそれだけと言えばそれだけなのだ。

 柱では無い者が二人も、それも柱の同席も無いままにお館様に謁見するなんて、相当珍しい状況なのではないだろうか……。鬼殺隊の歴史は詳しくはないので、憶測にはなるのだが。

 何であれ、呼ばれたのなら行くしかないのだけれども。

 

 と、そんな経緯でお館様が現れるのを炭治郎と二人で待っている訳なのだが。

 一応一般的な礼儀作法は知っているが、片やただの一般的な高校生、片や片田舎の山奥で炭焼きとして暮らしていた子供……。物凄く高貴な相手に対しての特殊な礼儀作法などには疎い。それもあって二人して緊張してしまう。

 此処まで連れて来てくれた隠の人たちも直ぐに何処かへと行ってしまったし、本当に今この場には炭治郎と自分しか居ない。

 

「縁壱さんの事について何かご存じだったのでしょうか。

 それとも……」

 

「……分からない。ただ、話を聞きたいとしか言われてないからな……」

 

 息を潜める様にそう訊ねて来た炭治郎に、正直よく分からないのだと首を横に振る。

 縁壱さんの事を知りたいのか、それともご存じであるらしい珠世さんの事を知りたいのか、或いはもっと別の事なのか。

 ……まあ、そもそもの話、あの夜の襲撃に関して詳しく知りたいと言う意味である可能性だってあるだろう。

 例えば半天狗の方の戦いに関しては最初から最後まで戦ったのは炭治郎と善逸と玄弥なのだし、玉壺やその後の黒死牟と猗窩座との戦いをより詳しく知りたいと言う事なのかもしれない。

 単純な戦闘の流れに関しては無一郎と煉獄さんの報告で充分だとは思うのだが、ペルソナの力などに関しては自分から直接聞いた方が早いのかもしれないし……。

 悪い事にはならないだろうが、取り敢えず珠世さんたちに何か害が及ぶ事だけは極力避けなければならない。

 

 と、そんな事を炭治郎と話していると。

 静かに襖が開いて、女性に手を引かれたお館様と、そしてその身体を支える様に両脇に控えたまだ幼い子供たちが入って来る。

 もしかしなくても、奥方様とそのご子息たち……なのだろう。

 同い年に見える子供たちはとてもよく似ている。五つ子なのだろうか……? 

 いや、そんな事よりも。どうかしなくても産屋敷家総出で自分たちの話を聞こうと言うのかと、お館様に頭を下げるのとほぼ同時に、瞬間的に炭治郎と「これ不味くないですか?」「不味いかも」とアイコンタクトを交わしてしまう。

 

「そんなに固くならなくても大丈夫だよ。

 普段の通りに楽にしておいて欲しい。

 悠、炭治郎。先ずは、よくやってくれた。

 上弦の鬼たちを相手に、よく里を守ってくれたね」

 

 目は相変わらずに見えていないのだろうけれど、此方が緊張しているのは伝わってしまっているのか。少し微笑む様にしてお館様はそう言う。

 いやまあ……そう言われても、完全に自然体になるのは難しい。が、そのお言葉には少し甘える事にして、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。

 

「ありがとうございます。しかし、俺の力だけではありません。

 あの場に居た全員の力です。

 そして……あの場に煉獄さんたちの救援が間に合う様に采配して下さったお館様の『先見の明』のお力によるものも大きいかと思います」

 

「悠さんの言う通りです。

 あの場に居た俺たちだけでは上弦の肆を倒す事は出来ませんでした。

 甘露寺さんと宇髄さんが助けに来てくれて、あの分身たちの相手をしてくれたから何とか助かっただけで……」

 

 そう答えると、お館様は「そうかい」と微笑む。

 本当にそうとしか言えない事だ。あの夜にあの場に居た誰が欠けていても、あの様な形で里を守る事は出来なかっただろうから。

 と、里の防衛に関しての質問に関してはまた後で、と言う事で。

 お館様は早速今回此処に呼び出した本題へと入る。

 

「さて……『継国縁壱』と言う剣士について、と言う話であったけれど。

 産屋敷家に伝わる手記などの中に確かにその記載があるね」

 

 そう言ってお館様は、鬼殺隊……正確には産屋敷家が把握している限りの『継国縁壱』に関わる事柄を教えてくれた。

 煉獄さんのご先祖様に当たる人の紹介で、鬼殺隊の前身となる鬼殺の剣士として鬼を狩る様になったらしい事。

 凄まじく剣才に溢れ、自身が「日の呼吸」を使う他にも、当時の鬼殺の剣士たちに『呼吸』の技術を伝え、指南役などとしてもとても力になってくれた事。

 縁壱さんに『呼吸』を教わった剣士たちは『始まりの剣士』と呼ばれ、今に続く鬼殺隊の基礎を作り上げていった事。

 そして、ある事を切欠に縁壱さんが鬼殺の剣士を辞めて行方知れずになった事。

 それから半世紀近くしてから、「日の呼吸」の関係者や縁壱さんの事を知る者たちが次々に鬼に襲撃されたり何らかの要因で命を落としていった事や、大規模な襲撃を受けて当時の鬼殺隊が壊滅しかけた事なども相俟って、『継国縁壱』の存在を知る者は、当時の剣士たちの手記などを保管していた産屋敷家の者たちだけになってしまった事などを教えてくれた。

 縁壱さんと親交があった人などの手記の現物を見せてくれながら教えてくれた、鬼殺隊側から見た縁壱さんの情報を聞いて、思わず何と言って良いのか分からなくなる。

 

 縁壱さんが鬼殺の剣士を追われた経緯は既に知っている。

 縁壱さんと直接親交があっただろう人たちの多くは、恐らくは「痣」の代償で若くして命を落としたのだろうと言う事も想像が付く。

 縁壱さんが鬼殺の剣士を辞めてから約半世紀後に、急にその痕跡を消し去るかの様に鬼の動きが活発になったのは……恐らくはその頃に縁壱さんが死んだ事を鬼舞辻無惨が知ったのだろう。そして、自分にとって脅威であった存在の痕跡を抹消する事で今後二度と同じ様な存在に怯えない様にとしたのだろう。

 ……しかしその所為で、『継国縁壱』と言う一人の人間が生きた痕跡は殆ど消されてしまったのだ。それは何とも哀しい事だと思う。

 まあ、数百年経った今も尚鬼殺隊を支え続けている『呼吸』などの技術そのものが、縁壱さんが確かにこの世に存在した証だと言われれば、それもそうなのだけれども。

 

 そして、『継国縁壱』に関して話し終えたお館様は。

「どうしてそれを知りたがったのかい?」と、少し底の読めない表情で尋ねてくる。

 慎重に答えなくては、とそう思いつつ。こちらのアイコンタクトに僅かに頷いた炭治郎は、竈門家と『継国縁壱』との不思議な縁について話し始めた。

 

「あの、実は……」

 

 そう前置きをして、竈門家に代々伝わって来た『ヒノカミ神楽』と耳飾りは、『継国縁壱』に命を助けて貰った竈門家の遠い先祖が、その縁で『継国縁壱』から託されたものであった事。

 そして竈門家の人間はその始まりの先祖の記憶を垣間見る事があり、自分もその夢を見た事。

『継国縁壱』に関しての彼自身の述懐によって、鬼舞辻無惨の事などに関して幾つか判明したものがある事などを、炭治郎は伝えた。

 

 鬼舞辻無惨に関する事、と言うその言葉に、その場に居た産屋敷家の全員の関心が一気に高まったのを感じる。

 千年掛けて追い続けていた相手の、文字通りに喉から手が出る程に欲していた情報なのだ。それを知りたがるのも当然である。

 

「夢を介して、か。不思議な事もあるものだね。

 だが、それで鬼舞辻無惨の事を知る事が出来ると言うのなら、それに勝るものは無い」

 

 情報源が炭治郎の見た『夢』であると言う事に関しては、お館様はあまりそれを不審には思わなかった様だ。

「そう言う不思議な事」と言うのは、何処にでも転がっているとまでは言わなくても、時折起きるものであるらしい。

 ある意味では未来視にも近い程のその「先見の明」だって「不思議な事」と言われればそうなのだし。「そう言う事」があってもそれを端から否定するつもりは無いそうだ。

 まあ、話が早くてとても助かる。

 非科学的、非現実的と懐疑的な目を向けられる事も覚悟していたのだが。よく考えなくても「鬼」なんて割と何でもありな存在と日々戦い続けているのだから、多少「不思議」な事でも「有り得ないなんて事はありえない」と言うスタンスなのかもしれない。

 

 お館様に促されて、炭治郎は『夢』で縁壱さんが語っていた鬼舞辻無惨との戦いについて説明する。

 ……しかし炭治郎の口からこれを聞くのは二度目なのだけれど、珠世さんから聞いた時の感じではまさに神業の剣術で鬼舞辻無惨を追い詰めた所を慮外の逃走手段によって後僅かの所で取り逃してしまった感じだったのに、縁壱さんの説明では普通に戦って普通に追い詰めたら逃げられてしまったと言う感じにしか聞こえない。

 何と言うのか、感覚の違いが凄いのか……。

 まあ何にせよ、「腕を自在に伸縮させて攻撃してくる」、「頸を斬っても死なない」、「心臓が七つ脳が五つ存在し、しかも身体中を絶えず移動している」、「追い詰められたら二千近い肉片になって弾け飛んででも逃げ出す」などを伝えられただけでも物凄く意義がある。

 まあ、本来なら此処に、珠世さんが教えてくれた「その攻撃の際に自分の血を撒き散らしている」などと言った情報も伝えられるのなら伝えたいけれど……。

 縁壱さんが余りにも凄過ぎて鬼舞辻無惨の攻撃を服に掠らせる事すら無かった為に、縁壱さんはそれに気付かなかった様だ。

 

 そして、鬼舞辻無惨に対して極めて有効であった『赫刀』と『透き通る世界』についても炭治郎は説明する。

『赫刀』に関しては現象自体は前からお館様に報告していたものだけれど、それに鬼に対してのある種の特効染みた力がある事は初耳だった様だ。

 

「無一郎と杏寿郎から報告されていたけれど、その『赫刀』には凄い力がある様だね。

 その条件が厳しいからか『継国縁壱』以外は今まで誰も知らなかった様だけれど、悠の力があればそれを発現させる事が出来るのだったかな?」

 

「ええ、恐らくは柱の皆さんの殆どがそれで『赫刀』に到達出来ると思います。

 また、『赫刀』に至る条件は一つだけではないのかもしれません」

 

 昨日しのぶさんたちにした説明をなぞる様にその考えを話すと、お館様は「成程」と頷く。

 

「鬼舞辻無惨の手の内を知る事が出来た事はとても大きい。

 それに。『赫刀』も、『透き通る世界』も。

 剣士(こども)たちがそれらの力を得る事が出来れば、無惨を討つ為の大きな力になる。

 悠、出来ればこれからも君の力を貸して貰えるだろうか」

 

 そう訊ねて来たお館様に、「勿論です」と頷いた。

 そもそも、「嫌です」と首を横に振る理由など何処にも無い。

 

 縁壱さんの話を介して、鬼舞辻無惨について話せる事の殆どは話せたので少し一息吐くと。今度は上弦の鬼たちとの戦いに関しての報告になった。

 とは言え、半天狗との戦いに関しては炭治郎たちが詳細な報告書を既に書き上げて提出しているので何か付け足す様な事は殆ど無いので、その内容の殆どは玉壺や黒死牟たちとの戦いに関してのペルソナの力を使った部分の報告が主だが。

 

 黒死牟たちの精神を一時的にしろ破壊した事や、黒死牟たちを回収しようとしたその隙を狙って例の根城を完全に消し飛ばした事、しかし恐らくはまだ黒死牟にしろ根城を作り出していた鬼にしろ生きていると考えた方が良い事。

 そして、鬼舞辻無惨が積極的に狙ってくる様に自分を囮にしたので、彼方側の立て直しが済み次第自分を標的に襲ってくるだろう事。

 それらを説明すると、横で聞いていた炭治郎が物凄く驚いた様な顔をした。

 はて……炭治郎には既に一通り話していたと思うのだけれど。

 

「黒死牟と猗窩座の心を一時的に壊したって言うのも物凄く気になりますけど。

 鬼舞辻無惨の根城を消し飛ばしたって、本当なんですか……!?」

 

 初耳なんですけど? と言わんばかりの顔をされて、あれ言ってなかったかな……と思わず首を傾げた。

 そう言えば、お館様に出した報告書以外ではしのぶさんたちに説明したのが初だった様な……。

 まあ、そう大きな問題では無いだろう、多分……。

 

「実際に消し飛ぶ光景を見た訳では無いけど……間違いなく消えている筈だ」

 

 まあ、実際に地上で使う訳にはいかない様な力なのだ。

 どうかしたら大きな街が丸々一つ地図から完全に消えてしまいかねない。

 炭治郎に「何と言って良いのか分からない」と言いたげな顔をされたが、後で謝っておこう。

 

「悠のお陰で随分とこちらも準備をする為の時間を稼げる様だ。

 ここ最近、鬼の被害がとても少なくなっている事は二人とも知っているかな?」

 

 お館様にそう言われて、療養中の隊士が減った蝶屋敷の様子を思い返して炭治郎と共に頷く。

 嵐の前の静けさみたいなものなのかもしれないが……鬼全体に何らかの動きがあるのは確かだ。

 

「上弦の鬼も肆以下が欠け、そしてその神出鬼没を支えていた異空間は悠によって破壊され、無惨は今とても追い詰められている事だろう。

 悠がその身を囮にしてくれた事で、悠を狙ってそう遠くない内に大規模な総力戦になる事が予測される。

 今も、我々の目に触れる事の無い様になっているだけで、水面下では恐らく無惨は何かしら動き続けているだろう。

 悠を、確実にその手に捕らえる為に。

 恐らく、大きな戦いは後半年もしない内に起きるだろうね」

 

 その予測は「先見の明」によるものなのかは分からないが。

 半年以内と言うその期間は、長いのか短いのかで言われると中々判断が難しいものである。

 だが、それが文字通りの決戦になる事は疑い様の無い事で。

 ならばこそ、出来る限りの備えをしなければならない。

 そう改めて意気込んでいると。

 

「さて、『青い彼岸花』についてなのだけれど。

 それは一体何なのかな?」

 

 突然振られたそれに、思わず微かに肩が跳ねてしまった。

 聞かれる可能性は十分にある事ではあったのだが、少し意識の外にあったと言うか……。

 

「それは……どうやら鬼舞辻無惨が長い間求めている物の一つであるらしいです。

 鬼舞辻無惨にとっては、『陽光を克服した鬼』に並ぶ程の重要なものであるのだとか……。

 正直、その『青い彼岸花』とやらが具体的に何なのか、そもそも今も存在しているのか、何故鬼舞辻無惨がそうも熱心に求めているのかは分かりません。

 ただ、それについて言及した際に、上弦の鬼たちの反応が明らかに変わりました。

 それを俺が知っている事、ハッタリですけど俺がそれを既に手にしている事を伝えると、激しく動揺している様で。

 恐らくは、それもあって鬼舞辻無惨は俺の事を狙ってくると思います」

 

『陽光を克服した鬼』になってしまった禰豆子ではなく、自分の事を、と。

 お館様に念押しして訴える様にそう伝える。

 鬼舞辻無惨が明確に標的にしているのは自分であって、禰豆子や炭治郎では無いのだ、と。

 

「……『陽光を克服した鬼』。

 炭治郎の妹の禰豆子がそうだったね」

 

「は、はい。ですが、恐らくはまだ鬼舞辻無惨はその事を知らないと思います。

 禰豆子が陽光を克服したその時には、周囲に鬼は全く存在していませんでしたし。

 それに、悠さんに助言して貰って、極力その事を隠す様にはしているので……」

 

 お館様の言葉に、炭治郎が少し緊張しつつ答える。

 非道な事はしないと思うのだが、如何せん『陽光を克服した鬼』である禰豆子が狙われ、更にはそれを奪われた際の被害は尋常なものではなくなる。

 万が一にも鬼舞辻無惨が陽光を克服した場合、無惨を殺し得るのは本当に自分の力だけになってしまうだろう。そして、そうなれば無惨が姿を消してしまう事も容易に想像出来る。

 お館様がその様な事をする事は無いとは思いたいが、安全の事を考えれば禰豆子を絶対に鬼舞辻無惨に見付からない何処かに人知れず幽閉してしまう方が、大多数の人々の安全を考えれば有益である事は確かなのだ。

 ……少しでもそのリスクを軽減する為にも、一日でも早く「鬼を人に戻す薬」が完成して欲しいものだ。

 禰豆子の為にも、炭治郎の為にも、そしてそれ以外の多くの人の為にも。

 

 ……ふと、その時。

「鬼を人に戻す薬」は鬼舞辻無惨自身にも有効なのだろうか? と考え付く。

 極論、鬼舞辻無惨と言う病原体の親玉から移された病原を排除する為の薬なのだ。

 鬼舞辻無惨自身にとっては、殺菌されるも同然の効果を発揮するのだろうか。それとも鬼舞辻無惨にも人間に戻す様に働くのだろうか。

 まあ、万が一鬼舞辻無惨自身には効かなくても、禰豆子と同様に鬼舞辻無惨によって鬼にされている筈の上弦の鬼たちには有効なのではないだろうか。

 多くの人々を喰らって人から大きく逸脱して行った上弦の鬼たちが果たして「人」に戻れるのかどうかはさておき。あの暴力的な力を少しでも削げるならそれに越した事は無い。

 それに相手に投与する「薬」と言う形でなら、万が一自分がその場に居る事が出来なくても力になれるだろう。

 切れる手札は一つでも多い方が良い。

 ……後で、珠世さんに相談してみようか。

 しかし、鬼殺隊の皆が出処不明の謎の「薬」を果たして使ってくれるのかと言う問題もある。

 どうしたものか……。

 

「そうか、それは良い判断だね。

『秘密』を守る為には、それを知る存在を極力少なくする事が一番だ。

 鬼舞辻無惨からも、そして鬼殺隊からも、長い年月の間隠れ続けている珠世さんの様に」

 

 珠世さんの名前が明確にお館様の口から出て来た事で、炭治郎と共に思わず固まってしまう。

 いや、珠世さんの存在を知っていると言うのは既に分かっているし、炭治郎が珠世さんと協力関係にあるだろう事も恐らくは推測されているとは分かっている。

 が、それをこうして明確に言葉にしたと言う事は……。

 

「……お館様は、珠世さんの存在をどう考えていらっしゃるのですか?」

 

 念の為に、お館様にそう訊ねる。

 利害の一致でお互いを利用しようとするのであれば、それはそれで良いだろう。

 お館様がそうである様に、珠世さんとて鬼舞辻無惨を殺す為ならば手段を選ばないだろうから。

 だがもし、明確に珠世さんたちを害そうとするのであれば、利用するだけ利用して「鬼」として殺そうとするのならば。

 それだけは、何としてでも阻止しなければならない。

 そんな事はしないだろうと、お館様たちの善性を信じたいけれど。

 相手を心から信じる事と、盲目的になって悪い事態を考えようともしない事は全く別なのだ。

 

 しかしそんな此方の疑念に、お館様は柔らかく微笑んだ。

 

「そう心配しなくても珠世さんの事は産屋敷家に代々伝わっているんだ。

『継国縁壱』が鬼殺の剣士から離れる際に、当時の当主に『何時か必ず鬼舞辻無惨を討つ力になってくれる鬼が存在する』事を教えてくれた。

 そして、その鬼の名が『珠世』であると言う事も。

 ……ただ、珠世さんはとても慎重で用意周到にその身を隠している様でね。

『継国縁壱』が去ってから数百年もの間、今までの産屋敷家の者たちは誰もその足取りを掴めなかったんだ。

 だから、炭治郎が珠世さんらしき鬼と接触した事を知った時、今この時代に鬼舞辻無惨を討ち滅ぼす為の千載一遇の好機が巡って来た事を確信した」

 

 縁壱さんが遠い昔に残したその言葉が、珠世さんと鬼殺隊との縁を結ぼうとしている事を悟り、思わず胸が苦しくなる程の様々な感情が溢れた。

 ……遠い昔にこの世を去った縁壱さん本人は、生きている間に本当に辛い事ばかりが押し寄せていて、その心が果たして救われたのかどうかすらも分からないけれど。

 しかし、縁壱さんが遺したもの、伝えたもの、繋いだもの、託したもの、信じたものが、物凄い勢いで結び付いて大きな流れになっている。

 ……それを本人に伝える術は無いのだけれど。

 遠い遠い昔にこの世を去った縁壱さんが、その今際にでも。

 遠い未来で自分がして来た事が……自分が生きて来た事の全てが『掛け替えの無い価値』を持った事を、そしてその先できっと果たされるだろう鬼舞辻無惨の存在しない夜明けを、夢でもいいから垣間見て欲しいと、そう想ってしまう。

 

 そして、お館様がそうまで言うのであれば、珠世さんを害する事は無いだろうとそう判断して。

 炭治郎と頷きあって、珠世さんの事を伝える。

 

「本当に偶然ではあったのですけど、浅草で鬼舞辻無惨と遭遇した際に珠世さんにも出逢ったんです。

 そして、禰豆子を人に戻す為に、『鬼を人に戻す薬』の為に珠世さんと協力する事になりました。

 その為に、鬼舞辻無惨の血の濃い鬼たち……十二鬼月の血を集める事になって……」

 

「炭治郎と禰豆子ちゃんの為に少しでも何かをしたいからと、そう願い出た所、炭治郎を介して珠世さんと出逢いました。

 それから、上弦の弐や上弦の陸、そして上弦の壱の血肉を集めた結果、『鬼を人に戻す薬』の完成がもう時間の問題であると言う状態にまでなったそうです」

 

『鬼を人に戻す』。

 未だ誰も成し遂げた事の無い……文字通りの前人未踏と言っても良いそれが、もう少しで叶うのかもしれないと言うのは、お館様たちにとっても驚くべき事であったのだろう。

 お館様はそれを自分の中で押さえ込んだが、ご子息様方は息を飲む様な音を僅かに零す。

 

「『鬼を人に』……。

 成程、珠世さんはそうやって無惨を……。

 ……悠、炭治郎。

 二人の目には、珠世さんはどう見えたかな?」

 

 珠世さんが、圧倒的に強者である『鬼』の鬼舞辻無惨を『人』に戻す……或いは戻そうとする事でその人外の力自体を剥ぎ取ってその息の根を止めようとしている事に瞬時に気付いたのだろうお館様は、溜息を零す様にそう呟いて。

 そして、珠世さんがどんな為人なのか……人に害を成す「悪鬼」であるのか、それとも手を取り合い協力する事の出来る「人」であるのかを、珠世さんに直接会った事のある自分たちに問い掛けた。

 

「珠世さんは、とても優しい人で……それに、とても哀しい匂いを何時も感じる人です。

 ずっと後悔している様な、『鬼』である事を苦しいと、そう感じている人でした。

 今は、ほんの少しの量の血を飲むだけで、それも人からちゃんとお金を出して貰っている、と。

 人を喰っている鬼の匂いは全くしません」

 

「……珠世さんは、縁壱さんと出逢った頃は『人喰い鬼』であったのでしょう。

 ……ですが、その事を何よりも深く悔やんでいるし、珠世さんが数百年間人を食べていない事は確かだと思います。

 ……犯した罪そのものは何百年経とうとも消える事は無いのかもしれませんが。その罪を正しく問える人は、もうこの世には存在しない事も揺るぎ無い事実です。そして、珠世さんは自分の罪を自分で背負い贖おうとする事が出来る人です。

 炭治郎の事も、禰豆子ちゃんの事も、心から心配して助けようとしてくれている。

 信頼するに値する『人』だと。俺はそう思います」

 

 炭治郎と共にそう答えると、お館様は静かに頷いた。

 

「そうか、二人のその言葉を信じよう。

 ……二人は、珠世さんと連絡を取る事は出来るかい?」

 

 茶々丸を介してなら連絡を取る事は出来るので、炭治郎と共に頷いた。

 愈史郎さんの血鬼術で姿を隠している都合上、産屋敷邸には身を隠して付いてくる事が出来なかっただろうから今も蝶屋敷の何処かに居ると思うので、この場には恐らく茶々丸は居ないが。

 その返事に満足した様にお館様は微笑んで頷き言葉を続けた。

 

 

「そうか、ならばこう伝えてくれないだろうか。

『鬼舞辻無惨を倒す為に協力しませんか?』

『産屋敷邸にいらして下さい』、と」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆




【鳴上悠】
「痣」と言い『彼岸朱眼』と言い、そうは言っていられなかった事情は心から分かるのだけれども、鬼殺隊の人たちはもっと自分の身体と命を大事にして欲しいとどうしても思ってしまうし、そういった犠牲を「仕方無い」で済ませたくはない。
「痣」の事は結局お館様にも伏せる事にした。
出来る事なら、このまま炭治郎以外の誰にも知られずにいたい。
お館様を完治させられるのはまだもう少し先の事。


【胡蝶しのぶ】
無惨の本拠地を吹き飛ばしたとサラッと言われてしまい反応に困ったけど、「まあ悠ならそう言う事も出来るのだろう」と最終的には流した。
自分が自爆特攻するのは別として、カナヲが『彼岸朱眼』で失明したりするのは出来る事なら避けたい。けどどうしようも無い時もあると言う事もよく分かっているので、悠程の拒否反応は示さない。
この後、蝶屋敷に滞在中の炭治郎から『透き通る世界』について説明して貰う事になるが、あまりの説明下手の所為で何も分からず思わず宇宙猫顔になった。


【栗花落カナヲ】
『彼岸朱眼』と『透き通る世界』は同じ様なものだろうか?と考えている。
必要に迫られれば躊躇なく『彼岸朱眼』を使う模様。
現状では無惨への殺意よりも、童磨への殺意の方が高い。
悠の事は、童磨の討伐を誓った同志だと思っている。しのぶ姉さんの事を大好きな者同士としての信頼が厚い。
この後、蝶屋敷に滞在中の炭治郎から『透き通る世界』について説明して貰う事になるが、あまりの説明下手の所為で何も分からず思わず宇宙猫顔になった。


【竈門炭治郎】
何かを教えるのが絶望的に下手くそ。説明に際して擬音以外の語彙が死んでいる。
普段の会話がマトモなだけに、そのギャップに全員が宇宙猫顔になる事に……。
もしやヒノカミ神楽が代々見取り稽古で伝わって来たのは、代々の継承者たちが教え下手だったからなのでは……?と悠にはぼんやりと思われている模様。
なお、その真実は今となっては確かめる術が無い。
そもそもその存在すら知らなかった無限城が、よく知らない内に消滅したらしいと聞いてどんな顔をするべきか分からなかった。


【竈門禰豆子】
陽光を克服したので日中もお兄ちゃんたちと過ごせる様になって嬉しい。
とは言え、あまりその事を周囲に知らせる訳にはいかないので、日中に出歩けるのは蝶屋敷の敷地内だけだが。
カナヲにシャボン玉を教えて貰った事から二人で縁側に座ってシャボン玉を作っている事も多く、炭治郎たちがそれをニコニコと見守っている事を当人たちだけが知らない。


【産屋敷耀哉】
悠と炭治郎から齎された情報の価値が凄過ぎて、穏やかな顔の裏では感情のジェットコースター状態だった。
珠世さんへの協力の要請に関してはちゃんと自分からも手紙を認めて炭治郎と悠に託すが、そもそも珠世さんからの信頼値が自分と炭治郎たちでは天と地なのは分かっているので、二人からも言って貰った方がスムーズに事が進むだろうとの目論見がある。
なお、悠の事は変な所から目を付けられない様に実は結構しっかりとガードしている。


【珠世】
悠からの「無惨の本拠地を消し飛ばしました」と言う手紙の内容に絶句する事になる。そして、その際の無残の痴態を想像して、とても良い笑顔になった。
それを見た愈史郎の珠世様観察日記が一気に二冊埋まる程の、それはもう素晴らしい笑顔だった。
もし目の前に無惨が居れば、「ざまぁwww」とばかりに、良い笑顔のまま煽り倒していたかもしれない。
まさかの産屋敷家への協力要請に物凄く驚くが、炭治郎と悠が大丈夫だと太鼓判を押すので最終的に了承する事に。


【蝶屋敷の皆】
悠の事は物凄く大好き。優しく賢くて気配りが上手で面倒見がとても良い、寧ろ大好きにならない方が難しい。
「お帰りなさい!」と声を掛けると何時もとても嬉しそうな顔をするので、誰が「お帰りなさい」と声を掛けるのかを何時も少し競争している。
それもあって、悠が刀鍛冶の里に滞在している間はちょっと寂しかった模様。
里のお土産は、しのぶとカナヲとも一緒になって皆で分け合った。


【童磨】
布教を開始。オタクによるオタクの為の布教活動なので、所謂新興宗教だとかカルト宗教だとかと違ってお布施やら帰依やらを求めない。民間の人たちも手が出しやすい。
そして本人のカリスマ的カウンセリング能力もフル活用。布教活動を始めたばかりなので今はまだ草の根活動レベルだが……。
余談ながら、丁度この頃は『心霊主義』などが人々の関心を強く集めた時代である。
なお、この当時「大本」が大正十年に世界が変わるなどと言ったある種の『終末論』を喧伝して(新聞の買収までした)、インテリ層など多数の社会階級から多くの信者を獲得しているなどと言った動きもあり、『終末論』的な思想は無視出来ない勢いで存在した様だ。ちなみに、「大本」は「神憑り」で多数の信者を獲得している。
また世界全体で見ると第一次世界大戦の真っ只中であり、非常に色々と人々の心は揺れ動いた時代だと言える。
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