ヒノカミ血風譚もswitchで遊べる事を考えると、switch一台で鬼滅の刃もペルソナ4も楽しめますね。
後はswitchにP4DとPQの移植が来ればもう思い残す事は無い……。
◆◆◆◆◆
無惨の襲撃によって凄惨な状態になり滅茶苦茶に壊されていた家が町の人たちの厚意によって綺麗な状態にされていたとは言え、生活を始める前に流石に多少の掃除は必要であった。
三郎爺さんか誰かが定期的に換気をしに来てくれていたのか、家の中が湿気などで傷んでいる様子は無かったが。それでもやっぱり多少の埃は積もっていたし、換気も必要であったし、掃き掃除に拭き掃除と皆で手分けする事になった。
とは言え、もっと大変な事になっている事を覚悟していた為、それに比べればずっと楽で。
とてもマメな悠さんは当然として、何だかんだと掃除はちゃんとする善逸もしっかりと手伝ってくれて。あまり掃除は得意ではない伊之助は、張り切って沢まで何度も往復して水を汲んできてくれた。
そして、そんな俺たちの様子をニコニコと見ていた禰豆子は、ちょっとした力仕事を張り切って手伝おうとしてくるのであった。
そんな風に皆で協力した結果、家中の大掃除は思っていた以上に早く終わった。とは言え、家に辿り着くまでにそこそこ時間が経っていた事からもう少しで日が暮れる時間になっていて。
その為、「青い彼岸花」探しは明日にする事にして、俺たちは夕食の準備や風呂の準備などを手分けして行った。
皆で賑やかにそうやって日々の事をこなしていると、何だか昔に戻った様な気がする。
ここに居るのは母さんや竹雄たちではないけれど、でも人の温かさが齎す賑やかさは何処か似ているのだ。
そうやって俺がしんみりとしているのを察したのか、善逸は何時も以上に傍に居ようとしてくれたしちょっと大袈裟なくらいに賑やかだった。それに伊之助も張り合う様に賑やかし。そしてそんな俺たちを悠さんは楽しそうにニコニコと微笑みながら見守っている。
それから皆で夕飯を食べて、寝る前に明日以降に向けての「作戦会議」をする事になった。
「雲取山を探すにしても、山中を虱潰しに探してたら何日あっても足りないだろうからな。
ちょっと、捜索範囲を絞ろうと思うんだ」
実にご尤もな事を言って悠さんはこの辺りの山の地形が描かれた地図を取り出す。
そして、家がある辺りに印を付けた。
「炭治郎がその真っ青な彼岸花らしきものを見たのは大体幾つ位の時の事なのかは分かるか?」
悠さんに言われ、うーんと腕組みをしつつその記憶を思い出そうとする。が、物珍しい真っ青な彼岸花の様なものが記憶に鮮やかに残っているだけで、それ以上の事は思い出せない。
だからこそ分かるものもあるが。
「多分ですけど……俺が相当に小さい時の事じゃないかなと思います」
そうでもなければ、青い彼岸花を見たと言うだけしか思い出せないのは少し変である。
もしそれがある程度成長した時の事なら、その記憶には必ずと言って良い程に禰豆子や竹雄たちの姿もあると思うのだ。
物心付いてからはそう言った珍しい物や綺麗なものの大半は、家族の皆で共有していたのだから。
そう言うと、悠さんは成る程と頷いた。
そして、幼い頃の俺の行動範囲はどの辺りまでだったのか? と訊ねて来る。
炭焼きを手伝える位の年頃になるまでは、俺の行動範囲はそう広くは無くて。
恐らくはこの範囲だろうと言う部分を地図上に指でなぞると、悠さんはそれよりも少し広い範囲を囲う様に印を付ける。
「取り敢えずはこの範囲内に『青い彼岸花』がないかどうか探してみよう。
ただ、もしも『青い彼岸花』の開花条件が難しいものだとすると、其処に在ったとしても今はまだ花を開いていないのかもしれない。
だから、青い花だけに注目するのではなく、何か見慣れないものがないかどうかも念頭に探すべきだと思う」
そう言って、悠さんは伊之助を見て「頼りにしてるぞ、伊之助親分」と微笑む。
山育ちの伊之助は、山の生き物や植物に詳しい。
それは悠さんの様なその植物の名前がどうだとかその生態がどうだとかとか言う形の知識ではないけれど、しかし実際の生活の中での経験に裏打ちされた知識の豊富さは、同じく山で育ってきた俺よりも遥かに上である。
それもあって、今回の『青い彼岸花』探しに抜擢されてもいるのだ。
そんな伊之助はと言うと、悠さんの言葉にそれはもう大層気を良くした様子で威勢よく鼻を鳴らす勢いで「親分に任せろ!」と腕を組んで威張る。頼られて嬉しいのだろう。
鬼殺隊に入るまであまり人と関わる事が無かった伊之助であるが、少し乱暴で融通が効かず猪突猛進ではあるが何だかんだと面倒見が良い一面もある。
俺たちはまだ鬼殺隊に入って日が浅い方なのでまだ後輩になる様な隊士は居ないのだけれど、伊之助は案外良い先輩隊士になるんじゃないだろうかとも思う。
まあ、無惨を倒す事さえ出来れば、そもそも鬼殺隊もお役御免となるので新たな隊士が入隊する事も無いだろうけれど。
「俺は『山の王』だからな!
山の事で俺に分からねぇ事は無ぇ!
俺に掛かればその『青いなんたら』だって直ぐに見付けてやるぜ!
さあ、俺を崇め讃えろ!!」
まだ何も見付けていないのだが既に見付けた様な気になってそう主張する伊之助に、悠さんはニコニコと微笑みながら「凄いぞ、流石は伊之助親分だな!」と声を掛けている。
それに更に気を良くした伊之助は、さっそく今から探しに行くか!とばかりに夜の山へと飛び出そうとして、「もう夜遅いでしょ!」と善逸に止められる。
鬼殺の任務で夜間に行動するのは慣れているから探そうと思えば探せなくはないが、鬼たちが千年もの間見付けられていない事を考えると夜には花を開かないものなのかもしれないから一旦日中に探そうと言う話になっていたのだ。
やる気満々になっている伊之助に、明日の朝から探そうと言い含めて。
そうして俺たちは皆で一緒に眠ったのであった。
そして翌朝。
朝ご飯を食べるなり、もう待ちきれないとばかりにソワソワしていた伊之助が勢い良く飛び出して行く。
「誰が一番最初に『青いなんたら』を見付けるか、勝負だからな!!」
止める間もなくあっと言う間に山の奥へと消えて行った伊之助を、善逸はちょっと呆気に取られた様に見送り、悠さんは本当に嬉しそうな目で見詰めていた。
そして、俺はと言うと「勝負」と言う言葉にふと以前の事を思い出して。
「『勝負』って。まるで、刀鍛冶の里での宝探しみたいだなあ」
あの時も、伊之助は「勝負だからな!」と張り切っていたのであった。
あの時探していた「里に代々伝わる秘密の武器」と言うのは、きっとあの縁壱零式と言う名の戦闘訓練用絡繰人形の事であったのだろうから、あの時の「宝探し」の勝者は俺と悠さんと言う事になるのだろうか? まあそれはどちらでも良いのだけれど。
そう言うと、悠さんは何処か楽しそうに頷いた。
「そうだな。まあ、変に気負わずに『宝探し』だって思って探す方が良いかもしれないな」
有るのだか無いのだか、それすらよく分からないものなのだ。
血眼になって探すよりは真剣に探しつつもそうやって心の余裕を持って探した方が良いだろう、と。そう悠さんは言う。
そうして、そんなこんなで皆で手分けして「青い彼岸花」を探す事になったのであった。
勝手知ったる雲取山であるとは言え、その中から特定の草花を探すと言うのは中々に難しい。
大体の地形とか、炭を作る為に適した樹がどの辺に生えているのだとか、或いは山菜などの食料になるものは何処に生えているのかだとかはよく知っているけれど。
たった一度、それも断片的な記憶に残る程度にしか目にした事の無いものを探し切れるかと言うと難しいものがある。
鼻は何時もの様に利いているけれど、どの匂いが「青い彼岸花」のものなのか全く分からないし、では嗅ぎ慣れない匂いを辿ればいいのかと言うとそうとは限らない。
その為、とにかく地道に地面を注視して何か見慣れないものがないかどうかと探していくしかなかった。
少しずつ秋色に色付こうとする山の木々を縫う様にして地に生えている草花を探しているのだが、今の所探した範囲内に真っ青な彼岸花も、それどころか何か見慣れないものというものも無い。
まあ、じっくり観察しながら進んでいるので、捜索出来た範囲はそう広いものでは無いのだけれど。
そんなこんなで気付けば既に昼は過ぎていて。
「青い彼岸花」の捜索は一旦中断となって、皆で一度家に戻った。
昼食の準備がてらに話を聞いた所、伊之助も善逸も悠さんもまだそれらしき物は見付けていないらしい。
捜索範囲は山全体から見ればかなり絞っているのだけれど、それでもやはり隅々まで探すとなると一朝一夕にこなす事は難しい。
そんな訳で、昼食を食べて少し休憩をしてから日没までまた捜索を再開する事になった。
休憩後、各自でまた別れるよりも前に、皆で一緒に山道を歩く。
その時ふと、よく見知ったこの場所での思い出がふと脳裏に蘇って、少しずつ足を止めてしまった。
それはほんの僅かな時間だったのだけれど、少し前を歩いていた善逸は何処か心配そうな顔をして振り返り、それとほぼ同時に振り返った悠さんが「どうした?」と訊ねてくる。
「いえ、大した事じゃないんですけど。
この道は、よく母さんと一緒に歩いた道だなと……そう思い出して……」
一番古い記憶は、寝入っている禰豆子を背負った母さんと手を繋いで家に帰った遠い日の事だ。
その時に母さんが歌っていた子守唄は、今でも忘れずに覚えている。
禰豆子が少し大きくなった頃には竹雄が、その次は花子が、その次は茂が、そして……今度は六太が、そうやって母さんの背でその子守唄を聞きながら家に帰った道だった。
俺も、もう記憶には残らない程の昔には、きっと同じ様にあやされながら背負われていたのだと思う。
もうあの温かく穏やかな日々は遠く、母さんが歌う子守唄を聴く事は二度と叶わないけれども。
しかしふと蘇ったその優しい思い出は、胸の奥をじんわりと温めてくれた。
「子守唄、か。そっか、炭治郎は母ちゃんにそうやって歌って貰えていたんだな……」
何処か、少し羨ましい様な……でもそれ以上に諦めている様な、そんな寂しい表情で善逸はそう零す。
物心付くよりもずっと前の時点で捨てられていたのだと言う善逸は、そうやって誰かから子守唄を歌って貰う様な事は無かったのだろう。
それを言うなら、猪に育てられたのだと言う伊之助もそうなのだけれど。
……二人の前で無思慮な話をしてしまったのだろうか、とそう少し思ったのだけど。
「炭治郎たちが何時もそれを聴いて育ってきた子守唄か……。
どんな歌なんだ? もし良かったら聴かせて欲しい」
悠さんは優しく微笑んでそう言った。
悠さんの言葉に、善逸と伊之助も興味があると言わんばかりの視線を向けてきた。
そう言えばあまり人前で歌う機会は無かったな、僅かに気恥しさはあるが、それはそれとして別に減るものでもないのだからと。ちょっと喉の調子を整えてから、記憶の中にあるその歌を歌った。
『こんこん小山の 子うさぎは
なぜにお目目が 赤うござる
小さい時に母様が
赤い木の実を 食べたゆえ
それでお目目が 赤うござる』
どうだっただろうか? と、自分としては満足のいく感じで歌い終えて、悠さんたちを見ると。
悠さんは何とも言えない顔をして、善逸はと言うと耳を押さえている。伊之助は、猪頭の下でキョトンとした顔をしている様だ。
「えっと……こんな歌だったんですけど、どうでした?」
「……炭治郎の歌声は、随分と個性的なんだな……。
しかし、『こんこん小山の』、か。
何処かで聞いた事のある子守唄だな……。確か、……」
歌自体への感想は少し控え目に曖昧に濁したが。
ふと、何かを思い出そうとする。
そして、少しして「ああ……」と小さく零した。
「炭治郎が歌ったその子守唄は、佐賀の子守唄だな。
ウサギが出て来る子守唄でも、『こんこん小山』で始まるのは確かそれだけだったし」
佐賀と言えば随分と遠い場所だ。
そこで歌われていると言う子守唄を此処で聞いて育ったと言うのも少し不思議な話である。
「まあ、もしかしたら炭治郎のお母さんがその子守唄を聞いて育ってきたのかもしれないし、遠方の子守唄を知ってても別にそう不思議なものではないんだろうな」
そう言って、悠さんは子守唄と一口に言っても地域によってそもそもの歌詞が大きく違ったり、或いは同じ様な歌詞でも少し違ったりしてその種類は本当に多種多様であるのだと教えてくれた。
例えば、と。悠さんが少しだけ歌ってくれた子守唄に善逸は聞き覚えがあったらしく、それに反応したりして。
悠さんはどんな子守唄を聞いて育ってきたのかと訊ねてみたら、「『ゆりかごの歌』とかかな」と、そう教えてくれる。
試しに歌って欲しいと頼んで歌って貰ったそれは、聞いた事が無いものであったけれど、とても優しい歌だなとそう素直に感じるものだった。
何時か自分に子供が生まれた時には、子うさぎの子守唄と一緒に歌ってやりたいなと思う。
その時、何時になく静かに悠さんが歌う子守唄を聞いていた伊之助が、ポツリと訊ねる。
「なあ、カミナリ。その『コモリウタ』ってやつに、『ゆびきりげんまん』っていうやつはあるのか?」
「ゆびきりげんまん……?
…………。
……いや、少なくとも俺が知っている『子守唄』の中には無いな」
とは言え、『子守唄』として世に知られているものでなくても子供をあやして寝かし付ける為に子守唄として歌われる歌は沢山あるだろうけれど、と。そう悠さんは伊之助に言う。
そして、どうしてそれが気になったのかと訊ねると、伊之助は自分自身でも戸惑っている様に言った。
「分かんねぇけど……。何処かで聞いた事がある気がするんだよな」
それは、伊之助にとって母親との記憶の欠片なのだろうか?
柱稽古の時に、一度互いの身の上話の様なものが話題になって。
その時に、伊之助は自分には『母親』なんて居ないとそう言い切っていた。
物心という物が付くよりも前に猪に育てられていたのだ。
確かに自分を産んだ誰かが居るのだとしても、きっと自分が不要になって捨てたのだろうと。そう伊之助は言っていたのだけれど。
伊之助が褌にして大切に肌身離さず持っているその布はかつては伊之助のおくるみであったのだと言うし、そしてそこにはちゃんと伊之助の名前と生まれた日が消えない様に縫い取られている事を知っている善逸は、きっと何か事情があったのだろうと言った。
本当に「要らない」から棄てたのならそもそも名前なんて付けないのだから、と。名前すら分からない状態で棄てられていた事をとても気にしている善逸だからこその視点なのだろう。
正直それに関して言えば、俺たちは裕福でこそ無かったものの家族仲はとても良かったし父さんも母さんも俺たちの事を心から愛してくれていたし、二人の様に親からの愛情を知らないと言う事は全く無くて。名前すら付けないで我が子を何処かに棄てると言うそれは、頭では理解していても感情的には納得するのは難しいし、ましてやそれに関して何か共感するというのも難しい事であった。
ただ、本当の所はどうであったにせよ。
要らないと捨てられる程に「愛されなかった」のだと思うよりは、きっと確かに愛されていたのだと、そう思っていても悪い事にはならないだろうと思うのだ。
真実を知る機会がこの先訪れないのだとしても、それが「真実」では無かったのだとしても。
もう変わる事の無い「過去」であり、そこにある真実は分からないのなら、自分自身を傷付ける様な想像を選ぶ必要は無いと思って、そうその時は伊之助に言ったのだった。
そして……。
「……伊之助のお母さんやお父さんは、まだ赤ちゃんだった伊之助が朧気にも覚えている位に、『ゆびきり』の歌を伊之助に歌っていたのかもしれないな」
どうして約束をする時の「ゆびきり」の歌だったのかは分からないけれど、でもきっとそこにあるものはとても温かくて優しいものだったと思う、と。そう悠さんは優しく言った。
どうしてそんなに大切にされていたのだろう伊之助が山で猪に育てられる事になったのかは分からず。
世の人の数だけそれぞれに事情があり、何か複雑な経緯があったのかもしれないけれど、とそう呟いて。
「『ゆびきりげんまん』って歌っているその声は、優しい声なのか?」
そう訊ねられて頷いた伊之助を見て、悠さんは益々優しい顔をする。
「そうか……。うん、きっとその歌を歌ってくれていた人は、伊之助の事を本当に大切に思っていたんだと思う」
もう記憶には断片程度にしか残っていないのだとしても、そうやって誰かに大切にされていた思い出は、今となってはどんなに遠い何時かの日々であったのだとしても、とても大切なものであるのだから、と。
そう悠さんは柔らかく微笑むのであった。
◆◆◆◆◆
「青い彼岸花」を探し始めてもう二日が経った。
しかし、未だそれらしきものは見付からない。
最初に区切った捜索範囲の大半は既に念入りに捜索し終わっているのだけれども。
あの記憶の断片にあった真っ青な彼岸花は何かを見間違えたものなのか、それとも何かの切っ掛けであれを最後に既に枯れ果ててしまっているのかもしれない。
何はともあれ、捜索範囲内を探し終えたら見付かる見付からないに拘わらず一旦捜索を切り上げる予定ではあるので、「青い彼岸花」探しも今日が最後なのだろう。
また改めて探す事になるかもしれなくても、無惨への対策に時間を割く方が今は優先すべき事なのだから。
そんな訳で、これが最後なのだからとより念入りに探していく。
そして……。
「なあこれ、何か変じゃねーか?」
伊之助が何かを見付けたのか、俺たちをそこに呼ぶ。
数日かけて大体の範囲を捜索した結果、今日は皆それぞれにかなり近い場所で「青い彼岸花」を探していたので、誰かが声を上げれば直ぐにそれに気付けるのだ。
伊之助の声に、俺と善逸と悠さんは直ぐにその場所に向かう。
そこにあったのは……。
「何だろう、これ。土筆か?」
それはまるで季節外れの土筆の様な物だった。
よく見る土筆に比べれば全体的に大きい気はするし、そもそも土筆の季節は春の中頃だ。
「土筆が秋に生える事はあるにはあるけど……。だが、これは本当に土筆か……?」
近くにスギナが生えていない……と。そう悠さんは考え込む様に言う。
どうやら、悠さんにもこの謎の植物の正体が分からないらしい。
とにかく、この植物の根の辺りを掘ってみよう、と言う事になって。
根を傷付けない様に慎重にその周りを掘っていく。
土を掻き分ける事暫し、見えてきたのは丸々とした根であった。
それを見た悠さんは、やっぱりこれは土筆では無いと断言して。
これが「青い彼岸花」であるのかどうかはともかく相当な希少種である可能性が高い為、念の為に採取しておこう。とそう提案する。
それに否を唱える必要など無くて、俺たちはその植物を球根ごと持ち帰る事にした。
結局その後も隅々まで探したのだけれど、真っ青な彼岸花どころか、謎の植物以外にはこれと言って何か珍しいものも見付からなかった。
成果としては、球根だけと言う結果に終わった。
まあ、駄目で元々と言う任務ではあったので、寧ろ一つでも持ち帰る事が出来る何かがあるだけマシなのかもしれないけれど。
何であれ、この球根を持ち帰ってしのぶさんたちに調べて貰うしかないのだろう。
明日の朝にはまた再び此処を発つという事で、最後の夜を皆でゆっくりと過ごす。
そして、そう広い訳では無い家の中で皆でくっ付く様にして眠る中、布団の中でうとうととしながらも、
禰豆子を人に戻して、無惨を倒して。
そうやって成すべき事を全部やり遂げたら、今度こそきっと心置き無くこの場所に帰って来れるのだし、そうすれば三郎爺さんや町の皆にもちゃんとお礼が言えるだろう。
そして、その時も。
こうしてまた、皆と此処に帰って来る事が出来たら良いな、と。そう思う。
そんな事を考えながらふと、今までは目の前の成すべき事に手一杯で「これからの事」を考える余裕なんて殆ど無かった事にも気が付く。
上弦の鬼や無惨の様な強大な存在と戦う中では、未来を惜しんだり或いは目の前の事以外に思考を割いている余裕なんて無かったのだし、未来を想って躊躇えばそれが命取りになる様な戦いばかりだったのだ。
禰豆子を守らねばならないからこそ、目の前の事に集中する必要があった。
それが、こうやって全ての戦いに決着が着いた先の事を考える余裕が生まれ、そしてそれを考える事を自然と自分に許している。
その変化は、やはりこうして一緒に戦ってくれる皆が居るからなのだろうか。
それとも……。
ぼんやりと考えながらも、徐々に意識は眠りの淵に引き摺り込まれて。
周りに自分以外の人間の温かさを感じながら、何時しか眠りの中に落ちているのであった。
◆◆◆◆◆
【竈門炭治郎】
その歌はある意味ではジャイアンリサイタルよりも酷い。
音程とリズムが激しく狂ってるので、耳がいい人程ダメージが大きい。
【嘴平伊之助】
実は記憶力は滅茶苦茶良い方。物心つく前の事も覚えている。
【我妻善逸】
耳が良いので炭治郎の歌のダメージがかなりきた。
【鳴上悠】
『ゆりかごの歌』は1921年に発表されたものなので、まだこの時点では世に存在していない。
【青い彼岸花】
球根を採取された影響で極めて繊細であった雲取山の個体群は全滅し、また採取された球根も余りにも水と土壌と温度の調整が難しいし為芽を出す事無く腐ってしまう。
結果として、この世から『青い彼岸花』は完全に喪われた。
伝承などにも残る事はなく、産屋敷家に残された断片的な記録と炭治郎たちの記憶の中にしかその存在を留める事は無い。
結果として、『青い彼岸花』に関連した様々な悲劇の可能性は摘み取られたと言っても良い。
何処かの未来では『青い彼岸花』を素に画期的な医薬品や治療法が開発されていたかもしれない為、悲劇以外にもそういった福音の可能性もが消え失せた事が果たして歓迎すべき事なのかは、この先の未来でも誰にも分からないのだろう。