殴りガンナーのボーダー活躍記 作:コウタロー
個人ランク戦の個人ブースでここに至るまでの経緯を思い返しながら、大きく溜め息を吐く久遠。
(どうしてこうなったかな……。てかあの人強引すぎるだろ、会って即バトルとかマンガじゃねえんだからさ)
二宮の有無を言わさない口調に思わず乗ってしまった久遠であったが、思い返せば彼のやり方は強引すぎて思わず逆に笑えて来る。
クツクツと小さく笑いながら、二宮から個人ランク戦の申し込みを承諾する。
しかし、今までほとんど手を伸ばさなかった個人戦のやり方を積むことが出来るし、これを通して今の自分の実力を知ることが出来ると考えればそう悪いものでもないかもしれない。久遠はそう考える。まあ、二宮がボーダートップクラスの実力者であるという見当違いがあるが。確実に最初に相手をする存在ではない。
「久しぶりの個人ランク戦。気張っていきますか!」
ブース内で一人声を張り上げ、気合を入れた久遠。その声と同時に転送が開始された。
『個人ランク戦。転送開始』
仮想空間内で相対した二宮と久遠の二人。二宮はいつものようにトリオンキューブを展開し、攻撃準備に入る。一方で久遠は右手に
「
先手を取ったのは二宮。トリオンキューブを四角錐状に六分割して久遠に向けて撃ち出した。
それを久遠は大きく横に跳ねることで回避する。見えるほどの速度の弾丸を躱すだけならなんてこともない。迫る弾丸を躱した久遠はお返しと言わんばかりにアサルトライフルの銃口を向け、弾丸をお見舞いする。
しかし、彼の弾丸は二宮の展開したシールドに阻まれる。
(シールドかってえな。それにトリオンキューブもデカいしかなりのトリオン量だな)
久遠は最初の攻防で二宮の技量を冷静に分析する。シールドの硬さを考えると十発、二十発では壊れないだろう。
「
二宮は今度は六十個ほどに細かく分割したアステロイドを撃ちだすが、これはシールドと横移動ですべて捌かれる。この二回で単純な攻撃では崩せないことを悟った彼は射手一位としての実力の片鱗を見せ始める。
「
ハウンドを分割し半分に分けると、片方を上に、もう片方をさらに二分割し久遠を挟み込むように撃ち出した。続いてアステロイドを細かく分割し、まっすぐに久遠に向かって撃ち出した。
射手特有の多角的な攻撃。これを防ぐべく久遠は体勢を低くするとシールドを広げ、まずは頭上から降り注ぐハウンドを、次に横からくるハウンドを防ぎ、二宮から飛んでくるアステロイドを横っ飛びしながら回避する。しかし、アステロイドのすべてを躱すことはできず、脇腹に一発掠ってしまう。
(すげえなこれ。多分両手使わせると防御以外できなくなるな)
脇腹から小さく漏れるトリオンを確認しながら、改めて二宮を見据えた久遠は移動しながらアサルトライフルの引き金を引く。しかし、いとも容易くといった感じで防がれ、返しのアステロイドを発射される。
単純な攻撃ではお互いに崩せない。となると崩しの経験と技量の高い二宮に現状分があることになる。
その違いが徐々に顕著になっていく。置き玉やハウンドを交えた多角的な攻撃を久遠は徐々に対処できなくなっていく。トリオンの漏れる傷が徐々に増えていき始め、久遠は防御に徹するしかなくなる。
そして
「「
大玉のアステロイドに食いつかれる。シールドをハウンドに使っており、足を削られている久遠では対処できない。彼のトリオン体は大きく損傷させられ、穴だらけになり爆散する。
ブース内のベットに投げ出された久遠は先ほどの戦いを思い返しながら思考を巡らせる。
先ほどの一戦で久遠は彼が並の隊員でないことを察する。トリオン量、戦術、トリオン操作、どれも高い水準でまとまっている。このままではこの十本勝負、すり潰され一本も取れないまま終わるだろう。
(これは……)
この後の戦いの方針を決めた久遠の身体が再び仮想空間に転送された。
「あら、東さん。こんなところで会うなんて珍しいわね」
「よう加古。ランク戦か?」
個人ランク戦のロビーのモニターを眺める東の背後から声がかかる。振り返るとそこには紫色の隊服を纏った女性が立っていた。彼女は加古望、A級六位部隊加古隊の隊長であり、東、二宮の元チームメイトである。
「あら、二宮君が個人戦してるのね。相手は……、誰かしら?」
「最近まで支部にいたやつだ。一応俺と同期だ」
「にしてはボロボロじゃない? 四本ストレート負けじゃない」
加古はモニターに表示されている戦績を眺めながらつぶやいた。現状、久遠は四本ストレートで取られてしまっており、彼が大したことないように見えるのも別に不思議ではない。
しかし、東は含みのある笑みを浮かべながら声を上げる。
「いや、そうでもないと思うぞ。この四本、内容は決して悪くなかった。それに……」
東の言葉が最後まで紡がれる前にモニターに新たな情報が追加された。二宮、久遠両者の対戦データに三角の情報が追加された。
本日五回目となるベットに沈み込む感触を得る久遠。
「よしよし、なんとなくわかってきたぞ」
ベットに寝転がったまま呟いた久遠。彼は今回まだ使わずにいた腰の拳銃に手を伸ばし小さく撫でた。
「さてさて。初陣だ。ジャンジャン行かせてもらうぜ」
彼の身体は本日累計六回目となる転送を経験するのだった。
再び相対する久遠と二宮。距離は三十メートルほど。
二宮はいつものようにトリオンキューブを展開する。しかし、久遠は違っていた。アサルトライフルではなく腰の左側に携えた拳銃を抜いた。二宮は初めて用いられる武器に警戒の色を露わにする。
しかし、やることは変わらない。シールドをいつでも展開できるように片手を開けながらアステロイドを撃つ。しかし、今までのようにシールドで防がれてしまう。
アステロイドを防いだと同時に、久遠が右手の拳銃を構えた。それを見てシールドを展開する準備をする二宮。最早お馴染みと言っていいほどのやり取りである。
それでも久遠は狙いをつけトリガーを引いた。その衝撃で拳銃が跳ね上がる。
撃ち出された弾丸はたったの一発。通常であればなんてことなくシールドで防がれるはずの弾丸。二宮もブースで見ていた者たちもそう考えていた。
しかし、撃ち出された一発の弾丸は二宮のシールドを突き破り、そのままの勢いで二宮のトリオン体に風穴を開けた。
何が起こったかわからないまま、爆散する二宮のトリオン体。一人仮想空間に佇む久遠は初めての勝利を噛み締めるのだった。
「よしよし、ジャンジャン行くか!」
結果として開幕十秒ほどの速攻。久遠の対戦データに勝利の丸がつくのだった。
次回、久遠くんの反撃が始まります。