殴りガンナーのボーダー活躍記   作:コウタロー

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第三話

「シールドが一発……。何かしらあのトリガー?」

 

 ボーダー随一のトリオン量を持つ二宮のシールドが一発で破られたという不可思議な状況に加古が驚きの声を上げる。彼女と同じことを周りも考えているらしく、ロビーがざわつき始める。

 

 ただでさえ、二宮のランク戦ということもあり、観客が集まってきているのだ。ざわつきは大きくなる一方である。

 

「東さん、わかるかしら?」

 

 加古が東に問いかける。

 

「まあ、なんとなくあいつのトリガーのことは知ってるが……。ここで言っても面白くないだろうし言わないでおこう。それより七本目が始めるぞ」

 

 二宮と久遠の七本目が始まる。先ほどの謎のトリガーが脳裏に残る二宮は右の拳銃を使わせないためにトリオンキューブを展開し、攻撃に移る。同時に移動をし、的を絞らせない。珍しく、移動砲台のような戦いではなく、機動力を使った戦い方である。

 

 しかし、久遠も先の六本とは戦い方を大きく変えてきた。左の拳銃を抜きながら、機動力を生かして間合いを詰めながら銃口を向ける。これが本来の彼の戦い方、機動力で間合いを詰めながら近い間合いで戦うのが彼のスタイルであった。

 

 高い機動力で二宮との間合いを詰めながらトリガーを引く久遠。二宮も躱そうとするが、久遠は精密な射撃で足と胴体を交互に狙ってくる。彼の射撃精度も併せてシールドでは守り切れなかった足が少しずつ削られていく。

 

 二宮の足が削られ機動力が失われたところで久遠は右の拳銃も抜き放つ。

 

 その瞬間、二宮は右手でハウンド、左手でアステロイドを起動した。フルアタックが来ると判断しての行動であった。それに機動力を失い、防御手段がシールドになった今、黙っていれば先ほどの謎のトリガーでシールドを破られる。そう考え最後の落とせるチャンスだと判断したが故の行動であった。

 

 しかし、両手の拳銃は囮であった。迫りくるハウンドを両防御(フルガード)で阻みながら建物の陰に隠れアステロイドから逃れる。

 

 建物の陰に隠れ視界から消えた久遠を炙り出すため、二宮はレーダー頼りでハウンドを発射する。しかし、それは建物を破壊しただけで手ごたえを得られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コネクター、オン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、建物だったものが瓦礫となって崩れ砂煙を上げる中、微かに二宮の耳に無機質な機械的な音声が届いた。コネクター。玉狛が開発している試作品のトリガーだと名前は聞いたことがあるが、なぜその音声が今響くのだろうか。

 

 二宮が考えていると、彼が破壊した建物の二つ隣の建物から巨大な弾丸が飛来した。拳銃の十倍ほどの大きさの弾丸が瓦礫を削り取りながら迫ってきていた。瓦礫をものともせずに迫りくる弾丸は、両手のシールドを使っても防げるものでもなく、二宮のトリオン体は上半身すべてが削り取られ力なく倒れ伏し爆散した。

 

 続く八本目、九本目は完全に久遠のペースとなった。ただでさえ、謎のトリガーで思考を割かれる中、久遠の狙撃が非常に正確で足を削られ、シールドを使わされる状況に持ち込まれる。そうなるとあの謎のトリガーでシールドを破られてしまう。

 

 二宮も同じ状況を作り出そうとしても、機動力と硬いシールドで攻撃が捌かれてしまう。なかなか詰め切れずに先にペースを握られてしまう。 

 

 二人の戦績は四勝四敗一分けの引き分けであり、最後の十本目で二人の勝負が決まるところまで来ていた。

 

 最後の十本目、二人は最後の一戦を交えるため相対した。

 

 二宮は相対すると同時に、速度重視の細かく割った弾丸を久遠に向けた。謎のトリガーで攻撃をさせないための攻撃、目的通りに久遠はシールドで対処する。

 

(奴の拳銃の弾丸、おそらく徹甲弾(ギムレット)だろう)

 

 二宮はこの戦いの中で彼の謎のトリガーの正体を掴んでいた。彼の拳銃から放たれている弾丸は徹甲弾(ギムレット)、貫通力の高まった、本来合成弾という射手でしか使えない弾丸であった。

 

 しかし、それしか打てなくなるというデメリットを持つ代わりに、設定さえしてしまえば銃器でも合成弾を打つことが出来る。彼はその特性を生かして徹甲弾(ギムレット)を打っているのだろう。

 

 それを踏まえての二宮の結論は『久遠に攻撃させてはいけない』というものであった。彼に攻撃させると射撃の精度も併せて守勢に回らされる。それを防ぐには攻撃を仕掛け、彼に攻撃の隙を与えないというもの。攻撃は最大の防御という言葉を体現したものであった。

 

 速度、威力、弾種を変え、緩急を付けながら久遠に攻撃を続ける二宮。その苛烈な攻撃は久遠に攻撃の隙を与えない。それと同時に彼は周囲の建物を破壊していた。久遠は建物越しであっても攻撃することが出来る。それを考えると、建物に隠れさせるわけにもいかないのだ。

 

 並大抵の隊員であれば攻撃が三周するする前に押しつぶされるであろう攻撃の嵐を両手のシールドと位置取りで捌き続ける久遠。しかし、モニターを見る観客たちにはこのまま二宮が押しつぶすかのように見えていた。

 

 しかし、久遠はそれを許さない。彼に勝利を譲るなどという選択肢はなかった。

 

 弾丸を捌く久遠の右手が思わせぶりに左の拳銃に手を伸ばした。その一瞬、二宮の動きが止まった。その一瞬を彼は見逃さない。拳銃を掴むと見せかけ空を切った右手でアサルトライフルを構えると銃口を二宮に向け、弾丸を撃ち始めた。

 

 しかし、これはただのアステロイドであることが分かっている。よって、安心してシールドで防ぐことが出来る。二宮はシールドでアステロイドを阻みながら、残ったもう片方で攻撃を繰り出す。それでも構うことなく久遠はアサルトライフルのトリガーを引き続けた。

 

 お互いの攻撃を防ぎながら、攻撃を加え続ける二人。さすがに両手を使えていた時よりも密度は少ないが、それでもトリオン量的に当たれば手痛いダメージになるのは変わり様がない。

 

 三十秒ほど打ち合っていただろうか。二宮の殺到する弾丸に変化が生じる。今までシールドにあたっていたはずの弾丸の一部が手前で曲がると背中に回る。突然背後に回った弾丸を二宮は辛うじてシールドを広げ身体を囲うようにしたことで対処する。

 

変化弾(バイパー)か)

 

 弾丸の曲がり方からアサルトライフルの見せていなかったもう一つの弾丸がバイパーだと二宮は推察した。これで久遠のトリガー構成はすべて明かされたことになる。

 

 バイパーを動揺しながら対処した彼の対応力はさすがは個人ランク戦二位の実力者である。しかし、実はこの瞬間、この勝負は決まっていたのだ。

 

 バイパーを対処したその時、二宮の攻撃が左右ともに一瞬止んだ。その瞬間、久遠は左の拳銃を抜き放ち、二宮に銃口を向けた。身体に囲うようにして張られたシールド。その耐久力は広げる前より低い。左の拳銃はもう片方の拳銃ほど威力に振っていないが、それでもシールドを割るには充分である。

 

 彼の狙いを察した二宮は、慌てて攻撃を中断。両防御(フルガード)に入ろうするが、久遠の指がトリガーを引くほうが速かった。

 

 拳銃から撃ち出された弾丸は薄く広げられたシールドに罅を入れ破壊する。アサルトライフルの銃口から飛んだアステロイドが彼の身体に届く前にもう片方のシールドが間一髪のところで間に入るが、背後に回ったバイパーが彼のトリオン供給器官を破壊した。

 

 一瞬の躊躇いからシールドを広げさせ、ギムレットで割り、弾丸の雨でとどめを刺す。一連の攻防が久遠の手の内であったことを二宮は察し、彼は悔しそうに顔を歪める。それと同時に二宮のトリオン体が爆散し、仮想空間内に機械音声が鳴り響いた。

 

『トリオン供給機関破壊。二宮、緊急脱出(ベイルアウト)。十本勝負終了。勝者、久遠綾仁』

 

 それは久遠のランク戦勝利を告げるものであった。

 

 





 というわけで久遠くんの勝利です。強すぎですね。ナンバー2を初見突破ですよ。

 取り合えず、彼のトリガーセットを乗せておきます。

   主(メイン)トリガー         副(サブ)トリガー
 拳銃(ギムレット)威力高め射程短め 拳銃(ギムレット)射程長め連射性高め 
 突撃銃(アステロイド)       コネクター(試作)
 突撃銃(バイパー)         バッグワーム
 シールド              シールド

 銃器三丁の銃撃特化の構成になっています。機動力は自分の足で稼ぎます。

 ところで彼の二丁拳銃にはモチーフがあります。わかった人は私といい酒が飲めます。ヒントは拳銃の一丁が威力高めというのと拳銃を合体させるということです。

 それでは今回はここまで。次回またお会いしましょう。


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