もと大どろぼうホッツェンプロッツ四たびあらわる 作:へびのあし
カスパールがはなして聞かせた意見に、みんなはだいさんせいしました。
とりあえず、みんなのおなかはペコペコです。今夜はいったんかえって、また明日のあさに集合することになりました。
夕ぐれです。なかよし二人はおばあさんと、家にむかってのんびり歩いていました。
「野外劇場か……なかなかいい案じゃないか。」
とゼッペルがカスパールにむかって陽気にはなしかけました。黄金色のくもが、みんなの顔をてらしかがやいています。カスパールは、とくいげに返事をしました。
「そうだろうな! エリーとヴァラ・リーナによる森のダンス鑑賞会——ただし、食べもの持参不要!これいじょういい案は、世界中さがしても見つからないにきまってるさ。」
そうして、カスパールはひとつつけくわえました。
「——まあ、これにはヒントがあったんだ。ほら、バスティが虫の音楽会やってただろう?…だけど本物の野外劇場にはなんてったって、食べものがいるからな。特別上等のサンドウィッチをつくる、プロのコックもね!」
カスパールは、赤いとんがりぼうしを得意げにおしあげました。万事順調です。ホッツェンプロッツはもちろん、“協力する“ と以前にやくそくしていたエリーはこころよくその役目をひきうけ、ヴァラ・リーナも大きくうなずくかのようにひとっとびして見せました。
…しかしここで、おばあさんがしんぱいそうに口をひらきました。
「だけど、町のみんなはしょうちするかしら?」とおばあさんは言いました。
「たとえホッツェンプロッツが世界中で一番うでのいいの料理人だったとしても、あいつの顔をみたら二度ときてくれないかもしれないわ!」
まさか!そうなったらたいへんです。今回のダンス鑑賞会は、森の料理店〈どろぼうのねじろ亭〉の宣伝なのですから。
——でも、たしかにおばあさんの言うとおりかもしれません。ホッツェンプロッツの料理を食べてなお、この料理店にいくのをがまんできるだけの強力な怨みをお客さんたちがもっていたなら…?
「ふーむ。かんたんにはいかないな!」と言ってカスパールは腕くみをしました。「どうも、人生はむずかしい!」
「なあに、大丈夫さ。」とゼッペルがあいぼうの肩をたたきました。「ぼくたちはただ、大量の紙と、ペンと、たてふだにつかう木の板を、用意すればいいのさ。」
カスパールとおばあさんはまったく意味がわかりません。そこでカスパールが代表して「どういうことだい?」と聞きました。
「”どろぼう相談対策本部“ をおくんだ。…うん、これいじょうない簡単な話さ。」とゼッペルは答えました。
「つまり、ぬすまれたものは返せばいいだろう?町中の人にじぶんがぬすまれたものを教えてもらって、紙にかいておく。それを見て、順番にもとの持ち主に返していけば万事解決じゃないか!」
この説明によって、カスパールとおばあさんもじゅうぶんに理解しました。
「よし、それで行こう!明日はねぼう厳禁だな!——でも今は、ただ火曜日こうれいのジャガイモスープが待ち遠しいのみだ、と言えるよ。」
三人は家に帰ると、おばあさんのつくったジャガイモスープをどっさり食べました。とくに、朝食のあと一日中なにも口にしていなかったカスパールとゼッペルはおなかがペコペコで、スープをひとり六杯ずつたいらげました。
そのよく日。
カスパールとゼッペルはいつもより二時間も早おきをして、さっそく準備にとりかかりました。
まずは、地下室からふるいジャガイモ箱をとってきて、バラバラにこわしました。ちょうどいい大きさの板ができたら、そこにカスパールが赤い絵の具をたっぷりとつけた筆で、“どろぼう相談対策本部——ホッツェンプロッツ被害者のみなさま“ とかきあげました。そしてほそながい板きれを一本、ゼッペルが釘で打ちつければ、あっという間にたてふだの完成です。
そのあと二人は、家中にあるありったけの紙を集めて束にしました。それから、ありったけのペンもです。二人はりょううでにあふれんばかり、やまほどの紙やペンをかかえ、ラズベリージャムのようにまっ赤になって息をきらしながら、やっとのことで荷車へつみこみました。
「これでよし。」
ひとしごとおわって地面にへたりこんだゼッペルに、カスパールは「なにを言ってるんだい?」とあきれて言いました。
「ぼくたちのじゅんびは、これからじゃないか。」
そうでした。今日のめだまは、“エリーとヴァラ・リーナによる森のダンス鑑賞会“ なのです。二人は、さっき用意した紙の束の一番うえの一枚をとりあげると、ダンス鑑賞会の場所、時間、そして女の子と馬が手をつないでおどっているさし絵をかきました。そしていそいで村の掲示板にはしっていって、一番目立つところへはりだしました。
「これで、OKだな。ホッツェンプロッツもいまごろは、料理のじゅんびでいそがしいにちがいない。」
カスパールが言ったとおり、ホッツェンプロッツは夜中の二時からおきて、おおいに張りきって準備をしていたのです。そのしょうこに、森の木々の間からたちのぼるえんとつのけむりがひとすじ、カスパールとゼッペルからも見えるのでした。ソーセージやつけもの、パンやスープのよい匂いが、まちのすみずみまでただよってくるような気がして、二人のなかよしは非常に元気づけられました。
「さあ、最高の一日をつくろうじゃないか!」
物語も終盤です。
“どろぼう相談対策本部” の立て札にふるいジャガイモ箱をつかったのは、原作第一巻の “黄金注意” の場面を参考にしていますね。おばあさんの家の地下室は、じゃがいもの天国! …こういう小さな場面で、ドイツの食文化が輝いていたり。