もと大どろぼうホッツェンプロッツ四たびあらわる   作:へびのあし

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だれも食べたがらないんだ

 

 

 

カスパールと友だちのゼッペルは、なかよくかごを一つずつぶら下げて森を歩いていました。かごの中身は、おばあさんの家の庭でとれた野菜です。カブやネギにまじって、外がわはスイスチーズ、中のほうは酢づけのニシン巻きの味がする特別なカボチャもはいっていました。これは先日、森の料理店〈どろぼうのねじろ亭〉を開店したばかりのホッツェンプロッツへ、おばあさんと二人のなかよしからのささやかなおうえんの気持ちなのです。

 

「ホッツェンプロッツのおじさんは、野菜料理がつくれるのかな?」

とゼッペルがふと疑問に思っていいました。

 

「決まってるさ!」

とカスパールはいいました。

 

「菜食主義犬のバスティが気にいる料理を開発してやるぞって、ずいぶん意気込んでいたじゃないか——だからきっとすぐにうまいものを考えつくよ!だってあいつは、あんなおいしいどろぼう料理をふるまえるんだもの。」

 

そうして二人がなかよく森の料理店〈どろぼうのねじろ亭〉のドアをたたいたころには、すっかりゆかいな気分になっていました。なぜって、ホッツェンプロッツが店を開いてからというもの、正式なお客さんとして———つまり、きちんとお金をはらって料理をいただこうというのは初めてなのですから。開店お祝いに一度、シュロッターベック夫人やおばあさん、ディンペルモーザー警部といっしょに招待されたきりなのです。

二人はせすじをしっかりのばし、なかば緊張ぎみに戸をたたきました。

 

 

「こんにちは、ホッツェンプロッツさん!」

「おばあさんから野菜の差し入れですよ!」

 

すると木の戸がばたりと開いて、大きなかぎ鼻のホッツェンプロッツがにゅっと顔を出しました。ホッツェンプロッツは薄黄緑色のぐるぐる模様のスカーフと赤いチョッキ、真っ黒なサングラスにピンクのエプロンといったいでたちでした。頭には、もちろんコック帽をかぶっています。

 

「やあやあ、いらっしゃいませ。」

 

陽気な声かけです。料理店の店長は、あいさつにも磨きをかける必要があるということを、ホッツェンプロッツはよくわかっているのです。しかし二人の小さな友だちを迎えたばかりにしては、少々声に元気がないようでした。

 

「どうかしたのですか、ホッツェンプロッツさん?」

とカスパールがたずねました。

 

「もしかしてお店が忙しくて、あなたがいやがっていた“重労働“ というものになっちゃったんですか?」

 

しかしホッツェンプロッツは悲しそうに首をふって言いました。

 

「その逆だよ。だれもお客が来ないんだ。——ただの一人も、だ。」

 

「そんな!」とカスパールとゼッペルは驚きで手を打ち鳴らしました。

 

「あなたの料理は世界一おいしいのに!カスパールのおばあさんのザワークラウトや焼きソーセージ、生クリームたっぷりのプラムケーキにもまさる味を、だれも食べにこないんですか?」

 

「その通りだ。」

とホッツェンプロッツは、まるで大切な木の実をなくした野ネズミのように打ちひしがれた顔で言いました。

 

「どうやら、どろぼうの料理をだれも食べたがらないようなんだ。たとえ、“元“ どろぼうであってもだ。」

 

ふーむと二人のなかよしはうなりました。

これは、たいへん難しいもんだいです。なぜなら、起こってしまった出来事は変えられないのですから。ホッツェンプロッツがどろぼうであったということは、まぎれもない事実なのです。

 

「まずは、」としばらく考えたあとでカスパールが言いました。

 

「まずはホッツェンプロッツさんがいい人間になったということを、町中の人が知るべきです。それから、料理の腕が特別すばらしい、ということもです。」

 

「…でも、いったいどうやって?」

 

ホッツェンプロッツが心配そうに聞きました。

 

「なにも心配は入りませんよ!」と、カスパールと目くばせをしたゼッペルが胸をはって言いました。

 

「なにか方法があるはずなんです。ぼくたちが、それを見つけ出してみせますよ。なに、ぼくらはあなたを二度もつかまえて、それから一度などは無実を証明することに成功したんです。———それがなにより、信頼できる証拠でしょう?」

 

「…そうであることを、願っているよ。」

 

ホッツェンプロッツはものすごいかぎ鼻がなんだかちいさくしぼんだような表情で、ふかくためいきをついて言いました。

 

 

 

 





ただ料理店を開いただけで、ハッピーエンドにはさせない…ホッツェンプロッツの苦難はまだまだ続くはず!
そういうわけで、ホッツェンプロッツ第四弾です。

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