もと大どろぼうホッツェンプロッツ四たびあらわる 作:へびのあし
そろそろ、木々の葉っぱは赤や黄色にそまってきました。ブナの葉っぱもひらひらとダンスして、モース川の水はまるで火が燃えだしたかのようにまっ赤なのでした。
さて、カスパールとゼッペルはとにもかくにも、お昼ごはんをごちそうになろうと思いました。そのために、朝ごはんは少ししか食べていないのです。ホッツェンプロッツの悩みのたねを解決するのは、ぐうぐう鳴ってきたおなかをみたしてからでも構わないでしょう。それには、ホッツェンプロッツもさんせいしました。
「よし、今日はとくべつ料理がしこんであるんだ!」
とホッツェンプロッツははりきっていいました。
「メニューは、ニンニクときのことベーコンの———おや、なにか聞こえないか?」
カスパールとゼッペルは、ホッツェンプロッツといっしょに耳をすませました。…すると、聞こえたのです。この世界に笑うすずがあったら、きっとこんなふうな音を出すだろうな、というような声。まちがいなく、それは小さな女の子の歌声なのでした。はじめはかすかだったそれはだんだん大きくなって、ついにエニシダのしげみのかげから姿をあらわしました。
「ラララ、楽しいな!ララ、うれしいな…あらこんにちは。」
とびはねながらかけてきた女の子が、ほおをまっ赤に蒸気させてそう言いました。小さな頭に、大きな赤いリボンがおおいかぶさって耳まで垂れています。ほそい手足をおりたたむように、つま先立ちでおじぎをするのです。
「やあ。きみはだれだい?…もしかして、森の料理店にきたのかい?」
カスパールが息せききってたずねました。
もしも料理を食べにきたのなら、一大事です。お客さんならば、ホッツェンプロッツの悩みはたった今このしゅんかんに解決なのですから。
しかし女の子は首を傾げていいました。
「わたしね、エリーっていうの。バレエのれんしゅうのために森でおどってたらね、いつの間にかここにきてたのよ。…どろぼうの料理店にきたつもりはなかったわ。」
エリーの最後の言葉を聞いたとたん、カスパールがふんがいして言いました。
「ホッツェンプロッツのおじさんは、もうどろぼうじゃないんだぞ!」
「どろぼうよ!」
とエリーは強く言いました。
「おかあさんは、“わるいことをした人は心もわるくなる“ って言ってたわ。ホッツェンプロッツはわるい人よ!——それにまだ、わたしからぬすんだものを返してもらってないわ。」
そこで、カスパールとゼッペルは顔を見合わせました。
「ホッツェンプロッツは、エリーから何をとったんだ?」
ゼッペルが聞くと、エリーは黒い木靴でトンと地面をけってふわりと一回転してポーズをきめ、手をこしに当ててからいいました。
「わたしの大切なポニー、ヴァラ・リーナよ。」
どろぼうの被害者は、まさかカスパールのおばあさんだけじゃないはず。
そういうわけで第一話です。
平仮名が多いのは、原作に近づけるためですのでご了承ください。