もと大どろぼうホッツェンプロッツ四たびあらわる 作:へびのあし
カスパールとゼッペルは、ふるい石の十字架の横を通りすぎ、エニシダのしげみを抜けて、森のはずれへ歩いてきていました。けっきょく二人は〈どろぼうのねじろ亭〉のおいしい昼ごはんをのがしたのです。ホッツェンプロッツがしょげきってしまって、まともに料理をつくれる状態ではなかったのですから。とりあえず、ホッツェンプロッツが落ちついたころにもどってきたら、また、ポニー強盗事件のくわしい話を聞こうということになりました。
「ひとまず、エリーに会いにいくべきだよ。」
とゼッペルは主張しました。
「どうにかして、ポニーをとりかえさなくちゃ。そのために、そのバラ・ダラータとかいうポニーのやつの特徴をおしえてもらうんだ。どんな見た目で、どんな食べものがすきか、とかな。」
カスパールはしばらくむずかしい顔で考えていましたが、やがてゆっくりとうなずきました。
「まったく、きみの言うとおりだな。灰色のクマネズミが大好物だとか、毎朝5時きっかりにコケコッコーとなくポニーだとかなら、きっとすぐに————大してさがす手間なく見つかるだろうからな。」
そういうわけで、二人のなかよしは小道をはずれて古い道路を歩きはじめました。…なぜかって?それは、とてもかんたんな話です。エリーがバレエを踊れるということは、先生がいるはずです。そしてこの町でバレエの先生といったら、たった一人しかいないのですから。
「クリューガーさんのバレエ教室は、たしか教会の近くだったよな?」
「ああ、もうすぐだな。たった今カエルの形の古井戸をすぎたから次は農場があって———まてよゼッペル。あそこにいるのは、エリーじゃないか?」
とつぜんカスパールが立ちどまったので、ゼッペルは顔のまんなかを思い切りカスパールの背中にぶつけました。ゼッペルは鼻をさすりながらなみだ目でわめきたてようとしたのですが、向こうを見てすぐにその考えをあらためました。
さくの奥の草地には、たくさんのウシにかこまれてきゃっきゃと笑い声をあげるエリーがいたのです。カスパールとゼッペルが手をふって合図をすると、エリーはすぐに気がつきました。ほっぺたに泥をくっつけたエリーは少しためらったようすを見せましたが、とうとうこころを決め、手でまねいて二人を中へ呼びました。
「おっどろいたなあ!」
とゼッペルは言いました。
「きみがこの農場の子どもだったなんて!ぜんぜん知らなかったよ。」
「ええ。」とエリーははずかしそうに言いました。
「だからね、わたしの四さいの時の誕生日プレゼントはポニーだったのよ。大好きなヴァラ・リーナ!…ね、わたしがポニーをもっていたわけも、今はっきりわかったでしょう?」
「わかったよ。」
二人は大きくうなずきました。
「そして、きみはそのポニーを取りもどすんだ。できれば、きみの協力がほしいところなんだけどね。」
自身ありげにカスパールがそう言うと、エリーはまゆをぎゅっとまんなかに寄せました。そして不安そうに言いました。
「もちろんいいんだけど…協力ってなにかしら? 大どろぼうがよそへやっちゃったポニーをとりかえすことなんて、けっきょくできっこないでしょう?」
エリーは、頭のうえにたれる赤いリボンをちょいと手ではらって、つま先立ちの小さなジャンプをしました。それはいたずらこぞうにとっつかまったバッタのような、不安げでなんだか衝動的なジャンプでした。カスパールはエリーをはげますため、わざと陽気な声を出して言いました。
「大丈夫、なにもかもうまくいくさ!きみはただ、きみのポニーのことを話してくれればいいんだ。ヴァラ・リーナってやつの特徴を、できるだけたくさんね!」
ホッツェンプロッツ→プロッツェンホッツ
ロッツェンポッツ
ペトロジリウス・ツワッケルマン→ ツェプロディリウス・ワッケルツァーン
エプロリジウス・ダッケルシュワンツ
シュペクトロフィリウス・ツァケルシン
プロツィリウス・ハッケルシュパン
などなど。名前の愉快な言い間違いもホッツェンプロッツの魅力です。…むしろこっちの方が発音たいへんなのでは…?
この作品のポニーはゼッペルにより、ヴァラ・リーナ→バラ・ダラータ と改名されました。ゼッペルの気分が動転した暁に再登場する…かはわかりません。
書き溜めもプロットも準備万端。しかしここ二週間の間忙がしくなる関係で、すこしお休みするかもしれません。