もと大どろぼうホッツェンプロッツ四たびあらわる 作:へびのあし
シュロッターベック夫人の千里眼は、だれかが考えていることをよみとるのです。そしてあたりまえですが…いくら夫人でも、ぜんいんの頭のなかをいっぺんに把握するのはむりというものです。だれか一人が、夫人の千里眼にせつめいをしなくてはなりません。これには、ディンペルモーザー警部が名のりをあげました。
「ふむ。このようなやくわりは、警部であるわしこそがてきしているだろう。」
そう言って警部は夫人のまえに立ちました。彼の考えはこうでした。
(善良な市民のこころをのぞかせるのは、警察の精神にはんする!)
そういうわけで、シュロッターベック夫人がじいっと見るのはディンペルモーザー警部の目と決まりました。そしてきっかり十七秒がたったとき、夫人は「おおよそのことは、よくわかりました。」と言いました。熟達した千里眼者にとって、目の前のひとがなにを考えているか理解するのは、いとも簡単なことなのです。
しかし、シュロッターベック夫人の顔はあまり明るくありませんでした。
「これは大変にむずかしい——つまり、わたしとしてはあきらめることをおすすめするもんだいですわ。」と夫人はけつろんをのべました。
「どういう意味ですか?」とゼッペルは聞きました。
「水晶玉ではそのポニーを追うことができない、という意味です。」と夫人はせつめいしました。「トランプうらないをするにしても、すくなくとも一年以内の情報がなければやくにたたないんですわ…。」
「そんな…!」とカスパールがさけびました。
「それでは、ポニーは永遠にゆくえふめいのままなんですか? いかなる警察でも、もしもポニーが外国にいってしまっていたら!もう見つけることは不可能だとディンペルモーザーさんは言っているんです。あなたがたのみのつななんですよ!」
大きな声にシュロッターベック夫人はおどろいて、目を見ひらきました。
「いえ、もちろん方法はありますわ。」と夫人は言いました。
「ただ、わたくしのかんぜんなる専門ではないのよ。〈魔法〉というあまりじしんのないぶんやのなかで、いちばんわたくしのとくいな魔法ではあるのですがね…。」
シュロッターベック夫人の声は、えんとつの灰を十杯もかぶせたカエルのように、くぐもって消えいりそうになりました。夫人はそのむかし、ダックスフント犬のバスティをセントバーナード種にかえようとして、大しっぱいをしたことがあるのです。そのおかげで、バスティは何年間もワニのすがたのままだったのでした。
「きっと大丈夫ですよ!」とゼッペルが夫人をゆうきづけました。
「いちばんとくいな魔法なら、十分に気をつけるかぎり失敗なんてしっこありません!」
シュロッターベック夫人はむねに手をあてて何度もしんこきゅうをしてから、葉巻のけむりの輪をプカリとはきだして言いました。
「わかりましたわ。ただし注意点がいくつか…三つほどあるのです。それはホッツェンプロッツの家から、あらゆるお酢と、あらゆるタバコと、あらゆる時計をとりのぞくことです。そうでなければ、火をつける魔法ができあがってしまうんですの。もしくは砂嵐、イモリの大群をよぶ魔法———とにかく、森の料理店〈どろぼうのねじろ亭〉をめちゃめちゃにしたくなかったら、とくべつしんちょうになることをおすすめしますわ。」
物語の展開は続きにて。いちおう、伏線は貼ってあります。
本当はもっと意表を突く展開にしたかったのですが…( ホッツェンプロッツがとつぜん「アメリカへ行く」と書き置きを残して失踪したり、バスティがカボチャと間違えて水晶玉を盗んでいたことが発覚したり。)
そこは原作者に遠く及ばず。すっぱり諦め、エリーちゃんがかわいく書ければよしとします。