女の子がデフォでバブみ溢れる世界で俺は...   作:胡椒こしょこしょ

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オギャりがすきませんか?近くのママを探しましょう。
オギャりがすきませんか?近くのママを探しましょう。
オギャりがすきませんか?近くのママを探しましょう。


ママアイドルだって暇なときゎバイトするんだよ

「...耳、痒くねぇな。」

 

耳に指を入れながら、そう呟く。

 

千紋の耳かきにヒーヒー言わされたあの日。

一日経ってもなおあの時の事は明確に頭に残っていた。

何より、耳の痒みや聞きづらさがなくなっているからな。

あの子には感謝以外の言葉はない。

 

あの後、結局3時限目の授業が終わった辺りで様子を見て、教室に二人で戻った。

そんでもって既に先んじてバブっていたと説明をすると、案の定実習担当である女性教諭に注意されてしまった。

まぁ、そもそも登校してからやればいいって話だからな。

ただ、それでも注意程度で済んでいるのは模範的に実習に励んで居たという理由があったからであろう。

 

あの時、ヘロヘロになっていた俺の様子を見れば誰も怪しむ事なかったしな。

逆に千紋相手にオギャれたのかと周りの人たちに驚かれたくらいだ。

千紋に対して失礼じゃないか?と思ったが、本人はぼんやりとした様子で特に気にしているわけでもなかったのでまぁ、それなら本人ではない俺がいちいち言うのもおかしな話だ。

 

昨日は色々あった。

だからこそ、休日である今日はゆっくりと家に閉じこもって英気を養いたいのだ。

...養いたいんだが.....。

 

「も~、パパちゃん?今ご飯作ってるからパイパイまぁ~だ❤わかりまちたか?後ろからギュッてされると作りにくいでちゅからね~。」

 

「やぁぁぁああ!!ママのパイパイ毎秒すする~~!!オギャるぞ~~~~!!!!」

 

「あらあら...しょうがないでちゅね~。後ろから揉む程度にしてちゅぱちゅぱは後にしまちょうね~❤」

 

家に居ると、どうしてもアレを見ないといけないという難点があったのだ。

仕事がない日は母さんの父さんへの呼び方があなたからパパちゃんになりがちである。

そう言うところで公私の切り替えをやっているのだろうか?

別に知りたくもない情報だったけどな、両親のそういう情報は。

 

しかし、こんな環境で気が休まるわけではない。

家に居ても、大抵自室に籠っているのはこれが原因だったりする。

だが毎回家に籠っていては、不健康に見えるだろう。

父さんも何か言ってくるかもしれない。

こんな母さんに子猿が母猿に抱き着くかのような姿勢で抱き着いてオギャり散らかしている人に注意されるのもなんか癪である。

それならば、今日は取り敢えず外に出るということで。

 

『ぼ・ぼ・母乳館、母乳がスイスイスイ~(赤ちゃん服着た中年男性が白い色したプールで泳ぐCM)』

 

うるせぇよ。

耳障りなCMをテレビの電源を消すことで眼に入らないようにすると、リビングから出て洗面台へと向かう。

そして顔を洗う。

男性用の洗顔なのに大半がベビーオイル配合だったりと考えると、この世界が如何にバブみ基準で考えているのかと言ったことがよく分かる。

 

まぁ、そこらへんは別に意識しなければたださっぱりするだけの前世と変わらない洗顔作業である。

顔の水気をタオルで取って、一息吐くとリビングへと戻る。

すると、オムレツとサラダが並んでいた。

旨そうだ。

 

「ほら、律。出来たから早くいらっしゃい。」

 

「日曜の朝なのに母さん頑張って作ってくれたんだぞ?感謝して..食べなちゅぱちゅぱちゅぱぁ!!!」

 

席に着くように二人に促される。

確かに父さんの言う通り感謝すべきなのだろうが、こうも母の乳にむしゃぶりつきながら言われるとそれが正しいことであってもなんか抵抗が出てしまうからやめて欲しい。

良い大人がこれやって、当然だと思われてる世界ってもうヤバイでしょ....。

 

「うん、わかった。母さんありがとう。」

 

「良いのよ。二人が喜んでくれたらなによりだわ。...よしよしパパちゃぁん❤チューチューしてたら食べられないでしょ~?」

 

「だったら食べさせてほちぃでちゅ!!ぼくちゃんお手々使えないでちゅ!!!」

 

俺の言葉に微笑み返すと、胸元にむしゃぶりついている父さんの頭を撫でる母さん。

すると、父さんは唇を尖らせて母さんの言葉に答える。

さっきまでその両腕で母さんにしがみついていただろうが、何言ってんだこのおっさん。

しかしそんな要求に母さんは普通に答えて、父さんの口にオムレツを運ぶ。

 

「はいはい...いつもお仕事頑張ってくれてありがとね....。よちよち❤...おいちい?」

 

「あ”ぁ”ぁ”あ”ぁぁぁぁ^~!!おいちぃ~ママぁ~~❤❤❤」

 

仕事と家庭。

お互いにお互いのやってることにリスペクト持っていて、夫婦の形としては良いと間違いなく言える。

...目の前で広がっているこの惨状に目を逸らせば。

毎朝の光景として見慣れて入るものの、休日は父さんが仕事で家から出ることもなければ俺が学校で家を出ることもないので必然的に真正面から親のオギャリというものに相対しないといけない。

きっっついわ.....。

 

だからこそ、俺はご飯を口に速く運んでいく。

旨い。

おふくろの味というのだろうか。

こういうのを感じる度に、毎回自分が間違いなくこの世界の住人であるということを思い知らされてげんなりするのだが。

 

「っちゅぱぁっ!...やけに急いで食べてるな。どうした?今日は何かあるのか?」

 

父さんは乳を吸っていた口を話して俺に問う。

眼を逸らしていた間に吸う作業に戻っていたようだ。

吸うか食べるかどっちかにしろよアンタ....。

 

「いや、今日は友達と約束してるから。ちょっと時間も差し迫っているから、急がないといけないんだよ。」

 

嘘である。

そんな約束していないし、俺にそんな休日に遊ぶ友達も当然いない。

他の人もゲームの話とかはするだろうが、大抵そういう話題の中にもバブみの話やオギャリの話が入ってくるからな。

やれどこどこの女の子はバブみがヤバイとか、俺昨日3時間しかオギャってないわとかそういうの。

それについていけないので、あまり深い仲にはなれないのである。

 

「そうか、気を付けて行ってこい。楽しんで来いよ。」

 

「そう言えば駅前にメイド喫茶が出来るって話を聞いたわ。そこに行くのかな?急いでるんだったらパパの授乳やりながらだったら髪のセットとかしてあげるけど....。」

 

二人は遊びに行くと言う俺に気遣う。

母さんもそりゃ父さんの妻であると共に俺の親でもあるので、バブみというわけではないが普通に世話を焼こうとしてくれる。

まぁ、正直父さんに乳を吸わせながら髪のセットなんてどうやってやるのか少し興味がないわけではない。

怖い物見たさという奴だ。

ただ.....。

 

「いや、良いよ。自分でやってもまだ間に合うと思うから。...ご馳走様。食洗器に入れとくね。」

 

それでも今日はなんとはなしに一人になりたかったので断った。

食べ終わると、手を合わせて食洗器に食器を運ぶ。

そしてリビングを出るのだった。

 

 

 

 

「って言っても外に出ても何もやることも行くところもないんだよなぁ....。」

 

家を出て、暫く歩く。

正直、遊ぶとすればここら辺の施設で言えば駅前くらいである。

駅前にはゲーセンとかあるしな。

でも、正直ゲーセン行きたいかと言われればそういうわけでもない。

 

まぁ、当たり前と言えば当たり前だ。

どこか行きたいから、誰かと遊びたいからと外に出てるわけではなくただ家に居たくないから出たのだから。

まぁ、前世と変わらない感じの普通にまともなカフェとかに行ってずっとコーヒー飲みながらスマホでも見て暇を潰すか?

本を買う.....いや図書館に行ってボケッーと気ままに本を読んだり新聞を読んだりして....うーん、イマイチ気が向かない。

そもそも図書館は遠い。

 

まぁ、なんにせよこうして考えていても何も始まらない。

取り敢えず歩いてから決めよう。

そう思った矢先、進行方向の一軒家。

そこの門を開けて、一人の少女が飛び出して来た。

 

「ありがとうございましたぁ~。」

 

その少女は露出の激しい服の上になにやらピンクを基調としたほんわかとした色合いのエプロンを着ている。

髪の毛を一つ結びにしたまさにギャルといった見た目の少女。

そして、俺はそんな少女に見覚えがあった。

そんでもってその人物は俺にとってみれば会いたくない部類の人間でもあったのだ。

 

気づかれたくないなぁ。

物陰は...住宅街だからないか。

彼女に気づかれないために隠れる場所を探す数秒。

しかし非情にも隠れ場所を見つけられなかった俺を彼女は一息吐いて辺りを見回した瞬間に見つけたのだ。

 

眼と眼が合う。

....ここで声を掛けて来ないっていうのはないか?

いや、どちらかと言えばその線が濃厚じゃないか?

普通休日に同級生に会っても声掛けないしな。

うん、そうと分かったらこのまま何食わぬ顔で通り過ぎて....。

 

「あぁ~せんぱぁ~い❤やっほ~!こんなところで奇遇ですねぇ~どうです?今日もオギャってますかぁ~❤」

 

「愛生.....。」

 

見向きされてしまった。

こちらと目が合った瞬間、ニヤリと笑って駆け寄ってくる彼女。

それは、昨日電車の中であった後輩の少女。

プロママ志望の自称ママアイドル、愛生由香里。

俺が今、幼馴染のアイツに次いで最も会いたくない人間であった。

 

「はい!みんなのママアイドルゥ~♪アイマイ愛生!愛生由香里ちゃんでぇ~す☆バックコーラスは.....今日はいないんでぇ、先輩が拍手してくれたら嬉しいなぁ~って。」

 

「はいはい....。」

 

相変わらずのアッパーテンションの彼女に少しうんざりしながらも、要望通りに拍手をする。

断る理由もないし、なによりも機嫌を損ねたくないと言うのが本音である。

だってほら....漠然としては居るけど俺の赤ちゃんツボが腰もとにあるとバレているわけだし。

警戒はしておくに越したことはないし、友好的に振舞っておいて損はない。

 

しかし、それにしたってさっきまでなんか違和感を感じていたがその原因が分かった。

あの愛生が取り巻き赤ちゃんを連れていない。

コイツはアイドルを自称するだけあって、割と人気のある生徒である。

だからこそ、学校に居る間は周りに男を引き連れていなかった時がなかったのだが....今日の彼女は一人である。

それに髪型もキャピキャピしたようなツインテールから、ただ括ったかのような一つ結びになっているし。

 

「それにしたって珍しいな、取り巻きを連れていないなんて。どうした?まさか別のママアイドル(笑)とやらが現れてファン取られたか?」

 

「はぁ!?そんなのありえな....ませんしぃ~❤み~んな豚バブちゃんはゆかり帝国の帝国民ちゃんたちだから~❤身体で作られた忠誠があるのですよ~❤今日居ないのは休日だからっていうのと、『乳ー母ーイーツ』のバイト中だから流石にバイトにまで豚バブちゃん達引き連れるわけにはいかないってだけなんですっ!」

 

なんか一瞬化けの皮が剝がれかけていたが彼女は胸を張って答える。

『乳ー母ーイーツ』。

それはスマホやブラウザで簡単に頼むことが出来る出前アプリの事である。

乳ー母ーっと言われてはいるが、実際は男女関係なく勤務することができる。

そう言う意味では俺の前世の世界に存在した出前アプリとなんら変わりはない。

 

しかし、最大の特徴はスマイル0円的な感じで母性的サービスを受けることが出来ることだ。

配達員の体調や意思にもよるが、女性の場合は授乳などの赤ちゃんプレイ、そして男性の配達員の場合は逆に赤ちゃんになってくれるという物。

まぁ、大体はこのバイトしてる人も大体は分かったうえでヤル気満々でやってるらしいので配達員側からノリノリになって誘ってくるものらしいが。

 

そして配達員は女性の場合は女性の母性のシンボルの一つであるエプロンを身に着けて、男性は赤ちゃんであると言うことを示す涎掛けを制服として身に着ける義務があるのだとか。

エプロンはまだしも、涎掛け付けた配達員なんか嫌なんだが....。

この世界の人間の嗜好は本当に分からんな。

 

正直、名前から頭が痛くなる。

家で見たCMの『母乳館』もそうだが、食品とかも関係するであろう出前要素にそんなもの絡めるんじゃないよ。

絶対に業務的な効率悪いだろ、そのせいでまともに頼んだことねぇんだよ。

配達員に誘われたりしたら面倒臭いし。

 

「へぇ、バイトねぇ.....。」

 

まぁ、コイツがやりそうなバイトではあるな。

プロママ?とやらを目指しているわけだし、学校の全員と母性的行為に励もうとするのと動機は同じだろうな。

箔が付くとか思ってんだろうな.....。

 

すると、不意に愛生が口元に手を当ててニヤニヤとまた笑い出した。

 

「それにしたっていちいち周りに豚バブちゃん居ないことを確認するってことは...つまりぃ、この愛生由香里ちゃんを独り占めできるチャンスだーっていきり立っちゃってるんですかぁ~~~?」

 

「いや、俺は.....。」

 

「しょうがないですねぇ~!!そう言えば、この前赤ちゃんツボの大体の場所も分かりかけていましたし、ちゃぁ~んと私宣戦布告しましたしね?このままじっくりとツボ探しに洒落込んで、私の授乳かましてオギャってもらうって感じで....❤」

 

まずい!

バイトの話題で思索に浸っている間に、愛生がやる気を出している!!

クソッ、そうならないようになんとかのらりくらりと躱そうと思っていたのに.....。

何がイキリ立ってだ、勘違いも甚だしい。

 

目の前の愛生は目を細めて、こちらを見ている。

それはさながら獲物を見つめる肉食動物だ。

こういう時のこの世界の女は大抵止まらない。

特に目の前の女は愛生由香里、普段の言動から万結に売母とか言われるような女だ。

どうする...このまま踵を返して逃げ出すか?

だが、乳ー母ーである以上は自転車がどこかに止まっているはず。

 

奴が自転車に乗ってこちらを捕まえるのが先か、それとも俺がどこか安全な場所に駆け込んで撒くのが先か...。

いつでも走れるように身構える。

しかし、予想外にも彼女は肩を落とすと苦笑を浮かべる。

 

「...行きたいのはやまやまなんですけど。生憎今私、授乳できるようなコンディションじゃないんですよねぇ~。だから、それはまたの機会にってことで。」

 

「お、おう.....。どうした?コンディションじゃないって。なんかあったのか?」

 

なんというか拍子抜けだった。

いや、俺からしてみれば赤ちゃんツボを調べられるということは生殺与奪を握られる可能性が高いということと、こんな公衆の面前で両親の赤ちゃんプレイから逃げた先で赤ちゃんプレイを自分がする羽目になることによる精神的苦痛を鑑みれば助かる以外の何物でもない。

しかし、それでもコイツがそういう発言をすること自体、意外だったのだ。

 

「いやぁ~、さっきの配送先のおっさんにも赤ちゃんになっててもらってたんですけどぉ~。なんかそのおっさん、その前に納豆食ってたらしくってぇ~。一応アルコールティッシュで拭いてたんですけど、初めて授乳する相手に乳首や母乳が納豆臭い女って思われたら嫌じゃないですかぁ~?だからぁ、今日はNGでぇ~す。」

 

「なんか....大変だな。」

 

「マジ最悪ですよぉ~。はぁ~、あんま赤ちゃんの事ボロクソ言いたくないんですけどぉ、家に居るんだからエチケットとして授乳される前に臭いの強い物食べたなら歯磨きかマウスウォッシュしとけって。マジ気持ち悪~い❤」

 

ニコニコと笑顔を浮かべているが、その実目が笑っていない。

...確かにそれはなんか嫌だな。

なんというか...俺が男だからかママやってる人間みんな敵くらいに思ってはいたが、彼女達も彼女達で色々と苦労しているのかもしれない。

...まぁだからといって対応は変えるつもりはないし、赤ちゃんになる気もないけど。

 

「そういう先輩は何してるんですかぁ?」

 

「...別に。ただ何となく外に出ただけで目的は歩きながら考えるつもりだった。」

 

目の前のコイツが別段、ママをやる気がないのなら別に目的がないと言うことを正直に話しても支障はないだろう。

すると、彼女は思いついたかのように手を叩く。

 

「それなら暇ってことですよねぇ~?これも縁ですからぁ、今からちょっと付き合ってくださいよぉ~。面白い物が見れることは確約しますからぁ~。」

 

なるほど、そう来たか。

それなら、俺が本当のことを言ったのは悪手だな。

こうなると無難に他に用事があるという理由が断るのに使えなくなった。

コイツの言う面白い物とやらに期待はしていない。

なんか成熟幼稚園とか連れて行かれそう。

そこじゃないとしても、バブらないとおかしいみたいな目で見られるような空間に連れて行かれそうだ。

....でも、それ以前に。

 

「...お前、バイトは良いのか?」

 

そもそも彼女には乳ー母ーのバイトをしている途中だ。

それならば、それこそ付き合うわけにはいかない。

俺が尋ねると、彼女はリュックを背負う。

 

「あはは~そう言うと思いましたぁ。でぇも、残念でしたねぇ~❤今のが丁度最後でぇ~す!縁っていうのは、タイミング良く丁度終わったタイミングで先輩が来たことも指していたんですよ~。キャ~☆由香里ちゃん叙述トリック~~❤」

 

「どこに叙述要素があった?ただ言葉が足りないだけじゃないか。...俺の背後に立つな。」

 

彼女の発言に突っ込みを入れつつ俺の背後へと移動する彼女。

警戒すると、そのまま彼女は横に並ぶ。

そして、横から俺の顔を覗き込んだ。

 

「ねっ?別に取って食おうってわけじゃないですしぃ~。確実に面白いって約束しますから!!」

 

「いやでもなぁ....つーか、それ俺が見ても面白いって言えるの?何、それなんなの。」

 

そもそもお前が取って食うつもりがなくても、お前の連れてくる場所によっては周りの人間が取って食うつもり満々の場所に連れていかれる場合があるしなぁ。

それにそもそもその面白いって本当に俺面白いって思えるの?

 

「そんなの、事前に教えたら面白くないじゃないですかぁ~。ねっ?お願い!ついてくるだけで良いですから!このことを誰かと共有したいんですよぉ~!お願いしまぁ~す❤」

 

彼女は俺の腕に抱き着いて、上目遣いで甘えた声で頼み込んでくる。

胸をぐいぐい当てている。

やれやれ....あまり見くびらないで欲しいもんだよ。

俺は、慎ましやかな胸が好きだからその行動は無意味だ。

まったく滑稽だな。

 

...ただまぁ、誰かと共有したいと言うことが気になるな。

俺も、誰かと物事を共有できない苦しみを味わっている身。

そんでもって、一部ではあるとはいえ千紋に自分のことを共有して安心感を得ることも出来た経験もある。

だからこそ、秘密を共有するといった言葉にはなんだかんだ弱くなってしまっているのかもしれない。

 

まぁ....いつも掴みどころのないコイツがここまで頼んでいるのだ。

暇と言ってしまった態々断るのにも考える必要が出てくるだろう。

少しくらいは見てやっても良いだろう。

ただその場合は釘を指しておく必要があるが。

 

「...少し見るだけだ。それに、今日はもう既に朝オギャったからな。休日に昼までオギャる元気はない。そういうつもりで誘っているなら俺はどんな時でも途中で帰らせてもらうぞ。」

 

俺がそう言うと、わざとらしく肩を落として呆れたと言った様子を見せつけてくる。

....なんかムカつくな、その仕草。

 

「若いのに、体力ないですねぇ~。まっ別に良いですよ?今回見せたいものはそういう関連の物ではないんで、安心してくださいぃ~。」

 

正直嘘であるが、信じてくれたので一安心だ。

仕草はムカつくが、どうやら彼女的には俺がオギャる体力がなくても構わないようである。

今回見せたいものとやらが別段ママやら赤ちゃんに関係ないということで良いんだな....?信じるぞ.....?

まぁ、別に裏切られたとしても俺はどんな時でも途中で帰ると言っているのだから帰れば良いだろう。

 

「...それなら、付き合ってやる。....さっきも言ったが、今日はバブみは俺の中では終わりだ。その類なら俺は情け容赦なく帰るからな。」

 

「だからぁ~何度も言わなくても分かってますってぇ!それにしたって、先輩も今日は赤ちゃん終わりなんてなんか私達似ていて運命...感じちゃいますね?」

 

「別に、感じないが?」

 

ぶっちゃけお前にもママやらない時があるということが分かっただけで、俺の中での危険性はなんら変わっていないからな。

そんなお前と巡り合う運命なんかほんっとに願い下げだ。

感じないというより、感じたくないのだ。

冗談はよしてくれ....。

 

愛生の冗談にげんなりしている俺を他所に、彼女は楽しそうにこちらに笑いかける。

 

「照れちゃってぇ~☆まっ、後悔はさせませんから期待していてください?私が見せるのは中々見られない物で・す・の・で❤それじゃそういうわけでレッツゴ~!!」

 

相変わらず高いテンションだ、正直ここまで近くでやられると生気でも吸い取られているのかなんか疲れてきた。

楽しそうに右手を振り上げる彼女を横目に、俺はただただ溜息を吐いて肩を落としたのだった。

 

 

 

 

 

 

彼女に連れられて訪れたのは駅前。

普段から人は多いが、日曜だけあって広場には人がたむろっている。

結局のところ、駅前に行ってしまったなぁ....。

 

そう考えていると、こちらに向かってくる人影が見える。

駐輪場に自転車を止めて、コインロッカーの中にでも制服のエプロンを入れてきたのか純粋に露出度の高い服を着た愛生がこちらに手を振って駆け寄ってくる。

 

「はぁ...はぁ...待ちましたぁ?」

 

「まぁ、6分くらいかな。割と待った方じゃないか?」

 

「バカ☆そういうのは嘘でも待ってないよって言うものダゾ❤」

 

彼女は俺を指さすと、そのまま俺の胸元を小突く。

まぁ、わざとではある。

だってそういうのって相手次第な所あるだろ?

大体デートの時に女の子に言うものだと思うし、今はそれに当て嵌まらない。

 

「そんで?見せたいものってなんだよ。」

 

「まったく....せっかちですねぇ。まぁ、良いでしょう。私が見せたいものは~~~あちらですっ!!」

 

やれやれと肩を落としながらも、愛生はとある地点を指さす。

そこはメイド服を着た数人の女性がビラを配ったり、通行人に話しかけたりしている。

そう言えば、駅前にメイド喫茶が出来たと母さんが言っていたっけ?

それの呼び込みだろうな。

 

「お客様の眼が好きです。ジロジロと呼び込みをしているメイドを物欲しげに見るその目が。お客様の声が好きです。とても可愛く泣きそうな声を聞くと下腹部の辺りがジンジンと疼きます。お客様が良いんです。お客様じゃなきゃ、嫌なんです。」

 

「め、メイドさん....。」

 

「まずはこの最初のナデナデ赤ちゃんチェキコースから登録を始めましょう。1(幼少期)から。....いいえ、0(赤ちゃんの時)から。」

 

「メイドさん...俺、オギャるのが好きだ。登録の仕方を知らなくても...俺はメイド喫茶の会員になりたいよ。俺一人じゃ何もできない。俺一人じゃ何もかもが足りない。手伝って...くれるか?」

 

「はい!それじゃ、1名様ご案内で~す❤」

 

「おんぎゃぁぁぁあ❤❤ほ↑ぎゃぁ↓ぁぁ!!!」

 

日曜の朝練の帰りだろうか?

ジャージを着た同年代の男の子が前髪が掛かって片目の隠れたメイドの巧みな話術で案の定店の中へと引き込まれていった。

かなり特徴的な鳴き声を上げる奴だったなぁ....。

 

「ダメ”かな”ー!頼むからよ、もう一度....!!!ぼぐぢゃん、リ”ピードじでいいがなぁ”!!!?お店でお”っぱい”オムライスに『デカパイ❤おっぱい❤愛一杯』って胸寄せながらがいでもらっでも良いがなぁ!!!!?」

 

「当たり前だ!!!!!!」

 

他所では崩れ落ちながらメイドさんにイカレた懇願をする男と、それに対して豪快に許容するメイドさんが居た。

どうやら普通の呼び込みではなく、一風変わったもので人々の関心を惹いているようだな。

前世でメイド喫茶に行ったことはないが、ここまでヤバくないことは断言できる。

やはりここもこの世界の価値観からメイドさんたちと母性的行為に洒落込むことが出来るのだろう。

俺からすれば是非とも関わりを持ちたくない場所だった。

 

「,,,なぁ、これメイド喫茶だろ。今日はオギャらないっつったじゃん。俺帰るから。」

 

これは約束が違う。

だからこそ、正当に帰ることが出来るはずだ。

俺が言うと、彼女は膨れ面になってしきりに指を指した。

 

「早まらないでください!私が見せたいのはあそこの勧誘上手く行ってない感じの色黒の女の子のことですぅ!!見て何か気づきませんか?」

 

彼女が必死に指を指す方向に目を向ける。

そこには典型的なメイド服を身に着けた茶髪を降ろした長髪の少女。

眼光には怜悧な輝きが宿り、口元は硬く引き結ばれている。

あれ....あの人、どこかで見たような.....。

 

そうだ、何回か擦れ違ったことがある。

ウチの学年の問題児....だったか?

料金以下の質の母乳を提供したレストランには代金を払わずに出たとか、喧嘩の相手を必要以上にオギャらせたことで病院送りにしたとかあんまり良くない噂を聞く少女、金城龍子。

赤ちゃんとか抜きにしてもあまり関わり合いになりたくない部類の、いわば不良に該当する少女だった。

 

そんな彼女は男を前に、寄らば斬ると言わんばかりの抜身の刀のような殺気を発していた。

どうしたのだろうか?

なんか面倒臭い人にでも絡まれたのか?

そちらの方へと意識を向けて、会話を聞く。

 

「て...お客様可愛いな。赤ちゃんになって?(バキバキスマイル)」

 

「い、...嫌です.....。」

 

「なぜだ?(殺気)嫌って言ってもなるンだよ赤ちゃんに.....。」

 

バキバキの笑顔で男に詰め寄る。

顔を青くして、後ずさる男性。

まぁ、分からなくもない。

あの感じで近づかれたら普通に怖いわ。

 

「ふぇ...うぇぇぇぇん!!!マ”マ”ァァァァァァ!!!!!」

 

「あっ...ちょっ.....!...はぁ......。」

 

そして終いには泣きながら逃げ出して行く男性。

そんな彼に手を伸ばしながらも、少女は力なく腕を降ろして肩を落とす。

なんというか....何やってるんだ、あの子.....。

 

「ぷっ...ぷふっ...見てくださいよ先輩!学校内でも突っ張っているような不良が、メイド服着てうまくママみ出せなくてあの始末ですよぉ~?あの金城先輩がぁ~かっこ悪くて...ぷくくっ、笑っちゃいますよねぇ!!!病院送りにしたっていうのも嘘だったじゃないですかぁ~?」

 

「アレが見せたいものか....お前、趣味悪いな。」

 

なんかさっきまでの威圧感はどこへやら、しょんぼりとしちゃってるじゃないか。

見ていてなんとも言えない気持ちになる。

しかし、俺の言葉など聞こえていないようで金城の方へとピョンピョンと跳ねるようにして駆け寄っていく。

 

「金城せーんぱい❤どうにも客引きがうまく行っていないようですねぇ~。どうしましたか~?日頃かっこつけてるのに、まさか男の人一人バブみさせられないわけないですよねぇ~?周りの人はうまく行ってますもん☆その噂のママみとやらを見せてくださいよぉ~~~!病院送りにしたっていう奴ぅ~?」

 

「テメェ、愛生.....。」

 

金城は愛生が視界に入ると顔を顰める。

どうやら好ましく思っているわけではないようだ。

そして、今度はこちらを睨みつける。

 

「...そういうテメェは、また男でも連れてんのか。結構なことだな....プロ...なんだったか....。」

 

「あぁ、この人とそれは今日関係ないので。ねっ!?先輩!!!」

 

愛生はこちらに同意を求める。

まぁ、確かに今回はただコイツが見せたいものとやらの為について来ただけで、プロママ活動という無差別母性行為の被害者というわけではないので言っていることは正しい。

勘違いしないで欲しいって奴だ、俺はバブったりしない。

 

「あぁ。俺はただ、愛生に面白い物見せてやるって言われてここに連れて来られたって感じだ。...まさか面白い物っていうのが君の事だとは思わなかったけど。」

 

「...アンタも、この変なのに絡まれてんのか。お互い大変だな。」

 

金城さんは俺の話を聞くとこちらを憐れむような目線を向けてくる。

...アレ?この子、案外話分かる子かもしれないぞ。

俺と同じく、この愛生にダル絡みされているっていう点で親近感が少しだけ湧いた。

 

「も~~っ!変なのって何ですかぁ~!?私はただぁ~どーせうまく行ってないであろう先輩の為にこれまた先輩連れて先輩の売り上げに貢献してあげようと思ったから来たんですよぉ~?優しい後輩って褒められるならまだしも、変なの呼ばわりは酷くないですかぁ~?」

 

「そ、そうか...まぁ、それならわりぃ.....。」

 

えっ、そういうことなの?

聞かされていないことに戸惑っていると、金城とも目が合う。

すると、金城はこちらに頭を下げる。

 

「情けねぇけど、頼む.....。そのオレこういうママって奴...苦手で、なんとか克服しようと思って始めたんだけどうまく行ってねぇからよ...、指名してくれたら助かる。...いや、良ければって話だし、愛生に言われて来ただけなら無理強いはしねぇから.....。」

 

なんというか、俺のイメージとは反対に彼女は殊勝にも俺に頼み込んでいる。

それにしたってママが苦手ってコトはバブみで病院送りっていうのも確実に嘘じゃないか。

そう考えると、なんというか第一印象とかで勝手な事言われて少し可哀想にも思える。

それに、ママが苦手....つまりはこの世界での女性の在り方を苦手に思いながらも克服しようと頑張っている。

なんで克服するのにメイド喫茶で働くのかは謎だが、それならそれで力になりたいと思う。

まぁ....世界の在り方で苦しんでいるのは俺も同じだ。

それでもなんとかしようと動く姿勢は尊敬できる。

 

「分かった。店、案内してくれよ。...朝バブったからママサービスは少し、遠慮願いたいが。」

 

「そっか...ありがとうな。まぁ、普通に飲食とかも出してるからよ...。」

 

金城は俺の言葉を聞いて笑う。

すると、隣で愛生が腕を振り上げた。

 

「それじゃ、行きましょうか!私、メイド喫茶って初めてなんですよねぇ~。ほらほら金城先輩、案内案内!!」

 

「おっ..そうだな。...こっちだ。」

 

金城は俺達の前を歩く。

時刻は大体昼。

まぁ、これなら昼飯を喫茶で食っても良いだろう。

喉も丁度渇いていたしな。

 

そうして俺達は金城に誘われるままに目の前のビルの中へと入っていった。




赤ちゃんツボ...指圧されたりすると赤ちゃんになるツボ。胃腸に効くツボとか性器に効くツボと同じく多分脳に効いてる。場所は個人差がある。怖い。

金城龍子...所謂ママ不良のレッテルを貼られている女の子。見た目だけで変な噂が立っているだけでママみを出すことが苦手。
茶髪で目つきの悪い不良のチャンネーの名前には龍が付いていて欲しいなって思いました。

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