【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
暑い。
104 悪意満点の置き土産
『デュナミス』さんとの、他の平行世界を含んだ世界の滅亡を巡る戦いの後。
「そろそろ気絶慣れしてきた気がします」
私は知らない部屋で目覚めました。
『知らない天井ネタはやらないのですか?』
「やりません」
ベッドの隣に立っていたマキナに返して、部屋を見回します。
部屋自体は知りませんが、この壁の作りは覚えています。
すっきりと、高級感溢れる、華美な装飾のない上品なお部屋なのです。
趣味が良いですね。
薄い深緑色の花瓶に活けられているのは、黄色のカーネリップ。
魔法世界の植物で、花びらの大きなカーネーションです。
白っぽい壁に溶け込んで、過度には目立ちません。
どちらかというと日本風の、家具や背後の壁を引きたてるための飾り方。
だからといって、どこなのかはわかりません。
魔法世界も、都市部では結構、日本文化の影響を受けていたりすることがあるのです。
「
寝起きで5分ほどボーッとしていますと、下っ端天使さんがドアを開いて入ってきました。
相変わらず元気な人ですねえ。
「どうして『認識阻害』を解いているのです?」
私は尋ねます。
そう、今の彼女は、顔がはっきりと認識できるのです。
私が死んでしまったのでなければ、地上で万が一……バレるわけがありませんか……。
彼女は私達とは、存在の格が違い過ぎます。
『
うっかりバレるような環境で認識阻害を解くわけがありません。
バレたらバレたで、もっと強烈な、記憶を弄る系の認識阻害を使うかもしれませんし。
「あの後、ちょっと大変なことになっちゃってねー」
「大変なこと?」
「アンディボーイに、転生のことがバレちった」
「は?」
私は間抜けな声を上げました。
『デュナミス』さんでさえも、それについては知らないはずですが。
「『デュナミス』の置き土産よ。
アイツ、いざって時はネギちゃんの本来の魂を人質にするつもりだったみたい。
で、その魂を封印してた
倒れる『デュナミス』の懐から、コロっとね」
「10年前に回収していたのですか……」
アルさんが、親友の死んだ赤ん坊を蘇生させた際に、下っ端天使さんが干渉して、異世界で死んだ私の魂を詰め込んで、とりあえず蘇生を成功させました。
なので、私は魔法的には厳密な人間ではありません。
異世界転生まで知っているのは、下っ端天使さんを含めてエヴァさんとアルさんだけです。
ラカンさんにも話して良かったのですが、あんまり隠し事は上手そうではありませんからね。
すべては話していません。
私が蘇生された人間であることを知っているのは、学園長を始めそれなりにいますが、決して多くはありません。
「その
七色の輝きを放つ、私の拳くらいの大きさの水晶球でした。
中に淡い魂の輝きがあり、その中に私の裸体が映っています。
胎児のように体を丸めていますから、恥ずかしいところは見えませんけれども。
「……」
確かに、私の肉体は、それが私の本来の魂が宿ったものであると主張していました。
魔法使いって、その手のことは
最低でも、魔力を感じ取る能力はあるわけですしね。
当然、兄妹であるアンディにもそれは分かるはずです。
「ややこしい……」
私は顔をしかめます。
「こんな悪意の篭った置き土産、見たこともありませんよ」
仰向けにベッドに倒れ込み、呟きます。
これは、扱いを間違えれば火種になります。
私の今の状況というのは、実はかなり正義とはかけ離れたものなのです。
死体に外法で別の魂を詰め込んでいるわけですからね。
必ず、本来の魂を戻すべきという人が出てきますよ。
少なくとも、アンディはそれで悩みます。
解決する方法はありますが、それを受け入れるかどうかでまた悩むのです。
3-Aのクラスメイト達も同じです。
本当にアンディの妹だと思っていた私が、実は魂は別人だったというのです。
騙された、裏切られたと考える人も、出かねません。
ややこしいのは、3-Aあるいはアンディと一緒に過ごしてきたのは、
本当なら、この肉体は本来の持ち主に返すべきです。
しかしそれでは私の魂はどうすればいいのでしょうか?
私の魂が妹の肉体を操っていたとはいえ、今まで世界を救うために、皆から嫌われることも厭わずに計画を進め、戦ってきた事実は消えません。
また、アンディの妹は復活しますが、それはそれまで3-Aで過ごしてきた私とは異なります。
3-Aからすれば、ほぼ赤の他人です。
いえ、そもそもまともに生活できるかどうかも怪しいと言わざるを得ません。
今までずっと
その精神は赤ん坊のままで止まっていても、おかしくはないのですよ。
不正義を取るか、不幸を取るか。
二者択一、究極の選択です。
「それでねー」
下っ端天使さんは言いました。
「いっそのこと、専用に調整した肉体を別に用意することにしたの。
今でさえ乖離とか、色々と弊害が出てるみたいだし」
「それは、誰が言い出したのですか?」
「私」
彼女は自分を指差します。
「世界を救った最大の功労者が一番不幸になるなんて、よくある話ではあるけど、原因が私達の調査不足ってんじゃ、ほっとけないわ。
とはいえ、制限されてる範囲内でやれることをやるしかないから、この世界基準では外法を使うんだけどね」
「『生命創造』、ですか?」
「半分正解、正しくは、やっぱり死体とかを元にってことね。
命も、今生きてる命からもらってくるし」
「外法ですね……」
「外法よ」
私は苦笑しました。
それはまるで、フランケンシュタインの怪物なのです。
1つ違うのは、ちゃんと生きている魂を使うということでしょうか。
「ああ、なるほど……そうするためには、下っ端天使さんの正体を明かさなければ、皆が納得してくれないわけですか……」
「そゆことね」
彼女は頷きます。
要するに、一般的な魔法社会の正義で動く必要のない、正義が違う組織の所属だということを示す必要があったのです。
また、『生命再創造』などという、『
その結果として、私の転生に神様サイドから係わり、世界の滅亡回避を依頼した張本人と説明するのが手っ取り早いのです。
だから、『認識阻害』を解いていたのですよ。
「で、
「そうよ」
まあ、普通の人生を送るという私の願いが叶うというのでしたら、その辺はどうでもいいのですけれどもね。
その後、私は下っ端天使さんに連れられて、『別荘』を出ました。
私がいたのは、エヴァさんの『別荘』の一室だったのです。
部屋に見覚えはありませんでしたが、どうやらVIPルームだったようで。
『別荘』を出ますと、そこには無数の本棚の列。
『魔道書の祭殿』です。
私は『別荘』ごと麻帆良に帰ってきていたのでしょう。
「目覚めたようだな」
「ええ、お陰様で」
いつもの、エヴァさんとの軽い会話。
この場にいるのは、アルさん、学園長、明日菜さん、
「話は、聞かせてもらったよ」
そして、アンディ。
「形としては、騙していたことになりますかね?」
「そんなこと、どうでもいいよ」
赤毛の少年は寂しそうに笑いました。
「君は、ボクやボク達がやらなきゃならなかった悪を、全部引き受けてくれていた。
全部、世界を救うためだったんだね」
「それは違います」
私は否定します。
「すべて、私一個人の幸せのためですよ。
世界が滅んでしまったら、思う存分アンディをイジメ倒すこともできませんし。
今まで、稽古にならないイジメ方はやりませんでしたからね。
今後は前世で培った、心を圧し折るための豊富なラインナップにご期待ください」
「えっ――!?」
「冗談です」
私はドン引きするアンディに微笑みました。
「ネギちゃんはネギちゃんねー」
明日菜さんは呆れていましたね。
その後、私達は下っ端天使さんの指示で巨大な魔法陣の準備をし、彼女はマキナと一旦外に出て、必要な死体と命を集めてきます。
死体は病院などの霊安室を巡れば簡単に集まり、代わりに死体を模した式神を置いて行くそうです。
命の方は、保健所や屠殺場を巡ったり、漁業中の漁船で集めてくるそうです。
人間の命でなくともいいのですね。
命の重さがありますから人間よりも多く集める必要はありますが、都合よく死にかけている人間がいても、千人単位で集めなければならないので、こちらの方が効率が良いんだとか。
当然ですがはじめて知りました。
漁船の方は、特にサメですと結構命の重さ的に効率が良いそうです。
保健所は、最近麻帆良では野良犬が増えてきたそうですので、結構頻繁に殺処分が行われているというお話です。
もしかしなくとも、『タイムパラドッグズ』ですね。
あれ、時間を飛ぶ1人に付き1匹、犬が増えるのですよ。
ですので、学園祭の時の『無限ループ』では、100匹以上増えています。
以前調査した際に数が少なかったのは、すでに保健所の人が捕まえた後だったからのようです。
命の重さ的には、人間とさほど変わらないとかなんとか。
結構大人しいのですけれどもね。
ま、そういうわけで、死体と命につきましては問題ありません。
丸一日かけて、マキナと下っ端天使さんが戻ってくる頃には、魔法円も完成していました。
まず、アンディの妹さんの魂が入った宝玉を、下っ端天使さんが私の胸に押し当てます。
そうして彼女が何事か呪文を唱えますと、私の魂とアンディの妹さんの魂が入れ替わりました。
当然、私はこの時点で意識を失いますが、説明は続けます。
ともかく、これで『生命再創造』の秘術に必要な、『命』、『魂』、『肉体』が揃いました。
これらを上手く調整し、一つの生命となるように組み立てるのは、『
さすがは死者の魂を管理する下っ端天使さんです。
ちなみに、本来の肉体に戻すだけとなる、アンディの妹さんにつきましては、調整は必要ありません。
肉体と魂の成長度合いが違うと乖離も起きますが、3日ほどで回復し、今後は魂も肉体も馴染んでいくため、乖離症状は起きなくなるそうです。
私も似たようなものです。
3日が5日になる程度です。
こうして、私は専用の新しい肉体を得て、人生を続きを歩むことになりました。
この後、またややこしい問題が待っているのですけれどもね。
本日の経過
ネギ、新たな肉体を得て新生。
元の肉体は本来の魂を得て新生。
以上。
つづく
ネギ少女の肉体についてのフォロー話です。
肉体と魂の乖離現象について、アンディが勉強していくといずれわかることだったということもあり、フォローについては結構最初の方に考えていました。