【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
「VIPルームはどうでした?」
「主に解説役をやらされていた」
「確かに、『万雷』や『神衣・光輝』を説明できる人って、他にいませんよね」
「『信じられん』や『本当にできるのか』といった質問のオンパレードだ。
試合も時間的にはすぐに終わってしまったし、あまり集中できなかった。
解説を断って黙っていればよかったよ」
エヴァさんが愚痴りました。
「『雷神化』は3分しか持ちませんし、その後も3分くらいで終わりましたからね」
非常に内容の濃い6分間だったのです。
たったそれだけの間に、アンディとラカンさんはお互いに全力を出し尽くして引き分け、私も魔力が尽きるほど魔法を乱打していました。
「たった6分の間にあれだけ魔法を連打できるお前の詠唱速度もそうだが、やはりそれを涼しい顔で凌ぐ
「あれでリハビリ中というのは本当なのですか?」
「お前が言うな」
呆れ顔で言われてしまいました。
「えー、あれでも最後はギリギリだったのですよー?
ほとんど戦術もない、ぶっ放しでしたし」
「やかましい。1人戦艦女が」
私が口を尖らせると、物凄い例えで返されます。
後で他の人に聞くと、VIPルームでヘラス帝国第三皇女テオドラさんが、そういうことを口走ったそうなのですよ。
『戦艦並みの弾幕じゃな』とかなんとか。
うーん……もしかすると……アリかもしれませんね。
擬似的に艦隊戦を再現する精霊戦術。
『土』なら……うん、いけるはずです。
また、後で試してみましょう。
私達はその後、ゲーデルさんが用意した高級ホテルに移動しました。
『
そこで、ゲーデルさんの使いの金髪少年から報告を受けます。
「適当に公表していればいいと思うのですけれどもねえ」
「いずれ公表はする予定ですが、先にネギ様にお伝えするようにとの御命令です」
私の苦笑に少年は答えました。
同じ場所に、アンディやエヴァさん、明日菜さん、ナギもいます。
もちろん、茶々丸さんとマキナも。
「余程気に入られているようだな」
「うーん……あまり嬉しくありません」
それで報告というのは、前元老院首脳部についてです。
『デュナミス』さんの脅迫によって、15年前より各地で紛争を起こしていたと供述していたのですけれども。
それが、どうも20年以上前から、つまり『大分裂戦争』以前から、ヘラス帝国の国境近辺で、情報操作をしたり民衆を扇動したり、時には暗殺までしたりして、散発的に紛争を起こしていたようなのですよ。
つまり、謳っていた正義には程遠い、真っ黒な人々だったということです。
さらに、ウェスペルタティア最後の女王アリカのような、策略によって潰された有力者が、メセンブリーナ連合全域に存在しているそうです。
要するに、メセンブリーナ連合というのは、メガロメセンブリア元老院の傀儡か、それに準じた属国が大半だったのですね。
「これは、荒れますね……」
もしかすると、本当にラカンさんやフェイト少年のような、最強クラスの傭兵が忙しくなる、とんでもない事態が起こるのかもしれません。
「民主主義形式の国はまだマシでしょうけど、王制国家は血の雨が降りかねませんね……」
アンディが呟きます。
「公表する予定なのですよね?」
「はい。旧体制との決別を世界に示す意味もあるとのことです。
何より、属国化が差別を助長し、紛争をもたらしている地域も少なくないようでして……」
「リスクはありますが、そうするしかないでしょうね」
私は難しい顔をして話しました。
「アリアドネーやヘラス帝国などからの監視を、各国に入れてからの公表なのでしょう。
情報操作は必要ですが、この場合は主権をそれぞれの国に返すという意味があります。
悪意ある傀儡政権に居座らせては、その意味がありません」
「それじゃあ、ジャックが言ってたのは……」
ナギが私に言います。
傭兵が忙しくなるというお話ですね。
私は頷きました。
「国によっては絶対王制というところも少なくありません。
絶対王制というのは、民衆や他の貴族達が逆らえない、圧倒的な軍事力を保持する軍事独裁国家です。
そういう国に対しては、メガロメセンブリアが国費でラカンさんのような、1人で1軍に匹敵する傭兵を派遣するつもりなのでしょう」
「そうか、『
「私は詳しくは知りませんが、まあそういうことでしょうね」
「考えもなく暴れ回るからだ」
エヴァさんは言いますが。
反乱軍を部外者が鎮圧するのは、ケースバイケースで判断が難しいのですよね。
『
それに、独裁者を打倒しようと立ち上がった反乱軍が、白とは限らないのですよ。
独裁者側が黒とも限りません。
富を一部に集中させずに、民衆に還元しているような独裁国家も、市民の間の格差が広がり過ぎているのに是正しようとしない民主主義国家も存在するのです。
最近では、シリアで毒ガスが使用されたというニュースでしょうか。
あれ、実はマスコミも使用したのが反体制派か政権派か、分かっていないのです。
国連が真実を明らかにしようとしていたようですが、結局はNATO勢力とロシアの綱引きに終始し、結論が出ないままに有耶無耶になり、内乱は今も続いています。
大きな理由として、反体制派にイスラム原理主義のテロ組織が少なからず参戦していることが挙げられています。
アメリカとして、そういう組織を支援すれば、今度は自分達に牙を向けかねないのです。
だから、圧力はかけても軍は派遣しないのですよ。
それと似たようなことが、魔法世界でも起きたということです。
つまり、独裁者と反乱軍、両方黒だった場合、国民にとってはどちらの方が良いでしょう?
『
「まあ、白黒の判断は今のメガロの政権に任せておきましょう。
私には、地球にて宇宙開発を餌にやりたいことがありますからね」
「大丈夫でしょうか?」
「自らの名誉を捨ててでも事態を収拾しようという覚悟が維持できれば、決してできないことではありません。
平坦な道程でないのは確かですけれどもね」
不安な顔の少年に、私は返します。
メガロメセンブリアは、大統領制なのです。
一度大統領に選ばれれば、5年は独裁者として君臨するシステムです。
そして5年ごとに国民投票で信を問う。
ただ、アメリカと違うのは、出馬回数に制限がないこと。
もう1つは政党などの勢力ではなく人に票を入れることです。
要するに、一度選出された以上は5年間はクルト・ゲーデルさんの大統領としての身分が保障されていて、その間に好き勝手ができるのです。
前体制の後始末のために、あえて国を停滞させるのも、苦しいですが選択肢の1つ。
選挙公約として各国への償いを宣言していた以上、国民にも文句が言えないのです。
まあ、経済的にはバブル崩壊くらいのことにはなるでしょうけれどもね。
これはある程度予想出来ていたことですから、あれほど酷いことにはならないかもしれませんが。
いずれにせよ、メセンブリーナ連合は一度崩壊、また信用を構築して再帰することとなります。
次の盟主国がどこになるのかは分かりません。
大政変を乗り越え、いち早くより大きな力を付けた国がなることでしょう。
私はさすがに、その辺の詳しい情勢までは知りませんし。
「それと、大統領より、ネギ様にオスティア新総督への打診がありました」
「はい?」
私は目を見開いて聞き返します。
「それはもしかして、そのままオスティアの王位ではないのですか?」
「はい」
少年はあっさりと肯定しやがりました。
「現在は自治政府ですが、広域魔力消失現象はなくなり、旧王都近辺に人が戻りつつあります。
その際の諸問題を解決し、人々を導くことができる方は、そのまま女王となられても問題はないという大統領のご判断です」
さらっと女王とか言いやがりましたよ、この金髪少年。
年齢も近いですし、ゲーデルさんの付き人として勉強しているようですし、私達の世代での好敵手になるかもしれませんね。
「うーん……」
「女王様って、それスゴイことなんじゃ……?」
明日菜さんが呟きますが。
「旧世界でも事業を進める手筈を整えていると言っただろうが。
私も話は聞いたが、確かに旧世界のすべての主要国をペテンにかけるのは、
「それ、ボク聞いてない……」
「アンディには、これから話そうと思っていたのですよ。
結局、構想を練るのに3ヶ月かかってしまいましたし。
アンディはラカンさんへの挑戦のために、修業で忙しかったでしょう?」
涙目になるアンディを宥めます。
こういうところは子供ですねえ。
「1年程度でしたら、代理を置いて待つことはできますよ」
金髪少年は言いました。
「能力もあって信用出来る人がいるのですか?」
「リカード執政官です」
現在のメガロメセンブリアのナンバー2、『悠久の風』系の元老院議員です。
外務官ながら内政の仕事も押し付けられており、内政の経験もあります。
面倒事だけを押し付けられてきたあの頃を考えれば、確かに経験も能力も十分と言えるのでしょう。
しかし。
「兼任、ですよね?」
「はい。ですから1年が限界と聞いています」
「うむむ……」
私は唸りました。
「外堀を固めてきたか」
エヴァさんが言った、その通りなのです。
今のメガロメセンブリアのナンバー2とオスティア総督代理の兼任は、簡単なことではないのです。
どちらも大事を抱えていますから。
かと言って、旧世界の方も、計画から外せて、なおかつ今のオスティアを任せることができるような、有能な人となりますと……。
「仕方がありません、
私は言いました。
今まで、『反則』といえば妖精さんグッズの力を借りることでした。
しかし、今はもう妖精さんはすべて送還しています。
ほんの少しだけ、その名残りがある。
それだけです。
その名残りの1つが……。
マキナです。
時事ネタとしてシリア周辺の話を入れましたが、今かなり情勢が変わってきてますね。
2月か3月ごろにこの話を執筆しましたので、その辺はご了承ください。