【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
暑いのは割と大丈夫。
いよいよ大停電の夜。
夜空は晴れ渡り、満月が綺麗なのです。
しかし、目下には蠢く大量の人影。
早速やってきたようです。
――“竜間山、麓に土人の一団です。数は約600。北東の森へ向けて移動中”
――“笹等山、邪鬼の群れが市街地へ向けて進行中!その数500!”
――“中津川上流、こちらにも下級悪魔の群れを発見、数は300”
偵察の急を告げる念話が飛び交い、しかしそれもすぐに収まります。
念話が飛び交っている内は、まだまだ安全。
念話が途絶えてから、つまり念話妨害が行われてからが本番です。
「敵が密集しているところの上空へ」
「了解なのです!」
私は後ろにタカミチを乗せて、敵へ向けて箒を加速させます。
やはり、最も幼い私は学園最強と名高い
「高畑先生も遠慮がないなぁ……」
これは若い脇役イケメン、瀬流彦先生。
彼も箒に乗っていて、後ろには黒ヒゲにグラサンとハードボイルドな雰囲気の
「初撃、爆撃しましょうか?」
「いや、このまま降りて僕が突破口を作る」
敵上空へ来ると、私の背後で高まる魔力と気の気配。
そして、まだ結構な高さがあるにもかかわらず、タカミチは宙に身を躍らせました。
この人、私に戦う機会を与えない気ですね。
ま、楽なのはいいのですけど。
敵は邪鬼で、大体地べたを這い回っていますし、空を攻撃するとすれば術者本人でしょう。
ただ、一気に軍団の1割以上が持って行かれれば、話は別です。
ほぼ見えない衝撃波が高速で連打され、森の木々などものともせずに邪鬼を50ほど塵に帰し、タカミチは難なく着地します。
原作で出ていた居合拳、流派は無音拳というようですが、それを数百ほど連打したのです。
その後も、特大衝撃波の至近弾で動きを止めて、その隙に居合拳で倒し切っています。
彼が着地した場所は、クレーターのように敵が消滅してしまいました。
さすがに現時点でこれに勝てる自信はありませんね。
麻帆良最強の呼び声は伊達ではありません。
ついでに、私の『魔法の矢』の射程圏内に敵はいなくなりました。
これは参りましたね。
私の攻撃魔法の射程は、大体魔法の矢の範囲内です。
それより遠くとなりますと、上位精霊の使役か、もしくは『雷の暴風』となってしまいます。
味方が前にいる状況で『雷の暴風』は、味方を巻き込みかねません。
中々よく考えていますね。
「ま、仕方がありませんか。
“ラス・テル・マ・スキル・マギステル、
『百兵円陣』”」
私は下位精霊を100体召喚して、開いた場所に押し寄せる邪鬼をその勢いで押し返します。
とはいえ、所詮は下位精霊、時間稼ぎが精々です。
目的は他の魔法先生が無事現場に到着するまでの時間稼ぎですので、これで十分なのですが。
「“『
「……」
瀬流彦先生と神多良木先生が地上付近に到着しました。
瀬流彦先生は特徴もない、典型的な砲台型の西洋魔法使い。
連射力は私以上かもしれませんが、タカミチと比べると弾速の面で劣るようです。
この過剰とも言える戦闘力を持った2人の近くに私を置いたのは、やはり『本国』からの干渉を警戒しているからでしょうね。
タカミチが近くにいれば、報告はどうとでもなるでしょうし。
そうして適当に攻撃しつつ射程距離まで接近する間に、タカミチはまた数十体を屠り去ります。
桁が違いますね、本当に。
色んな状況を利用して勝たせてもらわないと、表面上でも勝てる気がしません。
妖精さんグッズを使えば話は別ですが、それでも油断はできないかもしれませんね。
さて、あまりここに時間を取られているわけにもいきません。
とっととケリを付けて、術者を引っ張り出しましょうか。
タカミチを見て逃げた公算が大きいのですけど。
「“ラス・テル・マ・スキル・マギステル、
『華麗なる親父時代』”」
私が召喚したのは、鬼神兵ほどもある雲の巨人の上半身。
上位精霊の召喚です。
「おおっ!?」
瀬流彦先生が驚いています。
実はこれ、本当に水蒸気の塊で、ほぼ実体がありません。
なので、光や闇など、霊体に効果のある属性なら、結構簡単に倒せてしまったりするのです。
当然、攻撃力もさほどのものではありません。
では、なぜそんなものを召喚したのかということですが……。
「“『
この『雲の巨人』、雷や水、風の魔法を吸収し、攻撃力を得るという特性があるのです。
上位精霊なので、敵味方を判別した範囲攻撃が可能ですしね。
エヴァさんとの修行で得た、見せ戦力その1です。
「“薙ぎ払いなさい!”」
オオオオオオオオオン!!
帯電した『雲の巨人』は、タカミチと連携して邪鬼を薙ぎ払い始めます。
こういう、他人と連携できるのも上位精霊の利点です。
結構魔力は食いますけれど。
中位精霊を半端な数揃えるよりも、こちらの方が小回りが利く分、戦況を有利に展開できます。
さて、もう一発『白き雷』で帯電させて、様子を見ましょう。
ここは割と戦力密度が濃いので、先生3人と私の、合計4人しかいません。
あと5分くらいで殲滅が完了しそうですが、術者が出てくる気配はありませんね……。
では、敵の合流地点は他でしょうか?
派手に数が投入されているような場所はいそうにないですね。
地図の上での、主な侵入経路は潰しています。
…………。
ま、わかってはいるのですよ。
土人、邪鬼、下級悪魔。
一見共通点が少ないように見えますが、その数に注目すれば、系統が浮かび上がってきます。
土人は人間大のゴーレムのようなもの。
西洋魔術でも生活補助などで使用することがありますが、魔力の篭っていない銃弾などでも普通に倒せる程度の強さでしかありません。
邪鬼も、見たところ召喚したというよりも、薄い魔力で編んだものです。
攻撃力はあるようですが、防御力がてんでダメですね。
原作で出てきた鬼族や烏天狗、妖狐のような上位の存在ではなく、ほぼ意思もないような半端な存在、言ってしまえば行進するだけの人形です。
下位悪魔については、種類が多過ぎて特定できません。
実際にこの目で見たわけでもないですしね。
しかし、その数からしますと、6年前の襲撃で召喚されたような悪魔では到底ありえません。
300体もあのレベルの悪魔を揃えるとなりますと、『本国』が本腰を入れて麻帆良を滅ぼしに来たりということでない限り、実現できる数ではないのです。
ですが、総数は念話妨害前に聞いただけで約1400。
こういう戦術は、日本ではあまり行いません。
用意するだけ時間と魔力の無駄ですから。
西洋でも、こんなことをするくらいなら上級悪魔を1体でも召喚した方がいいと考えられています。
1つだけ、こういう人海戦術が大好きな地域があります。
中国、ですね。
あまり姿形にこだわらない道教系の魔法には、周囲を土人で埋め尽くして相手の戦意を喪失させたり、派手な囮として活用したりする戦術が存在するのです。
邪鬼は仏教系。
空海が中国から密教を持ち帰り、それが陰陽術に取り入れられたように、中国にも仏教的な思想があります。
しかしそうなりますと、少々危ないですね。
これらは明らかに囮、陽動です。
中国系魔法使いの厄介なところは、敵なら一般人でも平気で巻き込むというところです。
つまり、一般の生徒達も危ない。
もう1つ懸念もありますが、それは後でどうとでもなりますね。
私がそう結論付けたところ、邪鬼の群れを大体殲滅できました。
「後は任せてくれ!高畑先生とネギちゃんは世界樹の方へ!」
神多良木先生が叫びます。
先を越されました。
考えていたことは同じようです。
先程言った、もう1つの懸念ですね。
相手が中国系魔法使いなら、風水系の技術にも長けているはずです。
もし麻帆良を本気で落とす気でしたら、世界樹の力を利用するのが手っ取り早いのですよ。
そういうのに特効の切り札を、私は持ち合わせているわけですが。
世界樹。
天を覆うほどの巨大な樹木で、日立の『この木なんの木』のCMに出てくる有名な木のように、枝の範囲が異常に広い木です。
正式名称は『神木・
聖地に生え、龍脈の膨大な力を溜め込んだ木で、陰陽師や魔法使いにとっては重大な意味を持っています。
年中維持されている邪気を弾き妖力を抑える麻帆良大結界も、この木の魔力を利用して張られているのです。
これを風水的に利用すれば、今までのような囮にしか使えない下級の存在ではなく、鬼族などの十分な戦力にできる存在を、同等の数召喚することができるのです。
が。
「ホゥ、思ったより早かったのう」
背後には簀巻きにされて気絶している男女数人の姿。
そういえば、この人も麻帆良最強という噂のある人でしたね。
囮の迎撃を他の先生や生徒達に任せ、自分はメインである術者を相手にしていたということでしょう。
しかし、戦うところを見られませんでした。
「ええ、この子が頑張ってくれたおかげです」
「ウム。もうすぐ麻帆良結界も復活するじゃろう。
それと同時に今日はお開きじゃ」
飄々としています。
「中国系の魔法使いが襲撃してくるとは思いませんでした。
てっきり、関西呪術協会の人が来るかと思っていたのですが……」
私は呟きました。
「こ奴らは雇われじゃよ。首謀者は中国ではなくロシア系じゃ。
首謀者に辿り着かれるのを避けるために、中国系の傭兵を雇っておるのじゃ。
同じ手口を何度も使っておるからのう。
まだバレておらんとでも思っておるらしい」
「首謀者がわかっているのに、手を出さないのですか?」
「首謀者からお金を引き出して、中国系の魔法使いが好き勝手やっているのさ。
首謀者は魔法を知らない一般人だから、我々では手を出せないんだよ。
首謀者の目的も産業スパイで、麻帆良の襲撃じゃない」
「なかなか複雑な話ですねえ……」
まあ、大人の世界なんてこんなものですが。
「ところで、ネギちゃんはアンディ先生の方を見に行かんのか?」
こういう会話ができる通り、エヴァさんVSアンディは、ある程度学園長にも把握されています。
原作でそうだったのかどうかは分かりませんけどね。
「大丈夫だと思いますよ。エヴァさんも、その辺には気の回る方ですし」
「エヴァのことは信用してるんだねえ」
「マッチョさんとは違いますから」
私はにっこりと良い笑みをタカミチに返します。
「エヴァのことを知った上でそんな風に信用できるのは、君くらいなものだ。
これからも、彼女のことをよろしく頼むよ」
「ま、とりあえず、今は他の戦場を回りましょう。
多分大丈夫だと思いますが、一緒に行きますか?」
まだ念話妨害は有効です。
携帯電話も通じません。
ロボット工学研究部の力を持ってすれば通信することは可能ですが、そこまですることもないでしょう。
「いや、別々に行動しよう。
中津川の方は近いからね。瞬動でも充分間に合うはずだ」
「では、私は竜間山方面ですね。“
私は箒に乗って舞い上がり、一気に加速します。
その後、ほぼ10人ほどで千体近くの土人を相手にしていた竜間山に到着した私ですが、到着した頃には本格的な戦闘は終わっており、少ししか戦闘シーンを見ることができませんでした。
こちらが強いというよりも、ほぼ動く
その内に電源が復旧して麻帆良大結界が復活、僅かに残っていた土人もお札に還りました。
エヴァさんの方も、大きな怪我人も出ずに無事終わったと、結界復旧後に念話をいただきました。
大停電関連のイベントは、これにて終了ですね。
本日の成果
魔法先生や魔法生徒達の戦闘データの収集に成功!
超鈴音と葉加瀬聡美の依頼による。
イベント『桜通りの吸血鬼』終了!
以上。
つづく
二次創作の作者によって、かなり解釈に違いのある部分ですよね。
エヴァンジェリンの動きはある程度学園側が把握していた節があります。
ただ、橋の上での決戦が教師たちの手の平の上だったかといえば、そうでもない可能性がありまして。
要するに、結界まで解除されるようにした茶々丸の仕掛けを把握できなかったんではないかと。
つまり、原作準拠ですと、大停電に重ねての大規模な襲撃はない可能性が高い。
私ひろっさんはそう考察しています。
ええまあ、平行世界ですから…(言い訳)