【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
この時期に雨があんまり降らないってどういうことなの?
ゴールデンウィーク初日。
「ほぉ、エヴァの『別荘』とは懐かしい」
詠春さんが麻帆良にやってきました。
後ろにはボサボサ黒髪に学ランの少年を連れています。
「お久し振りです、詠春さん」
「ほ、本当に来られたんですね、長」
「せっくん、緊張しとるえ」
木乃香さんの隣で刹那さんが恐縮していました。
木乃香さんと両想いになったことにも徐々に慣れてきたところですが、恋人の父親と相対するのにはさすがに慣れないようです。
しかも20年前の英雄で西の長。
まあ普通は緊張するのかもしれませんね。
早速、刹那さん(♂)は詠春さんに連れて行かれました。
で、残ったのがツンツンヘアーの学ラン少年です。
「オレ、犬上小太郎言うんやけど、ネギってどいつや?
ここではそいつに従っとけって言われてんねん」
「ネギは私です」
私が名乗りを上げました。
それにしても、小太郎君には麻帆良で修業させるのが目的だったのですが……。
私に従えとは、詠春さんでしょうか?
「ていうか、大丈夫なの?
一応、修学旅行の時は敵だったのよ?」
「そうはゆうても、あん時は半分雇われやったしなぁ……」
小太郎君は明日菜さんに指摘されて、困った顔をしました。
「どうせ、強い人と戦えるとか言われたのですよ。
そのせいで大きな組織と敵対するリスクについては頭から抜け落ちていたのでしょう」
「ああ、なるほど……」
私の指摘に、アンディが頷きます。
「なんやと!?
お前とはまだ決着ついてへんねんからな!
そこんとこ勘違いすんなよ!?」
なぜかアンディに噛み付きました。
「早速やってみますか?」
「えっ、いいの?」
「元々、アンディの修行相手として、詠春さんにお願いしたのです」
「そうなんだ」
明日菜さんはとりあえず納得したようです。
要するに、現在進行形で敵対していようが、あんまり関係ないわけですね。
「よ、よーし、中国拳法だって習ってるんだ。
前みたいにボコボコにされたりはしないからね!」
「よっしゃ、上等や!」
早速、男の子同士で模擬戦を始めます。
「明日菜さんは、桜咲さんと詠春さんの方を見てきてください。
神鳴流同士の高レベルな稽古ですから、横で見ているだけでも勉強になると思います」
「わかったわ」
明日菜さんは頷き、転移門の方へ向かいました。
「他の3人も来たようですし、私達は一緒に魔法の練習をしましょう」
「わかったえー」
古さんが今まで半端だった気の習得を本格的にやり始めたのですね。
私達、宮崎のどかさん、綾瀬夕映さん、木乃香さんに朝倉和美さんは、魔法の練習です。
私は精霊召喚のバリエーションを増やすために研究を重ね、その合間に初心者4人にアドバイスを送るという感じですね。
私の見たところ、木乃香さんと夕映さんは、発動成功までもう一息といった感じです。
夕映さんは元々西洋魔法と相性も良かったのでしょう。
魔力こそ少ないものの、情熱と練習量で魔力の差を補っています。
宮崎さんも熱心ですが、どちらかと言えば意識がアンディの方に向いており、熱心さの方向性が若干異なるため、同じように練習を重ねている2人でも、差がついてしまっています。
朝倉さんはこういう感覚頼みは苦手なようで、あんまり進んでいない感じですね。
朝倉さん以外の3人は、ゴールデンウィーク中にも魔法の発動に成功するでしょう。
「ネギて、妖怪100人ぐらい倒したって、ホンマなんか!?」
アンディから話を聞いたらしき小太郎君が、私に食いついてきます。
「まあ、あの時は妖怪の群れの殲滅を担当しましたし、100体前後は倒したと思いますよ」
「へぇー!なんや弱そうやのに、やるもんやなー!」
それはそれは弱そうに見えるでしょうね。
見た目だけでしたら、10歳になったばかりのか弱い少女ですし。
見た目だけでしたら。
ちなみに、今は1ラウンド目を終えて、休憩しているところですね。
今回は最初から獣人化した小太郎君が勝利を収めたようです。
「なぁなぁ、どうやったんか見してーな!」
「しょうがないですね。
では少し早いかもしれませんが、私の精霊召喚の洗礼を受けていただきましょうか」
「おおっ、バッチ来いや!」
――と、おっしゃるので、上位精霊の召喚から『
「つ、強い……」
「獣人化しないのですか?
「いや、女は殴らへんねん」
「『烏天狗』を仕留めるまでは獣人化でいいと思うのですが……」
「ぬ……」
それでも勝ちますけどね。
1週間のゴールデンウィーク2日目。
学園長経由で注文していた『精霊召喚セット』が届きました。
「『夏休みの自由研究キット』みたいな名前なのはどうなんでしょうか」
「知るか。名付けた奴に言え」
そんなやり取りの後、布の袋を開きます。
中に入っていたのは、金色の指輪とハードカバーの本、それに紐で束ねられた紙の束。
それに、魔力を流すと文字が浮かぶ仕様の説明書。
この説明書、英語と日本語にも対応していますね。
私、ヘブライ語も分かるのですが。
ヨーロッパにおいて魔法に使用される言語は大きく分けて3つ、ラテン語、ギリシア語、ヘブライ語です。
違いはほとんどありません。
東欧でヘブライ語が多いというような程度です。
メルディアナ魔法学院ではヘブライ語は浅くしかやっていませんので、私は独学で習得しました。
「『ソロモンの指環』と『
魔力を込めることで発動するタイプの魔法具だな。どっちもレプリカだろうが」
「それで、こちらの紙が
私は言いかけて奇妙なことに気付きます。
「……説明書に呪符の作り方が載っていますね」
「そうか、じゃあ、こっちの紙束は呪符の素か?」
エヴァさんは紙束の紐を解いて、紙束をチェックしました。
そして外側の一枚をめくってその動きを少し止め、その後は手早く残りをチェックします。
「なんだこれは?悪魔の召喚契約用の魔法円じゃないか」
「へぇ?」
彼女が茶々丸さんに命じて部屋一杯に並べさせた紙には、確かに魔法円が描かれていました。
順番通りに並べると、大きな1つの魔法円になるようになっていたのです。
「む……
紙束の最後に、
「……くっくっく、そうかそうか……。
なかなかえげつないことをしてくれるじゃないか」
手紙を読んだエヴァさんが愉快そうに笑います。
私は差し出された手紙を受け取って読みました。
「……私が触れると強制召喚される呪いが仕掛けられていて、それは学園長が解いてくれたのですか……。
なんとまあ、よくピンポイントでそんな仕掛けをしたものですね」
ちなみに、召喚される悪魔は、迂闊に召喚すると召喚者を殺してしまうという、凶暴な性格の持ち主だそうです。
手紙の最後は、この魔法円はエヴァさんが封印管理するように、学園長から要請する内容でした。
もしも、呪いによって悪魔が強制召喚されていたとすれば、私は不意を突かれて殺されていたかもしれません。
ついでに、もし生き延びたとしましても、『本国』の法律は罠による強制召喚に対応しておらず、私は悪魔を召喚使役した罪で投獄されることになるそうです。
『本国』の元老院はこうした、二重の罠を仕掛けてきたわけですね。
「しかし、これはいけませんね。
周囲の人々を巻き込む危険のある罠や悪魔が出て来始めています」
「なに、
エヴァさんは楽観視していますが……。
「そろそろ一度報復を行いましょう。
『本国』を黙らせなければ、おちおち世界を救う準備もできません」
私は小瓶から『童話の地』の巻物を取り出し、広げました。
そして、茶々丸さんによって再びまとめられた魔法円の紙束を持って、『童話の地』に入ります。
数日後、『本国』の元老の1人が失脚したというニュースが流れてきました。
なんでも、悪魔の使役を専門とした呪術師が、呪いを返されたことで、依頼者である元老の関係者に泣き付いたそうです。
呪詛返しを解こうとするも、結局どうすることもできず、そのドタバタの隙に私の暗殺計画が明るみに出て、『本国』市民からの大バッシングを受けて発言力を失い、逮捕に至ったとか。
そのまま不満を力で抑えていれば、『本国』は大規模な内紛に発展したでしょう。
どうやら元老院が逮捕された議員を見捨てたようです。
呪いについては、何をどう解析してもどうにもならなかったそうです。
私が行ったことは、送りつけられた紙束を、送り主に届く仕様を付与して、妖精さんに複製してもらっただけです。
妖精さんは愉快さを基準に工作を行いますから、その辺の制限もなくしてみました。
そうすると、紙束は生き物のように、ひとりでに送り主の下へと返って行くのです。
さらに悪戯機能も付与され、送り主にはワンダーランドのような、面白おかしい生活が保障されます。
それを呪いと称するのなら、そうなのかもしれませんね。
魔法ではないので、既存の魔法技術では大人しくさせることはできません。
燃やすしかないのです。
しかしそこは妖精さんの技術力。
燃やそうとするとひらひらと逃げ回るそうです。
「一応、極秘に調査命令が来てる」
タカミチがエヴァさんの家に話を聞きに来ました。
私とエヴァさんは、ニヤニヤ顔で本物の紙束をリビングの机の上に出します。
「
何も問題はないさ」
「暗殺を請け負うような人だそうですし、別件でしくじったのでは?」
「ん、んん……?」
眉をひそめ、しきりに首を傾げていましたが。
すみません、まだネタばらしはできないのですよ(ニヤニヤ)。
「大体、私が報復すれば、相手が五体満足で済むわけがないだろう?」
「ある意味でそれ以上の被害を被ったようだけどね」
「悪が滅ぶのは宿命なのですよ」
とりあえず、これで幾らか時間を稼げるでしょう。
本日の10割
『オクラ式八卦陣』による――犬上小太郎、クリアできず。
妖精式呪詛返しによる――召喚術士、対応できず。
以上。
つづく
妖精さんの本当の恐ろしさは、ポッキーのように人の心をへし折っても許される可愛さにあると思います。