【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
梅雨なのに雨が降らないと、畑の水遣りが大変。6/16現在。
036 そして魔改造へ
「いやー、あのヘルマンとやら、随分と手強かったでござるなー」
大体いつものように『別荘』での修行の休憩中、そんな話になりました。
「伯爵級の悪魔ってあんなに強いんですねー……」
「攻撃はアレやけど、守りが鉄壁やったな」
アンディと小太郎君が話に乗っかります。
「長の話ではそこまで強くないということでしたが……」
桜咲刹那さんは首を傾げていましたが。
「最後は全員でかかって、ようやく仕留めたという感じだったです」
「すごかったねー」
「いやー、素人目だけど、ちょっと様子が変だったような……?」
朝倉さん、その先は言ってはいけません。
「召喚師が何らかの強化用の魔法を用いたのではないでしょうか?」
私はしれっと嘘を言って、ミスリードを狙います。
――“良い性格だよ、本当に”
――“前世の前世は豊臣秀吉でしたので”
エヴァさんからの念話には冗談で返しました。
――“しかし坊やについては、そうまずい結果ではないかも知れんぞ”
――“どういうことです?”
私は聞き返します。
――“坊やは本気を出さなかったわけではない。それなのに届かなかったのさ。少なくとも本人はそう思っているだろうよ”
――“それってつまり、まだ私をダシにするしかないということですよね?”
――“そこだ。お前がヘルマンに坊やを狙わせたことで、坊やはなぜ自分が狙われたのか、考えているようだぞ”
――“……なるほど”
あくまでこの平行世界においては、ネギ・スプリングフィールド、つまり英雄の子供は私ということになっているのです。
それなのに、ヘルマンさんに狙っていただいたのはアンディでした。
なぜアンディを狙ったのか。
ヘルマンさんには理由がないはずなのです。
原作と違って、接点がありませんし。
今までずっと、『本国』も『
そこに意味があるのでは、と、賢いアンディは考えるかもしれません。
――“と言いますかエヴァさん、ヘルマン事件の計画にそんな不備があることを、黙っていたのですか?”
――“いや、正直、どうやってヘルマンを解放するかで頭がいっぱいだった”
――“本当に正直ですね”
――“『
――“失敬な。誰の前世の前世がマルキ・ド・サドですか”
――“どちらかというと紂王后の女狐だと思うが”
――“だまらっしゃい”
マルキ・ド・サドとは、嗜虐性癖、いわゆるS属性の語源となった人物です。
告発されて牢獄に捕えられるまで、何十人もの少年を惨殺したとか。
紂王后の女狐、つまりあの人です。
起源はインドだという、九尾の狐。
名前が思い出せません。
確か最後の殷王の正室だったはずです。
この人のおかげで殷王朝が滅んだと言われており、罪人の残酷な処刑法を考えたという伝説でも有名です。
ま、歴史の大悪人なんて、大抵は権力者による改変が入っているものなのですけれどね。
なのでー、もし私が世紀の大悪党だと言い伝えられていても、信じてはいけませんよー?
お料理研究会では、各屋台で作られる新作料理の開発について、会議が開かれていました。
麻帆良学園祭に向けての動きです。
この会議で、屋台で出す料理を申請し、それぞれ材料を会費で購入するのです。
特に準備期間は『
飛び級の天才美少女が料理を作るという噂が、結構広まっているようですし。
そして、今日も残飯や生ゴミをこっそり回収するのでした。
超鈴音さんの協力もあり、土壌改良には十分な量の生ゴミが集まっています。
ここまで来れば、勘のいい人は分かるかもしれませんね。
超さんと葉加瀬さんとの約束の日も近付いていますし、そろそろ私が『童話の地』を隠す理由について詳しい、具体的なお話をしましょうか。
その夜、私は巻物『童話の地』を開いて、時間を24倍に設定し、内部に入りました。
内部に入るとは言っても、精神体だけです。
原作で出てくるのはかなり先になりますが、エヴァンジェリンさんの巻物のように、肉体ごと入るか精神体だけで入るか、選択できるのですよ。
ちなみに、最初は時間が1倍で固定、内部領域も50メートル四方という、狭いものでした。
私のお小遣いでは、この最低レベルのもので限界だったのです。
それにエヴァさんが手を加え、時間差も等倍、12倍、24倍、36倍の4種類から選択出来て、内部領域も200メートル四方に増やしていただいたのです。
「にんげんさんきたー」「はやいー」「もうきたー」「にんげんさんきたー」「これでかつるー」
全長10センチ程度、つぶらな瞳にずんぐりした胴体の小人達が、私を見つけてわらわらと集まってきます。
彼らが妖精さん。
私が危険物扱いして『童話の地』に閉じ込めている、異世界の魔法そのものと言っても差支えない力を持った生物です。
「材料も入っていますね……。よしっと。
それでは装置を動かしますよー、少し離れて下さーい」
私は妖精さん達に声をかけ、無秩序に増設された家屋の中に安置されていた、未来的な機械を起動します。
これは私が超さんと葉加瀬さんに注文して作ってもらった、『全自動製粉機』です。
動力は魔力で、麦やお米、豆などからお菓子の原料となる粉を作り出すものですね。
鈍い音を響かせながら、既に投入されていた小麦が砕かれ、すり潰され、粉末になります。
最初は魔力の消費が馬鹿にならなかったのですが、そこは妖精さんの力で解決しました。
『人類は衰退しました』の原作では、単一型電池1本で食品生産工場をすべて賄う電力を生み出していましたからね。
そういうものが世に出てしまいますと、魔法世界であろうが地球であろうが、社会が大混乱に陥るのは必定なのです。
だからこそ、私は妖精さんを危険物扱いしているわけですね。
そこまでの超科学力を持つなら、原動力となるお菓子も妖精さんが自分で作れるような気がするのですけど、なぜかそれだけはできないのです。
やったとしましても、酷く薄味だったりして、まともなお菓子にならないとか。
10キログラムの製粉が30秒で終わりました。
魔力消費もほとんど感じません。
まさしくチート性能です。
製粉機ですが。
他にも粉にするものを粉にしてから、次の過程へ移ります。
次は保存庫で献立を考えながら食材を探してきて、オーブンやシンク、電子レンジなどの揃ったキッチンへ運びます。
なぜ冷蔵庫ではなく保存庫なのかというと。
妖精さんが作った食糧庫は、冷蔵庫ではないからです。
話は聞きましたが、どうもよく分からない技術で内部の状態を保存しているようで、加熱したものを入れておいても、熱を保ったまま保存されるようなのです。
温度や時間によって腐ったりすることもありません。
ゆえに『保存庫』と私は呼んでいます。
しかも冷蔵庫は別にあって……いえ、あれは『冷却庫』と呼ぶべきでしょうね。
熱いものを冷ます際に、中に入れて温度を設定し、スイッチを押すと、一瞬で冷ましたい温度になるのです。
加熱はできないようですが、ちょっと常識がどこへ行ったのか探したくなるレベルの逸品ですね。
一応、エヴァさんは知っていますが、以前、本当に『常識を見つめ直してくる』と書置きを残して旅に出ようとしたという経緯があります。
茶々丸さんに捕獲されていましたが。
ともかく、『保存庫』にあった数々の食材をチェックしながら、私は頭の中で献立を考えました。
ここにある食材は、すべて妖精さんが作っています。
ウェールズや麻帆良学園の裏山に入って集めてきた山菜の種や苗、それに果物の種、買ってきたお米や小麦、
妖精さんが本気でやると、エキゾチックな品種改良が行われますので、味が変わらない範囲に抑えていただいています。
そして。
私がお料理研究会で生ゴミを集めていた理由ですが。
妖精さんがその中から種を探し出して作物にするのが1つ。
もう1つは、妖精さんの力でありえない生産性能を発揮しているために、土壌の栄養分がものすごい速さで消費されていくため、その問題を解決するために、外から養分となる生ゴミや土などを持ち込んでいるわけなのです。
つまり、お料理研究会への入部は、妖精さんの力を主軸に計画を進めている私にとっては必須だったわけですね。
妖精さんのモチベーションを保つためには、手作りのお菓子を作り続けるしかないのですから。
素材の確保は急務だったということです。
内部時間で5時間ほどかけて、私は5千体分のお菓子を作り上げました。
精神体で肉体が疲れないとはいえ、やはり心は疲れるわけで。
精神体で魔法で編んでいない現実の物質に干渉するには、ある程度の魔力を消費しますし。
お手伝いに等身大の上位精霊を編むとなると、なおさら疲労が溜まります。
これはこれでなかなかハードな精神労働なのです。
さて。
妖精さん達も皆食べ終わったようですし。
「それでは、報告をお願いします。
まずは『タイムバナナ』の調整から」
私が妖精さんに言うと、彼らの中から背広にメガネ姿の偉そうな妖精さんが出てきて、テーブルの上に乗りました。
メガネに背広なのは、彼らのノリです。
別に妖精さんの間でも階級があるとか、そういうことではありません。
「まずまずのできばえですぞ」
「記憶を過去へ飛ばすようにできたということですか?」
「いぬがふえますな」
「それはこちらで何とかしますよ」
『人類は衰退しました』の原作にて、主人公が過去へ飛ばされるお話がありました。
妖精さんの試行錯誤という珍し……くもないかもしれないお話で、『タイムバナナ』で調整されるたびに、少しだけ過去へ飛んだり、60年以上過去へ飛んでしまったりするお話です。
そうやって過去へ飛んでしまうたびに、犬が増えていくのです。
主人公の同僚さん命名、『タイムパラドッグズ』。
ダジャレがつまらないのは仕様なのです。
こういうお話ですので、仕様がないのですよ。
「それではどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
私は黄色いバナナの束を受取り、そして次の報告について催促します。
「それでは、次は『
「あいあい」
次は黒いとんがり帽子とマントの妖精さん。
多分、魔法使いを表わしているのでしょう。
「こうなりましたぞ」
魔法っぽい力でテーブルに持って来られたのは、A6サイズのメモ帳でした。
リングタイプで、めくると以前のように画面が表示される仕組みです。
一応確認してみましたが、指輪による認証登録はそのままで、設定項目が増えた以外に違うところはありません。
「えらく小さくなりましたねー」
「ちいさくてもせいのうはばつぐんです?」
「ええ、期待していますよ」
私は思わずその妖精さんの頭を撫でました。
ぽよぽよしていて可愛いのです。
「次で最後ですね。超さんの失敗作はどうなりましたか?」
「わたしですな」
次は
狂科学者を表現しているのかもしれませんが、ちっとも怖くないという、重大な不具合が見受けられます。
「なかなかてごわかったですな」
「ほほう………………………………………………………………」
私はミニチュアサイズのヘリで運ばれてきたものを見て、絶句しました。
黒くて、四角い板。
材質はよく分かりません。
触るとひんやりしていますが、石なのか金属なのかは、私では判別できません。
持ってみると意外に軽い。
その姿はまるで。
そう、『人類は衰退しました』に出てきた、モノリスです。
そちらの原作では、なぜか人に変形していましたが……。
「たましいほりおこすのたいへんでした?」
「魂……え、マジですか?ソウル実装済み!?」
私は驚きました。
超さんの失敗作とは、彼女が過去へ飛んできて、最初に作った
この時代で生産工場を作り、茶々丸さんの姉妹達を量産する際に、最初のひな型として作り、後のモデルのように自律行動させることには失敗した素体。
それをご提供いただけたのは、ロボ研でスペースが足りなくなってきたため、地下空洞にある施設に移そうとしていたのを私が発見し、お願いして譲っていただいたという経緯によるものです。
まさか、妖精さんの魔改造でモノリスになるとは思いませんでした。
「えっと……魂があるということは、呼びかけるなりすればいいということでしょうか?」
「どうりょくはまりょくですゆえ」
「ああ、魔力を込めるのですね」
私は妖精さんが言う通り、モノリスに魔力を込めます。
すると――。
本日の成果
麻帆良学園祭準備中(裏)!
『タイムバナナ』調整完了。
モノリス(???)完成。
以上。
つづく
『電磁鬱』について感想にてご指摘がありました。
『電磁
それを遮断する手段としても、幻想空間内蔵型巻物『童話の地』は有効という設定です。
本編に言及はありませんので、ここで説明させていただきました。