【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】   作:ひろっさん

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7/14 くらいに投稿されてるべし。


056 チート本領発揮

私は皆より1時間先に『別荘』を出ました。

 

航時機(カシオペヤ)』に仕掛けられた罠が発動するのは、それを持った人物が『別荘』を出る瞬間です。

その瞬間、彼らは1週間後に飛ばされてしまうのです。

 

それを教えてはいません。

せっかくのイベントの目玉が台無しになってしまいますからね。

アンディ達の不在によって敗北を喫した魔法先生達の現実というものを、とくと味わうがいいのです。

超さんの計画の、その先にある世界を経験すれば、正義だ何だと言ってはいられなくなりますよ。

 

それによって地獄に落とされる人々の中に、アンディ自身が含まれているのですから。

 

 

 

「さて」

 

私は早朝でなお準備に忙しい学園祭最終日を、いつものきぐるみで図書館島へ向かいました。

そして愛用の箒に乗って、ワイバーンが守る最深部へと足を進めます。

 

私は以前、アルさんから受け取っていた紹介状を、ワイバーンに見せました。

知性でもあるのか、それを確認したワイバーンは奥を示し、そのまま飛び去っていきます。

私はきぐるみを脱いでから、その先にあった扉を開いて中に入っていきました。

 

行先は、以前に会談を行った、アルさんの寝室です。

が、今は石の扉で閉ざされています。

 

「む……」

――“そのまま扉に手を触れて下さい”

 

念話でアルさんが伝えてきました。

私はその通りに、扉に手を触れます。

すると、扉に魔法円が浮かび上がり、私は幻想空間に瞬間移動していました。

 

内部は、巨大な石造りの図書室です。

もろにアルさんの趣味ですね。

 

「これを1週間で作り上げたというのですか……さすがと言っておきましょう」

「いえいえ、この程度でしたら、慣れれば誰にでもできることですよ」

 

アルさんの分身体が姿を現します。

 

「その、慣れるのに何年かかるのかは、聞かないでおきましょう」

「フフフ、よくご存知で」

コレ(・・)を作るのすら、私は半年かかりましたからね」

 

言って、私はポケットから小瓶を取り出しました。

大きめの巻物である『童話の地』を持ち歩くために、私が使っている小瓶です。

魔法具としてはポピュラーな方で、内容量は一辺50センチの立方体と、かなり狭いものです。

 

これでも、結構値が張るものなのですけれどね。

材料費的な意味で。

私の6年分のお小遣いは、ほぼ『童話の地』とこの小瓶の材料費で飛びました。

それに加えて薬草を山奥に探しに行ったりして、苦労してお金を貯めたものです。

 

この魔法の小瓶は、幻想空間系魔法具の中では初心者向けの、作りやすい部類だそうで。

それで半年かかったのですから、巨大図書館を1つ作り上げるのに1週間で済ませた、彼のとんでもなさが分かるかと思います。

 

 

 

「では、早速始めましょうか」

 

私は小瓶から巻物『童話の地』を出し、広げました。

 

「フフフ、見せていただきますよ。

異界において魔法そのものと呼ばれた、その生物の力を」

「“『ひらけゴマ』”」

 

最近ではあまり使われなくなった、解錠のキーワードです。

童話『アラビアンナイト』で、盗賊の宝物庫の扉がこの言葉で開くというのは有名なお話ですね。

単に、常時開放状態にするパスワードのようなものですが。

 

「わーい」「そとー?」「でられてるー?」「そとばー」「すいかばー」

 

わらわらと10センチ前後の寸胴の小人さん達が、巻物から出てきました。

相変わらず丸っこくて可愛らしいのです。

 

「……ブラウニーか何かですか?」

「私は妖精さんと呼んでいます。

エヴァさんの呪いを解くのにも、彼らの力を借りました」

「ほう?あの、ナギが力任せにかけた呪いを解いたというのですか?」

「ナギの肉親の血液を子供の致死量程度。

それが用意できれば、彼女は自力で呪いが解けるのです。

彼らには、増血剤をお願いしました」

「おや、増血剤とはいえ、致死量はさすがに厳しいのでは?」

 

アルさんは首を傾げます。

 

「致死量どころか、エヴァさんが飲み切れない量に加え、さらに漫画みたいに鼻血が飛び出ましたよー。

血が多過ぎて一時フラフラになりましたが、心臓や血管、臓器への負担などは一切ありませんでした」

 

『桜通りの吸血鬼事件』のお話ですね。

増血剤とは、もちろん『鼻血剤』です。

あれ、一気飲みしようとちょっとだけ飲もうと、鼻血が噴出するという結果に変わりはないそうです。

 

「理屈が分かりませんね」

 

アルさんは珍しく顎に手をやって首をひねります。

この人、博識な上に経験豊富ですから、魔法的なことは大体わかるのです。

 

「彼らに関する限り、理屈は投げ捨てるものですよ。

『妖精さんだから』で納得するしかないのです。

異世界で魔法そのものと呼ばれているのは、伊達ではないと言ったところですね」

 

いえ、呼ばれていませんけれども。

私が勝手にそう呼んでいるだけですよ。

 

「では、私の最後の切り札にして、『始まりの魔法使い』と同等か、それ以上の力をお目にかけましょう」

 

私は宣言し、『童話の地』の中から黒い小箱(ブラックボックス)を取り出しました。

 

 

 

『ブラックボックス』

割とほのぼのとした作風の『人類は衰退しました』の作品の中で、幾つか人の生き死にが関わるお話がありました。

その中の1つが、例の『事象の狭間』での出来事です。

 

『事象の狭間』が危険な場所だということはお話ししたと思います。

深いところへ行けば、(ほど)けてしまうわけですね。

 

その深いところへ迷い込んでしまった子供達を助け出すために、主人公の少女が使用したのが、この黒い小箱、『ブラックボックス』です。

3分間の時間制限付きでしたが、その威力は凄まじいものでした。

詳しくはお近くの書店へ。

 

 

 

私は『ブラックボックス』を額にくっつけます。

すると、たちまち変化が現れました。

黒い小箱が変化して、そこから顔に模様が貼り付いたのです。

 

「制限時間は3分間、ちゃっちゃと始めますよー!」

 

今日は1日かけて、アルさんが作った幻想空間を徹底的に改造するところから始めます。

麻帆良学園祭の最終日、世界樹の魔力が満ちる今日だからこそ、この改造が意味を持ってくるのです。

 

まずは、巨大な図書館の、2万に及ぶ白紙の蔵書(・・・・・)を、『ブラックボックス』の力で魔道書に作り替えていきます。

『ブラックボックス』は事象を直接操作できますから、私が『こうしよう』と思ったことは、一瞬で実現するのです。

魔法よりもよっぽど酷い力ですね。

 

とはいえ、『ブラックボックス』の使用中は、ただでさえ脳に負荷をかけます。

魔道書の作成が一瞬で終わるとはいえ、それが2万にもなると、3分では到底済みませんでした。

私はまだ人間を辞めていませんので、素の肉体に想像力が縛られているのです。

 

1冊1冊、手で触れながら魔道書にしていくのに、合計で21分、7回分かかりました。

休憩を10分入れましたので、単純計算で91分、1時間と30分ちょいです。

 

「そろそろきゅーけーですぞ」

「は、はい……」

 

私は妖精さんに言われて、顔の黒い模様を手で剥がします。

端を掴んで引っ張るだけで、全部綺麗に剥がれました。

 

こういった妖精さんからの警告がある環境でなければ、『ブラックボックス』は危険な力です。

脳にかかる負荷もそうですが、加減を間違えるとアルさんでも一瞬で消滅させてしまいかねないので。

そして、アルさんほど存在力のある人を消してしまいますと、世界から巨大な揺り戻しを食らいます。

まあ、実際にやったことはありませんけれども。

その揺り戻しで何が起こるのか、予想が付かないのです。

3-Aのクラスメイトが全員男子になったりしたら、嫌過ぎますね。

 

「いや、素晴らしい。

このレベルの魔道書を2万冊、たった1時間半で作成してしまうとは」

 

アルさんは魔道書の一冊を手に、しきりに感心していました。

 

「『事象を直接操作する』力、凄まじいものですね。

なるほど、『造物主』と同じかそれ以上の力というのも、頷けます」

「ただ、戦闘に使うのは難しいと思いますよー。

あらゆることを一瞬で片付けるとはいえ、相手の存在を操作するようなことをするには、世界からの修整力を考慮する必要がありますからねー。

それに、敵に見せるには、この力は危険過ぎますし」

「なるほど……それは確かに同感です」

 

納得してくれたようです。

まあ、この力で世界樹の最下層に封印されているナギを救出するには、解決しなければならない問題が多過ぎるのだと考えて下さい。

迂闊に行ってしまいますと、それは『造物主』を消すことになりますから、揺り戻しで魔法世界が滅んでもおかしくありません。

 

「まあ、その修整力の働きをできるだけ抑えるために、この辺が魔力で満ちる今を選んだのですけれどもね」

「周囲にこれだけ魔力が満ちていれば、どんなに難しい儀式でも、割と発動してしまう可能性がありますからねぇ。

今私達がやろうとしているように」

 

ま、そういうことなのです。

 

私とアルさんが共同でやろうとしているのは、ある特殊な環境を作ること。

周囲に膨大な魔力がある今だからこそできるということで、魔力に関することです。

ぶっちゃけますと、世界樹の膨大な魔力を取り込んだ幻想空間を作ろうとしているのです。

 

膨大な魔力を取り込む入口は、アル(古本)さんの協力で図書館島深部の各所に設置しました。

その魔力を逃がさないために、2万冊もの魔道書で封じ込めを図るのです。

計算上は2万冊の魔道書だけで、学園祭初日くらいの環境にはなるはずです。

さらにこれから、もっと高い魔力を維持できるように、『ブラックボックス』の力でこの図書館を大改造します。

 

どうしてここまで膨大な魔力を詰め込んだ環境を作るのかと言いますと。

単純な話、私が妖精さんを大量に召喚するためです。

周囲に膨大な魔力がある環境ですと、やはり召喚するのも楽ですからね。

 

妖精さんは数が増えるほどに、より難しいお願いを、より短い時間で達成してくれるようになるそうです。

そのための下準備、と言ったところですね。

目標は『惑星緑地化装置(テラ・フォーマー)』です。

 

それまで、千万単位の妖精さんを召喚しなければならないということですが……。

 

頑張りますよ?

 

 

 

 




本日の成果

麻帆良学園祭開催中!
妖精用作業場作成完了。

以上。

つづく



この『ブラックボックス』が、随所に出てきていた『切り札』です。
ついでに、転校初期に妖精さんの数が少なかった理由でもあります。
不測の事態に備えて、先にこれを準備していたんですね。
だから、妖精さんの数が少なく数えられていたんです。
『ブラックボックス』に入った妖精さんの数は、数えられませんから。

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