【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
学生じゃないからね。
しょうがないね。
「“……
雷属性の上位精霊モデル、『竜宮の使い』に向けて、私は『千の雷』をぶつけました。
属性自弾吸収の実験です。
成功すれば、後は『千の雷』を仕上げるだけで、『精霊解放』が必殺の威力になります。
元々広域殲滅魔法ですから、それが上位精霊を経由して一点集中した際の威力は、最強のゴーレム兵器『鬼神兵』を3回は倒せるものとなるそうです。
『アーウェルンクス』も、これの直撃を受けてはただでは済まないとか。
しかし。
上位精霊の姿が弾け、
妖精さん魔改造を受けた『
それが、『千の雷』には1発も耐えられなかったのです。
「これは……困りましたね……」
私はその結果を見て眉をひそめます。
「現状、麻帆良に連絡を取るのはリスクが大きい。
妖精による、さらなる改造はできんと思うべきだな」
それを見ていたエヴァさんは、やや険しい顔。
彼女が言うとおり、今私の手元に『童話の地2』はありません。
麻帆良の、アルさんに預けてきました。
私の行方に関する情報を、完全に断つためです。
「妖精の力なしでこれを解決するには、『
「最上位精霊ですか……」
私は顎に手を当てて唸りました。
私は砲台型の魔法使いで、精霊使いです。
様々な性質の精霊を使役することで、戦いを有利に進めます。
精霊の性質改造も、精霊使いの技能の1つです。
高音さんの『影』は、自分の分身とも言える精霊を使役するため、それだけでもかなり強い技法です。
『影の槍』など、拡散したり集束したり、その本数を増やすだけで、大魔法級の威力は結構簡単に出ますからね。
また、任意操作による追従性も、私が使う一般属性の精霊よりも高いのです。
そのため、『影使い』は基本的な技法を窮めるだけで、どこまでも強くなれるという特性があります。
当然、『繰影術』の習得には特殊な才能が必要で、誰もが習得できるというわけではありません。
しかし、一般属性の精霊使いが必ずしも不利というわけでもないのです。
その理由が、上位以上の精霊の強さにあります。
ま、要するに、上位精霊の改造まで到達できれば、大抵の敵を倒せるということです。
『精霊解放』も、私の完全な
それを戦術として活用する人がいなかっただけのお話なのです。
その一般属性の最上位といえば、当然最上位精霊の使役となります。
その最上位精霊の強さがどのくらいかと言いますと、ラカンさんが苦戦するくらいです。
原作でも、あの筋肉ダルマ自身が、『雷の最上位精霊と戦った経験がなければヤバかった』と言っていましたからね。
威力はともかく、速度は雷速瞬動並だったのでしょう。
「私の『
「お前は、前世の記憶をあまり思い出したくないと言っていたが。
『
お前の精神が、それに耐えられるかどうかだ。
適性は保証してやる」
「……」
私にとっては、一番痛いところでした。
自分の記憶をありのままに受け入れるというのが、私にとってはとてもハードルが高いことなのです。
前世、私は父が敷いたレールから外れるたびに、国会議員だった父の権力によって、レールの上に引き戻されてきました。
学校の友人は、私の父が国会議員だと知ると、急によそよそしくなり。
学校の外で不良に交じるとその不良の友人達が、軽犯罪や冤罪同然なのに、十年近くもの懲役刑にされ。
家に引き篭もると、ネットを通して知り合った友人が、新設されたわけのわからない法律に違反したかどで逮捕され。
大学では、徹底的に人を遠ざけ、復讐と同時に友人達を助けることに集中するようになりました。
極めつけは、初対面の相手を私の婚約者だと紹介されたことです。
お見合いすらなし。
私の人生は、エリートコースなどではなく、自由のない牢獄の中。
いわゆる、籠の中の鳥だったのです。
当時の私は、自分が歪んでいくのを、はっきりと自覚していました。
心を闇にでも染めなければ、私はいずれ壊れ、自殺を選んでいたでしょう。
その記憶を受け入れ、笑って話せる過去とするには。
6年は、短過ぎます。
「無理にとは言わん。
最上位精霊の方も、似たようなものだ。
だが、例えお前が逃げ出したとしても、私がお前の計画を遂行し、世界を救っておいてやる。
そこは心配するな」
「……はい」
涙が出そうです。
ですが。
選択肢がないことも理解していました。
エヴァさんでは、『
彼女は『
『鍵』の影響は受けませんが、『
『
後から思えば――。
この時の私はどうかしていました。
妖精さんに頼る=『ブラックボックス』という、妙な固定観念があったのです。
そのせいでしょう。
私は、自分の前世と向き合おうと、してしまったのです。
翌日より10日ほど、私はてんで使い物になりませんでした。
毎日のように、悪夢を見ていたのです。
前世の、心が擦り減って、歪み、狂っていく日々の夢を。
いえ――。
友人がたくさんいても、ある日突然いなくなる。
家庭内に存在しなかった居場所が、理不尽に奪われる。
友人達との日々が楽しければ楽しいほど、それは私の心を抉ります。
捕まって、冤罪同然の懲役刑が確定したのが私の父の仕業だと知った時の、友人達の怨嗟の言葉。
自殺に失敗し、父への復讐のために、残りの人生をすべて捧げると誓ったあの日。
そして。
それを知った日。
私の復讐劇には、さらにその先、続きがあったのです。
父には、家族を篭の鳥にしてまで倒すべき、敵がいました。
私への妨害の大半は、その倒すべき敵が仕掛けてきたことへの対応として、やらなければならないことだったのです。
そうしなければ、私の命はおろか、友人達の残りの人生も、大変なことになっていたでしょう。
相手は財界の重鎮。
そして、手下となっているのはマスコミ各社でした。
僅かなスキャンダルも、異常なほどの脚色を加えられ、大々的に報じられてしまう。
そうやってスクープされた人間に、明日はありません。
何の犯罪歴もないはずなのに、社会から弾かれ、ドロップアウトするしかないのです。
その後は暗惨たる人生が待っているだけ。
身体を売るか、ホームレスになるか。
そんなことになるのでしたら、冤罪でも牢屋に入ってもらっていれば、後で助けられる。
父はそう判断していました。
私に恨まれるのは覚悟の上で。
父の行いを私が告発すると、父はすべてを警察に告白しようとしていました。
今まで冤罪で投獄した人々を助けるために。
それは、父の権力が失墜したことも、意味していたのです。
その隙を、敵は見逃しませんでした。
正確には、父の派閥の混乱を長引かせるために、父を毒殺したのです。
そうすることで、警察の調べは嫌でも長引きますからね。
その間に、自分達に敵対する政治家に父との癒着を捏造し、マスコミに報道させて敵を一掃しようとしました。
その引き金は、私が引いたのです。
私が数年間、体も許さなかった婚約者は、あっさりと敵側に鞍替え。
彼は色々と父の不正情報を私に漏らしていましたが、最初からこのつもりで父に近付いたスパイでした。
そしてあのホテルの一室で私にも一緒に来るように迫り、断ると私を力ずくで手篭めにしようとしたのです。
もう、誰も信用できませんでした。
せめてあの裏切り者の婚約者を種に、事態を敵側に波及させようと、事実を複数のネット掲示板やSNSに掲載。
私自身は姿を隠し、顔や名前を変えて、自分がやったことの後始末をしようと考えていました。
その矢先に、背中を刺されて死んだのです。
私は、罪深い人間なのですよ。
自分を守ってくれていたはずの父とその仲間達を、ちょっとした行き違いで地獄に落としてしまったのですから。
それについて開き直れるほど、私は図太くはないのです。
今まで、修業やら瞑想やら、人の寝息やら気配やらで、ずっと誤魔化してきました。
やらなければならないことがあるからと、記憶から目を背け続けてきたのです。
大した現実逃避だと、自分でも思いますが。
一度自分で意識を向けると、もう無理です。
少しも耐えられません。
私はずっと誰かの体にしがみついて、ガタガタ震えていました。
「ごめんなさい、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……」
それがエヴァさんだったことも、早乙女さんだったことも、長谷川さんだったこともあります。
とにかく、起きている間はずっと、前世の記憶が頭を巡っていて、眠った後も、悪夢で叫び声とともに目覚めるを繰り返していたのです。
修行どころではありませんでした。
まあ、それが3日ほど続いた時点で、私はエヴァさんが作った幻想空間に精神をとり込まれていたのですけれどもね。
11日の間。
内部時間で2年ほど。
私は眠りっぱなしだったわけです。
ああ、別に『闇の魔法』の
エヴァさんが所持していた、
キャンプから少し離れた場所に隠してありますが、『別荘』を持って来てあります。
実は、皆さんをまとめて転送するのに使用したのです。
マキナの時間停止や超さんの瞬間移動があるとはいえ、個別に転送するのは結構骨ですからね。
『別荘』に皆さんを放り込み、超さんが『
考えてみれば、簡単だったでしょう?
とにかく、そのために持ってきていた『別荘』の中に、例の巻物があったのです。
そこに、エヴァさんは私の精神を放り込んだわけですね。
別に特別なことをせずとも、
まあそういうわけで、私は巻物内の時間で792日、外の時間で11日間、ずっとうじうじと泣いていたのです。
本日の経過
前世の懺悔。
計画的には後退?
以上。
つづく
さあ、最後のどんでん返しです。
ここは、作者ひろっさんにとっても苦しい時間でした。
ここでその後の流れを全部決めてしまう必要がありましたからね。