【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
部屋で蚊の羽音が聞こえると、戦争の始まりです。
私は、目を覚まします。
テントの中、パジャマ姿で毛布を被せられ、寝ていました。
起き上がろうとしますが、上手く力が入りません。
『タイムバナナ』で肉体の時間を巻き戻したためか、衰弱は消えているようですが、そのせいで肉体と魂の乖離が大きくなったようです。
魔力による身体強化も、無意識にはできなくなっていました。
修行をサボっていたとか、そんなレベルではない力の低下っぷりです。
『巻物』の中で2年もウダウダしていたせいもあるのでしょうね。
しばらく、修業分を取り戻すのに時間がかかりそうなのです。
しばらくもがいていて、なんとか肉体の動かし方を思い出していき、起き上がることに成功しました。
毛布が引っ付いてきます。
どうやら、どう寝返りしてもいいように、毛布で簀巻きの芋虫状態になっていたようで。
私の体が小さいからこそできることですね。
嬉しくありません。
「あー、あーえーいーうーえーおーあーおー……うん」
咽喉の調子を確かめ、
毛布を解いて、テントの中で体をほぐしました。
『タイムバナナ』で巻き戻したと言うだけあって、魂の乖離による動きの誤差を除けば、概ね好調です。
肉体と魂の乖離というのは、肉体の時間を巻き戻した程度では起きません。
私が転生者だからこそ、本来の魂ではないからこそ、起きているのです。
「ええっと……着替え着替え……」
私は荷物の中の
「あ――!」「え――!?」
ええまあ、『巻物』の中で2年も過ごしましたからね。
すっかり頭から抜け落ちていました。
しかも、パンツを脱いだタイミングで。
「ネギィィィィィッ!!」
「キャーッ!?」
完全に反応が遅れました。
感極まった
「コラーッ!なに実の妹押し倒してんのよーっ!?」
アンディを引っぺがそうとした明日菜さんが力を込めると、抱き付かれた私ごと持ち上げられ、私は全裸でテントの外に引き摺り出されました。
私は衆人の面前で全裸に剥かれる星の下にでも生まれてきたのでしょうか?
「ネギちゃーん!」「うわあああああああん!」「クンカクンカ」「スーハースーハー」「カリカリモフモフ」
さらに他のクラスメイト達にもみくちゃにされ、もうてんやわんやでした。
変態主人公にオモチャにされて噛み付く、小五ロリの幽霊さんの気持ちが分かった気がします。
30分後。
「大変見苦しいところをお見せしました」
「大丈夫かい?」
エヴァさんに攻撃魔法を叩き込まれて鎮圧されてから、私はマキナを伴って近くの川へ行き、水浴びをしてから服を着替えました。
その間、クラスメイト達は主に明日菜さんの説教です。
騒ぎに参加しなかった僅かなクラスメイト達と共に、私は湖畔でコーヒーを飲みながら待っていた、フェイトハーレムズと対峙します。
キャンプ地近くの湖畔には、パラソルやテーブルに椅子が設置されていましたから、そこでテーブルを挟んでの会談となります。
「マキナから聞きましたが、厄介なことになっているそうですね?」
「正しい認識だ。とても厄介なことになっている」
白い少年フェイト・アーウェルンクスは無表情に頷きました。
「幾つか聞きたいことがあります」
私は切り出します。
「僕の知識にあることなら答えよう」
「まずは、
元々の前提として、魔法世界の崩壊を食い止める方法がないから、創造主の責任として、そこに生きていた人々を『完全なる世界』に送り込むことで、救済の代わりとしようとした。
私達はそう認識しています。
相違はありますか?」
「ない」
頷きます。
「現状、『デュナミス』さんが離反し、
その本来の思惑から外れている部分は、どのようなことでしょう?」
重ねて尋ねました。
「『
そして、同時にその魔力を用いて無限に召喚魔を召喚し、まずは地球に、次に魔界へ、さらにはまた違う異世界、平行世界まで滅ぼそうとしている。
さらに、そのために旧世界人を何人も殺害しているし、洗脳して尖兵ともしている。
『
それゆえに、『人形』には殺害制限がある。
いや、あった、と言うべきか」
「なるほど……それでは、次の質問です」
質問を続けます。
「『デュナミス』さんは、私達のことをどこまで知っていますか?」
「ある程度は推測になるが――」
「構いません」
私は先を促しました。
「僕は2年前の段階で『デュナミス』と袂を分かっていた。
だが、奴が君のことを知っていたのは確実だよ。
お姫様については、僕には情報が回ってこなかったから、確かなことは言えないな。
僕も、知ったのは例の西の本部襲撃の時だ。
『デュナミス』が知らない可能性も、そこまで低くはないと考えている」
「そういえば、あの時には袂を分かっていたのでしたら、なぜ襲撃などしたのです?」
尋ねます。
少し脇道に逸れますが。
「
迫っている魔法世界の崩壊よりも、『デュナミス』の方が危険だと僕は判断した」
それはまあ、そうでしょうね。
今の『デュナミス』さんは、核爆弾を爆破機構付きで手に入れた終末思想家のようなものです。
一刻も早く止めなければ、全世界を破滅に導いてしまうでしょう。
「筋は通っていますね」
私は呟きます。
そして、本当に聞きたいことを口にしました。
「それでは、もしも崩壊を食い止め、根本的にこの問題を解決する方法があれば、あなたは全世界
これから共闘するのに、ここの部分ははっきりさせておかなければなりません。
私が言ったのはつまりこういうことです。
『
今のフェイトさんには、厳しい質問かもしれませんね。
しかし、返ってきた反応は、私も予想だにしていないものでした。
「正直――」
彼は、空になったコーヒーカップに視線を落とし、無表情の中に不安の色を滲ませたのです。
「正直、自分でもよく分からない。
『アーウェルンクス』から外れた存在になったからかもしれないけど。
以前ほどの使命感はないんだ。
ただ、魔法世界人の知り合いもたくさんできた。
共についてきてくれるという人達もいる。
彼女らのためにも、魔法世界が崩壊しない方がいいのは間違いない。
勘違いしないでほしいけれど、これは『
既存の方法ではこの問題を解決することができない。
そこに『完全なる世界』という解決策を提示したのが『
結局、どちらもより良い解決策があれば、それに飛び付くんだよ。
そこは僕個人も同じさ」
つまり、説得は可能――と。
「問題は――君が提示する解決策を、どこまで信じられるかだ」
「はい」
私は頷きます。
「それでは、共闘そのものは十分可能ですね。
ひとまずは目先の危機への対処を先に行いましょう。
後の話はそれからです」
私はフェイト少年と握手を交わしました。
「目下最大の懸念は、かなり無茶な方法で始められるであろう戦争です」
私は話を進めます。
「『デュナミス』さん達は、別に全世界
魔力を集めて『人形』を次々と生産していけば、それで私達は非常に対処が難しくなりますからね。
そのために行われるのが、『鍵』のレプリカによる魔法世界人の魔力への還元、つまり『虐殺』です」
「世が乱れている方が、確かに『虐殺』はやりやすい。
20年前は結果的にそうなったという話だったけど、それを人工的にやろうということか」
「『デュナミス』さんが人道に配慮するとは、とても思えませんからね」
「同感だ」
フェイトさんは頷きました。
「オイ、20年前のアレって、始まりからオマエラが計画してたんじゃねえのかよ?」
ラカンさんが口を挟みます。
「当時、僕はまだ稼働していなかったから、断片的にしか知らないんだけどね。
各勢力、各国の代表者を集めた場で、魔法世界の危機について話し合いが行われたのさ。
『
「それはそのまま言ったのですか?」
「そう聞いている」
私は天を仰ぎました。
「『
「それは……どういう意味だい?」
「自国の兵器を、利益も出ないのに削減しろなんて言い分が、通るわけがありません。
そこに魔法世界の崩壊という巨大な
そうすれば、魔法世界の崩壊という要素がある以上、迂闊な兵器の増産ができなくなります。
終戦時により多くの戦力を保持していた方が、絶対的に有利になるのは素人でも分かることです。
その戦いが表面化すれば、どんどん戦火が拡大していきます。
そうした方が魔法世界の崩壊がより先延ばしになるのですから、当然ですよね」
そして、死の商人達は戦争を長引かせようとします。
その中に『
戦争を継続した方が儲けが出る商売なのですから。
そうやって終わらない戦争がいつまでも続いていき、それを見た『
ああ、これはこの小説のオリジナル設定ですよ。
原作の『
「そうか……」
フェイト少年は
視線を反らして呟きました。
「あの時、あそこまで大きな戦争にするつもりはなかったと言っていたのは、そういうことだったのか……」
「オイ」「オイ」「オイ」
私、エヴァさん、ラカンさんのツッコミが綺麗にハモりました。
『
原作『ネギま!』でも、結構こういう失敗をやらかしています。
全世界
フェイトさんにつきましても、離反覚悟で目的意識を設定しなかったとかなんとか。
かなり重要な問題を扱っているのに、それでいいのか『
なんて、言いたくなりますよね?ね?ね?
本日の経過
フェイト・アーウェルンクスとの会談。
以上。
つづく
造物主が思ったより馬鹿で、腹筋の寿命がストレスでマッハなんだが…。
というお話でした。
創造神、頭が良いとは、限らない。
これも平行世界設定ということでご了承ください。