【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
靄より霧って言う方がかっこよくて好きです。
091 新オスティア浮遊島
新オスティア浮遊島。
前話で紹介した通り、メガロメセンブリアの信託統治領です。
金銭的に、まだ自立できないようですし。
20年前から続く広域魔力消失現象のおかげで、国土の半分近くで魔法が使用できなくなってしまっているのです。
魔法世界と言うだけありまして、魔法の使用が一般的と言うほどの魔法社会ですからね。
大抵の産業は魔法の使用を前提としています。
それゆえに、魔法の使えない地というのは、イコール住めない土地。
地球で言えば、放射能汚染された土地も同然なのです。
そして、産業設備の大半は、魔力消失領域に取り残されています。
取りに行くことができないのですよ。
移動手段も魔法が大前提ですから。
気の使い手でしたらある程度は活動できるのかもしれませんが、大型の設備となりますと、持ち出すのはほぼ不可能です。
つまり。
20年前に、ウェスペルタティア王国の産業は、一度滅んでしまったのですよ。
人がほとんど助かったとはいえ、再び設備を揃えるために再投資するだけのお金は、当然ながら王家にも民間にもありませんでした。
だから、メガロメセンブリアの庇護を受けざるを得なかったわけです。
多分、再興にはあと30年とか40年とか、そういう単位の時間がかかってくるでしょうね。
人材も散逸してしまっていますし。
しかも、施策にどんな成果が表れるかは、10年単位の時間が経過しなければ分かりません。
それを僅かでも予想して事を進めていく必要があるのです。
そういう国のトップ、総督というのが、どれだけ大変な仕事なのか、ご理解いただけたでしょうか?
非常に大きな厄介事ですよね。
……というのが、作者による穴だらけの原作考察です。
原作ではクルトさんはそれなりに上手くやっているようでしたが、この平行世界では見ていて哀れになるくらいに忙殺されているというお話です。
もちろん、元老院から無理難題を押し付けられているせいなのです。
そんな新オスティアの宿場町に、エヴァさん達D班は宿を取っていました。
遺跡を巡ったり、魔獣退治を請け負ったり、賞金を稼いだりするチームです。
「早いですね」
「途中で
「何か大物を当てたのですか?」
私は尋ねます。
船というのは魔導船のことで、魔法世界では一般的な、空を飛ぶ船のことです。
原作では確か、小型で中古でも15万ドラクマとかしたはずですが。
かなり無茶が利くメンバーとはいえ、そう簡単に稼げるような金額ではありません。
「空賊を襲撃して、船を分捕った」
「なんとまあ……。
よく壊しませんでしたね」
空賊相手に負けるとか、そんなことは微塵も考えません。
「その辺は
「なるほど……」
確かに、他のメンバーでは船ごと真っ二つか木端微塵か、どちらかでしょう。
エヴァさんではその辺の加減が利かなさそうですし。
「空賊船にしては上等な船だぞ。
なんせ、ヘラス帝国から持ち逃げしてきたらしいからな」
「ブーッ!?」
とんでもないことを言いやがりました。
飲んでいた紅茶を噴いたじゃないですか。
「それ、私達が持ってて大丈夫なんですか?」
「早乙女ハルナがヘラス当局と話を付けていた。
詳しくは知らんが、色々な条件を付けて許可をもぎ取ってきたらしい。
そのせいで中身は別物だとも言っていた」
「技術的に盗まれるとヤバいものは積み替えたというところでしょうかね。
ま、後で聞いてみましょうか」
とにかく、『デュナミス』さん達が注目するような、大きな事件ではなかったようです。
単なる空賊退治で処理されるでしょうし。
しかし、原作では中古の小型船だったのですが……。
これも改変要素ということなのでしょうか?
しばらくして、買い出しや情報収集から戻ったアンディ達とも対面しました。
アンディは、子供ながらかなり精悍な顔つきになっています。
何か色々とあって、成長したという感じでしょうか。
「うんうん、やはり成長してもアンディはアンディなのですね」
「ゴメン……」
パンツを脱がされた私は、ゲンコツでアンディを殴り倒し、パンツを取り返しました。
トイレでパンツを穿き直し、またリビングに戻ります。
「なんか、お互い大人モードだと、セクハラも凄い絵面になるわねー」
ホクホク顔の
一体どこのエロゲーかというくらいには、キモオタ大歓喜なシチュエーションではあります。
「ノンケにご興味がおありでしたっけ?」
「面白けりゃ良し!BLならなお良し!もちろん百合もオッケー!」
早乙女さんはサムズアップと共に答えました。
このブレなさはさすがなのです。
「そういえば、軍艦を手に入れたというお話ですが、改装にはどのくらい時間がかかりますか?」
「んー、ゴーレムも使えるし、内装を組むだけなら2日で出来るわよ」
「
「それも3日でいけるわ」
「なるほど、十分間に合いそうですね」
「何か希望があるなら聞くわよ?」
「2週間後の出発に遅れることのないように、それだけはお願いします」
仕事の成立に必要なものは、価格、品質、そして納期です。
幾ら安くて高い品質があったとしましても、必要なタイミングで使用できなければ意味がありません。
「お、じゃあ内装とか武装は好きにしちゃっていいの?」
「
「ほぉ、良いこと聞いたわね」
「ああ、当然ですが、高望みしすぎてお金が足りないなんて言いましても、サポートはしませんから悪しからず」
「おーけーおーけー、私だけでも結構稼いでるから、良い装備を選んでくるわ!」
早乙女ハルナさんは言いました。
「そんなに稼げたのですか?」
「辺境だと娯楽が少ないらしくってね。
描きながら売り歩いたらバカ売れしたわよ」
「いえ、識字率の問題がありますし、読めない人もいるのではないかと思いまして」
「ふっふっふ、パル様を侮ってもらっちゃいけないわよー。
漫画には、
原作コミックでも、夏休みに入る前にあったやつですね。
絵と動きだけで話を仕上げたという……。
ちなみに。
あまり知られていませんが、国民全員が自分の名前を文字で書けるのが当たり前というのは、実は日本の他にはシンガポールくらいしかありません。
旧世界と魔法世界も含めて、です。
選挙の時などは、顔の下に表示された色で選んだりするのです。
アメリカでさえそうなのです。
ヘラス帝国やメガロメセンブリアも例外ではありません。
そのような、文化の違い過ぎる人々に漫画というものを理解させるのは、一筋縄ではいかないはずです。
そこはさすが早乙女さんとしておきましょうか。
「さて、改めてアンディ、お話とは何でしょう?」
「魔法世界って、崩壊するんだよね?」
「――何の対策も打たずに放置していれば、そうなります」
どこで聞いたのか、あるいは自分の力で辿り着いたのか。
それを尋ねるのは野暮というものでしょう。
「それじゃあ、
「はい」
私は頷きます。
「ホスピスというのをご存知ですか?」
「……」
アンディは黙って首を横に振りました。
「終末期医療とも呼ばれます。
死病で余命が確定した患者が、最期の時を迎えるために心の整理をするまでの間、最低限の延命を施す設備の整った病院のことです。
『
魔法世界が消えた後もある程度は存続しますが、いずれ取り込まれた人々ごと消滅してしまいます」
「……」
俯いたまま、声も上げません。
「
それをずっと考えていた」
アンディはぽつりと話を始めます。
「そして、この
それはつまり、この世界が崩壊した後に依り代となっている星の表面に放り出された人々ってことになる」
彼なりに、考えていたようですね。
「この広大な人造異界の依り代となれる星の内、過酷でも人が住めなくないのは……」
「火星だけですね」
「やっぱり、そうなんだね」
「ええ、そうです。魔法世界は火星にあります」
私は答えました。
「ただ、なぜ少しずつ地球に避難するなり、一度壊して作り直すなり、できないのかな?
それだけが分からないんだ」
原作でもあった、パズルの最後の1ピースというやつですね。
「例えば……私が篭っていた『
あれには空間を管理する人造霊が設定されていません。
それは、エヴァさんが不完全な状態で作成を止めてしまったからです。
ですが、ラカンさんが持っている、『
アレが本来、幻術空間
そして、相応の魔力があれば、フェイトさん達のような『人形』を、強さはどうあれ幾らでも作り出すことが可能です。
彼らは当然……」
ここで、少し言葉を切ります。
アンディは俯いたままでした。
なので、続けます。
「魔法世界が消滅すれば、存在を維持できなくなり、消滅します。
それが魔法世界人であり……そうでない実体を持った人間が、つまり私達旧世界人や、その純血の末裔と言われるメガロメセンブリア人達なのです」
これを原作では幻想と言っていましたが。
異論はなくもないのですけれどもね。
まあ、今は置いておきましょう。
「そんな……それじゃあ……」
「はい、20年前の戦争を起こした最大の元凶は、
私がこれを確信したのは、フェイトさんのお話からです。
今の話でも、推測に推測を重ねただけですからね。
確証は得られていませんでした。
消えない人々が消える人々の足元を見た結果、起きた戦争です。
仕掛けたのはヘラス帝国ですが、最大のきっかけを作ったのは
第二次大戦に参戦するために、資源の輸入を禁止して包囲し、無理矢理日本との戦端を開いたアメリカのやり方に似ていますね。
自分達は消えないのですから、『
それは事実上の無血開城。
それにNOを突き付け宣戦布告したのが、20年前の『大分裂戦争』の真相です。
原作では、最初に起きたのは小さな紛争だったとしていますが、その実最初から両者がやる気満々だったということなのですよ。
だからこそ、本気で相手を滅ぼすまで、お互いに戦力を投入し続けたのです。
もちろん、この小説の作者による勝手な解釈なのですけれどもね。
ただ、この平行世界では、フェイト少年という証人がいます。
彼はこの仮説がほぼ正しいことを認めました。
「まあ、今は『デュナミス』さんに集中しましょう。
フェイトさんには話が通じますが、『デュナミス』さんには通じません。
放っておけば、あちらは確実に世界を滅ぼしてしまいます」
「ああ、そうだね」
「この辺のことは、他の皆さんが合流してから、改めてする予定です。
その時にまた、皆さんを交えてお話しましょう」
「わかったよ」
アンディは頷きます。
成長してきたのはいいのですが、子供のお守は大変ですねえ。
年齢的にも子供なのは間違いないのですが。
本日の成果
新オスティア到着!
移動用の艦船として小型軍船入手。
以上。
つづく
まだネタバレと言うには早い段階です。