【ラスボス】外道幼女が行く、ネギま平行世界【逃げて】 作:ひろっさん
「まさか、君達が手を組んでいたとはね……」
神経質そうな金髪メガネの男性が言いました。
「9年後の危機よりも先に、数週間内に対処しなければならない危機がありましてね。
そのために一時協力し合っている、というところなのです」
「フム……ということは、魔法世界の崩壊に連なる問題についてはご存知ということですか?」
「はい」
私は説明します。
「ああ、説明の前に1つ」
「何でしょう?」
「頭を冷やしましたから――そろそろこの
「さて、どうしましょうか?」
私はにっこりと笑いました。
「うわ、黒っ」「大体いつも通りね」「ネギちゃん絶好調」「相変わらずやねー」
「前世はヴラド・ドラキュラ伯爵でしたから」
「また、微妙なところだな」
吸血鬼ドラキュラ伯爵。
そのモデルとなった、ルーマニアのワラキア伯爵領の領主です。
『ドラキュラ』の名前の由来は、先祖代々受け継がれてきた『ドラクル』が元です。
意味は『
キリスト教において竜は邪悪な存在であり、『ドラクル』は『悪魔』とも訳されます。
『ドラキュラ』で、日本語訳は『小竜公』、つまり『ドラクルの子』となるそうです。
もう1つ、ヴラド伯爵の呼び名として多いのが、『ツェペシュ』です。
これは、領内の政敵を粛清した際、処刑法として串刺し刑を多用したことから付けられました。
意味はそのまま、『串刺し公』です。
この串刺し刑には、隣国オスマン・トルコからの侵略を牽制する意味もあり、実際にオスマン・トルコがワラキアを侵攻した際には、内通者や捕虜を串刺し刑で処刑し、敵兵を震え上がらせ、士気を低下させたと言います。
典型的な恐怖戦術ですね
エヴァさんのお話では、この時に串刺し刑で処刑されたのは、領内で破壊工作を行っていた魔法使いが大半を占めていたそうです。
ゲリラ戦術に対抗するために、見せしめの意味で串刺し刑を行ったとか。
もちろん、捏造設定ですが。
いずれにせよ、この恐怖戦略によって、見事オスマン・トルコの侵略軍を撃退することに成功しました。
そのため、地元では彼は大英雄として讃えられているというお話です。
地元で英雄視されているというのは本当のようですね。
「それはいいから、そろそろ降ろしてくれませんか?」
「チッ」
私はあからさまに舌打ちをして見せます。
ちなみに、磔にしていたのは私が放った『雷の槍』です。
何せ、いきなり刀を抜いて斬りかかってきましたので。
300本ほどの槍で牽制した次第です。
原作の腕前からしますと、このくらいでしたらなんとか対応できると思っていたのですけれどもね。
長いデスクワークのせいで、原作よりも腕前が落ちたのでしょうか?
「それでは改めて自己紹介しましょう。
私はクルト・ゲーデル。
元老院議員にして、新オスティア総督です。
ネギ君に、アンディ君だね?」
「はい」「はい」
私とアンディはそれぞれ頷きました。
「それにしても、単に日頃の疲れで判断力が鈍っていたのかと思っていたのですが……」
私は周囲に舞い散る書類数枚に目を通します。
そのすべてが内容が判別し辛い程度に切り刻まれていました。
が、幾つか気になる記述があります。
「元老院もなかなかえげつないことをしますね」
「わかるので?」
「『紙爆弾』、ですね」
「『紙爆弾』?」
アンディが訊いてきます。
「政治における、下品なやり方の1つですよ。
本来早く回さなければならない案件を、期限ギリギリまで保留しておくのです。
会議の直前などに緊急性の高い案件を回されますと、最悪その会議に出席できなくなってしまいますからね。
少なくとも、まともな議論はできなくなってしまいます。
そういった議論能力を爆破してしまうという意味で、この手法は『紙爆弾』あるいは『書類爆弾』と呼ばれています。
――問題は、内容が
本来、新オスティア総督のところに回ってくるはずのない案件ですね」
「なんでそんなのが執務室にまで来てんの?
普通、こういうのって下が送り返すでしょ?」
さすがに政治関連のことには詳しいですね。
「他の元老院議員が無理矢理押し込んでいるんですよ。
私だけではありません。
外交担当のリカード議員のところでも、内政の書類が山積みになっています」
ゲーデルさんは深々と溜息を吐きます。
「ど、どうしてそんなことに……?」
呟いたのは、刹那さんです。
「見当は付きます」
「『悠久の風』の職員を人質に取られているんですね?」
私の代わりに答えたのはアンディでした。
色々と自分で考えるようになったせいか、この辺の汚い事情についても分かるようになってきたようです。
「正解です」
ゲーデルさんは頷きます。
「怠慢のツケを押し付けられてるってこと?」
質問はまたも朝倉さん。
「違いますね。
こちらの書類はゴミ処理場の建設。
こちらは処理前の瓦礫の置場。
さらに不採算部門の人員削減。
行政があまり関わりたくない難題ばかりです。
それを押し付け、しかも余所者が口を出していけば、住民はいい顔をするわけがありません。
政治家として再起不能になるまで、貶めようとしているのですよ」
「そんな……」
「『デュナミス』がそんなことを……?」
「おそらく、『デュナミス』さんは最低限のことしか命じていないはずです。
命令内容は、『旧世界の魔法組織に気付かれないように、『悠久の風』の後ろ盾を潰せ』といったところでしょうか」
「おそらくそんなところだろう。
『人形』の量産儀式によって世界を滅ぼす場合、儀式の準備をするのに5年では利かない。
自ら『悠久の風』潰しのために細かく指示を出していた暇はなかったはずだ」
フェイトさんは頷きます。
「待ってください。
一体何が起きているんですか?」
ゲーデルさんは尋ねてきました。
「その辺につきましても、追々説明しておきましょう」
私は言います。
なぜか、説明キャラが板についてきた気もしますが。
これは前世政治家の秘書だったからでしょうね。
何かと話をまとめて説明する機会が多かったので。
とりあえず、普通に考えればほぼ詰んでいる現況について説明します。
方法につきましては不明。
『悠久の風』潰しも、この『紙爆弾』だったものの山も、元凶は『デュナミス』さんです。
ただ、『紙爆弾』という手口に関しましては、おそらく元老院上層部の思惑が関わっているでしょうね。
政権を握ったテロリストが、こんなまどろっこしいことをするとは思えませんから。
むしろ、最初に時間稼ぎのための命令だけをしておいて、後は基本放置だったのでしょう。
そして、傀儡化という
元々、『悠久の風』を潰したかったのは彼らとて同じなのです。
なぜならば、私とアンディの存在は、彼らにとって政治生命を断たれかねないほどの、致命的なものだからです。
つまり、『デュナミス』さんが命じたのは最初の一度だけで、その後の暗殺未遂は元老院上層部の仕業なのです。
そこまでは、私も
誤算だったのは、『デュナミス』さんの計画です。
目的が魔法世界の救済から、破滅になってしまっていました。
私も、ある程度は話が通じるものだとばかり思っていたのですよ。
しかし、フェイト少年及び
呼び方の如何は置いておきますが、要するにただの反社会組織としてのテロリストに、なり下がってしまったということです。
説得不能。
政治的に詰めてしまっても、潜伏して次の機会を探し、あるいは私達の中心人物を1人ずつ暗殺するとか、そういう手を使うことでしょう。
逃げながら『虐殺』を始めるかもしれません。
それを避けるために、私はあえて
こうすることで、彼らの居場所を固定し、特定することができるのです。
火星と地球を結ぶわけですから、膨大な魔力が吸い上げられています。
それを1箇所を残して破壊すれば、吸い上げられた魔力は再び龍脈に還元され、霊脈を巡ります。
そして龍脈は力を取り戻し、残る1つの
その魔力を利用して、『アーウェルンクス』のような『人形』を量産すれば、今の魔法世界だけの戦力ではどうにもなりません。
『
魔法世界人達は直接魔力に還元され、旧世界人は捕まって魔力を絞り取るための装置にかけられ、さらなる『人形』のための肥やしとなるのです。
つまり、世界を破滅させるだけでしたら、『完全なる世界』という術式に頼る必要すらないのですよ。
もちろん、現状のそれは『デュナミス』さんによる改変を受けていまして、発動してしまえば似たような方法で地球や魔界をも破滅に追い込んでしまいます。
そのためにも、後2週間ほどで戦力を掻き集め、『デュナミス』さん達を倒してしまわなければならないのです。
先にも言いましたが、圧倒的優位を錯覚させていなければ、逃げられてしまいます。
そうなった場合、どれほどの犠牲が出るのか、想像もつきません。
最低でも年に1万とか10万とか、そういう単位でしょう。
そして犠牲は、時間を経るごとに加速度的に増加していきます。
世界最強クラスの実力者達が揃った、反社会テロリストなのです。
無差別に人を殺すのを目的に、大国に喧嘩を売っている快楽殺人鬼達と言っても過言ではありません。
しかも手駒になりそうな人を洗脳までしています。
旧世界でも、魔法も使えないようなテロリスト達が、何千何万人と殺しているのです。
逃亡を許すなんて、考えたくもありません。
「――ま、多少は条件が
ということで、
出てきてください、
私が言いますと、総督執務室の床に丸い穴が開きました。
「――!?」「なっ!?」「えっ!?」
右から順番にフェイト少年、ゲーデルさん、アンディです。
それは床を破壊した穴ではなく、もっと魔法的な、『異界の穴』とでも呼ぶべきものでした。
そしてそこから、ひょっこりと黒髪をボンボンでまとめたお下げの少女が顔を出します。
「や、やぁ、久し振りヨ」
少々戸惑いながらでしたが。
それは紛れもなく、かつて退学届を置いて麻帆良を去った3-Aクラスメイト。
その3週間ほど後に帰ってきていたのは、読者の皆様もご存知の通りです。
感動台無しとか言ってはいけません。
これはそういう小説なのです。
本日の経過
計画最終ネタバレ中。
超鈴音ら麻帆良残留チームと合流。
以上。
つづく
ようやく超鈴音合流……!
次回、本格的なネタバレです。