笑わない王女様が笑った時には外堀全埋めされてた件   作:恋狸

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16日目②

 ルミナスは微かな緊張感を胸に扉を開ける。その先に待ち受ける者を警戒し神経を張り詰めながらギギギと音を立てて押していく。

 

(中は……広くて暗い……けど誰かがいる気配がします)

 

 部屋に入らずとも、押し潰されるようなプレッシャーを感じたルミナスは額に汗を浮かべていた。

 

 

「──よくぞ来た」

 

「ッッ!!!!」

 

 一際大きな部屋の中央付近まで来たところで、聞こえた少年のような声にルミナスはパッと飛び退く。

 

 瞬間、部屋の灯りが一斉に灯る。

 

「貴方は……」

 

 どうやらここは謁見の間らしく、ルミナスの視線先には、玉座に座る黒色のローブを纏う少年と、呆れたような目を少年に送っている青年がいた。

 

「あのー、この演出いるんスか?」

 

「当たり前だろ? 格好良いじゃん?」

 

 そのやり取りでルミナスは気が抜けた。

 しかし、同時に少年がただ者でないことも気がついていたがために、警戒は一切解いていない。

 

 

「貴方たちの目的はいったいなんですか?」

 

 凛とした声が響く。こんな状況に陥ってもなお、ルミナスは冷静さを損なわず確固とした目的の元話す。

 青年は、ハァ……と隈が深く刻まれた目に指を当てて半ば呆れるように言う。

 

 

「まぁ、『魔剣士』の餌ッスね。そのために王女様を拐ったッス。でも、まさかその餌に毒が入ってるとは思わなかったッスよ……。兵士全滅とか……」

  

 被害額ヤバいッスと、非常に疲れた顔で言う青年に、ルミナスの眉がピクッと上がる。やはり、餌と言われ腹が立ったのだ。だが、それよりも深い怒りがルミナスを包む。

 

「たかがあの数で先生を殺せるとは思えませんが。少し『魔剣士』を侮っているのではないですか?」 

 

 あの程度でヨウメイを殺せるというニュアンスで放った青年の言葉が苛立ちの原因だった。誰よりも近くでヨウメイの強さを見て、尊敬している先生が馬鹿にされるのをルミナスは我慢できなかったのだ。

 

 真っ正面から王女の怒りを受けた青年は、その言葉に不気味に微笑む。

 訝しげに眉を潜めたルミナスが言葉を発しようとした瞬間、場に似合わない幼い声が響く。

 

  

「なぁなぁ、そんなのどうでもよくないか? 我は早く目的を達したいぞ?」

 

「目的、とは?」

 

 拗ねるように不満を漏らした少年の『目的』というワードにルミナスは反応する。

 

 すると、少年はキラキラと瞳を輝かせながら大袈裟に身振り手振りを交わして言う。

 

「我には夢があるのだ。それは誰もが笑える世界を創ることだ!!! 皆で笑い合い、共に過ごせる国はとても良いと思わないか?」

 

 それは実に見た目通りの『夢』で。

 ルミナスはそれが、先生を殺すこととなんの目的があるのだろうと、思考を深めるが答えは出ない。 

 

「ならば、なぜ先生を殺そうとするのです? 先生が平和の象徴になっているからこそ、人々を安心して笑えるのですよ?」  

 

「ふっ、それは擬似的な平和に満足する愚か者たちが思うまやかしだ」

 

「ではどうすると?」

 

「簡単だ!!! すべての国を滅ぼし、我の統一王朝とする! そして、全てを支配し、新たな国を作り上げた時、我の夢は達成される!」

 

 ルミナスは本気で少年の言っている意味がわからくなっていた。

 矛盾だ。それこそまやかしではないか。と。

 

「それでは、誰かを殺され残った者共は笑えなくなります。貴方の言っていることは理解しかねます」

 

 すると、少年は徐《おもむろ》に立ち上がると、ニヤリと──殺意に満ちた不気味な微笑みで言い放つ。

 

 

「我の創った世界で笑えぬというならば──殺してしまえば良い」

 

「……ッッ!!」

 

(狂っている……。同じ人間だとはとても思いたくありません)

 

 ルミナスは、少年の言葉全てに嫌悪感を覚えた。

 矛盾だらけの物言いに、善悪の判断も付かない力を持った子供。

 

 最早この少年……いや、皇帝はこの国の病巣である。

 そう判断したルミナスは言葉を交わすことを止めた。

 

(即刻、捕縛します)

 

 この二人の強さは分からない。ならば、何かされる前に攻撃してしまえば良いと即座に判断したのだ。

 

 手を突き出し魔法の発動準備が完了する。ルミナスがルーン文字を描こうとしたその瞬間、今まで皇帝の言葉に黙っていた青年が、指を擦り合わせた。

 

 ──パチン。

 

 その音が聞こえた途端、ルミナスの四方に淡い赤色の結界のようなものが展開され──

 

「あっ……」

 

 ──突如訪れた体の不調に、ルミナスは膝を突く。

 

(……魔法が使えない)  

  

 即刻魔法を放ち結界を壊そうとしたルミナスだったが、上手く魔力を練ることができない。

 

 

「古代魔具『アンチ・マジック』。結界内で魔法は使えないッスよ。それに……そのままだと王女様は二度と魔法が使えなくなるッスよ?」

 

 ニヤニヤと人を人と思わない、ふざけきった笑みを浮かべながら、ルミナスにとって聞き捨てのならない言葉を放った。

 

「なんで……!!」

 

 片膝を着いて顔を苦悶に歪めながらそれでも、ルミナスは気丈に立ち向かう。

 青年は苦しむルミナスを見てさらに笑みを深めると、機嫌良さげに語る。

 

 

「その魔道具は、体内の魔力器官……まあ、魔力を練る場所を乱す効果があるんスけど、時間が経てば経つほどその魔力器官が徐々にぶっ壊れていって、最終的に永遠に魔法が使えなくなるッスよ! これで、か弱い王女に戻れるッスね!」

 

 人の神経を逆撫でにするような言葉遣いでルミナスを追い込む。

 

 魔法が使えなくなる。それは今のルミナスにとっての死を意味していた。

 

 大袈裟ではない。

 魔法が使えなくなるのは、自分の掴みかけていた存在意義を失くすことを意味し、さらに()()()()()()()()()()()ことを意味していた。

 それはルミナスにとって耐え難いことだ。

 

 幸せが壊れる。

 ルミナスの脳内で、先生との思い出。楽しかった事が再生され……最後にそれ全てが崩れ去る映像を幻視した。

 

 

「嫌です……そんなの絶対嫌です。やっと、やっと幸せを知れたのに……また失うなんて嫌です!」

 

 ルミナスからポロポロと涙が落ちていく。

 失う辛さをルミナスを知っている。失ったものを取り戻し、またそれを失うなど苦痛以外の何ものでもない。

 嫌だ、嫌だとうわ言のように呟くルミナスを見た、少年と青年は嗜虐的な笑みを浮かべる。この二人は結局のところ、人が傷つき絶望する瞬間を見るのが好きなのだ。趣味が悪いにもほどがある。

 

 ルミナスは涙を流しながら、最後の希望を振り絞る。

 今最も己の信じる人物を呼ぶ。

 

 ルミナスのたった一人の英雄を。

 

 

「助けて、先生……」 

 

 

 

 

 

 英雄は悲劇に駆けつける。泣く少女の存在を許さない。

 

 

 

 ──パキッと、結界にヒビが入る。

 そのコンマ数秒後には、結界がバラバラになっていた。

 

 

 

 

「……先生」

 

 涙にぼやける視界に、求めていた大きな背中を見た。

 涙をぐしぐし拭いて、英雄を見たルミナスは、もう一度その名前を呼んだ。

 

 

「先生っっ!!」

 

「──助けに来た。無事か?」

 

 いつもと変わらない優しい笑みでルミナスの無事を確認したヨウメイは、内心に満ちる怒りを抑えながら厳しい視線を、少年と青年に送る。

 

 

「お前ら許さねぇ。俺の教え子を傷つけた報いは受けてもらう」

 

 青年は、ヨウメイから放たれた殺気に臆することなく、自分の策に嵌まったヨウメイを見て笑う。

 皇帝はビビってちょっとだけ漏らしていた。

 

 

「第二ラウンド……ッスかねぇ」

 

 青年は愉しげに嗤った。 

 

☆☆☆

 

 

 ──良かった。間に合った……。

 

 間一髪のところを助けられたことに安堵しつつ、心はささくれだっている。

 

 まあ、それはともかく……ルミナス……随分暴れたな!!!!

 しらみ潰しに探し回ったんだけど、至るところで兵士、騎士たちが凍りつけにされてたり、頭から壁に埋もれてたり、惨憺な状況だったのはさすがにビビった。

 それでも、誰一人として死んでいない。致命傷は綺麗に避けられていてホッとしたものだ。

 

 あとは……『神霜』使えるようになったのか。

 この部屋の近くで凍っていた敵。その魔法の規模は、まさしく俺が例の場所でルミナスに見せた『神霜』そのものだ。

 まさか一週間もしないうちに取得されるとは思わなかった。本当に抜かれそうだな。

 

 教え子の成長具合に軽く引きつつ、敵の反応を窺う。

 

 玉座に座る少年……あれは皇帝だな。隣に控えるのは宰相か。

 皇帝は俺にビビってるからとりあえず良いとして、あの宰相の不気味な微笑みが気になるところだ。

 俺が来てあの態度は、何か策があるに違いない。

 

 警戒を高め、俺は即座に魔力を練る。

 

 

「『氷獄』」

 

 この技は、生成速度を極めれば最速最強の捕縛技となる。そのため、使い勝手が良く俺は多用している。

 

  

「ぬおっ!?」

 

 そして、なんと呆気ないことに、氷の球体に黒幕二人を閉じ込めることに成功した。

 閉じ込めれば、そこから出るには外部からの衝撃が必要だ。仲間は見当たらないし問題ないだろう。そして、皇帝に関しては呆気なく気絶していた。物理攻撃じゃないんだけどな。

 

「なんか拍子抜けだな」

 

 ルミナスを封じ込めたあの結界が切り札だったのか? でも、俺をわざわざ呼び寄せたからには何かあると思ったんだけどな。

 

「こんなあっさり……」

 

 ルミナスも驚いたような、しかしどこか煮え切らない表情で何かを悩んでいる。

 

 刹那、魔力感知が反応を示し、頭の中で警鐘が鳴り響く。

 

 

「『ストーム』ッッ!!!!」

 

 迫り来る何かに『熱』を感じた瞬間、選んだ魔法は風魔法。嵐を呼び起こす魔法だ。

 

 炎だ。

 それも圧縮され高密度の白く輝く炎。

 すんでのところで、魔法の発動が間に合い、風が炎を巻き上げる。

 

 

「熱!?」

 

「大丈夫か、ルミナス!」 

 

「……はい、ですが、いったい誰が……」

 

 上手く散らしきれなかった炎が、熱となって俺たちを襲う。

 ……あの場には二人しかいなかったはずだ。魔力感知は万能ではないが、生物である限り確実に反応するはず。

 

 すると、愉快げに大声をあげて笑う宰相が立っていた。

 なぜ『氷獄』を……ッッ。まさか!

 

 

「熱か……」

 

 先程の魔法が『氷獄』を溶かしたのだ。ただの炎で溶けるほど『氷獄』は柔ではないが、少なくともあの規模の炎魔法ならば溶けてもおかしくない。

 

「あはははっっ!!! 今のを避けるんスか! さすが化物ッスねぇ!」

 

 宰相に魔法を打った形跡はない。だが、あの炎は紛れもなく『氷獄』を溶かすために放たれた魔法だろう。であれば、宰相の指示……?

 

 炎と嵐が混じり合い、煙が立ち込める中、ようやく煙が晴れていき魔法を放った人物が浮き彫りになっていく。

 

 

 

 

 

 

「クレム……」

 

 

 そこに立っていたのは、かつての恩人兼友達である魔女クレムだった。

 

 

 彼女の姿を見た瞬間、頭の中で過去の光景がフラッシュバックした。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 俺とクレムの出会いはかなり特殊だと思う。

 

 『ヤマト』の南西の『彼方《かなた》』という街で育った俺だが、ある日魔王が束ねる異形の怪物……魔物の襲撃を受けて街は一晩にして炎の渦に飲み込まれたのだ。

 当時なんの力も無かった幼い俺は、逃げる最中で人波に巻き込まれて、両親とはぐれてしまう。

 

 そんな中、一体の魔物が俺に襲いかかった……のを助けてくれたのが、各地を放浪していた魔女クレムだった。

 

 

 それが最初の出会いだったのだが、それからが問題だった。

 助けてくれた出来事で終わっていれば、俺にとっての恩人、で済むのだがなぜか知らないがクレムに気に入られて、しばしば遊ぶことがあった。

 クレムの年齢は知らないが、性格は非常に危なっかしく、悪戯好きの子供だ。それに世界最強とも言える力を持っているのが最大の悩みで。

 

『あ、ヨウメイ! あのおじさんから悪の気配するから禿げる呪いと1日に一回下痢になる呪いかけてくるね!』

 

 と悪い人を見つけては呪いを掛けて楽しむ奴だった。頼むからハゲと下痢のセットは止めて差し上げろと言いたかったけど、俺も悪乗りしてた。軽く黒歴史。

 

 俺とクレムの関係は……なんだろう。悪友のような感じかな。各地を放浪してるクレムと会う機会自体少ないし、そこまで深い関わりはなかったけど、確かに大事な恩人であり友達だった。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 だからこそだ。

 ルミナスが呪いを掛けられたと聞いた時、俺は不思議に思った。

 確かにに気まぐれで人に呪いを掛けるはた迷惑な奴だが、相手は選ぶ。少なくとも悪人にしか呪いを掛けていないはずだ。

 

 クレムは十年間所在が不明だった。

 まあ、神出鬼没なやつだし、と特に気にしてはいなかったが……

 

 

 

「お前か。お前がクレムを操っているのか」

 

 今のクレムは様子がおかしい。

 明るい様子は鳴りを潜めている。いつも楽しげにキラキラ輝いていた瞳は、漆黒の闇に覆われている。

 そして、宰相を庇うような動き。

 これだけ情報が揃えば間違いない。

 

 『異能』だ。クレムは宰相の『異能』によって操られている。

 

 俺はかつての恩人の心を縛り付ける宰相にどす黒い怒りが吹き出るのを感じる。

 

 

「クレム? あぁ、魔女の名前ッスか。あははっ、驚いた。化物の魔女にも人間らしい名前があったんスね! 十年の付き合いなのに知らなかったッス!」 

 

「は?」

 

 にやけ面のまま放たれた宰相の言葉に俺は固まった。

 

 10年、10年だと……?    

 ちょうどクレムがいなくなった時期だ。……こいつは10年もクレムの意識を奪い続けてたのか?

 

 ヤバい。自分が抑えられない。

 

 

「先生……?」

 

 あまりの怒りに、魔力が可視化する。その様子にルミナスが訝しげに俺を呼ぶが、もう聞こえなかった。

 

 

「おい、お前を殺したら、クレムは元通りになるのか?」

 

 宰相は、飄々と殺気に恐れもせずに笑いながら答える。

 

「さあ? 死んだことないからわかんないッスね」

 

「じゃあ、死なせてやるよ」

 

 限界だった。

 怒りに頭が沸騰したように熱い。視界は真っ赤に染まっていて、目の前の青年を殺すことしか頭になかった。  

 今までなかった。知り合いが悲壮な目に合うことが。俺は幸運だったのだ。

 だから、()()()()()()()()()()()()()()()を馬鹿みたいな正義面をして自慢げに言えたんだ。

 

 ふざけるな。

 

 

 腰に差している剣を引き抜く。  

 美しい青色の刀身が輝く。

 俺は奴を殺すために一歩を踏み込んだ──

 

 

「ダメ!!!」

 

 瞬間、氷の壁が目の前に立ち塞がる。

 

「邪魔する……。ッッ!!」

 

 邪魔するな、と罵声を浴びせようと振り返った瞬間、魔法を放った少女の悲しげな表情に、俺は冷や水を浴びせられた気分を味わった。

 

 泣くわけでもない。悲しんでいるわけでもない。

 

 ただただ強い覚悟に輝く瞳が、俺を射抜いていた。

 

 

 ──あぁ、俺は何してるんだよ。

 教えたこと、俺自身が全然できてねぇじゃねぇか……。何が先生だ。何が『魔剣士』だ。今ここに立っているのはただの獣だ。自分の感情に振り回されるだけの醜い化物だ。

 

 力は振るうものじゃない。

 俺より年下のルミナスがそれを理解していて、教えたはずの俺が分からせられている。

 情けない、不甲斐ない。

 

 怒りに染まっていても、ただ嘆いていても。状況は変わりはしないんだ。

 

 俺がやるべきことは、クレムを、俺の悪友を救うことだ。怒りのまま切りかかることじゃない。 

 

 

「──ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 感謝を伝えると、ルミナスは一言満足げに頷くき、真っ直ぐ前を向き言った。

 

 

「私、『異能』を消す『異能』を持ってるみたいです」

 

 

 

 

「んん?」

 

 

 理解するまでに、少しばかりの時間を要した。

 

 

「はあぁぁ!!??」

 

 頭に情報が回りきった瞬間、戦闘中にも関わらず俺は驚きのあまり叫ぶのだった。

 先に言えよ、とは口が裂けても言えなかった。

 いや、あれじゃん。じゃあ、解決じゃん。俺の出番何もないじゃん。

 じゃんの三段活用を使い、ふぅ……と息を吐く。

 

 

「力を貸してくれるか?」

 

 情けない話だが、俺に『異能』を解除する術は持たない。

 守り育てる生徒に協力を乞うなんて先生失格にも程がある。

 

 だけども、ルミナスは心底嬉しそうに、

 

 

「はい!!」

 

 と、大きな声で協力を引き受けてくれた。

 

 水を差すようで悪いけど、このやり取りの間にもめちゃくちゃクレムの魔法が襲いかかっている。

 そろそろルミナスの『アイス・ウォール』が壊れそうだ。

 早々に決着を着けなければならない。

 

 

「すぐに行けるか? 発動条件とかはどうなってる?」

 

「つい先程、使い方がわかったばかりですが……多分少し集中する時間が必要だと思います」

 

 

 どういう経緯でルミナスが『異能』を身に付けたのかは知らないが、思えば実戦訓練の時に、すでに芽が出ていたのかもしれない。……え? あれは俺のミス? 知らんな。

 

 と、とにかく、俺がやるべきことはハッキリした。  

 俺はルミナスにニッと笑い掛ける。

 

 

「時間稼ぎは任せろ。絶対に……今度こそお前を守り抜くから」

 

 やはり後悔があった。ルミナスが拐われ傷ついたことが。俺が警戒を怠らなければ気付けたかもしれないのだ。

 だから、だから、俺は今度こそルミナスを守る。これ以上、心も体も傷つかせはしない。

 

 

 そんな決意を込めた言葉に、ルミナスは戦闘で昂っているのか、顔を赤らめて「お願いしますぅ……」と消え入るような声で言った。どうした?

 

 

「あっはっは!!! 僕を殺すんじゃなかったッスか? 守ってばかりで『魔剣士』も名折れッスね!!」

 

 宰相の苛つかせる言葉も、今の俺には聞かない。

 そして、遂に氷の牙城が崩れ去る。

 

 

「『閃嵐《せんらん》』」

 

 崩れた氷の壁の合間を縫って放たれた魔法を、風の塊を飛ばして相殺させる。

 

 ここからは俺の出番だ。

 

 

「何もかも守りきってさ。ハッピーエンドで終わりたいよなぁ! 『閃嵐』!!」

 

 こうして、俺たちの『守る』ための戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

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