笑わない王女様が笑った時には外堀全埋めされてた件   作:恋狸

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4日目②

 ババァが俺の先生(師匠と呼ぶと怒る)になったきっかけは、俺が頼み込んだからだ。

 巷に流れる『メスガキ』という言葉をスルーして、凄腕の魔法使いという言葉に乗せられ弟子入りを志願したのだ。

 その姿を最初に見た時は幼女の姿をしていたこともあって、なんだ、所詮噂は噂だったか、と思ったのだがよく観察してみると内に秘める魔力量が化物だった。

 当時、10歳だった俺の数十倍。()()()()()なんていう俺よりも多かったのだ。

 だからこそ、一回は姿に惑わされたものの、その実力を見込んで頼んだのだ。

 

 

「あなたにバブみを感じました。弟子にしてオギャらせてくださいなんて言うから弟子にしたというのに情けないですねぇ」

 

「人の過去を捏造しないでもらっていい??」

 

 んなこと一ミリも言ってねぇよ!! 見た目ロリの実年齢ババァの相手にバブみとは。

 

「あぁ、そうでしたね。私に惚れたから頼んだんでしたっけ?」

 

「それも違うわ!!」

 

 ババァは、宙に浮いた俺を見下しながらクスクス嘲笑う。

 俺の青筋は終始ピキピキ音を立てて怒りを表している。

 まあ、実力に惚れたのは間違いないけど。

 

「ふふっ。『初志貫徹』『一意専心』『不撓不屈』でしたっけ?」

 

「あぁ、そうだよ」

 

 いずれも弱音を吐きそうになった時、自分を叱咤激励した言葉だ。

 全部修行の時にね! 死にかけるなんて日常茶飯事だから。 

 その言葉は漏れなくババァに聴かれていて、時たまその言葉を引き合いに出される。

 

「あ、『雲外蒼天』もでしたっけ。何はともあれ、挫けないんですよね?」

 

「……当たり前だ」

 

 ババァはやる気の無いものに興味を全くと言って良い程興味を示さない。多分、俺は気に入られてる……かもしれないから、励ましてくれることもあるが、その方法がおちょくることだから勘弁してほしい。

 

 ババァは魔法を解除し、緊張から崩れ落ちた俺を腕を組んで見下ろす。

 

「それにしても、私は魔法の先生であって『異能』を教えてるつもりはないのですけどね。どうして、窮地に陥る時に覚醒するのが『異能』なのでしょうか。さっさと魔法のコントロールを覚えてほしいものです」

 

「そんなこと言われてもなぁ……。常に半径一キロを爆破する恐怖があるんだよ」

 

 修行気分で暴走したら洒落にならない。

 人の生き死にが懸かってる状況で積極的に魔法を使う気には勿論ならない。

 魔法のコントロールは、目下最大の案件だが遅々として進まない。ババァに関しては産まれた時からコントロールできたそうで、くそ、天才が、と時折毒を吐きたくなる。

 

 すると、ババァはポンッと何かを思い付いたようなように手を打つとニッコリと見た目相応の純真無垢な笑みを浮かべて言った。

 

「裸になりましょう!」

 

「は?」

 

「は、じゃなくて裸です。全裸ですよ。素っ裸です。裸体です」

 

「語彙のバリエーション増やされたって事実は同じなんだが。そして、結局意味がわからない件について」

 

 らったいー、ぜんらー、すっぱーだっかー、と謎の歌と踊りを披露するババァ。

 全裸? なんで? 前後の部分から全く話の繋がりが見えないのだが。

 

「いや、ですね。最近、魔力のコントロールが上手くいかなかった知り合いロリコンさんがですね」

 

「知り合いのロリコンさんとは」

 

「急に魔力のコントロールができるようにはったそうで。話を聞いてみたんですよ。そしたら、山の神秘満ち溢れる場所で裸になって瞑想したらコントロールできるようになった! だから、一緒に全裸で瞑想しよう! って言われたんです」

 

「変態じゃん」

 

「勿論、そのロリコンさんは、しっかり地に還しておきました。抜かりはありません。うん」

 

「そこの心配はしてないんだよ。生憎と」

 

 ツッコミ所のオンパレードすぎる。

 情報が錯綜して、何処から何を理解していいのかわからなくなってくる。

 とりあえず、ロリコンさんはお悔やみ申し上げます。

 

「その言葉信じるわけ?」

 

「実際にコントロール出来てましたからねぇ……。私に対しては嘘をつかないように調教してたので」

 

「だから包み隠さなかったんかい」

 

 何てハイレベルなロリコンなんだと思ったけど調教のせいで、本当のことしか言えなくなっていただけか。いや、思ってる時点でアウトじゃねぇか。言い逃れできねぇよ。

 

「というわけで、全裸っちゃいましょう!」

 

 全裸っちゃう、ってなに。

 

「いや、普通に嫌だよ。もし、本当に効果あるなら一人でやるし」

 

「いえ、コントロールの過程で暴走する危険性あるので一人は許可できません」

 

 そこだけ真面目な表情だった。

 つまり、本当のことか。

 

「まあ、露出狂で、結果私に劣情を催したとしても大笑いするだけにしますから安心してください」

 

 菩薩の笑みだった。

 何も安心できねぇし、俺はロリコンじゃない。

 

「ちなみに拒否権は?」

 

「ありません♪」

 

「ですよねー」

 

 やれ、と言ったことはやらねばいけない。その過程で何度も俺とロリコンさんが犠牲になったから拒否権がないことは理解している。

 

「あー、もうわかった! やれば良いんだろ! やれば!」

 

「おぉ~。良い脱ぎっぷりですねぇ」

 

「黙れ!」

 

 シャツを引きちぎるように脱ぐと拍手と歓声が上がる。頼むから黙ってっ!

 俺も13。成人まで後1年の今、すでに大人扱いをされても良い年なのだ。だからさ、羞恥心ってやつはあるわけで。

 例え、相手がおばさんであろうと若いお姉さんだろうと、小さい子供だろうと恥ずかしいんだよ!

 

「んな、まじまじと見んな!」

 

 後ろを向いているのにわざわざ回り込もうとする変態ロリババァを阻止し、ようやく諦めた頃瞑想を始める。

 

「ふむ、確かに魔力の摂取効率はかなり良いようですね……。それに、魔力とは別の成分も取り込んでいる。おっと、メモメモ」

 

 後ろでは学者モードに入ったババァがブツブツ呟いている。どうやら興味深いことであるらしい。

 俺も魔力に身を任せていると、何か暖かい物体に包み込まれるような感覚を覚える。

 恐怖はない。むしろ、安心感すら感じるほどだ。

 

 そのままあっという間に二、三時間経つ頃には、うっすらと魔力のコントロールの方法が理解できるようになった。

 

 理屈ではない。感情でもない。

 大いなる意思に動かされるように、魔力の運びが意識上に誘う。

 

「何となく掴めた」

 

「そのようですね」

 

「うわっ!!」

 

 目を開けると目の前にババァがいた。

 赤色の双眸は細く、注意深く何かを観察していた。

 おそらく俺の魔力を確認しているのだう。

 

「荒れ狂っていた魔力が嘘のように静かになっています。慎重に魔法を扱っていけばその内に、コントロールを物にすることができるでしょう」

 

「そうか……。ロリコンさんの言うことが正しい……とはちょっと認めたくないけど感謝しなきゃな」

 

「土に還ってますが」

 

「お前が埋めたんだろうが」

 

 生きてるよね? 多分生きてるよね??

 やっぱり、御愁傷様案件? 警邏呼ぶ?

 

 そんなことを考えていると、体の一部に熱視線が飛んでいるようなゾワリとした感覚が身を包んだ。

 瞬間的に嫌な予感がして、飛び退くと、ニヤリと嗜虐的な笑みを浮かべるババァと目が合う。

 そして、ゆっくりと口を開く。

 

 

 

「ぱおーん♪」

 

 

「こんちくしょうがああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 この日俺は消えぬトラウマを背負うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ということがあったんだ」

 

 先生との出来事を99%カットしてルミナスに伝える。くそ、嫌なことまで思い出しちゃったじゃねぇか。

 

「なるほど。だから先生はコントロールできるようになったのですか……」

 

 俺も嫌がったことを伝えて、心理的緩和を図る。少しの効果は見込めたようで、怒りの視線は消え、納得した表情を浮かべて頷いている。

 というか、俺も先生と呼ばれているのか。確かに何となく師匠と呼ばれるのは嫌な気がする。

 

 そのままルミナスは沈黙し、少しの間逡巡していると、覚悟の決まった顔で俺を見た。

 

 

「わかりました。魔法のためです。なります。……ぜ、全裸に」

 

「お、おう。なんか……すまんな」

 

「いえ……。それと、暴走抑制のために先生も近くにいる必要があるんですよね……?」

 

「そうだが、安心しろ!」

 

 俺は懐から目隠しを取り出す。

 

「それは……?」

 

 疑問を示すルミナスに、揚々と答える。

 

「これは、闇魔法を付与した絶対に外が見えない目隠しだ!! 誰得? と思ったけどこんな使い道があるとは」

 

「技術の無駄遣い……」

 

 そんなこと言うんじゃありません。

 確かに、付与は高等技術だけどさ。何なら俺も無駄遣いだと思ったけどさ!!

 

「プラス、後ろ向いとくから安心してくれ!」

 

「は、はい。……別にそこまでしなくても」

 

「いやいや、俺がもし一般人だったら一族郎党処刑になる案件だぜ? そりゃ徹底するわ」

 

 俺の徹底ぶりに少し引いているルミナスだが、俺はさも当然と頷く。

 王女の裸なんてヤバいて。『魔剣士』であろうとヤバいわ。

 

 時間もないし、と俺は後ろを向いてから目隠しをする。

 

 視界が塞がれ、完全な暗闇が一面に広がった。

 

 




赤バーよ、サヨナラダバー
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