願いの女神   作:Aa_おにぎり

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第二一話

その日、マリアはややほつれた衣装を着て離宮を出ていた。その横に一人の少女の小さな手を握って……。

 

「此処で良いかしら?」

「はい…」

 

此処は貧困街のとある場所。アンジェはマリアに言われて彼女の親に話をしようとしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日前、離宮にてアンジェを個室に移動したマリアはそこで席を用意させて座らせていた。

 

「……さて、アンジェ様。お話ししたいことがございます」

「っ!!」

 

真面目な雰囲気に、アンジェは背筋を伸ばすとマリアはアンジェに提案を持ちかける。

 

「アンジェ様、これから私達はロンドンに向かう事になります」

「っ!!それは……」

 

それはつまり、シャーロットとの別れを意味する。それは、友人との別れを意味していた。アンジェはそこで悲しげにしてしまうと、マリアがある提案を持ちかけた。

 

「そこでアンジェ様。如何でしょう?シャーロット様と共にロンドンに行かれると言うのは?」

「……え?」

 

アンジェはマリアの問いに疑問に思うと、マリアは詳しい話をし出す。

 

「今よりも会う時間は減ることとなってしまいますが、私の元で働く見習い看護師という事にすれば貴方をロンドンに連れて行くことができます」

「それって……」

「はい、アンジェ様はシャーロット様とまだ過ごせる事となります」

「で、でも……」

 

アンジェはそこで一瞬脳裏にあの父親の事が過り、一瞬考え込んでしまうとマリアは言う。

 

「ご両親のことが心配?」

「……はい」

 

そう言うと、マリアはアンジェを見て続ける。

 

「では、私が直接事情をお話し致します」

「え、でも……」

「大丈夫です。明日、その親御さんの元へ案内してもらえますか?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そうして翌日、アンジェはあの親のもとに連れて行くとマリアは家の前の現れたボロ布に小太りの男に話しかけた。

 

「貴方は、アンジェ様のお父様でしょうか?」

「あぁ?なんだお前ぇっ?……っ!おい、テメェっ!!」

 

そう言って、アンジェを見て掴み掛かろうとした際。

 

「はいはい、まずはこちらのお話を聞かせてもらいましょうね」

「うぎっ!?」

 

その男の足を、堅い革靴で踏みつけていた。その痛みで地面に転けると、マリアはその男に片手に持ったポンド紙幣を十枚ほど手渡した。

 

「これで、この子を引き取らせてもらっても宜しくて?」

「あ、あぁ……!!」

 

そう言い、その紙幣を見たアンジェの父は子供の泥集めの様に紙幣を受け取るとそのままコクコクと頷いていた。

それを見届け、マリアはアンジェの手を引く。

 

「さ、行きましょう」

「え?あ、ちょっと……」

「どうかされました?」

「……ううん、やっぱなんでも無い」

 

アンジェは先程渡した紙幣が大金であると分かる。それほどの金をポンと出せるマリアにアンジェは少し驚きと疑問が浮かび上がった。そしてアンジェもなんとなく察せた。マリアは私を()()()のだと……。

マリアの引く手は少し冷たかったが、暖かくも感じれた。

 

 

 

 

 

どんどん暮らしていた貧民街が離れていく中、マリアは言う。

 

「アンジェ様、これからは我々の元で暮らしていただきます。これから色々と忙しくなるかもしれませんが、大丈夫ですか?」

「は、はいっ!!」

 

そう言うと、マリアは頭を包む様に巻いていたスカーフを取ると、それを仕舞いながらアンジェに言う。

 

「アンジェ様。これから数日は忙しくなるかも知れませんが…よろしくお願いしますね」

「はっ、はいっ!!」

 

アンジェは思わず背筋が伸びてしまうと、マリアと共に遊びに行っていた離宮に向かった。

 

 

 

 

 

離宮に帰ったマリア達はそこで安心した様子でアンジェを見て仕事に移っていた。此処最近の動きからマリア達は移動する事が決まり、その準備で大忙しだった。そんな中、マリアによってシャーロットと同じ部屋に入れられたアンジェは、そこでシャーロットによってある提案がされていた。

 

「私、外の世界を見てみたいの!!」

 

初めはそんなシャーロットの提案から始まった。いつもはマリアから鬼畜外には出るなと言われていたから、その反動で忙しそうな今なら抜け出してもバレないと思ったのだろう。

それから事はトントン拍子で着替えをしていた。離宮は何やら忙しい様でシャーロット達を見ていないので、すぐに戻ってくると言ってそのままあのであったあの城壁の隙間から出て行ってしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

地下水路を出て、初めてみた外の景色は思っていたものと全然違った。

 

ボロボロの家に、貧困に喘ぐ国民。目の焦点が合っていなくて壁にへたり込んでいる人や、寝たまま動かないでいる人がいた。

 

ーーこんなのではダメだ。

ーー誰かが変えなければ。

 

街を見ているうちに、そう思う様になってきたシャーロットは城への道に戻ろうとした時。

 

ドォォン!!

 

遠くで爆発音の様な音が聞こえた。それは、パレードなどで撃っていた空砲に似ていた気がする。そして、遠くでは声を高らかに王政反対を掲げる人々がシュプレヒコールを叫んで通りを歩いていた。そしてその視線の先には煙の上がる離宮があった。

 

「アンジェ…マリア……!!」

 

その様子に慌てて、シャーロットは人混みの中を縫う様にして先に進む。その先では、燃え盛る離宮があった。

 

「そんな……」

 

炎の上がった離宮を見て、呆然と立ち尽くしてしまうも。そこでハッとなる。

 

「あそこに行けば……」

 

アンジェと初めて会った場所。あの離宮の一角の古井戸があった場所。そこに走って行った。

 

 

 

 

 

離宮が燃え盛る中、シャーロットは古井戸にたどり着くとそこでアンジェと再開した。再開するや否や、シャーロットはアンジェに誓う。

 

「アンジェ。私、女王になる」

 

それはとても固い決意であった。

 

「アンジェと入れ替わったおかげで、私、気付いたの。みんなを別ける、見えない壁がいっぱいあるって」

 

少女は知る。その現実を、そしてそこで見てきた景色を。

 

「私は女王になって、その壁を壊してやるの!」

 

燃え盛る離宮の中。少女は同じ顔を持つ少女の手を握って誓った。

 

「そうしたら。私とあなたと、ずっと一緒にいられる!」

 

しかし、それは夢物語ではないかとアンジェは思わず聞いてしまうと。シャーロットはさらに強く握って答える。

 

「夢じゃないわ!私はきっと叶えて見せる、約束する」

 

しかしその瞬間。

 

ガシャーンッ!!

 

離宮の壁に直撃した、革命に参加した部隊の大砲が直撃。その衝撃で壁が崩落。その崩落にシャーロット達は巻き込まれてしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

それから、私がシャーロット殿下……いや、アンジェ様と再開できたのは一ヶ月後の事であった。革命軍の砲撃に巻き込まれ、一時的に気を失ってしまった私は目を覚ました後。内戦中の混乱する中、見覚えのある少女の元に駆け寄った。

 

「シャーロット様!!」

 

そう叫んで、部屋の隅で震えていた少女を抱きしめたが。そこで違和感を感じた。

 

「あ、あの…マリア……さん」

「っ!?も、もしや……」

 

恐る恐る聞くと、その少女はコクリと頷いた。それを見たマリアは驚愕を押し殺しながら目の前にいるアンジェを強く抱きしめた。

 

「アンジェ様は……私がお守り致します」

 

そう言い、私は彼女を守る為に彼女を死んだ事にしようとしたら。彼女がそれを拒否した。

 

「私がいなかったら、シャーロットの帰る場所が無くなってしまう」

 

そう言う理由と、シャーロットと別れるまでの過程を詳しく聞いた私はその後、アンジェに言われた。

 

「シャーロットが帰ってくるまで、私は彼女の居場所を守る。だから、それまで私は()()()()()()()()()彼女の居場所を守り抜く。だから、協力して欲しい」

「……畏まりました」

 

王女の入れ替わりなど、歴史上でも初めてではないかと言うほどの大失態だ。おまけに今の王宮は革命の騒ぎで非常にピリピリしている。下手をすれば殺される可能性があった。あの離宮は今は共和国領な上に、あの離宮での生き残りは居らず。おまけにシャーロット殿下の両親はあの離宮で逃げ遅れて処刑された事が新聞で堂々と報じられていた。そんな中確認されたシャーロット殿下の生存。そのシャーロット自身が本人ではないとすれば少なくとも王宮内の貴族は殺しに掛かり、そしてまた混乱を起こす。

しかし、だからこそマリアは言う。

 

「アンジェ様、それは大変な茨の道となりますが……覚悟は出来ていますか?」

「ええ…だって……」

 

私の唯一の友達だから。

 

そう言うと、アンジェはマリアを見て頷いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ーーマリア様」

「んぁ……」

 

徐に目を開け、マリアは目を覚ます。今彼女がいるのはメイフェア校の保健室。マリアは船を漕いでいたようで、目の前にはクラウスが半分呆れたように立っていた。彼は机の上に荷物を置くと、マリアに問いかける。

 

「随分とお疲れの様ですが……」

「…ええ、長い夢を見ていたわ……」

 

そう呟くと、マリアは顔を上げて窓の外の壁を見ながら呟く。

 

「思えば、あの子が殿下と再会してから。本気で王位を目指す様になった……。それまでは、『空気姫』なんて言われるくらい影を潜めていたのに……」

 

それまで、本物のシャーロットが帰ってくるまでその椅子を守る事を前提に動いていたアンジェは、動かなかった。

 

「しかし、そう思われるのも同義かと思われます」

「あの時、君は何処にいたかね?」

「あの時はエディンバラにおりました」

「そこから帰国まで五年か……報告を受けた時は驚いたもんだよ」

 

そう呟き、マリアはそのまま保健室のベットで横になる。そして、天井を見ながらマリアはポツリと言葉をこぼす。

 

「今でこそ、シャーロットが帰ってきたからよかったけれども。もし、見つからなかった場合はどうすればいいかと思ったよ……」

「それは、ご主……マリア様がご命令送ったからでしょう。お陰でこちらは離宮周りの捜索から色々、忙しかったんですから……」

 

そう言うと、マリアはクラウスに言う。

 

「でも驚いたわ。まさか貴方が()()()()()()()()()()に勤めていた事には……」

「国の情勢を知る為に丁度いい隠れ蓑でしたので。おまけにあそこは、拾ってきた孤児で埋め尽くされていましたので」

「木を隠すには森の中……。よく考えたわね……」

 

そう言うと、クラウスは申し訳なさそうに言う。

 

「しかし、厳戒態勢の国境を越えるのは不可能でした……申し訳ありません」

「良いのよ、結果として彼女はこっちに来た……」

 

そう言うと、窓の外を見ながらマリアは言う。

 

「あとは、シャーロット様と共和国を切り離す作業をしなければならないわね……」

 

 

 

 

 

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