私の目的は変わらない。
与えられた使命の通りに私は
共和国からの任務は、私にとってみればただのオマケでしかない。
共和国の軍部も情報部も、王国も、私のこの人生の中では単なる忍耐の場所であった。
共和国から王国に入った時、私は司令が届くのを待つ日々を待つ日々を送っていた。
あの革命から歳月が経ち、遂に私は使命を果たす日が訪れた。
「(母上…)」
そこでゼルダは柱に背を預けながら部屋で待機していたシャーロットを見る。
「(彼女に魔女の因子の存在は無い…)」
この時点でゼルダは確信していた。彼女は
そしてその時点で彼女の中では次の仕事が決まっていた。
軍部はこの革命を成就すれば、王国領への侵攻の足がかりにしようとしているそうだが、お笑い種もいいところだ。
そう思いながら視線を下すと、そこではイングウェイの他、数名の少年兵に囲まれていたシャーロットの姿があった。
装甲列車や車列を撃退したドロシー達は、新王立寺院へ向かっていた。
「大丈夫か?」
「ええ…何も問題ないわ」
車に乗っていたドロシーは言うと、アンジェは胸元を一度強く握りしめてから位置を大きく吸って整えていた。
「っ!!?」
その時、ドロシーはブレーキを踏んで急制動を行った。しかし展開されたスパイクを踏みつけてしまい、タイヤは破裂すると、そのまま車はバリケードに横付けするように衝突した。その直後に強力なトラックの照明が車に向けて照射されると、薄暗かった壁内が一転して明るく照らされた。
「隠れて」
すぐにアンジェは察したベアトリスを掴んで車体の陰に隠れた。
「撃て!」
その直後、光の差す方から銃弾が飛び、間一髪で隠れたアンジェ達に集中砲火が加えられた。
「万事休すか…!」
そこでドロシーは愛銃の回転式散弾銃を握るが、向こうは数十人。しかも一個小隊規模の完全武装兵。制服は内務省管轄の青い制服だ。
「捕らえますか?」
「いや、死体の方が都合が良い」
部下からの問いかけにガゼルはそう答えると、斉射で仕留めようと腕を上げた。その瞬間、蒸気自動車の煙突部から火の付けられた炮烙玉が投げ込まれ、直後に機関部で爆発を起こした。
「っ!!?」
突如背面で起こった爆発は、照明を破壊して視界を悪くさせる。そして追い打ちをかけるように周辺に発煙弾が投げ込まれ、視界はさらに悪化する。
「様子がおかしいわ」
「何があったんでしょう…?」
車両の爆発、周囲の煙幕。いよいよかと腹を括っていた彼女達は、その以前にすぐに気がついて警戒しながら顔を覗かせた。
すると彼女達の背後から一本の縄が降りて、そこを伝うように一人の人影が現れた。
「ちせ!」「ちせさん!!」
降りてきたのはちせであった。彼女はいつもの小太刀も持っており、アンジェ達を見て笑みを見せた。
「一宿一飯の恩義じゃ」
彼女はそう話すと、頼もしい援軍を前にアンジェ達の顔に光が灯った。
「くそっ!!」
その中、ゼルダは発煙弾を苛立たしく蹴り上げる。
「総員前へ!」
そして指示を出すと、小銃を構えた完全武装の兵士達は横隊を組んで戦列歩兵のように前進をしてくる。
「何!?」
その直後、穴だらけの自動車の陰からCボールを使って四人は飛翔すると、そのまま壁の中の通路まで飛んでいく。その事にゼルダは目を見開いて驚愕した。
そして飛翔した四人はそのまま通路を走っていく。その道中でちせは全ての事情をドロシーから聞いた。
「女王暗殺か。穏やかではないな…」
共和国の軍部が計画をした女王暗殺計画に眉を顰めるちせ。確かに女王を暗殺した後、この国は一時的な混乱状態となるだろう。しかし、それはノルマンディー公を始めとした多くの王侯貴族がこの十年で築き上げた王国という最後の楽園を前に文字通り死力を尽くして抵抗をするに違いない。
そうすれば待っているのは王国と共和国の共倒れだ。双方に大量の血が流れることとなる。
「(捨てがまりになる…)」
ちせは遠い日本にある一つの戦法を思い出す。それは天下分け目の東西の大合戦で行われた戦法。少なくともこの国に来てそのようなことは見たことがなかった。
「プリンセスがゼルダと一緒に寺院に居るらしいんだけど…」
そこでドロシーが言うと、ちせは覚えがあった。
「ゼルダなら吹き抜けの部屋の上に居るのを見たぞ」
「本当か?」
「嘘は言わん。礼拝堂から見えた」
彼女は断言すると、ドロシーはこの付き合いでちせを信用しており、すぐにシャーロットに変装したアンジェに言う。
「アンジェ!お前はプリンセスを助けに行け!!」
「私も連れて行け!」
そしてドロシー・ベアトリス、アンジェ・ちせの二手に分かれる事となると、アンジェは手元のCボールを起動して空高く舞い上がった。
新王立寺院の一室でシャーロットは息を呑む。
「いよいよなのですね…」
「ご安心くださいプリンセス。手筈は万全です」
イングウェイはシャーロットに多大な敬意を示しており、自らの行いの正しさに後押しされた眼差しをしていた。
「イングウェイ少佐。天井を落とすとはどのようにするのですか?」
「鍵を使い、私が仕掛けを…」
その時、ゼルダは横槍を入れてくる。
「少佐!心中をお察ししろ。プリンセスにとって女王は身内なのだ」
「確かに…とんだご無礼を」
内心で舌打ちをしながらイングウェイはゼルダに答えた。
元より、こちらを信用してないと見て良いゼルダだ。これからは少し無茶をしなければならないだろう。
「いえ、女王になる為に話に乗ったのは私の方です」
シャーロットはそこでイングウェイにこの暴走を止めさせるために動く。
「なのに自分だけ手を汚さずにいるなんて許されませんわ。鍵を、私に任せてくださいませんか?」
「いや、それは…」
頑なにその鍵を預かろうとしてくる彼女に、イングウェイも流石に困惑気味に見てしまう。その瞬間、彼の手は無意識に左手を後ろにやった。
「プリンセス、個室を用意させます」
「私は別に…」
そこでゼルダはすかさず言ってきた。やはり抜け目のない女だ。アンジェ達よりも卓越した技術を感じ取ることができる。
「どうぞ、こちらに」
「……」
こうも言い寄られ、尚且つ言い訳もこの場では思い浮かばなかった。
「では、お言葉に甘えて」
そこでゼルダに言われた彼女は、イングウェイの側を通り過ぎてから別室に向かう。
「少佐。鍵は私が預かる」
「はい…ん?」
その瞬間、その何気ない動作をしっかりと見通していた彼女はイングウェイに話しかけ、その会話をシャーロットも聞いていた。
「鍵が無い…」
途端に彼女の手の中に握られた鍵に汗が滲み出る。あとはこの鍵を外に捨ててしまえば、私の勝ちだ。
「プリンセス、お待ちを」
そして後数歩で部屋の外に出られると思った時、ゼルダが呼びかけた。
「お下がりになる前に、荷物を調べさせていただきたい」
「……」
その瞬間、彼女は走り出した。
この鍵を窓の外に捨てられれば、あとはどうなっても構わない。
「っ!?」
しかしゼルダが一歩早かった。彼女は首元を掴まれ、組み伏せされた。そしてシャーロットは持っていた鍵を床に落とし、軽い金属音が部屋に響いた。
そして鍵を前にゼルダはシャーロットを取り押さえたまま言った。
「少佐、やはり貴様が天井を落とせ。自分のやるべき事を成せ、ジェリコのラッパは既に鳴ったのだ」
彼女はイングウェイに叫んだ。
その直後、部屋のドアが蹴破られた。
「「「「「っ!!?」」」」」
その音に部屋にいた全員が驚愕した。
その後、ガシャガシャと音を立てて聞こえてくる金属の音。シューッと蒸気が音を上げ、全身が金属で覆われた様子の中世の甲冑…王宮などに飾られている
しかし彼らは両手で握って
ッーー…
直後に彼らは部屋の電源が落とされ、周りは常闇に包まれた。
「な、なんだ!?」
「狼狽えるな!」
イングウェイが同様をする兵士たちを宥めさせると、直後に窓の外から強い探照灯の明かりが照射され、直後に蒸気の音が聞こえた。
「ケイバーライト…!?」
そしてそこでその兵士達は相対している漆黒の甲冑姿の兵士たちを前に恐れ慄き、同時に外に展開された二人乗りの小型系バーライト機関搭載機に目を見開いていた。その搭載機は後部に
「ほ、歩兵がケイバーライト機関を背負っているぞ!」
「そんな馬鹿な…!!」
小銃を両手に持ち、目の前の甲冑姿の黒い大隊を前に顔を青くさせていた。その体の背中から溢れる蒸気は特殊な光を放つことからケイバーライト機関であると分かる。
『下士官兵ニ告グ』
するとその赤いガスマスクのレンズの相貌がこちらを向き、その銃口をこちらに突きつけながらくぐもった声で叫ぶ。
『今カラデモ遅クハナイカラ原隊ヘ歸レ。
抵抗スル者ハ全部逆賊デアルカラ射殺スル。
オ前達ノ父母兄弟ハ国賊トナルノデ皆泣イテオルゾ』
拡声器のようなくぐもった声が部屋に響き、一斉に部屋に突入してきた黒い甲冑姿の兵士達は全員が機関銃の銃口を向けられ、狼狽えていた。
『貴様は勤めを果たせ』
「…はっ」
その中、ゼルダはその兵士の一人から小声で言われると、彼女は次に取り押さえていたシャーロットを見る。
「ヒィイ…」
するとその一人の兵士が機関銃を持った甲冑姿の兵士を相手に恐れをなし、顔を青くさせる。
『知らないこと』は人間の恐怖を煽る最も容易い方法だ。彼らにとってみれば、暗闇の中で赤い双眸が灯る目の前の漆黒の甲冑部隊は恐怖そのものであった。
「ああぁぁあぁあああっ!!」
そこで一人の少年兵が小銃の引き金を引き、槓桿を前後に操作して弾薬を装填して発砲を行う。
「「「「「うわぁあああああっ!!」」」」」
そして他の兵士たちもその恐怖に煽られて発砲を行った。
「駄目!!」
咄嗟にシャーロットは叫んでしまった。