日本からの外交特使、堀川公を出迎えたプリンセス。しかし、走行中の列車に謎の人物が降り立った。その人物はちせと少女であった。アンジェやドロシー相手に善戦をした事からかなりの手練れであると感じた。
「姫様、お気をつけを」
「大丈夫よマリア。そう警戒しなくても」
「ですが……」
そう言って警戒を解かないマリアにプリンセスはそれを宥めていた。そしてちせは堀川公にはっきりと言った。
「東堂十兵衛を討ち果たす」
その口調からして、固い決心の様な物を感じると……。
「アンジェ、あなたはちせさんとバディを組みなさい」
プリンセスの言葉にアンジェは一瞬驚くもすぐさま反論した。
「プリンセス。笑えない冗談です」
しかしプリンセスは、
「もしその人が危険なら尚更。信頼できる人に監視させたいわ」
と言う言葉にアンジェは言葉に詰まってしまった。結局、アンジェとちせの二人はタッグを組んで列車を巡回する事となった。マリアは一人でここまで来たことの根性と、どうやって日本からの数ヶ月の船旅を耐えたのかが気になっていた
「しかし良かったのですか?」
「どう言うことかしらメアリ?」
「あのちせという日本人の事です。いくらアンジェが見ているとは言え二人相手に善戦をしました、少々危険では?」
「あら、メアリも反対派なの?」
「……いえ、私は姫様のご意向に沿うだけであります」
そう言っていたが。マリアは内心、この出来事の思惑があるのではないかと思っていた。
「(前の晩餐会の一件でおそらくノルマンディー公はプリンセスと共和国の関係を疑っているはず。だとすれば、揺さぶりをかけてくるはず。だが、揺さぶりをかけるにも自分の部下の手を汚させない様にするはず。だとすれば……っ!!まさか!!)」
紅茶の準備をしていたマリアはそう考えながら紅茶を淹れていた。
そして列車は予定されていたメイドストン駅で機関車の石炭と水の補給を受けていた。マリアのみならず全員が襲撃をするならここだろうと思っていた。
「おかしいな」
「どうしたんですか?マリアさん」
マリアからつい溢れたセリフにベアトリスが聞いた。
「ん?いや、もし東堂十兵衛が襲撃をするならここだろうと思ったんだけどね。その気配すら感じないからさ」
「あぁ、そう言う事ですか。きっと逃げちゃったんですよ」
ベアトリスの軽い発言にマリアは小さくため息が出てしまった。
「(はぁ、本当に逃げていればいいんだけどなぁ〜。日本人の執念深さはアルビオンの比じゃないからなぁ)」
『恨み千年忘れず』と言う言葉が日本にはある。それほどまでに日本人は執念深いことをアルビオンの人はまだ知らなかった。
「(ま、まだ日本との国交はまだ始まったばかりだ。だが、私の予測では。十年後にはあの国は列強に並ぶだろうと思う)」
マリアは日本人の気質から日本という国は間も無くヨーロッパでも無視できないほどの秘術力を持つだろうと
結局メイドストン駅での襲撃は無く、全員が安堵した様子を見せていたが、一部の人間は警戒を解いていなかった。
「(結局、メイドストン駅での襲撃は無かった。だが、必ずどこかで仕掛けてくるはずだ)」
そう思った瞬間であった。突如乗っていた客車の後ろから爆発音が鳴り響いた。
「チッ!そう来たか」
そう言って爆発音のした方に向かうと客車の連結部が無惨にも爆破されていた。
「やられた!これで護衛隊と合流ができない」
すると次の瞬間、警備で運行を中止しているはずの下り本線から一本の列車が隣に着いて来た。そして連結された貨車の扉が開くとそこに和服姿の集団が立っていた。
「藤堂十兵衛……っ!来るぞ、総員抜刀」
堀川公は藤堂十兵衛の姿を見ると残っていたサムライに抜刀をさせた。すると次の瞬間、貨車に設置された大砲が火を吹き、客車の側面を吹き飛ばした。
「姫さま下がって!」
ベアトリスは咄嗟にプリンセスを後ろに移動させた。
「姫様」
「メアリ、大丈夫だったの?」
「私は大丈夫です。むしろ、姫様。今すぐ前の方に避難してください。今すぐに」
「わ、分かったわ」
そう言ってメアリはプリンセスを奥に入れるとすぐさまホルダーから銃と投げナイフを構えた。