マリアは片手にモーゼルC96を構えるとプリンセスとベアトを後ろの客車に押し込むように後ろに下がる。
反対側の路線には傘を被り、和服姿に身を包む藤堂十兵衛がいた。すると彼は爆破され、切り離された後ろ側を見ながら呟く。
「ふっ…ノルマンディー公は約束を果たしたようだな……」
すると客車の上に乗っていた仲間に向かって言う。
「撃て」
すると炭水車の上から仲間がロープのついた杭を放った。杭は客車に当たり、列車を大きく揺らした。
「「「うわぁぁぁぁ!!」」」
機関車の車輪から火花が散り、速度を同じにせざるを得なかった。
すると客車に乗っていた一人の日本人、大島が扉を開けて機関士に叫んだ。
「機関車を交代させろ!後ろの兵士と合流するんだ!」
「ダメです!繋がったまま後退すれば、脱輪します!!」
「っ……!!」
大島は思わず息を呑んでしまった。その頃客車では、
「あれは……っ!」
マリアは貨車から見えたその物に思わず叫ぶ。
「伏せろ!!」
ドォォン!!
その瞬間、貨車に乗せられた野砲が火を吹き、客車の壁を撃ち抜いた。
「「「グワァァ!!」」」
木片が飛び散り、護衛の侍は一斉に倒されてしまった。
同じ頃、切り離された客車の方では。アンジュとちせが爆破された箇所に来ていた。
アンジュはそこで怪我を負ったドロシーを見た。
「ドロシー!」
「すまない…間抜けをやった……」
頭から血を流しながらドロシーは言う。
「プリンセスは?」
「御料車だ……行け、アンジュ……Cボールなら、まだ追える」
そう言うとアンジュは無言で頷き、Cボールで飛ぼうとした。その時、
「私も連れて行け」
横にいたちせがそう言う。
「あそこには、十兵衛が居る」
そう言うと彼女はアンジュにむかって足を揃えて手を床につけて頭を下げ、土下座をした。
暫し沈黙が場を包む。アンジュはそれを見るとうっすら微笑みながら言う。
「戦力は、多い方が良い……」
そう言うとアンジュは来ていたメイド服を脱ぎ、ちせと共に客車の上に立つ。アンジュの右手にはCボールが握られていた。
「……タイミングを合わせて」
そう言うと二人は客車の屋根の上を走る。視界の奥にうっすらと見える機関車の煙を見ながら。
「……二……一……〇!!」
飛ぶ直前にちせがアンジュの左腕を掴む。それと同時にCボールが起動し、二人は勢い良く飛んでいく。途中で給水塔を蹴って反対側を走る列車を視界に捉えた。
列車を捉えたアンジュはグラップルガンを放ち、客車の屋根に突き刺す。そしてそのまま屋根に着地した。
「なんだと!?」
そう驚いている間に反対側にちせが着地し、屋根にいた三人を綺麗に斬り倒した。
「裏切るのか!ちせ殿!!」
残った一人が千世にそう言う。
「裏切ったのは、そちらの方だ!」
そう言うとちせは日本刀を振り、相手の刀を落とす。
「このぉ……!」ドォン!「グァッ!!」
残った一人が拳銃を取り出したところを後ろからアンジュが撃ち、屋根に居た敵を一掃した。その様子を見ていた藤堂は呟く。
「来ていたのか……ちせ」
すると指示を飛ばした。
「速度を上げろ」
「はいっ!」
そう言い、機関車の速度が上がり、列車が引っ張られた。
「まずい……!」
「どうした?」
アンジュは冷や汗をかきながら言う。
「この先で線路は合流する……!!」
複線区間がこの先のポイントで単線になるのだ。
「この速度で車両がぶつかれば……」
「大惨事になります……!!」
機関車が爆走する中、マリア達は思わず息を呑んでしまった。
客車の中でマリアはモーゼルC96を貨車の屋根に居る侍の足に向ける。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
そのうち数発が侍に当たり、ちょうどその時アンジュとちせが貨車の方に乗り込んだ。
「ナイスタイミング……」
そう呟くと同時に貨車の中にいる侍に拳銃を向ける。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
そして貨車後ろの方はアンジュが掃討した。その様子を見た十兵衛は、
「ここは任せる」
「御意」
そう言うと共に縄を伝って機関車の方に飛び移った。
「十兵衛殿!!」
「大島か……許せ」
「グワァァァァァァアア!!」
悲鳴と共に機関士諸共十兵衛に切り裂かれてしまった。
「しまった!!」
これで機関車を止める者がいなくなってしまい、本当に暴走列車となってしまった。十兵衛は客車の扉を刀で斬ると中に入った。
「堀川公……御命頂戴致す」
「幕府の亡霊が……子を守れ!!」
そう言い二人の侍が前に出るも簡単にあしらわれ、倒されてしまった。
「姫様……下がって!!」
「ベアトリス!!」
マリアがそう叫ぶもベアトリスは持っていた小型の拳銃を撃った。しかし、十兵衛は弾丸を刀で弾き、間合いに入り目にも止まらぬ速さでベアトリスの首に刀を当てた。
「くっ……あっ……!!」
そしてそのままベアトリスは壁に叩きつけられてしまった。
「ベアト!!」
「チッ……」ドンッ!ドンッ!カチッカチッ!
二発弾丸を撃つもそこで弾切れしてしまった。
「しまっ……!!」キィィン!
咄嗟に刀を拳銃で抑える。ただ、相手の力が強く抑えるだけで精一杯だった。その時、後ろから投擲武器が投げられ、ちせが刀を抜きながら十兵衛に斬りかかった。
「十兵衛!!」
そう言うと十兵衛は拳銃を弾き飛ばすとちせとの戦闘に入った。弾き飛ばされたマリアは取り敢えず気絶したベアトリスを背負うと言った。
「姫様、堀川公。こちらに……」
その時、外から声がした。
「プリンセス!」
そしてそのままCボールを起動しようとした時。
「待って!」
プリンセスの止めが入った。
「アンジェ!列車を止めよう!」
そう言うとプリンセスは前方に走り始めた。
「姫様!」
「マリアはベアトをお願い」
「……分かりました」
この時のプリンセスは融通が聞かないのを知って居るからこそ、そのままプリンセスを見送った。前方の戦闘の中、ちせが刀を受け止めている間にその隙間を縫ってプリンセスは客車を出る。
「御気をつけて……」
マリアはそう言うと置いてあった医療カバンからソーンオフ・ショットガンを取り出し、装填した後、堀川公とベアトリスの前に出て後ろの客車の扉を蹴破った。
ーーードォォンッ!!
一二ゲージ散弾が中にいた敵を一掃する。敵が倒れたのを確認したマリアはすぐさま医療カバンからガーゼと包帯、ピンセットなどを取り出した。
「少し痛むぞ」
「ぐっ……ぐぁぁっ……!!」
私とて医者だ。姫様を貴賤に晒し、自分で傷つけたとはいえ命を救うのが医者の本質。重体の者から順番に治療を行っていった。