【完結】劇場版 ヴァールハイト・プリキュア もう一つの未来!?王〈レクス〉と青翼の花嫁〈コルーリ〉!   作:32期

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ごきげんよう、32期です。今回からは、レクスの過去についてを回想形式でお送りします。大体3話分でお送りしようと思いますが、今回はレクスとして覚醒するまでです。本編のヴァールハイト・プリキュアとの出来事の違いなどありますので、本編28話、53話~60話を改めて読み返すと展開の違いなどが分かってさらにお楽しみいただけると思います。では、お楽しみください!

※シリアス多めです。ご注意ください。


チャプター8:王魔降臨暦 序章〈レクス、タンジョウ2019〉

アカシック王国 アカシック城 客間〈駆・種の部屋〉

 

side:駆

 

駆「……ここも違うか。僕の経験してきた出来事との矛盾……そんなに多くはないけど、恐らくターニングポイントになってるのは……キュアエクス誕生の瞬間かな?」

 

ガチャッ!

 

 アカシック王国の国民たちとの一件が終わり、僕達はアカシック城に部屋を借りて7年前の”プリカバリー計画”……そのレポートを確認していた。すると、部屋のドアが開く音がしたので振り向くと、そこには両手にいっぱいの食事を持ってきた種がいた。……両手に食事を持ってるのにどうやって扉を開けたのだろう?……まあいいか、気にしなくて。

 

種「お兄ちゃん、ご飯貰って来たよ~!」

 

駆「ありがとう、種。先に食べてていいよ」

 

種「うん、分かった~!はむっ!……ほれでさお兄ひゃん、はにか分かったの?」

 

駆「口に食べ物を入れたまま喋らない。まあ、レポートに書いてある事自体は僕達が経験した内容が殆どで矛盾してる部分を探せばいいだけだから、かなり進んだ方だよ。考察するならもう少し掛かりそうだけど、幸か不幸か……僕らにはまだアカシック王国にいないといけない時間がある。その間には何とかするよ」

 

種「んっくん!ぷは~……コルーリの事も心配だけど、博士が”ミラクルライトを見せて”って言って持って行っちゃったしね。しかも、それが対レクスへの”切り札”になるかもって言うんじゃ待たない訳にもいかないし……」

 

 そう……現在クアライト博士に預けた”ミラクルライト”。パラレルワールドの2043年でクロノが何かを施したミラクルライトなのだが……それの電球部分に使われていたのが驚きの物質だったのだ。

 

 

数時間前 アカシック城〈クアライトの研究室〉

 

クアライト『これがプリカバリー計画のレポートデータクア。Qaフォーンを部屋にある端末に接続すれば端末でも確認できるクア』

 

駆『ありがとうございます、クアライト博士』

 

種『これでレクスの事も何か分かると良いけどね』

 

クアライト『……カケル、君の持っていた”ミラクルライト”だが、少し見せてくれないクア?』

 

駆「えっ?は、はい……どうぞ』

 

 数時間前にレポートデータをQaフォーンに入れてもらった際、クアライト博士が”ミラクルライトを見せてくれ”と言ってきた。僕はそれに従ってミラクルライトを見せると、クアライト博士は確信をもったのだろう……数回頷いた後、僕らにミラクルライトを見せてと言った経緯を話し始めた。

 

クアライト『フムフムフム……間違いないクア。すまないクアね、急に見せて欲しいと言ってしまって。実はあの子の……コルーリの霊体が現れた時、そのライトが光ったのが見えてね。その時の発光現象に心当たりがあったから確認したかったんだクア。カケル、そのミラクルライトの電球部分……そこに使われているのは”Qaクリスタル”と呼ばれる物クア』

 

種『Qaクリスタル?』

 

駆『コルーリから聞いた事があります。アカシック王国の妖精がQaライトを普通の生命体よりも多く有する原因になった鉱石だって』

 

クアライト『その通り。このアカシック王国にあるQaライトを使用する物には必ず使われている。君たちの持っているQaフォーンもその一つクア。このミラクルライトに使われているQaクリスタルなのだが……これはQaクリスタルの中でも最高の”女王等級”であると私は考えている』

 

種『つまり……一番良いヤツって事?』

 

 クアライト博士が何故ライトを見せてと言ったのかは分かった。しかし、これに使われているQaクリスタルの等級が何故一番良いものだと考えたのだろう?

 

クアライト『Qaクリスタルが放出している磁場に同波形の磁場が干渉すると”Qaライトエネルギーの発生”と”特殊な発光現象”を起こすクア。アカシック王国の兵器であるトキ―ノンなどはQaクリスタルの共鳴現象を利用して作られたものなんだクア。そして今回のミラクルライトの発光現象は、Qaフォーンに使用したQaクリスタルの磁場が干渉した事で起こった物だろう。そうなれば……このミラクルライトに使われたQaクリスタルが”女王等級”である証明になる』

 

駆『それはどうしてですか?』

 

クアライト『Qaフォーンに使用されたQaクリスタルこそ、このアカシック王国が所有している”女王等級を唯一使用したアイテム”だからクア。共鳴現象はQaクリスタルの等級が近くなければ発生しない。今まで他の等級では共鳴現象を殆ど起こさなかった女王等級のQaクリスタルが使用されたQaフォーンが共鳴を示した……それこそ、このミラクルライトに使用されたQaクリスタルが女王等級であると言う証明クア』

 

種『そんなにすごいんだ~!』

 

クアライト『しかし、不可解な事もあるクア。女王等級のQaクリスタルは……現在では3つに分けられQaフォーンに搭載されたものしかないはず。その内の2つはアカシック王国で保管しているが……最も大きい1つはなくなってしまったと思っていたクア。それを何故君が持っているクア?』

 

 3つ分けられたQaクリスタル……なくなったはずの1つ……何だろう、何かが引っかかる。

 

駆『あの……どうして一つなくなってしまったんですか?』

 

クアライト『……”レクス”クア。7年前、カイザーンとの最後の戦いでAqライト完全覚醒者となったレクスは……覚醒の際にQaフォーン002を破壊してしまったんだクア。だからこそ、もう無いものと考えていた』

 

 7年前にレクスが持っていたQaフォーンに入っていたQaクリスタル……でも、これをミラクルライトに取り付けたのって……そうか!

 

駆『もしかして、レクスはずっとQaクリスタルを持ってたんじゃないでしょうか!』

 

クアライト『どういう事クア?』

 

駆『ミラクルライトに付いてるQaクリスタルは、ここに来る前に辿り着いたパラレルワールドで渡されたんです。そして、そのパラレルワールドに僕達を落としたのは……レクスなんです。僕にQaクリスタル渡した人物は何も言っていませんでしたけど、もしかしたら……レクスと協力してこれを渡そうとしたんじゃないでしょうか』

 

 そうだ……それなら納得がいく!何故、クロノがQaクリスタルを持っていたのかも!ミラクルライトの電球部分にピッタリ付くように合わせることが出来たのかも!!

 

クアライト『つまり、これはレクスが持っていたQaフォーンの……なるほど、それなら共鳴現象も起きるはずクア。別の時間軸とはいえ……Qaフォーンに搭載されたQaクリスタルは同質のものだからね』

 

 これで、ミラクルライトに付いたQaクリスタルの事はひと段落ついた。……あっ、クロノの事を考えていたら、もう一つ大事な事を思い出した。

 

駆『クアライト博士、Qaフォーンに”セーフティ”が掛かってるって……本当ですか?』

 

クアライト『どうしてそれを!?……確かにQaフォーンには、Qaライトが限界値を越えないようにするためにセーフティを設けているクア。Qaライトの安定運用、使用者である特異点へのバックファイアの軽減を考えたものだ。そもそも、そのセーフティを外す必要があるような事態を想定していなかったクアよ。普通の特異点のQaライト総量、Qaフィールの許容量なら……それを外す必要はないクアからね。例外的な……君達なら別だろうが』

 

 クロノが僕達に教えてくれたQaフォーンのセーフティ。やはり、クロノが言っていたようにそれは存在していた。普通の特異点なら外す必要がないモノ……だけど、僕達には必要になるかもしれない。レクスとの戦闘でキュアエクシードになることが出来ない以上、それに代わる対抗策が必要だ。

 

駆『クアライト博士、そのセーフティを外すことは可能ですか?』

 

クアライト『何を言っているクア!?そんな事をすれば君達の命の保証はないクアよ!?まさか、レクスとの戦闘で使おうなどと考えているクアか!?そのような危険を冒さなくても君達にはキュアエクシードが……』

 

駆『レクスは僕です。同一個体であるレクスと同じ時代にいる状態だと……僕の存在は不安定になるので、エクシードになれないんです』

 

種『一回だけレクスと戦ったんだけど、その時にエクシードになろうとしたらダメだったんだ』

 

クアライト『”世界のルール”クアか!?なるほど、エクシードはカケルとタネ……別の存在同士を繋ぐ事で生まれる。その様な奇跡でようやく成り立つ存在ならば片方の存在が不安定になれば……間違いなく失敗するクアね。しかし、セーフティを外すとなればQaフォーン内のエネルギーを過剰運用して無理やり止めるしかないクア。君達の持つQaフォーンは既に私が想定した物から著しく外れている為、分解するわけにはいかないクアし、セーフティを外しても今後の使用に支障が出かねない。そんなことが出来るのは、組み込まれたQaクリスタルに共鳴する同質のQaクリスタルを使う事で……Qaフォーン内にQaライトを過剰発生させるしか……っ!そ、そうクア!』

 

 どうやら……この無茶を可能にする方法が思いついたらしい。

 

クアライト『カケル、ミラクルライトを少し借りるクア!このQaクリスタルの量では足りないクアが、私に考えがある!二人共、待っていたまえよ!』

 

 

アカシック王国 アカシック城 客間〈駆・種の部屋〉

 

side:種

 

種「そう言って、今も研究室に籠ってるんだもんね……はい、ご馳走様でした!」

 

駆「でも、救いの手があるのは有難い限りだよ。はぁ……僕も少し休憩しようかな」

 

種「はい、お兄ちゃんの分!」

 

 クアライト博士に渡したミラクルライトの事を思い出しながら食事を終えた私。お兄ちゃんもここまでかなり根詰めてレポートを調べていたため疲れてしまったのか、少し休憩しようと言ったので持ってきたお兄ちゃんの分の食事をテーブルに置いてあげた。

 

駆「ありがとう。いただき……」

 

種「……お兄ちゃん?」

 

ドンッ!

 

種「お兄ちゃん!?……あれ?」

 

駆「くぅ……くぅ……」

 

種「寝……てる?それもそうか……お兄ちゃん、ここまで休みなしだったし……カイザーンとの戦いが終わって、まだ一日も経ってないんだもんね。終わった後も2時間くらいしか寝かせてあげられなかったし」

 

 まるで糸が切れた人形の様にテーブルへ頭を突っ伏すお兄ちゃん。どうやら疲れがピークになって寝てしまったらしい。そう言えば、お兄ちゃんはここまでずっと休みなしだった。カイザーンとの戦闘が終わった後の2時間程の睡眠をとって以降はレクスによる2026年への誘導と町の探索、2043年への強制移動にタイムマシンの時間跳躍の衝撃、アカシック王国じゃ兵士に追われて走りっぱなしの緊張しっぱなしで限界も限界だったんだろう。

 

種「毛布は……あった!はい、お兄ちゃん……はぁ~、こういう時にお兄ちゃんに触ることが出来たら、お布団まで運んであげられるのにな~」

 

 こういう時にお兄ちゃんに直接触れないのは結構不便だ。お兄ちゃんの身体に戻って動かしてもいいけど……それじゃあ、お兄ちゃんの疲れを増やすだけだし……そうだ!

 

種『プリキュアプリケーション……インストール』ボソッ〈タップ〉

 

 プリキュアに変身して触れるようにして運んであげればいいんだ!そう思い立った私は、お兄ちゃんのケースからQaフォーンSを取り出して変身を開始する。

 

シード「よい……っしょ!あっ……お兄ちゃん、こんなに軽かったんだ。おっと、早く運ばないと……ほい!よし、毛布を掛けなおして……これでおっけー!」ボソッ

 

駆「くぅ……くぅ……」

 

シュンッ!

 

種「可愛い寝顔……よし、タネも寝ちゃおう。おやすみ、”駆”」

 

 小さな寝息を立てる愛しい人の傍らでタネも横になる。今だけは嫌な事を忘れて、痛みも使命も忘れて……夢の中で休息を味わって。私はそう思いながら駆の中に戻らないで、眠る必要もないのに……目を閉じた。

 

 

side:コルーリ

 

コル―リ「駆、どうぞ」

 

レクス「ありがとう……ふぅ~……うん、懐かしい。コルーリが入れてくれるココアの味だ」

 

 今、私はレクスの家と思われる場所のリビングにいる。自分が食べた食事の食器を洗い終え、彼に提案した私の作ったココアを用意して、レクスと共にリビングにある家族団欒用のテーブルに椅子の数は4脚あるが、レクスはすぐにその内の一脚に腰掛けたので、私は彼の対面に当たる椅子に腰掛ける。そして、彼の分のココアを渡すとすぐに口を付け始め、泣きそうな表情になりながら”懐かしい”と言葉を零した。

 

コル―リ「あの……駆、教えてくれるんですよね?あなたの……事を」

 

レクス「ああ、勿論だよ。でも、少しだけ待ってくれ……このココアをもう少しだけ味わわせてくれ」

 

 レクス……未来のカケルである彼の事を知りたいと申し出た私に、彼は全て話すと言ってくれた。そんな彼はココアを飲み終えるまで待ってくれと言うと、それはもう5分くらい……本当に時間を掛けて味わい、飲み終えた時には本当に名残惜しそうに空になったマグカップの底を見つめ……諦めたようにマグカップをテーブルに置く。そして、ようやく彼は私に話す準備が出来たのだろう……指を組んで両肘をテーブルにつき、その上に頭を支えるように乗せる。彼の手で表情が隠れる中、彼は私に……自分の物語を語り始めた。

 

レクス「7年前、俺と種は君と出会い……プリキュアを救うプリキュアになった。時代を超え、過去のプリキュアさん達の思いを受け継ぎ、ネツゾーンとの戦いを越えていった。2010年で種が攫われて、アカシック王国へと向かう事になった俺は、男性用Qaフォーン〈002〉を使い、キュアエクスへの変身を遂げて2009年、2008年と……過去のプリキュアさん達と共に戦いを続けた。……ここまでは、君が知っている通りの出来事だ。俺が介入したことで生じた小さな変化とQaフォーンSの誕生と言うターニングポイントを除けば……ほとんど変わらない。大きな変化は……ここから先で起きた」

 

コル―リ「2006年……Splash☆Starの時代からですか?」

 

レクス「うん、君の知る事とは……かなり違うよ」

 

 

レクス時間軸〈2006年〉

 

 一週間、古城のお祖母ちゃん達との時間を過ごし、マーネルデリーターとの戦闘……そして、カイザーンの介入による”レイジング・エクス”への覚醒。俺はカイザーンによる認識改竄のショックで意識を失って……目が覚めたのは……”2006年12月31日”だった。

 

駆『あ……この天井は……古城邸の……ん?前髪が目にかかる……邪魔だな。コルーリ、おはよう……あれ?髪……伸びた?』

 

コルーリ『嘘……!か、カケルッ!!!よかった……!本当に良かったぁ……!』ギュッ!!!

 

駆『痛いよ……コルーリ』

 

コル―リ『はっ!す、すいません!だって……”カケルまで”どうにかなってしまったら……私……っ!』

 

 何でもない……俺を心配してくれた言葉だ。でも、俺はその中にあった……ある言葉が気になった。

 

駆『僕……”まで”?それってどう言う……』

 

コル―リ『そ、それは……』

 

徒棟『駆様っ!お目覚めに……なられたのですね!』

 

駆『徒棟さん?あの……僕は……?』

 

コル―リ『カケル……落ち着いて聞いて下さい』

 

 そして、その言葉の意味を……俺は知る事になったんだ。

 

コル―リ『カケル、いぶさんが・・・・・・亡くなりました』

 

駆『・・・・・・えっ?』

 

コル―リ『三か月前の戦闘で、いぶさんはマーネルデリーターの攻撃を受けましたよね。その後、戦闘が終了した後から容体が急変して……』

 

 コルーリが全て教えてくれたんだ。お祖母ちゃんがマーネルデリーターの攻撃を受けた事で容体が急変した事、お祖母ちゃんは膵臓癌のステージ4であった事、俺はカイザーンによって力を暴走させられ三ヵ月間寝続けていた事、俺が世界を滅ぼした事、俺が……お祖母ちゃんの最期すら知らなかった事を。それが……間違いない真実である事を……俺は教えられた。

 

駆『ぼく……が?お祖母……ちゃんが……命が……!あ……ああ……あああああっ!!!!!』

 

・・・・・・ピキッ

 

 

コル―リ「そんな……!いぶさんは2006年を超えて2007年の1月1日……カケルの誕生日まで生きたはずなのに!?」

 

レクス「でも、それが俺の旅した物語だ。結局、逃げるように2006年を後にしてさ……咲さんと舞さんにさよならも言わずに……行っちゃったよ」

 

 レクスの話す2006年の出来事は、私の知るものと全く違う。レクスがもしも過去に干渉しなかったら……カケルも彼の様な体験をしてしまったのだろうか。そんな事を考えていた私だったが、レクスはそんな時間を与えようとはせず、すぐに次の話を開始する。

 

レクス「2005年は……俺と過去の俺とじゃかなり違う。あいつ……過去の俺は時生のおばあちゃんとおじいちゃんの言葉を受けて、光と闇を受け入れると言う選択をとった。だけど、それは俺の介入があったからこその……選択なんだ」

 

 

2005年12月31日

 

ドッゴーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!

 

 俺とコルーリ、おじいちゃんの乗った車がフェイクの火球による爆風で上空に吹き飛ばされた。君の知る出来事だと、過去の俺はおじいちゃんによって車外へ押し出されたと思うけど……俺の場合は違う。

 

駆『痛……っ!お、おじいちゃん……おじいちゃんっ!おじいちゃんっ!!!』

 

コル―リ『カケル、早く外へ!火が回ってきます!!』

 

 俺は車外に押し出されることはなかった。俺もコルーリと一緒で燃え上がる車の中にいた。車の周囲が燃え上がり、空気が薄くなる感覚を感じながらコルーリと協力してなんとかおじいちゃんの身体を引っ張り……車外へ飛び出たんだ。

 

駆『はあ……!はあ……!何とか出れた……コルーリ、大丈夫?』

 

コル―リ『私は大丈夫です……っ!?カケル、衣服が燃えてます!早く脱いでください!!』

 

 火が俺の衣服に移ってしまったんだろう。そのせいで、俺はすぐに火が映ってしまった衣服を脱ぎ捨てた……おじいちゃんが貸してくれた”白いコート”、おばあちゃんがくれた”黄色いマフラー”をね。でも、それだけじゃなかったんだ。コートの中に……”お母さんのお守り”が入っていたんだ。

 

駆『お母さんのお守りがっ!?あつっ!?あ、あった!がっ!?がああああああああああっ!!!!!』

 

 何とか炎の中に懐中時計だけは見つけることが出来たから、炎の中に手を入れて掴み取ったんだ。炎で熱された金属部分で大やけどしたけど……それでも掴んで離さなかった。

 

 

レクス「これが……その時に取った懐中時計だ。金属が溶けて後ろの文字も消えてるし、ネジ穴も埋まってしまったよ。もう一個あった懐中時計は……残念ながら見つけられなかった。俺が見つけられたのは……これだけだ」

 

 駆が言うように金属が高温で溶けたように歪んでしまっている。私もあの時の炎上した場面にいたから分かる……あの時の燃え上がる炎の熱さを。その炎は、駆から思い出を奪い去ったんだ。進武さんのコート、廻さんが長い時間を掛けて編み上げたマフラー、駆の長い闘病生活を支えてくれた果実さんのお守り……全てが燃えてなくなった。だから、唯一残ったこの懐中時計を彼はあの炎に手を伸ばしてでも掴み取ったのだ。

 

コル―リ「あの……進武さんはどうなったんですか?」

 

レクス「……死んだよ。即死だった……君も確認した通りだ」

 

コル―リ「そう……ですか」

 

レクス「おじいちゃんの死で感情が暴走した俺は、レイジング・エクスとなってフェイクの戦闘を開始。フェイクに決定打を与えられないまま”スパイラル・エクス・リング”を使用して世界を消し去るほどの浄化技を放とうとした……しかし、それを止める人がいた」

 

コル―リ「キュアストリング……廻さんですね」

 

 

シュンッ!

 

R・エクス『んっ!!ぐうっ!!!があああああああああっ!!!!!』

 

ストリング『エクス……もういいのよ。怒りを鎮めて……それ以上、怒る必要はないけん』

 

R・エクス『でも……こいつのせいでおじいちゃんが!!!こいつを消さないと……全て消されるんだっ!!!こいつをここで消さないと……コルーリも、プリキュアさんも、世界も……全部っ!!!!!』

 

ストリング『だから……自分が世界を消してしまうの?』

 

R・エクス『ッ!?……でも、おじいちゃんが……!』

 

ギュウッ!!!

 

ストリング『大丈夫、進武がいなくても……私がいるけん』

 

R・エクス『スト……リング』

 

ストリング『もう怒らないでいいけん……ほら、こんなに力いっぱい握ったせいで……痛かったでしょう?手を握るのは……”大切な人の手を握ってあげるため”なの。誰かに怒りをぶつける……拳はとっても痛いけん。それに……約束したでしょう』

 

R・エクス『……約束?』

 

ストリング『もしも大きな力を手に入れてしまったのなら、それを誰かのために……世界をよくするために使いなさい……って』

 

R・エクス『ッ!?……その約束って!?』

 

ああ……いい話だな~。良い話過ぎてよ……!

 

ストリング『ッ!!……駆っ!危ないっ!!!!!』

 

フェイクD『『虫唾が走るぜえええええええええええっ!!!!!』』

 

ストリング『きゃあああああああっ!!!!!』

 

R・エクス『うわあああああああっ!!!!!』

 

フェイクD『『んっしょっと……ああ、感動で涙が出そうだったがよ、在り来たりで面白くねえんだよ~!』』

 

R・エクス『くっ!環さんっ!!起きて!!!おばあちゃん、起きてよ!!!!!』

 

廻『・・・・・・』

 

・・・・・・ピキピキッ

 

 

コル―リ「そ、それじゃあ……!」

 

レクス「・・・・・・うん、おばあちゃんもその時にね。過去の俺みたいに……俺はおばあちゃん達と満足に話せなかった」

 

コル―リ「そんなのって……!」

 

レクス「……大切な人を失うたびに俺の心に小さくヒビが入っていった。それのせいなのかな?俺は……Aqライトを信じられないくらいにコントロール出来た」

 

 

R・エクス『……もういい、考えるの……やめた』

 

コル―リ『ッ!?カケル、やめて!プリキュアハートをQaフォーンにしまったらAqライトが溢れてあなたが壊れてしまいます!』

 

R・エクス『関係ない……こいつを消せるなら、そんなもの知った事かっ!!!!!』

 

シュンッ!・・・・・・シュワアアアアアアアアアアッ!!!!!

 

 俺の中からAqライトが溢れだし……空を黒く染めていった。でも、俺は感じていた。俺は今……今までで一番Aqライトを理解し、制御できるって。だから、俺は思いのままにAqライトを揮った。

 

R・エクス『ケリを付けようよ……フェイク』

 

フェイクD『『へへっ!漸く本気か、キュアエクス!だったら……なあ~~~!!!!!』』

 

フェイクは過去最大のAqライトの火球を、俺はすべてのAqライトを左手に集めて……お互いに最後の一撃を放つ準備を始めた。そして、その瞬間はやって来た。

 

フェイクD『『消え去れ、キュアエクスッッッッッ!!!!!!!!!!』』

 

R・エクス『・・・・・・すぅ~』

 

ドッ!!!!!・・・・・・シュウウウウウウウウウウッ!!!!!

 

ブラック『嘘……!?』

 

ホワイト『あの攻撃を……左手のAqライトで飲み込んでいってるの?』

 

ルミナス『あれは”全てを喰らい尽くす力”!あぁ……エクス、あなたは”闇”を……本当に選んでしまったの?』

 

フェイクD『『ば、ばかな!?俺達の一撃が!?』』

 

R・エクス『ッ!!』

 

シュンッ!!!!!

 

 俺は奴の火球をAqライトで飲み込んだ後、動揺したフェイクに一気に近付いた。

 

フェイクD『『・・・・・・えっ?』』

 

トンッ!

 

R・エクス『・・・・・・爆ぜろ』

 

 そして、俺は奴に触れた左手を通して身体に俺の持つAqライトを全て凝縮して流し込み……。

 

フェイクD『『あ……アア……ガアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!』』

 

 内側で……一気に解放したんだ。あいつ、まるで風船が割れるみたいになってさ……フェイクも、デリートも……一瞬で消し飛んだんだよ。

 

駆『おわった……終わった?終わった!終わった!!終わった!!!あっはっはっはっ!!!!!』

 

なぎさ『か、駆くん!?』

 

駆『あっ……皆さん、大丈夫ですか?そうだ……ちょっと待って下さい。今、全部を元に戻すんで』

 

パチンッ!

 

 俺が指を鳴らすと世界は元に戻った。瞬きするくらい、呼吸するくらい簡単に……世界を書き換えられるようになっていた。レイジング・エクスの姿なんて必要ない……俺は元の姿のままでここまでのAqライトを制御するに至った。そんな俺を見るなぎささん達の表情は……今でも忘れられないよ。まるで……”化物”でも見てるみたいだったから。

 

なぎさ『あ、ありえない……!』

 

ほのか『嘘……元の姿のままで!?』

 

ひかり『……駆さん、あなたは……”時生 駆”のまま……ですか?』

 

駆『……やめて下さいよ。そんな目で……僕を見るの』

 

 明らかに彼女たちの俺を見る目が変わっていた。俺がやった事、俺の力の事、全ては俺のせいだって分かってるから……苦しかった。だから……俺は彼女達を遠ざけた。

 

駆『……さあ、この時代は救いました。もういいでしょ、僕に関わらなくても』

 

なぎさ『駆君、な、何言ってんの!?』

 

駆『”僕の事は放っておけ”と言ってるんです』

 

コル―リ『カケル、そんな言い方は……!』

 

駆『お願いだから……僕の事は放っておいてくれ』

 

 俺、あの時どんな顔してたのかな?俺がその言葉を彼女達に言ってる間の彼女たちの顔がさ……同情してるみたい”悲しそう”だったんだ。そしたら、彼女たちは……こう言った。

 

なぎさ『分かったよ。でも、私達そんな簡単に駆君の事を放っておくとか出来ないからね!駆君が私たちの事をうっとおしいと思ったって……絶対に出しゃばるんだから!』

 

ほのか『私達、こう見えても諦めが悪いの。駆君が手を伸ばしてくれるまで……私達は手を伸ばし続けるわ』

 

ひかり『駆さん、光は……まだあなたの中にある。それだけは……忘れないで下さい』

 

 言葉を伝え終わった彼女たちは……俺の前からいなくなった。いまさら言っても遅いけど……なぎささん達の言葉は、凄くうれしかったし……俺にとって救いでもあったんだ。まだ……俺は”一人じゃない”って言う救いだった。そして、そんな俺をまだ気にかけてくれた……”コルーリ”、君がいた。

 

ギュウッ!

 

駆『ッ!!・・・・・・コルーリ?』

 

コル―リ『私は絶対に離れませんよ。そんなに悲しい顔をするカケルを……本当に一人になんてさせませんから』

 

駆『……おばあちゃんをおじいちゃんの隣に連れて行かなくちゃ。そうしないと、タイムパラドックスが起きてしまう』

 

コル―リ『……私も手伝います』

 

駆『……コルーリ』

 

コル―リ『……何ですか?』

 

駆『……ありがとう』

 

 おばあちゃんをおじいちゃんの隣まで連れて行って、おじいちゃんが作った二台の懐中時計を持ち出して直ぐに離れたよ。泣き出したかったけど、コルーリが俺の左手を握ってくれたから、俺は……あの時、泣かずに済んだんだ。

 

 

レクス「その後はお父さん達に懐中時計を渡して、ペックの通信で分かったネツゾーンがいる時代"パラレルワールド〈2019〉"に向かった」

 

コル―リ「あの、すいません。私達の時はマーネルとインペイルが来て、カイザーンの伝言を伝えに来ましたが……駆、あなたの時はどうだったんですか?」

 

レクス「俺の時は、パラレルワールドに到着した際にカイザーンが俺とコルーリ、ペックがいたアカーシャの通信システムを傍受して俺達に宣言して来たよ。その後、コルーリ、ぺック、クアライト博士による作戦会議が始まって、ペックの出した作戦……カイザーンの提示した5月1日の前日である4月30日中に”奇襲作戦”を仕掛けることになった」

 

コル―リ「”奇襲作戦”って!?確かにペックはその作戦を申し出ていましたが、私は反論しましたし……お父様はその作戦を推奨しませんでしたよ!?」

 

レクス「うん、そうなるはずだった。俺が……奇襲作戦を実行すべきだって会議に乗り込んで進言したんだ。会議の内容……盗み聞きしてたからさ」

 

 実行されなかったはずの奇襲作戦が実行された。私が知らない4月30日の戦いを……彼は語り出す。

 

レクス「作戦開始時間はPM10:00、アカーシャ〈モデル1〉単騎でネツゾーン城へ向かい、キュアエクスが城内へ潜入する手筈だった。だが、そんな事はカイザーンの奴には筒抜けだった。潜入した俺はすぐにカイザーンのいる王座の間へと強制転移されて……残りの幹部であるマーネル、インペイルとの戦闘になった。幸い、俺のAqライト制御能力が上がっていた事もあり……二人共、一撃で消滅させてやったよ」

 

コル―リ「その後は……カイザーンと?」

 

レクス「ああ、プリキュアさんの力を借りながらの戦闘だった。でも、やはりカイザーンとの能力差を埋められなかったため、種の救出を優先してカイザーンの中に奴とのリンクを使って侵入し……って、この後は君もあの場にいたから分かるよね?」

 

コル―リ「はい、種の救出後は二人で戦闘に入って……それでもカイザーンに敵わなかった」

 

レクス「・・・・・・ああ、そのせいで」

 

 

2019年4月30日PM20:19 ネツゾーン城〈最上階層:玉座の間〉

 

Xザート『……あはっ♪あははっ♪♪あはははっ♪♪♪』

 

ブラック・シード『わ……笑ってる?』

 

Xザート『もう我慢できない!やっと……やっとこの時が来た!!ずっと待ってた……ずっと!ずっと!!ずっと!!!ずっと!!!!ずっと!!!!!待ってたんだからーーーーーっ!!!!!』

 

ゴンッ!!!!!

 

ブラック・シード『そんな……!これがあいつの本気なの!?』

 

エクス・ホワイト『まだ……足りないのか!?くそっ!!!』

 

Xザート『さあ!さあっ!!さあっ!!!どうにかしないと、不純物ちゃん!!!やり方は……分かるよね~~~!!!!!』

 

ブラック・シード『ッ!!……ごめんね、お兄ちゃん。私……お兄ちゃんと……一緒に居れないや』ニコッ

 

バッ!!!

 

ブラック・シード『お兄ちゃんは生きないと……ダメだよ。私はもう……いないんだから、ここで消えたって……大丈夫!だから……お兄ちゃんに任せる!お兄ちゃんが……カイザーンを倒して!』

 

エクス・ホワイト『シードッ!?』

 

ブラック・シード『必ず生きてね』

 

シュンッ!

 

種『さよなら、”駆”……ずっと愛してるよ』

 

駆『種ぇぇぇぇぇえええええええええええっっっっっ!!!!!!!!!!』

 

・・・・・・ピキッ……ピキピキピキッ!

 

 

コル―リ「種が……消滅したって言うんですか?」

 

レクス「俺しかいないんだから……そう言う事だよ」

 

コル―リ「そ、それで……カイザーンとの戦いは!?」

 

レクス「・・・・・・見逃されたよ、カイザーンの奴に」

 

 

カイザーン『あははっ♪消えた♪消えたっ♪♪邪魔くさい不純物がきれいさっぱり……サイッコ~~~に気分いいね~♪だけど……』

 

駆『あ・・・・・・ああ・・・・・・』

 

カイザーン『やっぱりダメか~!王〈レクス〉が生まれるべき”オーマの日”である5月1日じゃないと……はぁ~、消し損だよ~!でも、確実にQaフィールにヒビは入った……それに……』チラッ

 

コル―リ『ッ!!』キッ!

 

カイザーン『”予備”もあるしね♪さあ、コルちゃん……アルタイルを連れてさっさと戻って、また明日来て!それまでに彼が戦えるようにちゃ~んと元気づけてね♪あっ!アルタイルとコルちゃんはこの時代から逃げられないようにしておいたからね♪アカシック王国の妖精を使って助っ人を呼ぶのはいいよ……無駄だろうけどね~♪』

 

 圧倒的なまでの絶望感、もう取り戻せないと言う喪失感が……俺の心を支配していた。立ち上がる事もままならない、顔を上げることも出来ない、種の仇をとろうと向かって行く勇気も消え……今まで聞こえていたプリキュアさんの声も届かなくなった。それでも、俺は逃げる事が出来ないから……コルーリに肩を借りてアカーシャへと戻っていったんだ。

 

 

2019年4月30日20:30 プリキュアカーシャ”モデル1” 医務室

 

シュン!

 

ペック『おい、コルーリ!作戦失敗って(どいて下さい!!!!!)キキッ!?』

 

コル―リ『カケル、ここに横になって下さい!すぐに傷の手当てを!ペック、ただ立っていないで手伝ってください!!!』

 

ペック『わ、分かったキー!』

 

 応急処置を終えた事を確認したペックが事態の詳細を聞いて来たから、コルーリが全て伝えてくれた。

 

ペック『じゃあ、キュアシードが完全に消滅したってのか!?』

 

コル―リ『・・・・・・』コクッ

 

ペック『キュアシードは消滅、カイザーンに対してこちら側の攻撃は殆ど効いてなかったってんだろ?しかも、次は奴が指定してきた5月1日……明日の戦闘キー。奇襲の失敗もあるし何か罠を仕掛ける可能性も……くそっ!全く勝てる可能性が見出せないキー!』

 

駆『・・・・・・僕のせいだ。僕が弱いから……なにも守れなかった。種も……おじいちゃんも、おばあちゃんたちも……僕のせいで!』

 

コル―リ『カケル……今は休んで下さい。明日、カイザーンと戦わないと……本当に何も守れなくなります』

 

 何も守れなくなる……いや、それは違う。俺は”もう何も守ることは出来ない”……その力はもうないのだ。カイザーンに抵抗するためにプリキュアさんの力は全て使った!その中で最も強力な”Splash☆Star”、Max Heart”のプリキュアプリは種がいないと使うことが出来ない!種がいなくなった以上……もう俺に勝ち筋は残っていない。それを理解していた俺は……あの時、本気で”戦いたくない”って言葉を口にした。

 

駆『・・・・・・もう……戦いたくない』

 

ペック『てめえっ!この期に及んで何言ってやがるキー!!お前が戦わないと”プリキュア”達が消えちまうんだぞ!!!それだけじゃない!世界が全部カイザーンに変えられちまうかもしれねえんだキー!!!!!』

 

コル―リ『ペック、今は止めて!……ペック、カケルの事は私に任せていただけませんか?私が何とかします。あなたは……アカシック王国に一度帰投して、この事をお父様に報告してください。私とカケルはカイザーンにこの時代に閉じ込められてしまっているので……あなたしか出来ません。この状況を打開するためにもお父様のお力が必要です』

 

ペック『……分かったキー。この腰抜けを何とかしておいてくれキー』

 

 俺に腰抜けと言ったペックは医務室を後にしてアカシック王国に一時帰投して、俺とコルーリだけが残された。そして、君は俺に……優しく寄り添ってくれたんだ。

 

コル―リ『カケル、どうして……もう戦いたくないんですか?』

 

駆『カイザーンに……勝てっこないから。もう僕に太刀打ちする術がない。それに……』

 

コル―リ『……それに?』

 

駆『僕の戦う理由が……なくなってしまったから』

 

コル―リ『……”タネ”……ですね』

 

 コルーリは僕の事をすべて分かっているかのように……僕の求める答えを言い当てる。

 

駆『ここまで来るためにずっと考えてた。プリキュアさんを救う……勿論、それも大事な理由だけど……種を取り戻すって理由が僕にとって心の支えで、プリキュアさん以上の理由でもあった。僕……種に約束したんだ。ずっと一緒に居ようって……それなのに……もう叶えてあげられない!』

 

コル―リ『カケルとタネは……ふたりで一人。どちらが欠けてしまってもいけない。私も……そんな二人を見てきましたから分かります』

 

駆『それに……今まで聞こえていたプリキュアさんの声も聞こえなくなった。きっと……僕に失望したんだ。”種”もいない……”プリキュアさん”もいない……僕は……”一人”だ』

 

コル―リ『一人じゃ……ありません』

 

 医務室のベッドに腰掛ける俺の正面にいるコルーリが、少しだけかがんで俺の目線に合わせて……俺に言ってくれたんだ。

 

コル―リ『カケル、タネがいなくても……プリキュア達がいなくても……”私”がいます』

 

駆『……コルーリ』

 

コル―リ『カケル、私……コルーリ・ブルー・タイムオウルは……あなたを、”時生 駆”を愛しています。ずっと……ずっと……あなたの傍に居ます。あなたの為なら……私、アカシック王国を捨てる覚悟だってあります。だから、カケル……私があなたの心の支えに、あなたの戦う理由には……なれませんか///?』

 

 その時、ようやく気付けたんだ。この戦いが始まったあの時から……ずっと俺を支えて来てくれた人がいた。コルーリ……いつも俺のために喜んでくれて、怒ってくれて、泣いてくれて……そして、愛してくれる君の存在を。

 

駆『・・・・・・どうして、2009年の時に答えを出さないで君を待たせていたんだろう』

 

コル―リ『えっ?』

 

駆『大切な妹も、尊敬する人たちも守れない僕だけど……コルーリ、僕は……君を愛してもいいのかな?』

 

コル―リ『ッ///!?……はい、大丈夫……です///』

 

駆『改めて言わせてほしい。僕は……時生 駆は……コルーリ、君が好きだ。僕に……君を愛させてほしい』

 

コル―リ『……はい///』

 

 目線が合う俺とコルーリ。誰もいないアカーシャの中で……愛し合う”番”の影が重なり合った事を……誰も知らない。

 

 

コル―リ「そ、それって……///」

 

レクス「俺達は愛し合う事が出来た。心も……身体もね。でも、最後の戦いまで……もうほとんど時間がなかった。最後の夜……俺が”僕”でいられたあの時が……俺が心から笑えた時間だったんだと思う」

 

 

2019年5月1日AM0:00 プリキュアカーシャ”モデル1”〈甲板〉

 

駆『・・・・・・』

 

コル―リ『”駆”、こんな所にいたんですか?風邪をひきますよ』

 

駆『ああ、コルーリ……なんか眠れなくてさ』

 

コル―リ『そうだと思いました……はい、ココアをどうぞ』

 

駆『ありがとう……クアライト博士から何か連絡はあった?』

 

コル―リ『お父様が直接この2019年で指示を出すことになりました。本日の正午に……作戦開始との事です』

 

 ふたりで甲板に座ってコルーリが入れてくれたココアを飲みながら、明日……いや、今日の作戦の事を聞いていた。

 

駆『次が……最後の戦いか』

 

コルーリ『怖いですか?』

 

駆『怖いよ……でも、負けられない。僕には……負けられない理由があるから』キュッ!

 

コルーリ『はい、プリキュア達の存在と……私達の未来の為に///』キュッ!

 

 コルーリの右手に俺の左手の指を絡めると、彼女も答える様に握り返した。

 

コルーリ『駆、終わったら何かしたい事は無いですか?』

 

駆『そうだな……長期休暇が欲しい。それを使って全プリキュアさん達に改めて会いに行きたいかな。それから……あっ!保留になってる"コルーリとの結婚式"もしないと!』

 

コルーリ『盛り沢山ですね!でも、それをやるのは駆の学校が長期の休みに入ってからですかね?』

 

駆『それなんだけどさ……コルーリ、僕ね……戦いが終わったら、アカシック王国で暮らしたいなと思ってるんだ』

 

コルーリ『えっ?でも……それでは』

 

駆『どうせ……お父さんも、お母さんも……僕の事なんか気にしないよ。それに……僕は君とずっと一緒に居たい。僕の残りの人生を……全て君に使ってあげたいんだ』

 

コル―リ『・・・・・・』

 

駆『コルーリ?』

 

コル―リ『えっ?な、何でもありません!そ、そうだ!駆、良い事を教えてあげます!』

 

駆『良い事……って、何?』

 

コル―リ『……タイムオウル家直伝の”美味しいココアの淹れ方”です』

 

 コルーリは自分のマグカップを空いた手で持つと、俺へと向けたんだ。そして、俺に美味しいココアを淹れる”3つの秘訣”を教えてくれた。

 

コル―リ『一つ、ココアの粉末は多めに入れる事。絶対に少なくしないで……勿体ぶらずに沢山入れるんです』

 

コル―リ『二つ、温かいミルクを入れる前にしっかり粉末を溶かす事。丁寧に、丁寧に……この工程は小鳥が泣いても欠かしてはいけません』

 

コル―リ『三つ、ミルクを加えたら……最後に”隠し味”を入れます』

 

駆『隠し味?』

 

コル―リ『……飲んでくれる人が沢山喜んでくれるようにって……いっぱいの”思い”を込める事。いっぱいの思いが、美味しいココア一杯の隠し味なんだよ……って、お父様が言ってました。えへへっ///お父様が昔、お婆様から教えてもらったんだそうです。お婆様もひいお婆様から……ひいお婆様もそのお婆様から……ず~っと受け継いできた淹れ方なんですよ。タイムオウル家は……お父様の代になるまで貧しいお家でした。でも、子供が楽しみにしてるココアだけは……何があってもなくしちゃいけない……小さな贅沢と言う物でしょうかね。それが……ずっと受け継がれてきました。今は私とお父様しか知らないですが……駆にも教えてあげますね』

 

駆『……なんか、意外と普通だね』

 

コル―リ『チチュン!?ひ、ひどいです!別居案件チュン!!!』

 

駆『ご、ごめん!謝るよ!!』

 

コルーリ『……反省してます?』

 

駆『勿論!』

 

駆・コルーリ『『……あはははっ(うふふふっ)!』』

 

 今だから思える事だけど、この瞬間が永遠に続けば良いなって考えてしまうくらい……楽しい時間だったな。

 

 

コルーリ「私がお父様に教わったのと同じ……だから、あなたが淹れてくれたココアの味が私のものと一緒だったんですね」

 

レクス「良かった、教わった通りに淹れられてたみたいで」

 

コルーリ「……そして、5月1日……カイザーンとの最後の戦い。そこで、何があったんですか?」

 

レクス「作戦決行時間の正午を迎えた俺達は、クアライト博士の指示のもと行動を開始した。アカーシャ2隻でネツゾーン城へと接近し、俺とコルーリは再びカイザーンの元へ。ペック、クアライト博士はアカーシャで待機し各自操縦と指揮にあたっていた。城へ入った直後、俺達は直ぐにカイザーンからの介入に遭い……またアイツの玉座の間に強制転移されたんだ」

 

 

2019年5月1日AM12:12 ネツゾーン城〈最上階層:玉座の間〉

 

カイザーン『再び……ようこそ、私のアルタイル♪あなたの玉座の間へ!』

 

エクス『カイザーン、お前を倒す!プリキュアさんの為に、そして……種の仇を討たせてもらう!』

 

カイザーン『あははっ♪なけなしの勇気と希望で何とか立ち直ったみたいね♪……でも』

 

シュンッ!

 

エクス・コルーリ『『ッ!?』』

 

カイザーン『くんくん……うわ〜、いやらしい"雌鳥"の匂いが染み付いてるよ、アルタイル。コルちゃん、私……元気づけてと言ったけど、そこまでして良いなんて言ってないよ』

 

エクス『ッ!?う、うるさい!!だりゃっ!!!』

 

カイザーン『よっと♪うふふっ♪さ~て……そろそろ本番ね。そして、それが終わったら……私の身体で綺麗に上書きしてあげるわ、私のアルタイル♪』

 

 カイザーンの口を塞ごうとした俺の攻撃を避けたカイザーンは俺との距離を取った。

 

カイザーン『それじゃあ・・・・・・』

 

 そして……。

 

カイザーン『目覚めの時よ、アルタイル♪』

 

シュンッ!!!!!!!!!!

 

 一瞬、光が駆け抜けたんだ。反応できない速度の光が俺に向かってきた……俺の目を持ってしてもだ。

 

エクス『ッ!?』

 

 だけど……。

 

コル―リ『・・・・・・くっ!』

 

 君は……俺にも反応できない光に反応して俺の前に出て来た。まるで……こうなる事を分かっていたかのように。

 

エクス『コルーリ!コルーリッ!!!』

 

コル―リ『良かった・・・・・・きい…た……通り……でした』

 

エクス『傷を塞ぐ!』

 

キュッ!

 

コル―リ『私は……これで良いんです。こうじゃないと……だ……だめチュン』

 

 傷を癒す事も出来たのに……君はそれを止めた。”こうじゃないとダメ”と言って……俺に傷を癒す事をさせなかったんだ。

 

コル―リ『命を……弄んではいけない。私は……この命に意味を……見出しましたから』

 

エクス『嫌だ!僕と一緒にいてくれっ!!僕を一人にしないでくれっ!!!』

 

コル―リ『私の魂は……ずっと……あなたの傍にいる。駆、生きて・・・・・・あなたは・・・・・・皆の”希望”・・・・・・チュ・・・ン』

 

エクス『・・・・・・コルーリ?』

 

・・・・・・ピキッ!

 

カイザーン『・・・・・・アルタイル、良かったね。これで……あなたの大事な物、ぜ~んぶ……なくなっちゃったね♪』

 

・・・・・・ピキピキッ!!

 

エクス『あ・・・・・・ああっ!!』

 

ピキッ・・・・・・ピキピキピキッ!!!

 

カイザーン『これが~!”大切な人達”を失うって言う~……ホ・ン・トの!”絶望”よ♪』

 

エクス『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!』

 

パキンッ!!!!!!!!!!

 

 心の中で何かが割れる音がした次の瞬間、俺の中に今まで収まっていたAqライトが全て噴き出した。Aqライトが今いる時代を超え、異次元の末端に至るまで広がったのを感じたよ。

 

カイザーン『”Qaフィール”が割れた!ついにやったわ!!”心の器”と言うべきQaフィールが圧倒的な絶望によって砕けた時、特異点は”Aqライトを完全制御する事が出来る存在”へと昇華する!そして、アルタイル……あなたは”全ての時空に存在する生命のQaライトを許容できる”程のQaフィールを持っていた。それが砕けて中に詰まっていたAqライトも漏れ出したとなれば……ビックバンに相当するAqライトを持つ私に以上の存在になれる!』

 

 カイザーンの言葉は……正直、聞こえていなかった。その時の俺はただ……自分の”弱さ”を呪っていた。

 

エクス(僕は……どうしてこんなに弱いんだ!大切な人も……家族も……何も守れない!どうして!?どうしてだよっ!!!!!)

 

 俺は……いつだって誰かがいたから戦えたんだ。誰かがいつも支えてくれていた……種がいて、コルーリがいて、プリキュアさんがいて……自分はいつだって”ひとり”で戦えていた事なんてないって気付いたんだ。

 

エクス(そうだ……僕は誰かに手を伸ばしてもらわないと戦えないんだ!一人じゃ何もできない……僕は弱い!こんなんじゃ何も守れない!!!)

 

 誰かに手を貸してもらわないと何も守れない弱い”僕《時生 駆》”……それは時生 駆の弱さの象徴だと思った。

 

エクス(なおさんの親父さんが言ってた……強い男になりたいなら、”僕”って言うのは止めろって。何も守れない、何も救えない……弱い”僕”なら!)

 

 だから、俺は……。

 

エクス(いらないっ!!!!!)

 

 僕《弱さ》を……捨てたんだ。

 

カイザーン『っ!?Aqライトが集まってくる♪』

 

 広がっていたAqライトが今度は俺の周りに集まって来た。そして、俺を包み込むように集まったAqライトは俺が纏う”黒いコート”に変わっていった。

 

■■ス『コル―リ、少しだけ待っていて。直ぐに終わりにして……一緒に帰ろう』

 

■クス『カイザーン、お前を消してやる』

 

レクス『今度は……”俺”がお前から全てを奪ってやる!!!!!』

 

カイザーン『祝え!絶対なる絶望により時空を超え、過去と未来をしろ示す究極の時の王者!Aqライト完全覚醒者、RX《レクス》!今ここに、私の悲願は成就された!!!!!』

 

 2019年5月1日……この日、僕《弱い時生 駆》が死んで……俺《王》が生まれたんだ。

 

 

To the Next chapter……




いかがだったでしょうか?ちょっと暗い話にしすぎたかな?でも、まだこれは序章なので……まだまだ続きます。次回は、カイザーンと同じAqライト覚醒者となったレクスは、カイザーンとの戦闘を始める!しかし、埋まらない戦力差!それを助けるために現れるプリキュア達!?レクスは新たな犠牲を払い……!?乞うご期待ください!
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