【完結】劇場版 ヴァールハイト・プリキュア もう一つの未来!?王〈レクス〉と青翼の花嫁〈コルーリ〉!   作:32期

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ごきげんよう!お久しぶりです、32期です。今回は、覚醒した”レクス”と”カイザーン”との戦闘が中心のお話となっております。今回もかなりシリアスな内容となっておりますのでご注意ください。では、お楽しみください。

9月23日、【映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢見る♡お子さまランチ!】公開おめでとうございます!私も初日に観てきました!とっても感動できる映画なのでぜひ皆さん劇場へ!私の劇場版は……感動の最期にギリギリでなるはずなので!年内には終わらせて、本編に戻りたい!頭の中でストックつくったので!長めのお休みが無駄ではなかったことをお約束します!頑張るぞ~!お~~~!!!


チャプター9:王魔降臨暦 終章〈2019:プリキュアナイアレイション〉

アカシック王国 アカシック城 客間〈駆・種の部屋〉

 

side:駆

 

駆「う……ん~!はぁ~……あれ?僕、寝てたのかな?でも、レポート確認で机にいたはずだし、何時布団に……ん?」

 

種「くぅ……くぅ……」

 

駆「種が運んでくれたのか……ありがとう、種」

 

種「……んへへ~……くぅ……」

 

ガチャッ!

 

 目を覚ました僕はいつの間にか布団で寝ていた。覚えている限り……僕は机でレポートを調べていたはずなのだが、横で寝ている種を見るに、僕を布団に運んで一緒に寝たと言う所だろう。確かによく思い出してみると、食事に手を掛けた瞬間から記憶がないから、その時点で寝落ちでもしたのだろう。僕は眠っている種の頭を触ることは出来ないけど、頭の形になぞる様にして撫でてあげる。すると、まるで触られた事を感じているように口を情けなく緩めて笑うと、また寝息を立てた。その時、そんな平和な時間を遮るように、扉が開けられる音が響き、その向こうから……このアカシック王国で僕を狙っていた人物の一人”ペック”が人の姿で入って来た。

 

ペック「キュアエクス……起きてるか?」

 

駆「うん、起きてる……けど、少しだけ静かにしてくれないかな。種がまだ寝てるんだ」

 

ペック「……話がある。場所を変えたいんだが……構わないか?」

 

駆「……分かった」

 

ペック「……外で待っている」

 

 大事な話……そんな気がする。僕は種を起こさないようにベッドから下りると、身だしなみも整えずに部屋の外へと静かに出て行った。

 

 

アカシック王国 アカシック城 アカシック軍専用食堂

 

ペック「すまないな、こんな所で。ここの食事は新兵の時から食べてるから……味は保証する。ただ、人間が満足できる量を食べるとなると……ちょっと多めに頼まないといけないがな」

 

 連れて来られたのは……どうやら食堂の様だ。小さかったり、大きかったりする鳥の新兵たちが軍服の様なものを着て朝食を食べている。そんな所に僕やペックが来たせいか皆が一瞬ビクッとしたが、ペックが手を少し上げると、元の空気に戻り食事に戻り出した。僕は何でこんな所に連れて来られたのだろう?

 

駆「あの……どうして僕はここに連れて来られたの?」

 

ペック「食事……まだなんだろ?デスクに手がついてない食事と空の皿があった。食い意地が張ってそうなキュアシードが完食して、今回の当事者筆頭のお前は調べ事に夢中で食べ損なったってところだろ?飯でも食いながらの方が……話がしやすいだろう」

 

駆「……それじゃあ、お言葉に甘えるよ」

 

ペック「ああ、そうしておけ。調理班、人間用のスペシャルサイズのモーニングを一つ、俺は……コムーギの”ムーギガユ”をミルク風味で頼む」

 

はっ!かしこまりましたっコ!

 

 ペックは手早く注文を済ませると、食堂の端にある席へと向かい、そこに腰掛けた。見た感じ他の席と作りが違うみたいだし、装飾があしらわれている事から一部の上位階級用の席なのかもしれない。

 

ペック「どうした?遠慮せずに座れよ。立ってる方が目立つ」

 

駆「……」ストッ

 

ペック「……先ず、昨日の事だが……すまなかった。謝罪が遅れて申し訳ない」

 

駆「無理に謝らなくていいよ。まだ恨んでるのは分かってるから」

 

ペック「……そうか。なら、早速だが本題にうつる。7年前のプリカバリー計画についてだ。報告された内容の他に、当時現場にいた俺の証言を話そうと思ってな。新しい発見があるかもしれないし、なくても事実の照らし合わせ位にはなるだろう?」

 

 確かに、当時の状況を知る人物の証言は貴重だ。レポートから分からない事もあるはずだし、断る理由はない。

 

駆「断る理由はない、聞かせて欲しい」

 

ペック「分かった」

 

 ペックが話してくれた内容は、4月30日から5月1日にかけての出来事についてだった。ペックが提案し、レクスが進言した奇襲作戦の失敗、種の魂の消滅が発生した事、その後の戦闘指揮の為にクアライト博士が現地に来た事など……レポートに記載されている内容に変わりはない。しかし、気になる内容もあった。それは"5月1日"の出来事である。

 

駆「……質問なんだけど、5月1日の作戦の際に、"何故、キュアエクスと一緒にコルーリもネツゾーン城に潜入したの"?クアライト博士なら、コルーリの安全を優先するはずだよね?」

 

ペック「……実際、コルーリは最初の指示では待機だった」

 

駆「なら、どうして?」

 

ペック「……コルーリ本人の希望だった。〈カイザーンは確実にキュアエクスに何かを仕掛ける。そうなった場合のサポートが必須だから〉……とな。俺も博士も反対したが、アイツは意見を曲げず……その希望を通すことになっちまった」

 

駆「・・・・・・」

 

 コルーリがそう考えるのはおかしくない。でも、何か引っかかる……僕の勘がそう告げている。

 

ペック「実はな……俺とクアライト博士はレクスの覚醒の際に、通信が切れて……戦闘が終了するまでの状況は完全には把握できていなかったんだ。恥ずかしい話だがな……でも、これだけは言える。あいつは、コルーリの遺体を抱きかかえていたが……涙を流していなかった。これだけは……本当だ」

 

駆「・・・・・・そうか」

 

お待たせしましたっコ!モーニングのスペシャル、”ムーギガユ”のミルク風味でございますっコ!

 

ポンッ!

 

ペック「おっ!来たっキー!さあ、遠慮せず食えキー!」

 

駆「う、うん……ただ、これはデカすぎないかな!?」

 

 数十匹の妖精によって運ばれてきたのは、目の前に聳え立つ……大量の食事。明らかに普通の人間であれば10人前に相当するであろう量が僕の前に運ばれてきたのだ。しかし、妖精の姿に戻ったペックはこの光景を見ても特に驚いた表情はせず、僕に遠慮せずに食えと進めてきた。

 

ペック「何を驚いてるキー?昨日、タイプTの方は平気で平らげてたキー。それに、ストリング……お前のばあちゃんも普通に食ってたキー。人間はこれが普通じゃないのキー?」

 

駆「普通じゃない!絶対に!!こんな量を食べれるのは種だけ……えっ?時生のおばあちゃんも食べてたの?」

 

ペック「ああ、そもそもストリングが”足りない”って言ったからできたサイズだからな。普通に食ってたキー。何ならタイプTより早く平らげてたキー」

 

 おばあちゃんも食べ切れるのか……これ。それより、種の奴持ってきた食事以外にこれ食べてたのか!?食べたものは無条件で僕のお腹に溜まってくのに……通りでお腹が空かない訳だよ。でも、種が主導権を持ってる時は僕の胃に収まるのだし……僕にはそれだけの大食いのスペックはあるはずだよね?出来るかな?

 

ペック「まあ、お前はストリングの孫で、タイプTの兄貴だ!何とかなるキー!さあ、食え!」

 

駆「い、いただきます!」

 

 その日、人間用スペシャルサイズのモーニングは”三人目の完食者”をもって……正式に”人間の標準サイズ”になったのであった。

 

 

side:コルーリ

 

コルーリ「私の死が……あなたをレクスにしたと言う事ですか?」

 

レクス「ああ、そう言う事だ」

 

 レクスが語る彼の過去は"カイザーンとの戦い"……そこで起きた彼の"レクスへの覚醒"まで語られた。覚醒の引き金は……"私の死"。彼を守ろうとした私の行為が、不運にもカイザーンの悲願を成就させる事になってしまったのだ。

 

レクス「……Aqライト完全覚醒者、それは絶対的な絶望を味わった事によってQaフィールを砕かれた者を表す。その絶望によりAqライトに自身の"願望"を投影するんだ」

 

コルーリ「願望を……投影?」

 

レクス「話を進めながら説明するよ」

 

 

2019年5月1日AM12:15 ネツゾーン城〈最上階層:玉座の間〉

カイザーン「アハハッ♪やった〜♪ハッピーバースデー、RX<レクス>……ネツゾーンの王、私のダ・ン・ナ・さ・ま♡』

 

レクス『・・・・・・黙れ』

 

カイザーン『うふふっ♪コワ~イ♪別にそんなに焦らなくてもいいのよ、私のアルタイル。最初から全てをあなたにあげるつもりよ……この城も、玉座も、世界も……私も♡』

 

レクス『なら……お前の命も好きにしていいって事だよな?』

 

カイザーン『ええ、勿論♡でも……あなたに私を消すことは出来ないわ♪そして、最後には……私を受け入れるしかなくなるのよ♡さあ、いらっしゃい……私のアルタイル♡私があなたの全てを……受け止めてあげるわ♡』

 

レクス『なら……存在の一片も残らず消えろよ、カイザーーーーーーーーーーンッ!!!!!』

 

 感情と持てる力の全て解放して、俺はカイザーンに拳を叩き込もうと突撃した。しかし、カイザーンは両手を広げて、まるで俺に抱擁しようとするように優しげな笑顔を浮かべて避けようとせずに……。

 

バシュッ!!!!!

 

 俺の拳で胸を貫かれた……しかし。

 

レクス『・・・・・・ッ!?』

 

カイザーン『あっ♡アルタイルが……私を貫いてる♡ああっ♡気持ちいいっ♡トんじゃいそう♡』

 

レクス『ッ!?な、なんで効かない!?』

 

カイザーン『あっ・・・・・・もう抜いちゃうの?つまらないの~』

 

シュウ―――ン

 

レクス『傷が……埋まっていく!?回復……いや、まるで……』

 

 俺は驚愕したよ。俺の拳が貫いたはずの奴の胸の風穴が……まるで”時間が巻き戻る”様に埋まっていったんだから。

 

カイザーン『”時間が巻き戻った”みたい……でしょ♪ふ~ん……まだ覚醒したばかりだから、あなたはRX《レクス》の力を理解してないのね。どれだけAqライトが多くても……それじゃあ、私は倒せないわよ♪でも、今まで傷一つ付けられなかった私を貫けたって事は……うふふっ♡私達は同じ存在に並び立ったって事よね♡さあ、どうするの……私のアルタイル?もっと遊ぶ?』

 

レクス『くっ!……だああああああああああっ!!!!!』

 

 俺は……ひたすらに拳を振るい続けた。

 

レクス『消えろっ!!!』

 

 奴の胸をっ!腹をっ!!顔面をっ!!!

 

レクス『消えろっ!!!!消えろっ!!!!!』

 

 何度もっ!!!何度もっ!!!!何度もっ!!!!!

 

レクス『消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!!!!』

 

 消し飛ばした……それなのにっ!!!!!

 

カイザーン『ハアッ♡ハアッ♡うふふっ♡私……何回イッちゃったかな?激しすぎだよ、アルタイル♡』

 

レクス『はぁっ……はあっ……このっ!何で俺の攻撃が効かないんだよ!?』

 

カイザーン『あはっ♪”受け”だけしててもマンネリになっちゃうし……それじゃあ、今度は”攻め”ちゃうね♪そ~れっ♪』

 

シュンッ!

 

ガキンッ!!!!!

 

レクス『ぐっ!?』

 

カイザーン『高密度に圧縮されたAqライトのコートか……エヘッ♪すっごく硬~い♡私のAqライトも通らないなんて……あはっ♪私、ここからは"未知"だから、どれくらい加減していいか分からないんだ♪だから早く見せて……あなたの”力”を。そうじゃないと……』

 

シュンッ!シュンッ!シュンッ!

 

レクス『くっ!?ぐううっ!!!』

 

カイザーン『死んじゃうよ♡』

 

 身体に向かって放たれるAqライトの光線が俺に何度も撃ち込まれた。唯一の救いは俺のコートは”全時空を飲み込めるほどのAqライト”を凝縮して作っているものだったから、衝撃はあっても傷一つ付かない事だけ。俺とカイザーンは同じAqライト完全覚醒者の筈なのに……いまだあいつとの力の差はひらいたままだった。

 

 

コル―リ「あ、あの……どうしてカイザーンとの力の差が縮まらなかったんですか?それが、さっき話していた”願望の投影”に関係があるんですか?」

 

レクス「ああ、願望の投影と言うのは……Aqライト完全覚醒者だけが発現出来る"固有能力"って言えば分かりやすいかな」

 

コルーリ「それって、カイザーンがやっていた"巻き戻し"の事ですか?」

 

レクス「その通りだ。カイザーン、奴の固有能力は"時間の巻き戻し"。アカーシャがする時間移動が"既に存在している過去へ移動する"のに対して、カイザーンは"今を過去へと巻き戻す"。例えるなら、アカーシャは"完成した本"に干渉するようなもので、カイザーンは”本が出来上がるまでの過程”に干渉しているって言えばいいのかな」

 

コル―リ「つまり……”時間を巻き戻して、何度も世界をやり直す事が出来る”って事ですか!?」

 

レクス「カイザーンの願望は、恐らく……”やり直したい”なのかもしれない。だから、時間を巻き戻して繰り返すことが出来る。自分が考える最高の結果を引き寄せるまで……ね」

 

 カイザーンがしていた”巻き戻し”……それをよく理解していなかった私は驚愕した。駆が言った通りならカイザーンがカケルの死亡した際に言っていた言葉の意味が分かる。なら、カイザーンはカケルと戦闘すると言う出来事に到達するまでに……一体、《何回、繰り返したの》?

 

レクス「俺の力も、カイザーンの力も……Aqライト完全覚醒者の願望をAqライトが色濃く反映したものだったからね。話している時点で、俺は自分の力を理解してないから互角に戦えていない事。それから、"Aqライトの干渉力"が俺とカイザーンではレベルが違いすぎる事だ」

 

コルーリ「干渉力?」

 

レクス「Aqライト使用者同士が戦うと、干渉力の高い方が"相手の書き換えを上書きする形で書き換えられる"んだ。仮にCからSSSで干渉力をランク付けするなら……カイザーンは固有能力が"SS"、それ以外のAqライトによる干渉力で"S"って所なんだ。かく言う俺は……固有能力以外は全部"C"だから、何をやってもカイザーンの"巻き戻し"に上書きされるんだ」

 

コルーリ「今までカケルのAqライトですら干渉力が"C"って!?そ、それじゃあ、あなたはどうやってカイザーンを倒したと言うんですか!?」

 

レクス「……俺は最初からカイザーンに勝てる要素があったんだ。でも、それに気付くまでに時間が掛かり過ぎた。そのせいで……払う必要のない犠牲を生んでしまった」

 

 駆……彼の両肩が小さく震えだす。彼の愛した私が死を迎えたと語った時の様に、自分の罪を懺悔する様に……彼は再び自分の過去を語り出す。

 

 

レクス『舐めるなあああああっ!!!!!』

 

シューーーーーンッ!キンッ!!!

 

カイザーン『わ~おっ♪Aqライトを高密度に凝縮した剣……う~ん、その細さじゃ”刀”に近いのかな?』

 

レクス『でえええええっ!!!』

 

カイザーン『あはっ♪』

 

シュンッ!シュンッ!

 

レクス『はあっ!でえっ!!くたばれっ!!!!!』

 

 奴の首元に迫る俺の斬撃が……完全に捉えたと思った瞬間、奴の身体をAqライトが包みだしたんだ。

 

Xザート『攻め攻めの私で……行っちゃうよ♡』

 

パキンッ!

 

レクス『くっ!……クソがっ!』

 

 俺が生み出したAqライトの刀を砕いたその姿を見て……俺は思い出した。こいつには、本気の姿が残っていた事を。

 

Xザート『そ~れっ!!!!!』

 

ドゴンッ!!!!!!!!!!

 

レクス『ッッッッッ!?!?!かはっ!?』

 

Xザート『あはっ♪アハハッ♪♪Ahahahahaッ♪♪♪』

 

レクス『がっ!?くはっ!?あっ!?だあああああっ!?』

 

 一発の拳を腹部に受けて、その勢いのまま空中に身体を浮かされた俺を……奴の光線が横殴りの雨の様に連続で放たれ続けた。俺のコートがAqライトを高濃度で凝縮していなければ……一瞬でハチの巣になってたかもしれない。逆に言えば……俺にはこの防御力以外にこいつに勝っている要素がなかった。俺は……レクスに、”俺”になった後でも……カイザーンに手も足も出なかったんだ。

 

Xザート『ねえ、アルタイル、私に勝てなそうだし……もう諦めましょう♪大丈夫、あなたの事は私が受け止めてあげる。アルタイル、私達は人間の枠を超えた存在なのよ。私の事を理解できるのは……”あなた”だけ。あなたの事を理解できるのも”私”だけなの。私も……RX《レクス》になる時に全てを失った。アルタイル、私もあなたと同じなのよ。私ね……こうなってから、ずっと”一人”だったの。だから、あなたが欲しい……私と同じ場所に至る可能性があった”時生 駆”……思った通りだった。ずっと好きだった私の愛しい人……私の王子様……何回も失敗を繰り返してあなたをここまで導いたんだもの!あなたは私の物っ!!誰にも渡さないっ!!!ようやくこの手が届く所まで来たんだっ!!!!私の……あれ?何回だったかな?えっと……”6京回”くらいだったかな?まあいいや♪もう長ったらしい”巻き戻し”はこれで終わりだし♪』

 

レクス『黙……れっ!!!』

 

Xザート『強情なアルタイルの顔も素敵ね♪ねえ、アルタイル……あなたは何が不満なの?プリキュアの事は、別にあなたが私と一緒になってくれれば戻してあげるよ?それともコルちゃんの事?蘇らせてあげられるけど、アルタイルにお手つきしたから駄目……でも、気にする事ないよ♪私がいるから♪見て……アルタイル♡私の身体……あなたの好みだと思うんだけどな~♡”出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでる”し、あなたの大好きな腰よりも長い黒髪よ♡それに……きっとコルちゃんより、あなたの事を気持ちよく出来ると思うんだけどな~♡』

 

レクス『お前……!コルーリが俺を受け入れてくれたことを……お前の低俗で、卑猥な言い方で汚すなっ!!!俺の愛した人を……お前が勝手に汚すなっ!!!!!』

 

Xザート『イヤン、コワ~イ♡でも、私の攻撃を受け続けてるだけで何もできないアルタイル……あなたに何が出来るのかな~?うふふっ♪それじゃあ、ヒントをあげる♪Aqライト完全覚醒者はね……覚醒した際に持っていた願望がAqライトに作用して能力を一部変異させるの。それが私の場合は”時間の巻き戻し”だった……あなたは何かしらね?さあ、考えて♪』

 

 カイザーンの言葉に思考を回したって答えは出ない。カイザーンの攻撃は今だ止まらず……身動きもとれない。そんな俺を……救ってくれる者がいた。

 

キンッ!!!!!

 

Xザート『……ん?』

 

レクス『えっ?こ、これは……プリキュアさんの!』

 

 俺の前に現れた七色の光の壁によって急にカイザーンの攻撃が途切れた。俺は何が起きてるんだと周囲を見回すと……俺がコルーリ達と旅で手に入れた”プリキュアのアイテム”が、俺を守る光と同じ七色に輝きながら空中に浮かんでいたんだ。

 

???《駆君、ごめんね……こうなっちゃう前に助けてあげられなくて》

 

レクス『Qaフォーンから声が!?その声はキュアエール……はなさん!?』

 

エール《うん。他にもホイップに、ミラクル、ブラックやホワイトも!全員いるよ!》

 

レクス『……どうして、あなた達が?お、俺に……失望したんじゃ……』

 

エール《……駆君の心が壊れかけてて、私達を繋いでいたリンクがもうほとんど機能してなかったんだ。だから、ずっと呼んでたんだけど……声が届かなかったの。ごめんね、他のプリキュアの皆で考えて……Qaフォーン越しなら私達の声を届けられないかなって!……うまくいったのに、全部……遅かったね。でも、ここからは私達も協力する!駆君をカイザーンに勝てるようにする方法を思いついたんだ!》

 

 Qaフォーンから聞こえたキュアエール……はなさんの声が俺を助けくれると言った。しかし、その方法は……あまり良いものではなかった。

 

レクス『その……方法って言うのは?』

 

エール《……駆君が持ってる私達の"アイテム"を使って、駆君のAqライトを一時的に強化するの》

 

レクス『それって……どう言う……?』

 

Xザート『なるほど、アイテムをAqライトのエネルギーにする……焚き火に薪を焚べる様な物だね♪でも、その方法……おすすめしないよ』

 

 俺が持つ各時代で手に入れた変身アイテムをAqライトのエネルギーに変換する……その方法を聞いた俺は、不本意だがカイザーンと同意見で嫌な予感を感じずにはいられなかった。

 

Xザート『だって、それってAqライトに少しずつ取り込まれてくって事よ。万物を書き換えるAqライトが干渉すれば……アイテムが記録するあなた達は確実に消える。それどころかあなた達のオリジナル……各時代にいる本物のプリキュア達も影響を受けて消えかねない』

 

エール《でも、大きな存在が消えていく時に、大きな力が発生する……でしょ?》

 

Xザート『それ……ゆりさん辺りが考えたの?うふふっ♪ご名答♪歴史に残る様な存在が消えると、歴史に多大な修正が必要になり、それに伴った強大なエネルギーが発生する。その存在が大きければ大きいほど……ましてや世界の中心的存在の"プリキュア"を消したなんてなれば……私くらいは倒せる力が発生するかもね♪』

 

レクス『だめだっ!絶対にそんなことしちゃいけないっ!!!”僕”がっ!ち、違う……俺が何とかしますから!!!』

 

エール《駆君……カイザーンはとっても強い。今のままだと駆君は絶対に勝てない……でも、こうすれば何とかなるかもしれない!それにこれは私達”プリキュア”……みんなで決めた事!みんなが駆君を助けたいって……駆君の未来を守ってあげるって決めた事!駆君が頑張った分、私達も駆君を守ってあげたいの!それに……私達が消えちゃっても、駆君は覚えていてくれるでしょ?》

 

 俺の目の前に突きつけられた勝利の可能性は……もう一度”大切なものを失う選択”だった。俺は”弱さ”を捨てたはずなのに……それでも現実は俺に”お前はまだ弱い”、”まだ失い続けろ”と言っているように感じた。心の奥から”悲しみ”の感情が溢れて、それに合わせて涙が一粒零れた。

 

エール《泣かないで、駆君!?それにまだ私達が消えちゃうわけじゃないよ!駆君が私達と一緒に戦って、すぐにカイザーンを倒しちゃえば……ね!消えちゃう前にお終い……でしょ?》

 

レクス『……そう……ですね。そうですよね。直ぐに終わられば……いけますよね?』

 

エール《うん!フレフレ!駆君!》

 

パンッ!!!!!

 

レクス『……はいっ!!!!!』

 

Xザート『私を速攻で倒すか……舐められたものだね~♪その逆で~……速攻でプリキュアのあんた達を消しちゃうかもよ?』

 

エール《私達は負けないよ!私達、プリキュアのみんなで……駆君だけでも守るんだから!》

 

 はなさんのエールを受けて左右の頬を叩いて覚悟を決めた俺は……Qaフォーンを取り出して。

 

レクス『プリキュアの皆さん!皆さんの存在全て……お借りします!!!!!』

 

パキンッ!!!!!

 

 全力で……握り潰した。

 

シュンッ!!!!!

 

Xザート『アイテムをコートの中に……輝いてる13個の光がアイテムかな?でも”13”なんて不吉だね~、アルタイル♪』

 

 握り潰したQaフォーンから飛び出した13個の光。それはここまでに手に入れたプリキュア達のアイテム……俺はそれをコートの中に取り込む。黒いコートの胸の辺りで輝く光が闇の中で存在感を放つ”星”の様だ。

 

レクス『すぅ~……はぁ~!プリキュアさん、行きますよっ!!!!!』

 

プリキュアAS()()()()()()()()()()()》》》

 

Xザート『あはっ♪もう一回……絶望させてあげる♪』

 

 手の平に残ったQaフォーンの残骸……恐らく”石”の様なものだったが、俺はそれをポケットにしまい、プリキュアさん達に向かって号令をかける。それに応えるように今度は俺のコートから聞こえたプリキュアさん達の声と共に……カイザーンに再び向かって行った。

 

レクス『だりゃあああああっ!!!!!』

 

Xザート『よっと!あぶな〜い♪次はこっちだよっ♪』

 

シュンッ!!!!!

 

レクス『防御が間に合わない!?』

 

ホイップ《私達に任せて!はあっ!!!》

 

 俺の攻撃を避けてすぐさまカイザーンは反撃の光線を放った。防御しようにも間に合わないと思っていたが、それをなんとかしてくれたのが……プリアラの皆さんだった。俺のAqライトに取り込まれている事を利用して、逆に俺のAqライトをクリームエネルギーの様に操作して盾を作り出す。だが、無理な干渉をすれば……俺のAqライトは彼女達の消滅を早めてしまう。その速度は計り知れず……すぐにその効果は現れ始めた。

 

プリアラ()()()()()()()()()()()()()()()()()》》》》

 

レクス『いちかさん!?皆さん!?』

 

Xザート『あ〜らら♪無理に動かしちゃった♪覚醒者以外が無理に干渉したら、消滅を早めるだけだよ♪……でも、少し"消滅の速度が早すぎる"様な……まあいいか♪私にとっては好都合だし♪さて、まずは……』

 

ションッ!!!!!

 

レクス『くっ!?』

 

Xザート『1つ目♪』

 

シュンッ……パキンッ!!!

 

 俺の防御を崩したカイザーンの放った光線が胸元で輝く光……その中の一つを砕いた。

 

レクス『ああっ!?』

 

カスタード《ここまで……なんですか!?駆さん、ごめんなさい!》

 

ジェラート《泣くなよ、カスタード。駆、あたしたちはここまでだけど……絶対に勝ちなよ!でないと……あたしたちの頑張りが無駄になっちゃうだろ》

 

マカロン《……駆、良いわね?私たちの事と自分の事は割り切りなさい。そうじゃないと……もう一度壊れてしまうから》

 

ショコラ《駆君、お願いがある。戦いが終わったら”みく”に……私の妹によろしく。私の事を……覚えていないかもしれないけど》

 

パルフェ《ぐすっ!……”消えたくない”!》

 

レクス『っ!?』

 

 壊されたのは……プリアラさんのアイテムだった。そのせいで消えることが決まってしまった彼女たちの謝罪や最後のアドバイス、悲願など……それぞれの最後の言葉を残していく。その中で……いつも明るく話してくれていたシエルさんは……”消えたくない”と言った。

 

パルフェ《消えたくないキラッ!消えたくないキラッ!!!みんなと!ピカリオと!いっぱいスイーツを作りたいキラッ!!!!!みんなと……たくさん!たくさん!!キラキラルがいっぱいのスイーツを作りたいキラッ!!!!!》

 

ホイップ《パルフェ、泣かないで。駆君、あなたに会えてよかった!私達のこと……絶対に!絶対に!!忘れないでね。そして、駆君の心にある”キラキラル”を……無くしたりしないで。それじゃあ、後は任せますぞ~!》

 

レクス『待って!?』

 

Xザート『消えちゃえ♪』

 

・・・・・・グチャッ

 

レクス『ああああああああああっ!!!!!!』

 

 俺のAqライトの中で砕けた光が闇の中に消えていく。世界からプリアラさん……皆が消えた。その瞬間に気持ちの悪い音が俺の中に響いた。生物を物理的につぶしたような気持ち悪い音に合わせて、俺と言う存在が歪んでいく様な錯覚が俺を襲い……俺は発狂した。

 

Xザート『あははっ♪綺麗に砕けたね〜!……あれ?アルタイル、どうしたの?大丈夫?』

 

レクス『・・・・・・いちかさん』

 

Xザート『ん~?』

 

レクス『キュアホイップ……いちかさん。キュアカスタード……ひまりちゃん。キュアジェラート……あおいさん。キュアマカロン……ゆかりさん。キュアショコラ……あきらさん。キュアパルフェ……シエルさん。俺は忘れない……世界から消えてしまったとしても俺の中に生きている!もう……これ以上の犠牲は出させないっ!!!』

 

Xザート『あは~♡それじゃあ、もっと壊して……もっと壊れちゃおうか、アルタイル♡』

 

 そのからの戦いは酷いものだった。一組……また一組と……プリキュアさん達が犠牲になっていった。

 

パキンッ!

 

フェリーチェ《か・・・・・・か…ける》

 

Xザート『残り〜……10個♪』

 

レクス『ああっ!?くそぉぉぉぉぉおおおおおっ!!!!!』

 

 カイザーンに砕かれる者。

 

レクス『ッ!?待てっ!!!取り込むなっ!!!』

 

ハート《あはは~……ごめんね、駆君。最後まで……守ってあげられなくて……》

 

シュンッ!

 

 俺のAqライトに取り込まれた事によって消滅する者。

 

レクス『はぁ……はぁ……クソッ……畜生!』

 

エール《ブラック!!!!!ホワイト!!!!!ルミナス!!!!!》

 

ブラック《あ~あ、なんか・・・・・・悔しいね……ほのかっ……!》グスッ

 

ホワイト《泣かないで、なぎさ……私まで……泣いちゃいそうだわ》うるっ

 

ルミナス《大丈夫です。後は……駆さん、あなたに託します》

 

シュンッ

 

Xザート『うふふっ♪アハハッ♪♪……残るは1個だけだよ、ア・ル・タ・イ・ル♡』

 

 積み重なる犠牲を背負い……俺は戦い続けた。そして、最後に残ったのはHUGっと!プリキュアさん達のアイテムのみになった。

 

レクス『……ごめんなさい、はなさん。俺、結局……!』

 

エール《駆君、ネガティブ禁止!》

 

アンジュ《まだ私達がここにいる!》

 

エトワール《諦めるのは……まだ早いよ》

 

マシェリ《消えてしまった皆さんの分も負けてられないのです!》

 

アムール《勝てる可能性は約2.10%……ですが、私達は何度もその様な結果を塗り替えてきました!》

 

 はなさん達は必死に励ましていたが……状況が良くない事は明らかだった。

 

シュンッ!!!

 

レクス『ッ!?くぅうううっ!!!』

 

Xザート『最後だし壊すのが勿体ないかな〜?それじゃあ、アルタイルが自分で取り込んじゃうまで……乱れ撃っちゃうね〜〜〜!!!』

 

シュンッ!シュンッ!!シュンッ!!!シュンッ!!!!シュンッ!!!!!

 

Xザート『守りたいものを誰かに壊されるより~……自分で壊しちゃうのって結構心にくるよね~♪』

 

レクス『この……下衆外道がっ!!!!!』

 

 乱れ撃たれる横殴りの光線の雨を受けながら俺は考えた。まだ俺自身の願望は見つからない。カイザーンはアイテムを破壊するよりも俺のAqライトが取り込むように時間を掛ける方法に変えてくる。この状況を搔い潜りつつカイザーンを倒すための策を、思考の全てを利用して導きだそうとした。しかし、そのような”無駄”は許されない。

 

アムール《もう……ダメみたいです。えみる、ごめんなさい》

 

シュンッ

 

マシェリ《ルールーッ!!!!!》

 

 俺のAqライトは異常な速度でプリキュアさんのアイテムを取り込み続けている。考える時間は……もう無かった。直ぐに行動しなければ……失うだけなのだから。

 

レクス『ぐっ!うおおおおおおおおおおっ!!!!!』

 

エール《駆君っ!?》

 

Xザート『防御力頼みで特攻か~♪いいよ、おいで……アルタイル♡』

 

 俺は自分のAqライトの防御力を信じ、防御の構えを解いてカイザーンへと特攻をかける。身体に伝わる衝撃を無視し、痛みを堪え、足に力を込めて……俺はカイザーンに向かって駆けた。

 

……ピキッ!

 

マシェリ《あ……ルールー、私も……あなたの所に……》

 

エール《えみるっ!》

 

 攻撃を受ける毎に活性化していくAqライトがアイテムに亀裂を入れ……。

 

……ピキピキッ!!

 

エトワール《……ッ!!駆、絶対に……絶対に止まらないでっ!!!そのまま……真っ直ぐに行ってっ!!!!!》

 

エール《ほまれっ!!》

 

 HUGっと!プリキュアさん達を取り込み……消し去っていく。

 

……ピキッ!ピキピキピキッ!!!

 

アンジュ《駆君、この距離なら……決着を付けられるならエールだけでも助かるわ!駆君っ!エールッ!!後はお願いっ!!!!!》

 

エール《さあやっ!!!》

 

 しかし、俺は光線の雨を越え……辿り着いた。カイザーンの目の前に……辿り着いたんだ!これ以上は失えない……ありったけを!!カイザーンが消し、俺が消してしまったプリキュアさんの分も!!!防御はいらないっ!!!刺し違えても構わない!!!!!身体を包む高密度のAqライトを俺は左手一本にさらに凝縮して……カイザーンへと殴り掛かる。

 

レクス『カイザーーーーーーーーーーンッ!!!!!』

 

Xザート『あはっ♡スゴイ密度だよ、アルタイル♡……でも』

 

バシュッ!!!!!

 

レクス『・・・・・・えっ?』

 

Xザート『言ったでしょ?力を理解してないんじゃダメだって。それと……コートの状態でもあれだけアイテムを尋常じゃない速度で取り込んでたのに、それをもっと凝縮して密度を上げたりなんかしたら……』

 

ピキッ!!!ピキピキピキッ!!!!パキーーーーーンッ!!!!!

 

Xザート『こうなるよね♪』

 

 結局、俺の一撃はカイザーンを倒せなかった。俺はカイザーンの身体を貫いた腕を引き抜き……数歩下がった所で膝を付いて絶望した。プリキュアの最後のアイテムを砕いてしまったのはカイザーンなんかじゃなく……俺自身だったから。俺のせいで最後のプリキュアさんが……はなさんが消えることになったのだから。

 

レクス『あ・・・・・・ああっ!?はなさんっ!?俺……俺……!』

 

エール《……駆君、立って》

 

レクス『ごめんなさい……ごめんなさい!ごめんなさいっ!!!ごめんなさいっ!!!!!』

 

エール《駆君、謝っていないで立って!!!!!》

 

レクス『ッ!?』

 

 俺の謝罪を無視し、今にも消えそうなこの状況でも……はなさんの力強い声で俺に語り掛けてきた。

 

エール《みんな……駆君を信じた!さあやも!ほまれも!えみるも!ルールーも!なぎささん達だって!!プリキュアのみんなが駆君を信じた!!!だから……謝らないで!立ち上がって!!未来を守って!!!》

 

レクス『守れないよ……!”僕”は……もう……何もできない!』

 

エール《出来るよ!自分を信じて!!私が……みんなが……種ちゃんが……コルーリが信じた自分自身を信じて!!!”何でもできる!何でもなれる!”……だよ!!》

 

レクス『はな……さん!』

 

エール《……フレフレ……駆君!》

 

・・・・・・シュンッ!

 

 俺に向けた小さなエールを残して……最後のプリキュア”キュアエール”が、はなさんが消えた。この瞬間、この時空から……”プリキュア”が完全に消滅したんだ。

 

レクス『・・・・・・』

 

カイザーン『変身解除っと……ふ~♪ねえ、分かったでしょ?もう終わりにしましょう。守るべきものは全て消えてなくなった。あなたが戦う理由はもうないのよ?』

 

レクス(俺……何をやってんだ!何が〈”弱い僕”はいらない〉だ!何も変わってないじゃないか!言葉を強くしただけで何もできてないじゃないか!!結局、弱いままじゃないか!!!)

 

カイザーン『ねえ、もう諦めて楽になりましょう。私と一緒に生きていくの……そしたら、私があなたを永遠に守ってあげる。癒してあげる。あなたが望むモノを全てあげる。もう……苦しまなくていいのよ?』

 

レクス(もういい……もういいんだ。愛した人も……大切な家族も……守るべき人達も……何も守れない〈時生 駆〉なんか……”消えて無くなってしまえばいい”)

 

・・・・・・カチッ

 

 その時だった。自分の中で小さな歯車が噛み合う様な……止まっていた秒針が時を刻み始める様な……そんな小さな音が聞こえた。そして俺は……俺の"願望"を。

 

レクス『……分かった』

 

 "思い出した"。

 

シューーーーーン!

 

カイザーン『ッ!?Aqライトを解除した……漸く……漸く分かってくれたのね、アルタイル!』ガバッ!

 

 俺に抱き着いてくるカイザーンが何かを言っている。

 

カイザーン『ずっと……ずっとこうしたかった!何度も……何度も繰り返したの!漸く……漸く私は辿り着いたんだ。あなたが生きる……私がずっと願っていた結果に……!駆……私のアルタイル……私だけの王子様……もう離れない。あなたを否定した奴らも、あなたを苦しめるものも存在しない!ずっと……ずっと一緒よ。不幸なんて存在しない……私達が望む世界を創りましょう』

 

 耳障りなノイズの様な言葉を吐き続けるカイザーンが、俺の顔に両手を添える。

 

カイザーン『さあ、アルタイル……誓いの口づけを……』

 

レクス『……そんな事』

 

・・・・・・トンッ

 

カイザーン『・・・・・・えっ?』

 

レクス『死んでもお断りだっ!』

 

シュンッ!!!!!

 

 カイザーンの口づけを拒むように俺は奴の腹部に右手の人差し指を当てる。そして、俺はそこから”ある物”をカイザーンに撃ち込んだ。それを感じたのだろう……カイザーンは俺から距離を取った。

 

カイザーン『な、なに?何も起きていない?アルタイル、あなた……一体何を?』

 

レクス『勘違いしないでくれ。俺が”分かった”って言ったのは……お前の提案を飲んだ事に対しての返答じゃない。俺の言った”分かった”って言うのは……〈俺の願望が何なのか〉が分かったって事だ』

 

カイザーン『ッ!?ま、まだ諦めていない様ね~♪でも、もうあなたに勝ち目は……』

 

レクス『いや……”もう勝ってる”』

 

バンッッッッッ!!!!!!!!!!

 

 カイザーンの”内側”から響いた破裂音。それは俺が先ほど撃ち込んだ物の正体……”限界まで凝縮した俺の保有する全Aqライト”が、奴の内側で解放された事で発せられたものだ。それによりカイザーンの肉体は下半身が消し飛んだ。残念ながら上半身が残ってしまったが……床の上で無様に倒れている。

 

カイザーン『あああああああああああっ!?!?!?あ、アルタイル……こ、これは……!?』

 

レクス『俺はAqライトを解除なんかしてはいない……この一撃のために人差し指に視認できない限界までAqライトを凝縮していただけだ』

 

カイザーン『で、でも……私は倒せないわ!だって私には……!あ、あれ……?な、なんで!?どうなってるの!?』

 

レクス『漸く気が付いたか……”時間が巻き戻せない”事に』

 

カイザーン『あり得ないわ!だって、私はあなたのAqライトよりも強力な干渉力を持っているのよ!わ、私の干渉を越えるだけの力をあなたは持っていないはず!』

 

 カイザーンは自身が持つ時間の巻き戻しが行えない事に混乱し始める。そんな奴に……俺は種明かしでもするように事の真実を話し始める。

 

レクス『俺さ……思い出したんだよ。俺がずっと持っていた願望を。苦しい治療を受けているのが辛くて、お父さんやお母さんに迷惑かけるのが嫌で、人の命を奪った大罪人である俺が生きている事が許せなくて……ずっと俺自身を消して欲しかった。そんな俺が生まれた時から持っていた……俺にとって一番縁が深い願望……”破滅願望”。俺のAqライトの真の力は……純粋なまでの"破壊"だ。プリキュアさんをAqライトが異常な速度で取り込んでいたのは……俺の”破壊”があまりにも強力過ぎたせいだ』

 

カイザーン『そ、それで……どうやって私の巻き戻しを止めたって言うの!?』

 

レクス『簡単な事だよ。お前の”過去を消滅”させたんだ』

 

カイザーン『・・・・・・は?』

 

レクス『お前がやっていた巻き戻しでの回復ってさ……Aqライトでお前が”傷つく前の時間に戻してる”って事だろ?じゃあさ、お前に傷つく前の時間が存在しなければ、どれだけ時間を巻き戻しても意味ないよな?仮に一秒でも時間が進んで過去が出来上がるとしても、傷ついた状態の過去しかなければ……お前自身を巻き戻したって回復できないよな?だからやったんだよ。お前をAqライトで吹き飛ばした瞬間から、それ以前のお前の過去を消滅した』

 

 カイザーンは俺の言葉を理解できないのか口を開けたまま俺を見ている。仕方ないので俺はもう少しわかりやすい例えを考え、それを言葉にする。

 

レクス『ゲームの”セーブ”って言うのがあるだろう?メモリーカードに新しい情報を上書きすると過去のデータって消えるよな。ゲームとかであるだろ……バッドエンドの分岐に入った所で間違えてセーブするの。”詰みセーブ”って言うんだっけ?』

 

カイザーン『〈私が傷ついていない時間〉が存在する過去を破壊し……時間経過によって……〈私が傷ついている時間〉しか存在しない過去を生み出して……時間の巻き戻しを起こせないこの状況を作り上げたと言うの!?』

 

レクス『言葉の通りだよ。カイザーン、お前は俺が自分の願望に気が付いて、この方法を思い浮かんだ瞬間に俺の勝利は決まったんだ。”詰み”……なんだよ』

 

カイザーン『……終わってない……私は終わってない!』

 

シュンッ!!!!!!!!!!

 

レクス『……下らない』

 

バンッ!!!!!

 

 俺に向けられたAqライトの攻撃……しかし、その攻撃は俺に触れることもなく”消滅”した。

 

カイザーン『私のAqライトが……!』

 

レクス『お前と俺にはリンクがある……だからお前の中に俺のAqライトを流して、お前が制御しているAqライトをすべて消滅させてもらった』

 

カイザーン『……どうして……そんな事をするの?そんなことしなくても……それで私自身を消すことだってできるはず……!』

 

レクス『それじゃあ俺の気が済まない。お前は俺の手で……消す』

 

 俺はAqライトを右足に集めると、それをカイザーンの左肩に当て……たまたま足元にいた蟻を踏みつぶすくらいの感覚で。

 

バキッ!!!!!

 

 ……踏み砕いた。

 

カイザーン『あああああああああああっ!?!?!?!』

 

レクス『お前って……こんなに弱かったんだな。俺、それに気が付けなかったのが……本当に嫌になるよ。お前なんかを消すなんて俺一人で出来たのに……俺にとって当たり前の願望を思い出せず、プリキュアさん達の存在を犠牲にしてしまった。悔やんでも悔やみきれない……!』

 

 俺は呪いの様に自分の後悔を口にしながら……カイザーンの顔面を何度も踏み付ける。Aqライトでこいつの過去を消しながら……それでいてこいつの存在を絶対に消さない様に注意をして、時計の秒針が一秒を刻むくらい正確に、規則的に、連続的に……的確な量の痛みを何度も、何度も、何度も、何度も繰り返す。

 

カイザーン『・・・・・・て』

 

レクス『ん?』

 

 すると、ずっと黙っていたカイザーンが言葉を口にする。か細過ぎて聞こえないので俺は踏みつけるのを止め……カイザーンの言葉に耳を傾ける。

 

カイザーン『・・・・・・けて・・・・・・た・・・けて・・・・・・助・・・・・・けて』

 

レクス『・・・・・・は?』

 

 カイザーンは唯一動かせる右腕を俺へと伸ばして”助けて”と懇願する。その瞬間、身体中の血液が煮えたぎるような感覚が襲ってくる。しかし、頭の中はそれとは違ってあまりにも冷静だった。だから俺はこいつが今までしてきたことを思い出せた。こいつは俺の人生を狂わせた。種の魂を消し去った。プリキュアさんの存在を冒涜し消し去った。なにより……俺の愛したコルーリの命を奪った。そのうえで俺に”助けて”と言うのか?

 

レクス『あのさ……』

 

カイザーン『たす・・・け・・・・・・て・・・・・・助け・・・て・・・・・・助けて・・・・・・!』

 

レクス『なんで・・・・・・俺がお前みたいな”ゴミ”助けなくちゃいけないんだ?』

 

 俺はそんなこいつを見下しながら……その懇願に対しての言葉を吐いた。正直、もうこいつが目の前にいる事も不愉快になっていた俺は……先ほどと同じように全Aqライトを左手の人差し指に集めて、カイザーンの眉間に向けて構える。

 

カイザーン『・・・・・・助けて』【止めて】

 

 すると、不愉快なこいつの声とは別に俺の頭の中に”止めて”と言う声が響く。

 

カイザーン『・・・・・・助けて』【止めてよ】

 

 小さな少年の様な声で、俺がカイザーンを消す事を止めさせようとしているようだった。

 

カイザーン『・・・・・・助・・・けて』【■を消さないで】

            

 知ってる声……の様な気がした。俺がよく知っているはずの声だ。でも、凄く耳障りだったから……。

 

カイザーン『助けて・・・・・・お、おに・・・・・・』

 

バンッッッッッ!!!!!!!!!!

 

レクス『・・・・・・”鬼”で悪かったな』

 

 その制止を無視して……俺はカイザーンの眉間にAqライトを撃ち込んで完全に消滅させた。これで……俺の長かったカイザーンとの戦闘は完全に終わりを告げる事となったんだ。

 

 

レクス「これが……【時生 駆が世界しか救えなかった物語】の最後だ」

 

コル―リ「・・・・・・」

 

 言葉が出なかった。私は彼になんて言葉を掛けるべきなのだろう?彼の痛みは……もう私の想像を超えてしまっている。

 

レクス「ここまでが……恐らく本に書かれるのなら”終章”かな。しかし、人生は小説とは違う。その先には必ず続きがあるし、物語は死ぬまで終わらない。コルーリ、まだ……君が理解していない事があるよね?」

 

コル―リ「この世界……2026年が滅んだ理由。その理由があなたである事の真実について……です」

 

 私が理解していない事……それは明らかだ。この未来に来てすぐに見せられた滅んだ世界の姿、滅んだ理由が自分だと言ったレクス……駆の言葉の意味だ。これだけの犠牲を……これだけの痛みをこらえて守った世界を……何故、彼が滅ぼすに至ってしまったのか……私には分からない。

 

レクス「そうだね。その答えを知るなら……物語の”後日談”を知らないといけない」

 

コル―リ「後日談?」

 

 駆はそう言うと、もう一度大きく深呼吸をした後……。

 

レクス「コルーリ、君は……」

 

 ゆっくりと落としていた目線を私に戻して……。

 

レクス「世界を救った英雄《ヒーロー》の……その後を考えた事があるか?」

 

 彼しか知らない……時生 駆の7年間を話し始めたのです。

 

 

To the Next chapter……




いかがだったでしょうか?能力の描写……可能な限り分かりやすくしたんですが伝わったかな?次回は、レクス……時生駆の7年間のお話になります。7年の間にどうして人類・動物・植物は全滅し、世界は滅ぶに至ったのか?何故、その原因がレクスなのか?乞うご期待ください!
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