【完結】劇場版 ヴァールハイト・プリキュア もう一つの未来!?王〈レクス〉と青翼の花嫁〈コルーリ〉!   作:32期

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お久しぶりです、32期です。今回はレクスがカイザーンとの決戦後に過ごした7年間についてを話していきたいと思います。世界、人類が滅んだ理由……その答えが分かりますが、今回はかなり長い事と、かなりシリアス多めになっているので……お覚悟はよろしくて?では、お楽しみください!

ひろがるスカイ!プリキュアが始まりましたね!いや~……面白いですね!初代やちょこちょこ他作品のプリキュアのオマージュがあって20周年作品に相応しいと思います。今年はオールスターズ作品があるらしいですし大変楽しみです!今のところはキュアプリズムの虹ヶ丘ましろちゃんが押しです!加隈さんの声はやっぱりかわいいな~!早く残りのプリキュアであるウイングとバタフライも観たいですね!


ソラ「お~~~!ましろさん!ここは一体何なんですか!?壁にテレビの様な映像が映っていますよ!スゴイですね、エルちゃん!」

エル「えるぅ~!」

ましろ「ソラちゃん、落ち着いて!ここはね、映画館って言うの!簡単に言うと……えっと、なんて説明したらいいのかな?」

ヨヨ「たくさんの人とテレビのような映像をみる所……と、言ったところかしら」

ソラ「なるほど!流石はヨヨさんです!そして、あそこに映っている人が”ヒーロー”なんですか?」

あげは「そうみたいだよ!それとソラちゃん、観る時はここにある席に座ってみるの。あと、観ている時は静かにね!」

ソラ「分かりました!」

あげは「あっ!そう言えばヨヨさん、聞きたい事があるんですけど」

ヨヨ「なにかしら?」

あげは「この子も連れて来て……良かったんですか?」

オレンジ色の鳥「・・・・・・」(あげはに抱えられてる)

ヨヨ「大丈夫よ。事前に許可も取ったし、席もちゃんと買っておいたから」

あげは「そうなんですか……それじゃあ、はい!ここの席ね」

オレンジ色の鳥「・・・・・・!」(嬉しそうに羽をバタつかせる)

ソラ「あっ!始まりますよ!始まったら静かに!……ですよね!」

エル「えるぅ~!」


チャプター10:王魔降臨暦 後日譚〈2026:ヒトリ・イマヲ・カケル〉

side:コルーリ

 

レクス「戦いを終えた俺は……アカシック王国に帰還した。コルーリ、君と一緒に帰ろうって……約束を守るために」

 

コルーリ「あなたの7年間……そこにあなたが世界を滅ぼした答えがあるのですか?」

 

レクス「ああ、あるよ」

 

 レクスが最初に話し始めたのは、アカシック王国へ帰還した際の話……戦いが終わってすぐの事。彼を待っていたのは……犠牲を出しても世界を救った彼に対して、余りにも酷い仕打ちでした。

 

――7年前 プリキュアカーシャ"モデル2"

 

クアライト『カケル……よく……戻ったクア』

 

ペック『キュアエクス……こ、コルーリ……は?』

 

レクス『・・・・・・』

 

ペック『そ、そん……な……!き、キーーーーーッ!!!!!』

 

 俺はコルーリの遺体を抱えてアカーシャまで戻って来た。その時の博士とペックの表情は覚えてるよ。絶望しきった……コルーリを失った時の俺と同じ表情をしていただろう。そんな中で泣き出し始めたペックの心境は……彼をよく知らない俺でも共感できたと思う。数十秒の慟哭がようやく止んだその時……ペックは急に俺へ語り掛けてきた。

 

ペック『お前……どうしてそんなに”平気”でいられるんだよ?』

 

レクス『平気じゃないよ……俺だって悲しいさ』

 

ペック『なら……何で”そんな顔”してんだよ?!』

 

 あの言葉の意味が今でも分からないんだ。あの時の俺がどんな顔をしてたかなんて分からない。悲しいのは本当だし、少なくともペックより悲しんでいるつもりだった。しかし、そんなよく分からない理由でペックは怒り出したんだ。

 

ペック『コルーリは……お前を庇って!』

 

クアライト『ペック、そこまでだ!』

 

ペック『止めないで下さいッキー!こいつが……こいつのせいでコルーリが!』

 

レクス『分かってるよ……そんな事。俺のせいで……コルーリが死んだ。プリキュアさん達も救えなかった。……すまない、時間が惜しいんだ。早く……コルーリをアカシック王国に帰してあげたい。だから……俺が時空に穴を開ける』

 

ペック・クアライト『『えっ?』』

 

 俺はAqライトを使って”アカシックレコード内の時間航行回廊”の中へ繋がる穴を作ると、俺とコルーリのアカーシャとペック達のアカーシャの二隻をその穴へ落とす。すると、そこは時間航行回廊で……遠くにはさっきまでいたカイザーンが創り上げた”パラレルワールド〈2019年〉”が宇宙から見た地球の様に漂っていた。

 

ペック『ッ!?あ、アカーシャが時間航行回廊に!?』

 

クアライト『か、カケル……何をする気クア?』

 

レクス『帰る前に……これだけはしておきたいんです。カイザーンがいた痕跡を残しておきたくないから』

 

 俺はコルーリの遺体を片手で抱きかかえるる体勢に変えて、自由になった右手を操縦室の外に見える地球に伸ばして……。

 

レクス『……消えろ』

 

 掴めるはずのない地球に向かって、まるでボールを掴むように手をかぶせる。すると、俺の目から見ると良い感じに地球が俺の右手に隠れたように見えるから……それを右手で握りつぶすように力を込める。握り終わったのを確認して右手を下ろすと、そしたら……地球は跡形もなく消えた。

 

クアライト『な、何が起こったクア?』

 

レクス『それじゃあ、帰りましょう・・・・・・着きました』

 

ペック『お前……何を言って?なっ!?』

 

 俺はパラレルワールドを消した後、すぐにアカーシャをアカシック王国に転移させた。俺に視線を向けていたせいで外の景色が一瞬で変わった事に気付いた時のペックはかなり驚いていた。

 

アカシック女王『な、何事ですか!?あ、アカーシャが……!戻って来たのですね!コルーリ……コルーリッ!!!クアライト!!!中にいるのですか!?』

 

何が起きたペー?

 

急にアカーシャが出て来たっポ!

 

もしかして……アカシックのプリキュアが?

 

そうだコー!カイザーンをやっつけて帰って来たコー!

 

 アカーシャが現れた事を聞きつけてきたアカシック女王、そして国民たちの声が聞こえてくる。俺は小さく深呼吸をすると……アカーシャの外へと出ていった。

 

 

アカシック王国 異世界航行用港〈アカシック・ポートステーション〉

 

レクス『・・・・・・』

 

”キュアエクス”コー!

 

”キュアエクス”がカイザーンを倒して戻って来たっポ!

 

クローネ『”キュアエクス”、戻って来たカー!あ、あれ・・・・・・コルーリ先輩?』

 

アカシック女王『カケル君、よく戻ってきました!コルーリは……寝ているのですか?すぐ城に部屋を手配させましょう!あなたも疲れているでしょう?それに式典の用意も【必要ありません】……え?』

 

レクス『・・・・・・コルーリをお願いします』

 

 俺はコルーリの身体をゆっくりと地面へと下ろす。そんな俺の行動に驚いたアカシック女王はコルーリに近付くと……その理由に気付いたのだろう。膝を付いてコルーリの上体を抱き起すと……彼女の綺麗な空色の瞳から大粒の涙がこぼれていく。

 

アカシック女王『そんな……嘘よっ……!コルーリ……いやあああああっ!!!!!』

 

うわっ!?

 

何だポー!?

 

クローネ『すみません!退いて下さいカー!!嘘……コルーリ先輩……!』

 

レクス『俺を庇ったせいで……本当に……申し訳ございませんでした』

 

 コルーリの死を知った事で……アカシック女王以外の国民たちも涙を流し始める。俺はそんな中……頭を下げて謝罪をした。許されないのは分かっている……だが、謝る事をしないなんて耐えられなかったからだ。すると、すすり泣く声に合わせて……アカシック女王が俺に問いかけた。

 

アカシック女王『……できますか?』

 

レクス『……えっ?』

 

アカシック女王『ぐすっ……!……”蘇らせる”ことは……できますか?』

 

 聞かれると思っていた質問だった。聞かれると思っていたから……俺には既にその答えがあった。

 

レクス『……蘇らせることは可能です』

 

アカシック女王『ッ!!で、でしたらどうか……この子を!コルーリを蘇らせてください!わ、私が出来る事なら……何でも致します!!!どうかコル―リを……私達の”希望”を……!』

 

レクス『……ですが……俺はやりません』

 

 それが……彼女達を絶望させる答えだとしても……俺はこの答えを選んだ。だってこの決断は……コルーリと決めた”約束”なんだから。

 

 

――数十分前 ネツゾーン城〈最上階層:玉座の間〉

 

レクス『終わった……やっと終わった。コルーリ……コルーリ……』

 

 戦いが終わって全ての緊張から解放された俺は……コルーリの傍に行くために疲れ切った足を動かした。

 

レクス『コルーリ、終わったよ……俺、世界を救ったんだよ。俺……俺……!世界を……!ああああああああああっ!!!!!!!!!!』

 

ドンッ!!!!!

 

 そして、彼女の傍らについた俺は……冷たくなった彼女の頬を撫でながら、全てが終わったのだと……世界を救ったのだと囁くように報告する。しかし、そんな報告をする俺自身に怒りの感情が溢れてきた俺は……地面に向かって振り上げた左腕を思いっきり振り下ろして怒りを叫んだ。

 

レクス『何が世界を救っただよ!』

 

ドンッ!!!!!

 

レクス『種を救えなかっただろ!!』

 

ドンッ!!!!!

 

レクス『プリキュアさん達を救えなかっただろっ!!!』

 

ドンッ!!!!!

 

レクス『コルーリを救えなかっただろっ!!!!!』

 

グチャッ!!!!!

 

レクス『何が”時の王者”だよっ!!!!!自分の愚かさがプリキュアさん達を滅ぼしたんだろっ!!!!!どれだけの犠牲を払ったか分かってるのかよっ!!!!!』

 

グチャッ!!!!!

 

レクス『全てを守るんじゃなかったのかよっ!!!!!』

 

グチャッ!!!!!

 

レクス『俺は……俺は……世界しか救えなかったじゃないかよっ!!!!!!!!!!』

 

バチャンッ!!!!!!!!!!

 

 力任せに叩きつけていた左手が潰れてしまったので叩きつけるのを止めた瞬間、潰れた箇所からAqライトが漏れ始めて、傷一つない左手の状態に書き換わる。

 

レクス『俺、頑張ったよね?なのに……君の笑顔が隣にないんだよ。コルーリ……俺の傍に居てよぉ……君がいないと……俺の生きる理由って何なんだよ?君のココアが飲みたいよ……君の声が恋しいよ……君の温もりが恋しいよ。俺は……君に生きていてほしいよ』

 

 この現象を見たことで再確認できた。俺はもう常識を超えた存在になった。全てを思いのままにだって出来る。

 

レクス『君を……蘇らせたって良いよね?俺は……それを許されるだけの事をしたはずだ!』

 

 死者を蘇らせることなどたやすい!やろうと思えば……永遠の命だって与えることが出来る!

 

レクス『我儘でもいい!自分勝手でもいい!!君が蘇りたくないって言う願いを踏みにじっても……俺は……君に生きていてほしい!』

 

 コル―リは……俺に傷を癒すなと言った。でも、俺はその願いを踏みにじる事すら躊躇することなく俺はコルーリの身体へと手を伸ばす。その瞬間、ポケットの中から虹色の光が溢れる。

 

レクス『ッ!?・・・・・・え?』

 

 光が晴れると……そこには……。

 

コル―リ《・・・・・・》

 

レクス『コ・・・ルーリ?』

 

 そんな俺を悲しそうな顔で見つめる……”コルーリ”がいた。

 

レクス『コルーリの魂……なのか?なら……聞いてただろう?俺は君に生きていてほしいんだ!君と一緒に生きていきたいんだよ!』

 

コル―リ《・・・・・・ッ》フルッ!フルッ!

 

 彼女の遺体の傍らに現れたのは、コルーリの魂……だったのだろう。幻覚かもしれなかったけど……俺は彼女に俺の気持ちを伝えた。しかし、コルーリは僕の言葉に首を横に振って拒否を伝えてくる。

 

レクス『なんで!?コルーリ、なんとか言ってよ!?どうして首を横に振るの!?』

 

コル―リ《・・・・・・ッ!》

 

 口を動かして僕に言葉を伝えようとするコルーリ。しかし、彼女の声は僕には届かない。何とか読唇術の要領で……彼女の唇の動きを見て、彼女の言葉を読み取ろうとした。

 

レクス『……”ダ”…”メ”?どうして!?どうしてダメなんだよ!?この行為が”命の冒涜”だからか!?良いじゃないか!君だって……俺と……一緒にいたいよね?』

 

コル―リ《・・・・・・ッ!》

 

レクス『”それじゃあ……俺が救われない”?』

 

コル―リ《・・・・・・》コクッ

 

レクス『……ああ、そうだよ!救われないよ!!君がいないと救われないんだよ!!!俺は君に触れたいんだ!君を抱きしめたいよ!!君と重ねた肌の温もりをもう一度感じたいよ!!!君がいない事で俺の何が救われる!?教えてよ……教えてよ、コルーリッ!!!!!・・・・・・あっ』

 

コル―リ《・・・・・・ッ!》

 

 泣いてたんだ。彼女は……大粒の涙を流して泣いてた。零れ落ちる涙は地面に落ちることなく消えて……涙の跡を残す事はない。

 

レクス『コルーリ……!』

 

コル―リ《・・・・・・ッ!・・・・・・ッ!!》

 

 彼女は……”ごめんなさい”と繰り返しながら泣いた。俺さ……感じたんだ。彼女の望みを自分の我儘で歪める……俺と言う人間の愚かさが、死してなお”コルーリを泣かせている”んだって。それに気付いた俺は、コルーリが流す涙を拭い取る様に左手を彼女へと伸ばす。触れることは出来ない。しかし、俺の行動を感じたのか……コルーリの瞳が俺に向けられる。

 

レクス『コルーリ、謝るのは俺の方だよ。君の願いを聞いておきながら……それを破ろうとしたんだから。男がやっちゃいけない事の一つが”女の子を泣かせる事”なのに』

 

コル―リ《・・・・・・?》

 

レクス『コルーリ、聞かせて。君が望む事って……何?』

 

コル―リ《・・・・・・ッ!・・・・・・ッ!!!》

 

レクス『”私を蘇らせないで”、”どれだけ苦しくても生きて”……ね。”生きて”……か。大変な内容だね!君がいない世界で……生き続けるのは……!』

 

 ”生きる”……その言葉の意味を俺は良く知っている。当たり前の事だが、決して簡単な事でもない。俺はこれから……君のいない世界で生きていかなくてはいけない。俺は耐えられないかもしれない……しかし、君が俺に”生きて”と言うのなら……俺は生きよう。

 

レクス『もう……行かないと。別れが……辛くなるから』

 

・・・・・・ポタッ

 

 俺の目から……涙が溢れてくる。

 

コル―リ『・・・、・・・・・!』《駆、愛してます!》

     

レクス『ああ、俺もさ。・・・・・・愛してるよ、コルーリ!ずっと……永遠に』

 

 だけど、約束を破ることは出来ない。君を蘇らせることもせず、君がいない世界で……君だけを愛し続けて生きなくてはいけない。俺は悲しみの感情に逆らうように……涙を流して笑顔を彼女に向けると彼女は消えていった。そして、俺とコルーリは……永遠の別離を終えたんだ。

 

レクス『・・・・・・っ!……あぁぁぁぁぁあああああっっっっっ!!!!!』

 

 

レクス「俺はただ泣いた。あの時に……流せる涙は全部流してしまったのかもしれない。あれ以来、嬉しい事や悲しい事、苦しい事があっても……涙が出なくなってしまった」

 

コル―リ「……今もですか?」

 

レクス「まあ……ね。君とこうやって話せる事や君に拒否された事……泣きたい事はたくさんあるのにね。でも、これは良い事だと思ってる。だって、こうなってくれてないと……俺は壊れていたと思う。いや……とっくに壊れているのかもね」

 

コル―リ「……駆、お母様の蘇らせてという願いを拒否したのが私との約束があったからだと言うのは分かりました。しかし、そんな事をすれば……」

 

レクス「ああ、俺は……彼らにとって”カイザーンを倒して世界を救った英雄《ヒーロー》”ではなくなる。カイザーンを倒せるほどの力を持つ俺は……カイザーンと同じか、それ以上の”魔王”でしかなくなる」

 

 

アカシック女王『な、何故ですか!?お、お願いします!コルーリを蘇らせてください!』

 

クローネ『ぼ、僕もお願いしますカー!キュアエクス、コルーリ先輩をどうか!』

 

そうッポ!

 

お願いペー、キュアエクス!

 

キュアエクス!頼むホー!

 

 俺だって……蘇らせたいよ!

 

『『『『『キュアエクス!』』』』』

 

 お前達よりもずっと……コルーリの事を想ってるんだから!

 

『『『『『キュアエクス!!』』』』』

 

 でも……コルーリとの約束を破ることは出来ない!

 

『『『『『キュアエクスッ!!!』』』』』

 

 俺の気持ちを知らないで……!コルーリの気持ちも知らないで……!!

 

『『『『『キュアエクスッ!!!!!』』』』』

 

 お前達は……さっきまでの俺と一緒だ!お前らの勝手な欲望で……コルーリの命を弄ぼうとするな!!!!!

 

レクス『うるさいっ!!!黙れっ!!!!!』

 

・・・・・・パタンッ!

 

 俺は……怒りをもってアカシック女王やクローネ、国民たちに黙れと叫んだ。すると、”何か”が倒れる音がしたんだ。それも一回じゃない……その音はどんどん増えていった。

 

レクス『・・・・・・え?』

 

お母さん?お母さん、どうしたッピ?

 

あなた、どうしたぺ?あなた!?あなた、返事をしてペ!

 

シーナ、どうしたホ!?……息をしてないホー!?

 

 俺の怒りに任せた行為が国民たちの意識を……命を奪いかねない事態にしたのはすぐに察した。それを何とかしようと行動する前に……一人の妖精が俺に向かって言ったんだ。

 

……【魔王】だ

 

レクス『ッ!?……ペック?』

 

ペック『お前は魔王だ!カイザーンよりも危険な奴だ!!コルーリが死んでも泣きもしない……人の心なんて無い奴なんだ!!!』

 

クアライト『ペック、やめないか!』

 

ペック『こいつのせいでコルーリが死んだんだ!!!プリキュアだって救えなかったキー!!!お前なんか……お前なんか魔王だ!!!!!カイザーン以上の"最低最悪の魔王"だッキー!!!!!』

 

 アカーシャから降りて来たペックが俺を睨みながら叫んだ。その言葉は波紋の様に周囲に広がり、他の妖精達に伝わり……どんどん大きくなっていった。

 

そうだ!あいつのせいだホー!

 

あいつはカイザーンと一緒ぺー!悪い奴だぺー!!魔王だぺーーー!!!

 

私達の事も……他の皆みたいにするつもりポー!!!お前なんか何処かに行ってしまえポーーー!!!!!

 

クアライト『皆のもの、やめないか!恨むべきはキュアエクスではない!全てはカイザーンの【そうだよ】……カケル!?』

 

レクス『俺は……英雄なんかじゃない!”魔王”だ!!”最低最悪の魔王”だっ!!!いいか?今のは一割にも満たないほんのわずかな力だ。俺が本気になれば……お前らを瞬きするだけでも消せるんだ!!!俺をこれ以上は怒らせるな!!!!お前たちのうるさい囀りを今すぐ止めないなら俺が自分で止めるぞっ!!!!!分かったらさっさと黙れっ!!!!!』

 

 周りが漸く静かになったのを確認し、最後にコルーリに触れようとする。

 

アカシック女王『ッ!!』キッ!

 

 が、コルーリの遺体を強く抱きしめたアカシック女王の怒りが籠った眼が拒絶を訴えた。俺はそれを感じると触れることを諦め……自分の後ろにAqライトで次元に穴を開ける。目的地は2019年の多田織市。帰る場所は……俺が生きてきた2019年しか残っていない。君と一緒に生きようとしたここには……もう俺の居場所はないのだから。

 

レクス(コルーリ、君と一緒に……この国に住んでみたかったよ。君と家族になりたかった。でも、約束だもんね。俺は……俺は最後まで生きるよ)

 

 最後に俺は振り返って背後の光景を目に焼き付ける。美しい街並み、聳えるクリスタルの城、怒りと憎しみを込めた視線を向けてくる国民たち、俺の愛しい人の遺体……ああ、俺は彼らの事も救うことが出来なかったのだと心に刻み付けて、聞こえないほどの小さな声で……コルーリへと呟いた。

 

レクス『……愛してるよ、コルーリ』ボソッ

 

 そして、俺はアカシック王国を後にし……俺が生きるべき場所へと帰っていった。

 

 

コル―リ「……駆、あなたは悪くありません。私との約束を守ろうとして……だから……」

 

レクス「慰めなくていいよ。気にしてないから。それに……俺自身が魔王って言われるの結構気に入ってるんだ」

 

 私は……彼にそんな”呪い”の様な事を言った私の代わりに慰めようとするが、それを駆は「気にしない」と返す。そのうえ魔王と言う批評を気に入っているとまで言うのだ。

 

コル―リ「何を馬鹿な事を!……そ、それで、帰った後は何を?」

 

レクス「俺は2019年の4月30日……ネツゾーンとの戦いが始まった時間に戻った。それから学校を休んで調べ物をしてた」

 

コル―リ「調べ物?」

 

レクス「プリキュアさん達の事をね。住所を調べて家族に接触、家族構成の確認と消えたプリキュアさん達の事を少しでも覚えているのかを検証してた。流石に有名人や財閥の当主との接触を図るので二日かかったけど……残念ながらプリキュアさん達は完全に消滅していると言う結果だった」

 

コル―リ「……そうですか。あ、あの……墓地でカケルがあなたに言ってた事なんですけど、あなたのお父様とお母様は亡くなったと言っていました。それは……いつ頃ですか?」

 

レクス「俺が元の時代に戻ってから5日後……5月5日の事だ。丁度いいしここから話を戻そうか」

 

 

――7年前 平成31年5月2日 時生家

 

レクス『プリキュアさん、種、コルーリ……俺、どうしたらいいのかな?』

 

 元の世界に戻って来て2日。俺はプリキュアさんの存在が本当に消えてしまったのかを調べるために行動を起こし、そして完全に消滅している事を調べ終った後……俺に悩んでいた。俺がこの世界に戻ってこれたのは多くの犠牲があるからだ。その犠牲はあまりにも多く、その命を背負った俺はそれに見合うだけの行動をしなければいけないんじゃないかって。

 

レクス『こんな時……種、お前なら何て言う?コルーリ……君なら何て言うのかな?プリキュアさん、俺は……どうすれば良いんですか?』

 

 自分を支えてくれた今は亡き人々に俺は語り掛ける。どれだけ待っても答えは返ってこない。

 

レクス『……何を言ってるんだ俺は!頼るのは止めたんだ!一人でも……考えろ!小さな事でもいい!例えば……お父さん、お母さんと仲直りする……とかでも』

 

 なんとなく口から出た提案に俺は思考を傾ける。お父さんとお母さん……あの日から崩れてしまった俺達の親子関係。それを修復できたなら……種も少しは報われるだろうか?コルーリやプリキュアさん達も俺が両親と仲直り出来たら少しは安心するだろうか?

 

レクス『大したことではない。何かをするための小さな一歩……だけど、俺にとっての大きな一歩だ』

 

 千里の道も一歩から……俺のするべき贖いはここから始まるんだ。そう思って……俺は早速行動に移した。

 

レクス『もしもし、お母さん……俺です。駆……です』

 

果実『・・・・・・急に連絡なんてどうしたの?』

 

レクス『……お母さん、俺……もう一度お母さんと……お父さんと一緒にご飯が食べたいんだ。我儘なのはわかってる!俺のせいでこんなになっちゃったのも分かってる!お母さんが……俺の事を嫌いなのも。だけど……俺はお母さんの事がずっと大好きだから!だからもう一回だけ……一緒にいる時間がほしいです。5月5日……都合が良かったら家に帰ってきて。俺が……料理を作って待ってるから』

 

果実『・・・・・・』

 

・・・・・・ガチャン

 

 俺はお父さんとお母さんの予定をある程度は把握していた。お母さんは現在日本での店舗開店の為に日本に残っている。お父さんも今月は多田織市の演説の為にこの近くにいる。

 

レクス『もしもし、お父さん……駆です』

 

歩夢『駆……何の用だ?』

 

レクス『お父さん、俺……』

 

 俺が選んだ5月5日……それは二人が休みをとる事が出来て、確実に家に寄るための時間が確保できる唯一の日だった。だからこの日を設定して……ふたりに伝えた。正直、二人が揃わなくても……どちらかが来てくれれば……いや、どちらも来ない事を前提に考えていた。

 

 

ーー平成31年5月5日 

 

 そして、迎えた5月5日当日……。

 

ピーポー!ピーポー!ピーポー!

 

レクス『・・・・・・』

 

 結局、二人は帰って来なかった。

 

ピーポー!ピーポー!ピー・・・

 

レクス『そうだよね。お父さんも……お母さんも……俺の為に帰ってくる訳ないよね。俺の事なんか……大事じゃないんだから』

 

ピンポーン!

 

 その時だった。静まり返ったリビングにチャイムの音が響き渡った。俺は椅子から立ち上がりすぐにインターホンへと駆け寄り、応答用のボタンを押す。

 

レクス『お、おかえり!すぐに【すみません、時生さんの御自宅でしょうか?】……え?は、はい……そう……ですが』

 

 両親が帰って来たと思った俺は期待していたのと違う人物と言葉に動揺した。もっと冷静になっていればインターホンについているカメラ映像で人物の様子を確認だって出来たはずだ。だが、俺はそれをするのが遅かった。俺は応答してしまった後に映像を……そこに写った人物をみて身体に嫌な寒気を感じ始める。だって……そこにいたのは……。

 

刑事『多田織市警の者です。早急な要件ですのでご同行願えますか?』

 

 数名の警官を連れた刑事……所謂、警察だったんだ。

 

 

コルーリ「警察って……どうして彼等が駆の家に?」

 

レクス「聞かなくても大体予想はついてるでしょ?」

 

コルーリ「……ご両親の事ですね」

 

レクス「事故……だってさ」

 

コルーリ「あの……詳細を聞いてもいいですか?」

 

 駆は小さく頷くと、事故の内容を思い出そうと目を瞑る。時間にして10秒程……彼はその時間で内容を思い出したのだろう。ゆっくり目を開いて再び私に目線を戻す。

 

レクス「事故の内容は車同士の接触事故だった。一台はレンタカー、もう一台はタクシーだったらしい。事故現場は俺の家に近い場所にあった交差点。左折しようとしたタクシーの後部座席にレンタカーが衝突、その後に漏れたガソリンに引火して車が炎上……って感じかな。タクシー運転手は軽傷、後部座席に乗っていた乗客とレンタカーの運転手が死亡した」

 

コル―リ「……あれ?あの……ご両親は二人共タクシーに?」

 

レクス「タクシーに乗ってたのはお父さん、レンタカーを運転していたのはお母さんだった」

 

コルーリ「それじゃあ、ご両親は別々に自宅に向かっていたにも関わらず同じ事故にあったと言うんですか!?そんな……酷い偶然が……」

 

レクス「……タクシーとレンタカーに付いていたドライブレコーダーに事故直前の会話が残っていた。タクシー側には【息子が待っているんです!急いで下さい!】と運転手を急かすお父さんの音声があり、レンタカー側には【駆、待ってて……もうすぐ帰るから】と言う音声があった。二人は……俺のために早く帰ろうとしてくれていたから……事故にあったんだ」

 

 駆のご両親は……決して駆の事を嫌ってなんていなかった。子供の為に急いで帰ろうとする優しいご両親……しかし、それを彼が知るのは一生の別れを終えた後だった。

 

レクス「遺体に会わせてもらった時、火傷がひどすぎてお父さんとお母さんなのか分からなかった……でも、知ってる匂いがしたよ。2005年でおじいちゃんと僕らを巻き込んだフェイクの炎の中での事だ。鉄とガソリンが燃える嫌な臭いと……”人が焼ける匂い”。俺が火に手を伸ばして燃やされてる時と同じ匂いがしたよ」

 

コル―リ「うっ……そ、そこまで詳細にしなくていいです!そ、それで……駆はその後どうしたのですか?駆達の世界では13歳は未成年……なんですよね?住む所はあるにしても学費や生活費とかは?」

 

レクス「……ふたりの財産は全て俺に相続されたよ。この家もその一つだ。ただ俺には身内と言える人が殆どいなかったし、中学生の俺一人じゃ管理も出来ないから……Aqライトを使って”家は潰されて空き地になった”って認識阻害を周囲にかけて誰にも干渉されないように隠してた。俺の身元については……旭さんが何とかしてくれた」

 

コル―リ「アサヒが!?」

 

レクス「旭さんが自分のご両親を説得して……俺を引き取ってくれたんだ。俺は両親が死んだ後の1年は……旭さんの家で過ごした」

 

 

――平成31年5月25日

 

夜空『さあ!どうぞ、駆君!』

 

レクス『……お邪魔します』

 

真昼『……駆君、ここは今日からあなたの家になるの。”ただいま”……で良いのよ』

 

レクス『……すいません。ただいまって言うのは……俺の家だけなんで』

 

旭『お、お母さん!ご、ごめんなさい、駆君!気にしないであがって!』

 

 あの1年は……悪いものではなかった。

 

夜空『麻琴家は祝いの日にすき焼きを食べるのが定番なんだ!さあ、お肉をどうぞ!』

 

 夜空おじさんは優しくて……面白い人で……。

 

真昼『旭、椎茸を避けないの!まだ避けるなら食後のデザートは無しよ!』

 

 真昼おばさんは厳しいけど……いつも周りの事を考えてくれて……。

 

旭『そ、そんな~!お母さん、勘弁してよ~!』

 

レクス『……俺が食べるよ、椎茸。俺、椎茸……結構好きなんだ』

 

旭『……あ、ありがとう///』

 

 旭さんは家でも、学校でも……いつも俺を気にかけてくれた。

 

詩文『駆、元気ねえぞ!何かあるなら頼れって!俺達”親友”だろ!』

 

和澄『まあ……珍しくこいつの言ってる事が間違ってないから、私も何かあったら頼っていいからね!こいつよりは役に立つから!』

 

 麻琴家の皆さんだけじゃない。詩文に和澄さん……数少ない俺の友達も俺を支えてくれた。

 

 

レクス「7年間の中で一番……温かかった時間だったと思う。でも……楽しい時間は永遠に続くことはない」

 

コル―リ「……何があったんですか?」

 

レクス「あれは2020年1月1日……俺の14歳の誕生日の日だった」

 

――6年前 平成32年1月1日AM0:30 多田織市 誠海神社《せいかいじんじゃ》

 

レクス『・・・・・・遅いな』

 

 俺は神社の前で人を待っていた。旭さん、詩文、和澄さんと年が明けたら初詣に行こうと約束していたからだ。旭さんに先に行っててと言われて到着してから30分が経ったが……いまだに彼女達はやって来ない。

 

レクス『……何か……嫌な予感がする』

 

 嫌な予感を告げる胸騒ぎした。この神社は3人の自宅から5分も掛からない場所にあり遅くとも10分程で来る事が出来る。なのに……3人は何故来ない?

 

レクス『一度……帰ってみよう』

 

 確認だ……ただ無事を確認するだけ。もしかしたら俺に誕生日会のサプライズを仕掛けるためにわざと来ないだけかもしれない。そんな希望的観測を考えていたが、胸騒ぎは……大きくなり続けた。

 

 

平成32年1月1日AM 0:35 麻琴家

 

レクス『……着いた』

 

 数分の時間を要して帰って来た俺は玄関の前に立つ。嫌な胸騒ぎはまだ止まらない。

 

レクス『……何もない。何もない……はず……っ!?』

 

 何もないと自分に言い聞かせながら、俺は玄関のドアノブに手をかけた。その瞬間、嫌な胸騒ぎが心臓を強く跳ね上がる様なもっと嫌な感覚に変わる。俺の勘が……"この扉を開けてはいけない"と警鐘を鳴らし始めていた。

 

……ガチャ

 

レクス『鍵が開いてる……た、ただいま……』

 

 嫌な感覚を無視してドアノブを掴みドアを開ける。麻琴家に来て初めて"ただいま"を言ったのを覚えている。しかし、それは俺にとって麻琴家に対して最初で最後の"ただいま"になった。だって……ドアの先には……!

 

 

レクス「はあ……!はあ……っ!!」

 

コルーリ「だ、大丈夫ですか?」

 

レクス「ご、ごめん……光景が目に焼き付いてるからさ……いまだに思い出すとキツくて」

 

 ドアを開いた後の事を話そうとした途端、駆の呼吸は再び荒くなり、身体がガタガタと震え始める。その震えを止めようと自分で自分の両腕を押さえる姿は……"恐怖に震える子供"を私に連想させる。

 

レクス「目の前に広がっていたのは……”赤”だ。赤!赤っ!!赤っ!!!……真っ白で綺麗だったリビングの一面や家具を塗り潰す色が目の中に飛び込んで来た。その中には……知っている人物の顔をした”人の形をした肉塊”が5つ。部屋に充満した鉄の匂いが……!」

 

コル―リ「もういい……もういいですから!」

 

 私は彼の言葉を遮って止める。想像もしたくない凄惨な出来事が彼の目の前で起きたのは……彼の発言で嫌でも理解できた。それなのに……いまだ身体が震えているのに、私の制止があったにもかかわらず……彼は事の詳細を言葉にし続ける。

 

レクス「俺のせいだった……俺のせいだったんだ。俺があの男の命を奪ったからだ。犯人がさ……俺と種が誘拐された日に俺が命を奪った男の"母親"だったんだ。俺のやった行為が……巡り巡って俺に帰って来たんだ。しかも、俺にじゃなくて……他の人達に降りかかった。俺の誕生日のサプライズをする為に皆んなが集まってたのも原因だ!俺が……旭さん達の命を奪ったも同然なんだよ!」

 

コルーリ「駆……!」

 

レクス「は、はは……ゴメン、勝手に熱くなってた。まあ……そう言う訳さ」

 

 駆は自分が言った言葉を誤魔化す様に小さく笑って見せる。しかし、彼の中でその出来事は失いながらも戦いを終えて、その上に両親すらなくした後の彼を癒かけていた心に再び消えない傷を付けるものだったのは間違いない。

 

コルーリ「そ、それからは?それから……あなたは何を?」

 

レクス「それからは……"昔の自分"に戻った」

 

コルーリ「昔の駆?」

 

レクス「旅をする前の……プリキュア さんに出会って変わる前の自分。誰とも関わらず一人でいた自分に戻った。得ることも失う事もない状況を作って……ひたすら君との約束である"生きる事"を続けていた。3年位……ずっと」

 

 ここまで駆の話を聞いてわかったのは、両親、アサヒ、ご友人を失ったのが一年目の出来事である事と、それからは人と関わらず3年間を過ごしていた事。ここまでで駆の7年間の内の4年を知った事になるが……正直、しっくりとこない。【レクスとなった彼が何故、人類と世界を滅ぼしたのか?】……その理由を聞く為に彼の過去を聞いているのに、ここまでの出来事がその理由になり得るかと言えば……まだそうではない様に感じる。

 

コルーリ「ご両親とアサヒ、ご友人が亡くなった事が……あなたが人類と世界を滅ぼした理由ですか?」

 

レクス「ううん、違う。それに……もうその時には、世界の滅びは始まっていた」

 

コルーリ「"その時には"って……それじゃあ、いつから始まっていたんですか?」

 

レクス「……"最初"からだよ。俺が"2019年に戻った時点"からだ」

 

コルーリ「そ、そんな!?あり得ません!」

 

 私は彼の言葉を否定する。彼が2019年に戻ってきた最初から世界は滅び始めたなんて……それはあり得ない!駆が理由もなしにそんな事をするわけがない!それに"その時には"と言うなら……まるで"無意識のうちに始まっていた"と言う様に聞き取れる。私が抱いている疑問に答えを示す様に、両腕を押さえる手に一層の力を込めて駆は語り出した。

 

レクス「コルーリ、俺の固有能力である"破壊"は……あまりにも大きな力だった。干渉力の最大である"SSS"に相当する領域に到達したAqライトは……どうなると思う?」

 

コルーリ「えっと……分からないです」

 

レクス「……"流出"するんだ」

 

コルーリ「流出?」

 

レクス「流れ出るって言えば分かりやすいかな。強すぎる力は外へ流れ出てしまうんだよ。それは世界に広がり、世界をその力の在り方に歪めていく。小さな一滴の水が繰り返す度に地を削り、巨大な大河になる様に……確かな形で世界を変えていく。タチが悪いのは……これが力を持つ覚醒者の意思に関係なく出続ける事さ」

 

 レクスの"破壊"が世界に流出した。カイザーンすらなす術なく消し去る力は……彼が2019年に帰還した瞬間から少しずつ世界を、生命を滅ぼし始めた。しかも、レクスの……駆の意思に関係なく。

 

コルーリ「なら……あなたが世界を、人類を滅ぼした理由って……!」

 

レクス「そう、俺が……"存在したから"。俺が生き続ける限り、世界は俺の力によって破壊し尽くされる」

 

コルーリ「ッ!?そんなっ!そんな残酷な事がありますかっ!?生まれた事が……生きる事がいけないと言うんですかっ!?」

 

レクス「そうだよ。"この世に生まれた事が消えない罪"……なのさ。誰かが俺に死ねと言ってきても、君に”生きて”と言われたから死ぬ気はない。残りの世界が滅ぶとしても……俺は最後まで生きるよ。俺を愛してくれた君との約束だからね」

 

コルーリ「それは!それは……悲しすぎます」

 

 彼の悲しみを感じる側で……私は"彼を愛した私"を恨み始めた。何故、死んでしまった私はこうなる事を考えなかった?どうして"生きて"と……あまりにも残酷で"呪い"にも似た願いを彼に課した?彼を愛し、彼が愛した私は……その愛の強さをもって、彼を本当の"最低最悪の魔王"にしてしまった。

 

レクス「悲しまなくていいよ。俺が決めた事だから」

 

コルーリ「……いつ気が付いたんですか?」

 

レクス「世界が滅んでいく予兆は2019年に帰ってすぐあった。人の急死、温暖化と砂漠化の加速と言った形でね。でも、自覚するキッカケになったのは4年目の途中……4月12日の事だ」

 

 駆が、自分の力の流出を自覚したキッカケとなった出来事。彼は目を瞑ると、ゆっくりと語り始めた。

 

ーー3年前 平成35年4月12日 多田織市 星奈公園《ほしなこうえん》

 

駆『……』

 

 場所はあまり人が来ることのない町外れにある公園、時間は夕方、子供や大人が帰路につき始めるくらいだった。俺が公園にいたのは……なんて事ない"気分転換"のつもりだった。家じゃない何処かで1人になりたい……ただそれだけだった。

 

……コロコロッ……コツン

 

レクス『……ん?』

 

あーーー!私のボール!

 

 ベンチに座っている俺の足元に何かがぶつかるのを感じたのとほぼ同時に、喧しい大きな声でこっちに少女がやって来た。マゼンタに近い髪を星型のワンポイントがついたヘアゴムでツインテールにした活発そうな少女で、俺の足元に転がっていったボールを取りに来た様だった。

 

レクス『……これ、君の?」

 

少女『うん!お兄さん、ありがとう!……お兄さん、1人なの?お母さんは?』

 

レクス『……心配してくれてありがとう。俺の事は……別に気にしないでいいよ』

 

少女『でも、全然楽しくなさそうだよ?そうだ!今度、お母さんの漫画を見せてあげる!お母さんの漫画ね、すっごく面白いんだ〜!"キラやば"〜!なんだよ!』

 

レクス『キラやば……ね。分かった。また会えるかも分からないし、期待はしないけど……楽しみにしてるよ』

 

 嬉しそうに"うん!"と笑顔で頷く少女。すると、公園の入り口近くから女性がやってくる。

 

ひかる〜!

 

少女『あっ!お母さんだ!お兄さん、ばいば〜い!』

 

レクス『……ああ、気を付けてね』

 

 やってきた女性は、少女の母親だった。彼女に呼ばれて少女は、これまた嬉しそうに笑うと俺に別れの挨拶をし、これ以上関わりたくない俺はそれにありきたりな返しをした……その時だった。

 

バタンッ!

 

 少女は振り向いたと同時に転んでしまった。入り口近くにいた母親が心配して近づいて来るが、それよりも俺の方が近い為、仕方なく少女に駆け寄った。

 

レクス『おい、大丈夫か?……あれ?』

 

 身体を起こしてあげようと何気なく少女の肩に触れた。その瞬間、違和感に気付いた。

 

少女の母親『すみません、ありがとうございます!ひかる、起きれる?……ひかる?』

 

少女『……』

 

 生きているなら命が、魂があるはずなのに……少女の身体の中に"何も残っていない"事に。

 

少女の母親『ひかる?ひかる!?ひかるっ!!!』

 

レクス『そんな……!』

 

 少女が死んだ……何故?転んだ時に致命傷を負ったのか?いや、有り得ない。俺が見ていた限り、そんな様子はなかった。俺は何か見落としていないかを全力で思考していると、少女の母親が俺に掴み掛かる。

 

少女の母親『あなたがひかるに何かしたんですか!?何かしたんでしょう!!』

 

 この状況に、母親は感情的になる。当然だ……自分の娘がこんな状況なれば取り乱すだろう。そして、この意味が分からない状況の原因を決めつけてでも理解しようとする。荒げた声で"お前のせいだろ!"、"お前がやったんだろ!"と繰り返している。

 

少女の母親『ちょっと!!何か言った……ら……』

 

バタンッ!

 

 しかし、なんの偶然だろう。少女の母親は、さっき倒れた少女と全く同じ様に脱力しながら倒れてしまう。

 

レクス『ど、どうしました!?……なっ!?」

 

 そして、少女と同じ様に命も、魂も……なくなっていた。

 

レクス『なんだよ……これ?何なんだよ!何なんだよ!!これはっ!!!』

 

なんだ?どうしたんだ?

 

人が!女の人と子供が倒れてるわ!

 

おい!そこのにいちゃん!大丈夫……か……。

 

バタンッ!バタンッ!バタンッ!

 

 俺のあげた声を聞きつけて、数名の人が心配し近づいてくる……が、彼らは俺のもとに来る前に、全員が先程の親子の様に倒れる。

 

レクス『まさか……"俺"!?』

 

 その時、俺はやっと理解した。この異様な事態の原因は"俺"だ。この異常な状況の中で普通にしていられ、彼らが生きる普通の日常の中に混じっていた異常……"特異点《レクス》"である俺以外に原因なんてあり得ない。

 

 

レクス「その後は悲惨だったよ。俺はすぐに移動しようとその場所から走って移動したらさ、俺とすれ違った通行人や動物がバタバタと倒れ始めた時は……恐怖で気が狂いそうだった。結局、狂うことも出来なくて……閉じこもるのが限界だったけどね。でも、その一件のおかげで俺の状態に嫌でも気付けた」

 

 そこにいるだけで命を奪う……自分が動くだけでもその被害が拡大するなんて状況に直面しなければいけなかった駆の心情を考えたら、恐怖で私もどうにかなってしまいそうだから、背筋の凍るような内容の話に私は途中で思考を中止した。必要以上に考えたら、私は彼の話を最後まで聞けないと判断したからだ。

 

レクス「そういう訳で、世界は俺のせいで崩壊し始めた。その影響は数年の時間を掛けて確実に広がり、今話したように周囲に被害を起こすまでになった。だけど、人間は減るだけじゃない。人口の増加によって増えもする。人口の増加を減少が上回り、均衡を崩しでもしない限りは滅ばないと考えもした。俺はそう考えて人類に残された猶予はどれくらいかも考えたよ。減り続ける食料資源、俺の世界に対しての影響の速度、人口増加の速度を考慮して……何事もなければ”20年”は人類は生存できたと思う。でも、人類は……愚かだった」

 

コル―リ「愚かだったって……何が起きたんですか?」

 

レクス「……”戦争”だよ。俺達は第三次世界大戦と呼んでた」

 

 戦争……どんな世界でも起こりうる国家および世界規模の闘争。発生理由は領地拡大や、資源の独占などが主な理由だろう。アカシック王国は軍事国家であることもあり、ひどい時代には50ヵ国との戦争に発展したと言われている。駆の世界でもそんな戦争が起こったのだろう。

 

レクス「理由は資源不足による奪い合いだった。人口についてはまだ俺の影響よりも増加が勝っていたから良かったが、資源についてはそうはいかなかった。食糧不足、エネルギー問題は拡大し、それは増加する人口を支えきれないほどになり、それで戦争が起こり始めた。それが今から3年前だ」

 

コル―リ「世界が滅んだのが……たった3年!?20年は生存できると言っていたのに、どうしてそんな!?」

 

レクス「・・・・・・”核兵器”さ。人類が生み出した世界最高にして最低の発明だよ」

 

 ”核兵器”……聞いたことがある。人類が生み出した戦略兵器の事で、使用するだけで戦局を覆す。その脅威的な威力により、持っているだけで抑止力になるとされている物だ。しかし、使用した際のリスクが凄まじく、環境に多大な悪影響を与えるらしいので、お父様は”人類が生み出した欠陥だらけの自爆兵器”と称していたと記憶している。その名前が出ると言う事は……。

 

コル―リ「ま、まさか……!」

 

レクス「そうだ。人類は使ったんだよ……核兵器を」

 

 資源の奪い合いの為に核兵器を使うなんて!環境に悪影響を与えて、自分たちが住むことも、資源だって意味がなくなると言うリスクも考えずに……どうしてそんな事をしたというの?

 

レクス「きっかけは一発の核ミサイルだった。アジアの何処かから撃たれたって言われてるけど、それも定かじゃない。でも……その一発が撃たれた瞬間、今まで核兵器の保有だけで成り立っていた核抑止は破綻した。それに応戦する様に核を保有する大国は、一斉に核兵器の使用を開始した!君も見ただろう?砂漠化して腐敗したこの世界を!あの光景はこの世界に住む人類が”自分たち”で決めた結果なんだよ!人類は俺に滅ぼされ尽くされる前に、自分たちで自分たちの首を絞めたんだ!」

 

 駆は声を上げて、自分の住む世界のありさまが人間たちの愚かさによって起きたものだと私に語る。その表情には、軽蔑と怒り、そして同情が混ざっているような……複雑な感情が感じられた。

 

レクス「間接的な原因は俺だと言う事は理解してる。でも、人間たちには時間があったんだよ。他国と話し合い、状況の改善を試みたり、協力しあって事態に当たる事だって出来たはずだ!何故、奪い合う方法を選んだ?!理由は簡単さ!人間は理性があっても……所詮は動物だからだ!!自分の欲求には逆らえない!!!これを愚かと言って何が悪い?!人間は……愚かな生き物なんだ。死んでしまった君を自分勝手な我儘で蘇らせようとした……俺も含めてさ」ニコッ

 

コル―リ「駆……!」

 

レクス「こんな世界を見ててさ……思ったんだ。【俺はこんな世界を守って意味があったのか?】、【コルーリは、種は、プリキュアさん達は、こんな世界を守る為に犠牲になったのか?】って。こんな自分勝手な事をして滅びを加速させる愚かな人類が住む世界の為に彼女たちは消えたのか?俺はこんな奴らを救うために、プリキュアさんを犠牲にしたんじゃない!種だってそうだ!!コルーリだって……!!!世界しか守れなかったのに……守った世界がこれか?!こんな……こんな理不尽があってたまるかっ!!!!!」

 

ギュッ!

 

レクス「……コルーリ?」

 

コルーリ「お願いします……もういいですから。そんなに苦しい顔をしないで……!」

 

 私は居ても立ってもいられず、座っていた椅子から立ち上がり、駆の傍によって彼を抱きしめた。守る為に犠牲にしたものの大きさと、守ったのに失い続ける状況に……駆の心も、身体も、限界までボロボロになってしまったんだ。悲しくても泣けなくて、思いを吐き出したくても聞いてくれる人もいないし、語り掛けてもいけない。それでも……彼を愛した私が”生きて”と言ったから、それを守り続けている。こんな生きていても苦しい状況で……生き続けているんだ。抱きしめられて少し落ち着いたのだろう。駆はゆっくりと……彼の残りの出来事を話す。

 

レクス「……それでも……守りたかったんだ。こんな世界だけでも守りたかったんだ。閉じこもった部屋から出て……世界を回り始めてさ、俺が出来る事をやり続けたんだ。世界各地に広がった汚染を書き換えて元に戻したり、自分の食欲や睡眠欲を消して、自分の食料や寝床を必要な人に譲ったりした。小さなグループの紛争を止めたりもした。俺の力に心酔して”英雄”と言って称える人を可能な限り守ったりもした。俺の力に恐怖して”魔王”と言う人もいたけど、俺は絶対に手を出さなかった。でも……俺が近くにいるから、結局……みんないなくなる」

 

コル―リ「……はい」

 

レクス「だから……俺が皆を看取ったんだ。皆に墓を作ってあげた。出会って話した人に、襲ってきた人に、名前も知らない人に、既に亡くなっていた人に……全員にその場で出来る方法で墓を作ってあげた。全員を弔うのに……2年も掛かったよ。結局、俺が滅ぼしたんだ。俺が近くにいたら死ぬって分かってた。でも……放ってなんかいられなかった」

 

コル―リ「あの世界中にあったお墓は……駆が作ったんですね。死んでいった人達を……弔う為に」

 

レクス「その広い世界で俺1人になったって分かった時さ……すごく寂しかったんだ。君に……コルーリに会いたかった。どうしても会いたかった。1回でいい……1回だけでいいから君に会いたかった。だから……俺は今回の方法を思いついた。死んでしまった君を蘇らせるんじゃなくて、君が死ぬことなく生き続ける新しい未来をつくろうって」

 

 戦いを終えた彼が過ごした7年間。世界を滅ぼしたのは直接的にも、間接的にも……確かにレクスは、駆は関係しているかもしれない。だが、彼は必死に自分の在り方にも抗い人を救おうとした。7年前にカイザーンによって絶望させられても尚、傷ついた身体と心を擦り減らし続けて。駆は”人”だ。どれだけ大きな力を持っていたとしても、彼は人間なのだ。彼のこの世界でしてきた行いは……何よりも尊いものだと思う。そんな彼が……蘇らせる事が出来るにも拘わらず、会うことが出来ない”自分が愛した女性に会いたい”と思う事を……誰が否定できるだろう。

 

コルーリ「教えて下さい、駆。あなたは私が生きる未来を作って……どうしたかったんですか?」

 

レクス「ずっと一緒にいて欲しい……とは思ってないんだ。1週間……いや、1日だけでいい。俺に……君の時間をくれないか?その1日が終わったら……君を過去に戻すよ」

 

コル―リ「たった……それだけですか?」

 

 彼が計画の為にしてきた数々の行為は、どれも簡単にできるものではない。それなのに……彼が願うのは”私との一日”だと言うのだ。彼の力があれば私を思いのままにだって出来るし、無理やりにでも”ずっと一緒にいる”事を強制することも出来るはずなのに……彼は小さな願い望んだ。

 

レクス「俺の漏れ出る”破壊”の力がこの世界の物質しか対象にしていないけど、長くいればどうなるか分からないからね。君をこの世界に縛り付ける訳にはいかないよ。それに……俺の本音としてはね、”君に幸せでいて欲しい”から。俺に……”時生 駆”に君を幸せにすることは出来ないから!アカシック王国に戻ったら……もっと君を幸せにしてくれる相手もいるさ!広い世界の何処かに……俺なんかより君を愛せて、君を幸せにすることが出来る人がきっといる!だから……1日だけでいい。それに……君がコルーリであったとしても、俺が愛したコルーリは……目の前にいる君じゃないから」ニコッ

 

 抱きしめていた私の腕からそっと離れると、彼は私に微笑んだ。駆《レクス》にとって……彼が愛したのは目の前にいる私《コルーリ》ではなく、彼と愛を交わした今は亡き彼女《コルーリ》なのだ。だから、目の前の私を縛り付けず、これからを生きる私の幸せを案じているのだ。

 

レクス「俺としては……これ以上、君も、種も、過去の俺にも、カイザーンと戦わせるつもりはない。俺が君たちの時間にいるカイザーンを倒す。1回倒してるからな……俺の方が確実に倒せる。最悪刺し違えても……こんな未来にした俺なら問題ない。”時生 駆”1人の命で世界は救える……世界しか救えなかった俺に出来る最後の仕事だ。それが終わったら……この世界と一緒に終わるまで生きるだけかな」

 

コル―リ「自分が……犠牲になる気ですか!?」

 

レクス「君の未来を守れるなら……大したことないよ」ニコッ

 

 誰かのために傷つく事を恐れず、守る為なら自分の命すら顧みない。私がずっと見てきた……彼《時生 駆》の優しさがそこにあった。私に……そんな彼を救うために何かできないか?私はそう考え始めていた。

 

コル―リ「私に……あなたの為に何かできませんか?」

 

レクス「……君が幸せになってくれるなら、何もいらないよ」

 

コル―リ「そうじゃなくて!えっと……1日!あなたと過ごす1日で出来る事はないですか?」

 

レクス「1日でか……あっ」

 

コル―リ「あ、あるんですか!?さあ、言ってみて下さい!」

 

 駆は私の問いに少し悩むと、何か思いついたらしく小さく声が漏れる。私はそれを聞きだそうと彼を催促すると、彼の口から答えがでた。

 

レクス「・・・・・・”結婚式”、かな」

 

 結婚式……そう答えた彼の理由に、私は思い当たる節があった。レクスとなる前の駆と彼が愛した私との【全てが終わった後はアカシック王国で過ごし、保留になっている結婚式をしよう】と言う約束……それを思い出したのだろう。

 

レクス「いや……やっぱりやめ【いいですよ】……えっ?」

 

コル―リ「い、いいですよ……結婚式///」

 

レクス「えっ!?い、いや……でも……」

 

コル―リ「で、ですが……誓いのキスはしません!これだけは……できません」

 

レクス「……ああ、形式だけでいいよ。それが終わったら……君をアカーシャ共々元の時間に戻す。それで……俺と君との時間は終わりだ。終わるころには……過去の俺と種もこっちに来るだろう」ニコッ

 

ポーン!ポーン!ポーン!

 

 彼の要望を一方的に了承した私に、彼は少し呆れたように笑って返すと……部屋に掛けられた時計が時間を知らせる。結構な時間話し込んでしまっていたようで、時刻は0時を指していた。

 

レクス「さあ、話はこれで終わりだ。明日には過去の俺達も戻ってくるだろう。明日の結婚式が済んだらお終いだから……この世界の最後の夜を楽しんだりしないで、もう休むといい」

 

 駆はそう言うと、私と自分のマグカップを手に取ると、キッチンの流し台でそれを洗い始める。私から目線を完全に逸らしたのをみるに、これ以上は何も話さないと言う事なのだろう。それを感じた私は、彼の言葉に従い、最初にいた部屋へと戻って眠りについた。この世界で過ごす最後の夜……その夜は静寂と漆黒。そして、それを優しく照らす満月だけが輝いていた。

 

 

2026年 ■■■

 

……―リ……コルーリ……起きて!

 

 私の身体を揺すり、起こそうとする男性の声が聞こえる。眠気でぼんやりした頭をゆっくりと覚醒させていき、今の状況を考える。声の主は……恐らく”駆”だろう。私は彼と遅くまで話した後に、彼が使っていいと言っていた部屋で眠りに……なるほど、これで大体の予想がついた。大方、駆が私を起こしに部屋にやって来たのだろう。私は頭だけじゃなく身体にもゆっくりと意識を伸ばしていき、私はかけていた布団をずらして上半身を起こす。

 

コル―リ「チュ……チュ~~~ン!ふわっ……おはようございま……チュン!?」

 

レクス「はい、おはよう……ねぼすけな花嫁さん」

 

 目を開いて広がっている景色を見て私は驚愕した。だって、私がいたのは彼が貸してくれた部屋ではなく……アカシック城にある私と駆が数週間を過ごした部屋の寝室になっていたのだから。

 

コル―リ「こ、ここ……アカシック城のお部屋!?ど、どうなってるチュン!?」

 

レクス「まあまあ、落ち着いて。はい、ココアでもどうぞ」

 

コル―リ「ど、どうも……コクッ!ふ~……美味しいチュン。……じゃないチュン!」

 

レクス「驚いた?7年前に一緒に過ごしたアカシック城の部屋をAqライトで再現してみたんだ。そして極めつけはこっちだ!ほら、早く!」

 

 私の手を取ってベッドから起こすと、そんな私を引っ張って部屋のドアまで連れてくる。そして、彼はドアを空いた方の手で空けると……。

 

コル―リ「ッ!?こ、これって……!」

 

レクス「……うん。アカシック王国で結婚式を迎える予定だった場所。アカシック城の最上階にある大聖堂……”ソラハ・レワタール大聖堂”だ」

 

 ソラハ・レワタール大聖堂……アカシック城最上階にある”空に最も近い大聖堂”とされていて、歴代アカシック女王が婚礼を行ったとされる場所。アカシック女王……お母様の計らいで私とカケルが結婚式を挙げる予定になっていた。

 

レクス「今日の舞台さ。Aqライトで可能な限り全て再現したんだ。さて、目が覚めたばかりで悪いけど……俺達もこの舞台に相応しい衣装になるとしよう。それっ!」

 

 駆が私に手をかざした瞬間、彼の手から溢れるAqライトが私達を包む。それが晴れると、私達の装いが変わっていた。私が身に着けていたは、お母様が私の為に用意してくれていた世界に一着だけのウエディングドレス。髪もセットされ、装飾の類まで全て付けられていた。それに合わせてだろう駆も白のタキシードを身に着けている。長身で細身な事もあって着こなしはまるでモデルの様だし、整った顔は相変わらずだが大人になったその顔には幼さよりも凛々しさがある。見惚れてしまいそうなった事は……口にしないでおきましょう。

 

コル―リ「あっ///えっと……///」

 

 ダメでした。完全に動揺してしまいした。

 

レクス「う~ん……白もいいけど、これじゃないな。コルーリなら……こっちかな」

 

 駆は再び私に手を向けると、私のウエディングドレスに変化が現れる。純白のウエディングドレスに小さく黒い点が現れると、それを中心にゆっくりとドレス全体の白を塗り潰すように広がっていく。すると、純白のウエディングドレスは、綺麗な”青色”に塗り替えられていた。

 

レクス「やっぱり……コルーリはこれだね。コルーリ……これ、持ってるよね?」

 

コル―リ「それの指輪って……ソリティアでもらった物ですよね。どうしてあなたが持ってるんですか?」

 

レクス「俺が持ってるのは……俺が愛した君の持ち物。君のも合わせて……これでペアリングだ」

 

 駆は首にかけていたネックレス状の物を外すと、そのチェーンには指輪が通されていた。虹色の宝石が埋め込まれた指輪で、私にはそれに見覚えがあった。私が2013年のアンティークショップ”ソリティア”の店主から頂いたものだ。私もしまっておいた指輪を取り出して彼に差し出すと、それを並べるようにリングピローの上に乗せる。

 

レクス「さて、早速で悪いけど……もう始めようか。あいつが思ったより早く着きそうだから」ボソッ

 

コル―リ「えっ?」

 

レクス「ああ、気にしないで。さあ、これが終わったら……君はもう自由だ。悪いけど、もう少しだけ付き合ってもらうよ」

 

 そう言うと、駆はリングピローを宙に浮かせると、私に左腕を差し出す。私は彼の差し出した左腕に腕を通して組む形になると、私達は巨大なステンドグラスのある場所へ向かってヴァージンロードを歩き始める。一歩、また一歩と歩を進めていき、ステンドグラスの前に辿り着いた私達は、参列者も牧師もいない……ふたりだけの結婚式を始めた。

 

レクス「新郎……時生 駆、汝は彼女を妻とし、生涯を共にすることを誓いますか?・・・・・・誓います。よし……じゃあ、コル―リの番。新婦……コルーリ・ブルー・タイムオウル、汝は彼を夫とし、生涯を共にすることを誓いますか?」

 

コル―リ「・・・・・・誓います」

 

レクス「では、指輪の交換です。確か……新郎が最初に着けてあげるんだ。えっと……こうかな」

 

 彼は緊張した様子で、宙に浮かせたリングピローに置いた私の指輪を取ると、もう一方の手で私の左手をゆっくりと取り……それを私の左手の薬指に通した。

 

コル―リ「えっと、次は私が……」

 

レクス「ああ、いいよ。俺の指じゃサイズが合わないから。君が持っていて」

 

コル―リ「えっ?でもこれは……」

 

レクス「……そろそろか」ボソッ

 

ガシッ!

 

 駆は小さく何かを呟くと、急に私の肩を両手で掴む。そして、ゆっくりと……自分の顔を私の顔に近付けてくる。まるで誓いのキスでもするような……そんな感じがする。

 

コル―リ(キスはしないって言っていたのに……でも……)

 

 もしもキスをしてあげたのなら……彼は救われるだろうか?

 

コル―リ(私が彼とのキスを我慢すれば……彼は救われるかもしれない)

 

 私だけが我慢すれば……でも、私は彼と……私が愛する彼としたい!

 

コル―リ(私が我慢すれば……!)「助けて・・・・・・”カケル”!」

 

バンッ!!!!!

 

 我慢しなければいけない状況で……何故か口から漏れてしまった私の思い。その言葉が全て漏れた瞬間、私と駆しかいない静寂が広がる大聖堂に……。

 

駆「コル―リッ!!!!!」

 

 カケル《私の愛する人》の声が静寂を引き裂いて……ここに戻って来たのです。

 

 

To the Next chapter……




いかがだったでしょうか?いや~……投稿が遅れてしまい本当に申し訳ありません。今年こそ、今年中に劇場版を終わらせるぞ!オールスターズFまでに終わらせて、ゆっくり映画を観るために!さて、次回は駆と種の二人が2026年に戻り、レクスの居場所へ向かう所までのお話になります。アカシック女王、クアライト博士、ペックやクローネの協力でアカシック王国を出発する駆と種!2026年に戻って来た二人はそこで新たな事実に触れることになる!そして、二人はレクスの待つ……あの場所へと戻っていく!乞うご期待ください!


あまね「みんな、お待たせ!」

ゆい「あっ!あまねちゃん!遅かったね!」

コメコメ「あまね、遅かったコメ!」

あまね「すまない。ナルシストルーやセクレトルーを迎えに行っていて、遅くなってしまった」

パムパム「どうしてあの二人がここに来れるパム!?」

ここね「マリちゃん、二人共、ここにきてるの?」

ローズマリー「ええ!今回は特別にって事でね!」

らん「悪さとかしてないと良いけどな~」

メンメン「何かあったら大変メン!」

ローズマリー「大丈夫よ!だって、ここには77人のプリキュアがいるのよ!それに……それ以外にもたくさんのプリキュアがいるんですもの!」

駆「その通りだよ、マリちゃん」

ゆい「あっ!駆さん!どうしているの?」

拓海「さっきそこであったんだ。ここに来る予定だからって連れてきた」

駆「君たちの後輩が加わっただけじゃない。それ以外にもキュアエコーやキュアフラワー、キュアモフルンにキュアペコリン!キュアトゥモローに、他にもたくさんいるんだ!それに……僕達キュアエクスとキュアシード、そしてキュアエクシード……そして、次元の壁を越えれば人の心だけプリキュアはいる!何とかなるさ!」

種「そう言う事!そうだ!言ってなかったことがあった!デリシャスパーティー♡プリキュアのみんな!」

駆・種「「一年間お疲れ様!」」

デリシャスパーティー♡プリキュア「「「「「「ありがとう!」」」」」」

駆「まあ、そんな訳で今回は無礼講だ。二人の他にもフェンネルさんや拓海くんのお父さん、おいしーなタウンのみんな招待してるから大いに楽しんで!」

種「それじゃあ、楽しんでね~!」
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