【完結】劇場版 ヴァールハイト・プリキュア もう一つの未来!?王〈レクス〉と青翼の花嫁〈コルーリ〉!   作:32期

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ごきげんよう、32期です。今回はアカシック王国から遂にレクスの元に戻る話となります。今回明らかになる事について、チャプター2と11を読み直すとより楽しめると思います。では、お楽しみください!

5月21日はキュアウイングこと”夕凪 ツバサ”君の誕生日です!プリキュアでレギュラーでは初の男性プリキュアで、しかも妖精キュアです!人間態は最新話を見るにお母さん似だったみたいですね。さらにさらに!お父さんの名前が”カケル”らしいです!いや~……嬉しい偶然ですわ~!ツバサ君!エルちゃんのナイトをがんばって!


チャプター11:いざ、2026年へ!発進、プリキュアカーシャ!

アカシック王国 異世界航行用港〈アカシック・ポートステーション〉

 

side:駆

 

アカシック女王「ペック最上級士官、クローネ親衛隊長、ヴァールハイト・プリキュアのお二人の事は任せましたよ」

 

ペック・クローネ「「はっ!」」

 

 アカシック王国との一件が解決して約3日、クアライト博士が取り掛かっていた対レクスのための切り札である"ミラクルライト"の改修が終了した。これに合わせて、僕らはレクスとコルーリが待つ2026年に再び戻る事になったのだ。同行してくれるのは、ペックとクローネの2人である。

 

駆「やっと……この時が来た」

 

種「うん!コルーリが待ってるよ、お兄ちゃん!」

 

クアライト「カケル、これを。改修した新しいミラクルライト……その名も"ミラクルヴァールライト"クア」

 

駆「ありがとうございます、クアライト博士!」

 

 クアライト博士が預かっていたミラクルライトを僕に返却する。改修していたらしいが、言う程見た目に大きな変化はないが、一か所だけ変化がみられる箇所がある。それに気付いた種が僕の代わりにクアライト博士に質問する。

 

種「う~ん……でも、なんか宝石の所がちょっと大きくなっただけじゃない?何が変わったの?」

 

クアライト「その宝石がQaクリスタルであることは以前話したクアよね。私が今回施した改修は”Qaクリスタルの増強”クア」

 

種「増強?Qaクリスタルを増やしたって事?でも、なんか貴重なやつだって言ってなかったっけ?」

 

駆「・・・・・・あっ!保管してあるQaフォーンに搭載していたQaクリスタルを使ったんですね!」

 

 クロノがミラクルライトに取り付けたQaクリスタルは、レクスが破損したQaフォーンに搭載されていた物。最も貴重という”女王等級”と言うランクが付けられたQaクリスタルを三分割した物の一つだ。クアライト博士は、残りの女王等級のQaクリスタルを搭載したQaフォーンをアカシック王国で保管していると言っていた。もしも増強に使うとするなら、その二つに違いない。僕の言葉に頷くクアライト博士は、改修についての詳しい内容を話し始める。

 

クアライト「うむ、その通り。では、改修の目的と使用についての注意を説明していくクア。ふたりが話したQaフォーンのセーフティを無効化する事を目的に、前回話したQaクリスタルの共鳴現象を利用してQaフォーン内のQaライトを過剰発生させる事で、セーフティに負荷をかけて強制停止させる事にしたクア」

 

種「その為にQaクリスタルを増やした訳?」

 

クアライト「クリスタルの総量が多い程、発生するQaライトも増えるクアからね」

 

駆「Qaライトエネルギーは相当な量になりませんか?強制停止する前に、Qaフォーンが負荷で破損する可能性は?」

 

クアライト「その点についてが"使用の注意"の部分クア。女王等級のQaクリスタルによる共鳴現象で発生するエネルギー量のリスクを考え、使用回数を設けたクア。使用回数は……3回クア。ミラクルライト、Qaフォーンの強度を考えてもそれが限界だろう。その代わりと言ってはなんだか、電球部分をダイヤル式にして出力を簡易的だが調整できる様にしたクア。3段階にしてあるから、1段階目で運用するならかなり保つはずクア」

 

 ミラクルヴァールライトの使用回数は僅か3回。レクスと戦闘になれば間違いなく長期戦は想定される。クアライト博士が施してくれたダイヤルによる出力調整をうまく使い長期戦を狙うか?それともレクスが本気を出す前に最大出力で短期決戦か?使いどころをしっかり考えないといけないな。

 

種「ふ~ん……あれ?子ルーリは来てないの?」

 

 そう言えば、周りを見ても小さいコルーリ事”子ルーリ”の姿がない。僕達に懐いてたのもあるけど、お別れの日には見送りに来ると思っていた。そんな種の疑問に対して、クローネがやや困り顔で答えてくれた。

 

クローネ「殿下は……キュアエクスたちが出発すると聞いてから、ベッドに籠ってしまいまして。お別れするのが寂しいんだと思いますカー」

 

駆「……そうか。お別れ……ちゃんとしておきたかったんだけどな」

 

種「ふん!最後まで迷惑かけて!……最後くらいちゃんと来なさいっての」

 

ペック「タイプK、タイプT、”プリキュアカーシャ”の準備が出来たっキー!」

 

 ペックの声が聞こえる大きな宇宙船に似た機体。アカシック女王とクアライト博士の提案で、僕達を再び2026年へと導いてくれるのは――”プリキュアカーシャ”に決定した。僕らにとって見慣れた機体だからこそ、安心して僕らを最後の舞台へ導いてくれると信頼できる。この時代でも現役で活躍しているらしいしね。

 

駆「分かったよ!……ありがとうございました、アカシック女王、クアライト博士。必ずコルーリを救ってきます」

 

種「私達にかかれば楽勝だから安心してね!」

 

アカシック女王「ええ、よろしくお願いしますチュン」

 

クアライト「君たちの未来にコルーリを取り戻すクアよ」

 

駆・種「「はい!」」

 

 最後の挨拶を済ませてアカーシャに乗り込む僕達。乗り込んだアカーシャがゆっくりと動き出すと、次の瞬間、勢いよく加速して次元の彼方へと飛び出す。カイザーンの戦いから7年――アカシック王国に住む国民たちは、7年ぶりの”碧の流れ星”を見送った。

 

 

プリキュアカーシャ”モデル2” 操縦室

 

ペック「姿勢制御、安定確認……よし、シートベルトを外していいぞ」

 

 出発して数十秒、機体の姿勢制御が安定した事をペックが告げると僕はシートベルトを外し、シートに腰を掛けたまま伸びをする。

 

駆「はあ……久しぶりの感覚だね」

 

種「三日くらいしか経ってないのにね。……それにしても、なんかお尻の所がモゾモゾするな~」

 

駆「座らなくてもいいのに座ったりするからだよ、種」

 

・・・・・・苦しいチュ~ン。退いてチュ~~~ン!

 

駆「この声……!た、種、早く座席から立って!」

 

種「わ、分かった!」

 

 種が座席の座り心地に違和感を感じていると、なんとその座席から小さく声が聞こえてくる。この声に聞き覚えがある僕はすぐに種に立ち上がる様に促して立たせると、なんと座席の小さな角部分に収まる様に――見覚えのある小さな青い小鳥が隠れていた。

 

駆・種「「子ルーリ!?」」

 

クローネ「殿下!?どうしてこちらに!?ベッドに籠っていたはずでは!?」

 

子ルーリ「同じ大きさのクッションを置いておいたチュン!出発の1時間前からここに隠れて、おにいしゃん達について行こうと思ってたチュン!」

 

ペック「キキ―……こういう所は姉君のコルーリに似てないキー。もう少し慎みを覚えるべきです、姫殿下」

 

子ルーリ「べーーー!チュン!愛する殿方について行くのは姫の責務チュン!」

 

 どうやら、子ルーリは出発前からアカーシャに忍び込み、僕らについてくる気だったらしい。一国の姫君がいなくなったとあれば、アカシック王国はまた大変な事態になっているだろう。

 

子ルーリ「コルだって、おねいしゃまを助けたいチュン!おにいしゃん!おねえしゃん!コルも一緒に戦うチュン!」

 

駆「子ルーリ、それは……」

 

種「ダメッ!!!!!」

 

 子ルーリは、未熟ながらも自分の意志を僕達に示した。その思いが籠った眼差しにどのような言葉を返してやめさせようか考えていると、種は全力の拒絶をもって子ルーリを意志を否定した。

 

子ルーリ「な、なんでチュン!?」

 

種「勘違いしないで!これは"遊び"じゃないの……"戦い"なの!人の命がかかってるの!!子ルーリが考えてるほど甘くないの!!!お兄ちゃんだって命を懸けてコルーリを助けようとしてるのっ!!!!あんたみたいな子供が来たって足手まといなのっ!!!!!」

 

子ルーリ「チュ・・・・・・チュン……!」

 

クローネ「キュアシード、そんな言い方っ!」

 

駆「待って……最後まで聞いてあげて」

 

・・・・・・ナデッ

 

子ルーリ「・・・・・・チュン?」

 

種「死んじゃったら……会いたい人にも会えなくなっちゃうの。手を握りたくても握ってあげられないの。一緒に美味しいもの食べたり、一緒にお布団で寝たり、一緒に笑い合うことも……できなくなっちゃうの。アカシック女王も、クアライト博士も、クローネも、アカシック王国のみんなが……子ルーリのお姉ちゃんの時にそれを味わったの。子ルーリはそれを自分からしようとしてるの。もう一回……お父さんとお母さんにそんな思いをさせたいの?クローネにそんな思いさせたいの?アカシック王国のみんなに……そんな思いをさせたいの?」

 

 種は強い口調で子ルーリを叱ると、今度は優しい口調で諭しにかかる。危険である事、誰かが心配する事――それを分かってもらう為に、強めの口調まで使った。僕だったら、きっと子ルーリにこの様には出来なかっただろう。

 

子ルーリ「させたく……ないチュン」

 

種「分かってるじゃない。それなら、帰るまで良い子にしてなさい。……あ〜あ、疲れた!ペック、仮眠室くらいあるよね?使っていい?」

 

ペック「あ、ああ……まだ到着まで3時間は掛かるからな、構わない。場所は……お前たちがモデル1で使ってた部屋でいいッキー?それなら場所もわかるだろ?」

 

種「うん、それでおっけー!それじゃあ、着いたら起こしてね〜!」

 

 種はそう言い残すと操縦室を出て行った。笑顔で出て行った種とは対照に、子ルーリは注意された事で暗い顔をしている。こっちにもケアが必要だな。

 

駆「子ルーリ、大丈夫だよ。種は……君の事が嫌いだから怒ってる訳じゃないから。種は君の事を心配してるから怒ったんだ。……分かるかな?」

 

子ルーリ「・・・・・・チュン」コクッ

 

……ナデッ

 

駆「良い子だ。クローネ、子ルーリをお願い……僕は種の所に行くから」

 

クローネ「は、はい。でも、キュアシードは別に何とも……」

 

駆「種は寂しがり屋で泣き虫なんだよ。それを慰めるのが……いつもの僕の役割なんだ」

 

 僕は子ルーリにフォローをし、彼女の頭を優しく撫で終えるとクローネに任せて種の場所へと向かう。きっと今頃、布団の中で丸まっているだろう。そう思って僕は速足で操縦室を後にした。

 

 

プリキュアカーシャ”モデル2” 仮眠室

 

シュンッ!

 

駆「・・・・・・はぁ~……やっぱり」

 

種「……ぐすっ!……ひっく!」

 

 仮眠室に入った僕を待っていたのは、深く被った毛布の中で丸くなって泣いている”何か”がいるベッド。目の前にある光景は思った通り見慣れている物で、僕は予想通りだった事に安堵して小さく息を吐き、その何かがいるベッドに腰を下ろす。

 

ギシッ!

 

種「ッ!?……お兄ぢゃん!ダネ……!子ルーリに……酷いごどしちゃっだぁ~!」

 

駆「……種、種は言うべきことをちゃんと言えていたよ。僕じゃあんな風に言えなかった……偉いよ、種」

 

種「ぐずっ!お兄ぢゃ~~~~~んっ!!!!!」

 

駆「子ルーリも怒ってなかった。気になるなら、後で僕も一緒に謝ってあげるから……さあ、もう泣かないで。ほら、笑顔が似合う可愛い顔が台無しだ」

 

種「……ぐすっ!……なでなでとハグを希望します」

 

駆「直接だと触れないから……毛布越しでもいいなら」

 

 毛布を被ったまま丸まっていた姿勢から体を起こした種に、僕は希望通り抱きしめながら頭を撫でてあげる。こうやって二人になれるようになったから、本当ならしっかり頭を撫でてあげたいけど、種の今の身体には直接は触れない。それでも僕の温もりが伝わる様に強めにスキンシップをしてあげると、少しずつ鼻をすする音がなくなり、呼吸も落ち着いてくる。こうやって落ち着くのは、小さかった頃の種と同じだ。

 

種「……お兄ちゃん、膝枕も」

 

駆「……どうぞ」

 

・・・・・・コテンッ

 

種「……お兄ちゃん、アカシック王国でコルーリが言ってた事……どう思う?」

 

 いまだ毛布を被り、今度は膝枕を要求する種。僕はそれを了承し僕の膝に頭を乗せて横になると、先程までとは違い、真剣な口調で僕に質問をする。僕が処刑されそうになったアカシック王国での出来事、その時に現れたコルーリの魂が残した言葉についてだ。

 

駆「レクスを……”私の元に連れて来て欲しい”って言葉の事だね」

 

種「”私の元に”ってさ……”霊体のコルーリ目線”でって事なのかな?そうなるとさ……コルーリはレクスを私達に……」

 

 種の言う言葉の意味――それは僕も考えていた。霊体のコルーリの元にレクスを連れて来てほしいと言う事は――つまり、レクスを葬ると言う事なんじゃないかと。そうだとしたら、僕の答えはもう決まっている。

 

駆「だとしたら……僕がやるよ。レクスは僕なんだ。だったら……その始末は僕がしないと」

 

種「ダメッ!!!!!私がやる!私がレクスを消す!!だから……お兄ちゃんは戦わないでっ!!!」

 

 僕の答えを聞いた瞬間、種は勢いよく身体を起こして必死の形相で僕に言葉を返す。見開いた瞳で僕を見る種は僕をどうしても戦わせたくないのだろう――必死に自分が戦うべきだと言葉を続ける。

 

種「レクスが私に攻撃した時、手加減してたの!私に対して必要以上にダメージを与えないようにしてるんだよ!タネが戦おうとすれば、レクスはきっと手加減する!!手加減してるうちにタネがミラクルヴァ―ルライトを使ってレクスを倒せば……お兄ちゃんは戦わなくていいでしょ?!絶対にタネが戦うべきだよ!!!タネが一人で戦うから……だから……!」

 

駆「種、それは出来ない」

 

種「でもっ!……えっ?」

 

駆「だったら、一緒に戦おう。種が身体の主導権を使ってシードになって思いっきりぶん殴る。僕はサポートに徹する。一人にはしない……僕達は”ふたりで一人”だ。そうでしょ、種?」

 

種「・・・・・・そうだね。タネたちは”ふたりでプリキュア”……だもんね」ニコッ

 

 僕は種の前に拳を差し出し、”一人で戦うんじゃなくて一緒に戦おう”と伝える。その言葉を聞いた種は小さく微笑むと僕の拳に自分の拳を当てる。触れ合っている訳ではない。だけど、こうして僕らは一緒に戦うと誓い合う。しかし、僕には心残りがある。

 

駆(ごめんね……種)

 

 それは……種に最後になるであろう嘘をつかなくてはいけない事。僕は種に伝わらないようにリンクを切り、心の中で謝罪をした。

 

 

2026年 多田識市 〈プリキュアカーシャ"モデル1"墜落地点付近〉

 

ペック「到着……みたいっキー」

 

種「……戻って来たね、お兄ちゃん」

 

駆「ああ……戻って来た。僕らの未来に」

 

 約3時間の航行を終えて、僕らはコルーリの待つ2026年の未来に戻ってきた。着陸したのが僕らが乗っていたアカーシャの近くの為か、外に出て見る景色は来た時とさほど変わらない。

 

クローネ「これが……キュアエクスたちの未来カー?」

 

子ルーリ「ここ……なんか怖いチュン」

 

駆「……ペック、モデル1の操縦室へ行こう。コルーリの居場所を見つけるのに心当たりがあるんだ」

 

ペック「了解っキー。クローネ親衛隊長は殿下を守りつつ警戒し後ろから付いて来るように……俺が先頭で進むっキー」

 

 僕の考えが正しいなら、コルーリが今どこにいるかを見つける手がかりはアカーシャの操縦室を確認すれば分かるはずだ。僕達は墜落したアカーシャ"モデル1"の操縦室を目指して歩き始めた。

 

 

2026年 プリキュアカーシャ"モデル1" 操縦室

 

シュンッ!

 

ペック「ッ!!……キ〜!誰もいない、入っていいっキー」

 

種「……特に変わりないね〜」

 

駆「誰もいない……か。ペック、操縦桿付近にQaフォーンがないか調べて欲しい。3台目のQaフォーン……おばあちゃんが持っていたQaフォーンを」

 

ペック「ストリングのQaフォーン!?何でそんなもんを……って、そんな物ないっキー!どこを探してもないっキー!!」

 

駆「それは良かった。それならコルーリの居場所も分かるよ」

 

ペック「ど、どう言う事だっキー?」

 

 手掛かりと言っていたQaフォーンがアカーシャにない事を聞いて安心する僕に疑問を持つペック。僕はその理由についてを簡単に説明する。

 

駆「2005年を離れる前におばあちゃんがコルーリにQaフォーンを渡していたんだけど、それ以来コルーリはそのQaフォーンを肌身離さず持っているんだよ。つまり、ここにそのQaフォーンがないって事は?」

 

クローネ「今もコルーリ先輩がQaフォーンを持った状態と言う事カー!」

 

子ルーリ「おねいしゃまの場所が分かるチュン!」

 

ペック「そう言うことっキー!待ってろ!モデル1のシステムを使って探し出してやる!Qaフォーンに内蔵されてるGPSは隔絶された空間でも割り出せる……キー!ビンゴ!反応があった!座標をお前たちのQaフォーンおくる!」

 

種「やった〜!これでコルーリの場所が分かるね、お兄ちゃん!……お兄ちゃん?」

 

 思った通り、コルーリはおばあちゃんのQaフォーンを持っててくれた。これのおかげでコルーリの居場所も割り出せたぞ。しかし、疑問がある。レクスは僕――あいつは僕達の旅の全てを知っているはずだ。それなら、どうして”自分の居場所を知らせる手掛かりを残しておいた”?僕ならそんな手掛かりを残したりしない。もし残すとしたら、”自分の場所を知らせるため”だ。誘いをかけている――それしかありえない。

 

ペック「……ん?なあ、ふたり共、聞いてもいいか?」

 

駆「どうしたの、ペック?」

 

ペック「お前達の出身地……えっと、日本の現在の”年号”って【令和】だよな?2019年のある期間を越えた時点から」

 

種「タネ達が出発した時点だと、まだ【平成】!タネ達がネツゾーンと戦い出す次の日が、年号が変わる予定日だったんだから!ん?でも、ここは未来だからもう【令和】なのかな?ねえ、お兄ちゃん?」

 

駆「えっ?そ、そうだよ……2019年の”5月1日”から……あれ?」

 

 ペックが僕に日本の年号について聞いてくる。”今の年号が【令和】なのか?”と言うなんてことない質問の筈なのに、その言葉を聞いた瞬間にある違和感を覚えた。

 

ペック「カイザーンの決戦の時にアカーシャの画面に出てた年号の表記が【平成】から【令和】になってた事があったんだ。だから覚えてた」

 

 動揺していたから気付かなかった。この未来に来て……僕は見ていた。僕の世界にあって、この世界に無いもの。

 

ペック「けどよ……なんで2026年なのに、年号が"【平成】のまま"なんだ?」

 

 この未来に【令和】が存在しない!

 

駆「そうだ……!この未来に来て確認したお母さんや旭さん達の墓誌の日付!全部、【令和】じゃなくて【平成】だった!」

 

種「で、でも……それだと、この未来ってなんなの?」

 

ペック「は?そんなのこの未来が"分史"だからに決まってるだろ。まさか……お前ら分かってなかったのか?」

 

駆「この未来が……"分史"!?そんな筈はない!だって、この未来に来た時にコルーリが言ったんだ!この未来は"正史"だって!」

 

ペック「それについては……こいつのせいだろうな。見てみろ。アカーシャのコンピュータが誤表記してやがる。落下した衝撃程度じゃアカーシャはバグったりしない。何者かがアカーシャにハッキングしたと考えるのが自然ッキー。まあ、それが出来るとすれば……レクスしかいないだろうがな」

 

 コルーリはこの未来についた際に、この未来は”正史”であると言っていたが――それが何者かによる偽装だったと言うのか?こんな事が出来る奴は――間違いなくレクスだ。しかし、何故この未来が”分史”である事を誤魔化す必要があった?そんな事をする意味があるとすれば――。

 

駆「僕達の未来が荒廃する世界になると言う風に誤解させて……動揺させるためか?」

 

種「その考えが無難かもね。タネ達、アカーシャの事はコルーリに任せっきりだから、自分で確認して間違ってるなんて分からないもん」

 

ペック「まあ、今はもう関係無いだろ。コルーリの場所も分かったんだ。後は取り返すだけだ」

 

駆「そう……だよね」

 

 ペックの言う通り、僕達はコルーリの居場所の手掛かりを見つけた。スッキリしない気持ちを我慢し、僕達はアカーシャを後にした。

 

 

プリキュアカーシャ”モデル2” 着陸地点

 

子ルーリ「チチュン!?お、下ろして、クーちゃん!下ろしてチュ~ン!!」

 

クローネ「殿下、これ以上は私達がいても邪魔になってしまいます」

 

ペック「キュアエクス、キュアシード……俺達はここまでだ。悪いな、もう少し……手伝ってやりたかったがよ。殿下をこれ以上の危険には晒せない」

 

 ペック、クローネは僕らのアカーシャの調査を終えた後、アカシック王国に戻ると伝えてきた。本来ならコルーリの発見まで同行する予定だったが、子ルーリがついて来てしまった事で彼女の安全を優先しなければならなくなったからだ。しかし、その原因である子ルーリはそれに納得出来ず大暴れだったが、そこはやはり子供だ。子ルーリを人の姿になったクローネが取り押さえ、抱えられてしまった。

 

駆「大丈夫だよ。子ルーリの安全の方が優先だからね」

 

種「……子ルーリ、あの……ううん!2人に迷惑かけない様に帰りなさいよ。帰ったら……クアライト博士達にもちゃんと謝って。それから……さっきはごめんね」

 

子ルーリ「ッ!!……チュンッ!!!」ボンッ

 

クローネ「きゃあ!で、殿下!?」

 

 抱えられていた子ルーリが種の謝罪を聞いた途端、子ルーリは人の姿に変身する。それに驚いたクローネは、子ルーリを離してしまう。自由になった子ルーリは僕と種の前に駆け寄ると、身につけていた小さなカバンを漁り始め、その中にあったグミの瓶を取り出す。そして、瓶の中から一際大きいグミを取り出して種に差し出す。

 

子ルーリ「おにいしゃん!おねえしゃん!これ……あげるチュン」

 

駆「これ、クローネと半分にしてたグミ?……いや、形が違うな。翼の形……かな?」

 

子ルーリが差し出したのは、青色のグミだった。翼の形をしたグミ2個が端で繋がっており、半分にできる様になっている物だ。アカシック王国で子ルーリとクローネが食べた物と似ているが、色や形状は違う様だ。

 

クローネ「こ、これは!?」

 

ペック「知ってるのか、クローネ親衛隊長?!」

 

クローネ「"ブルーバーグミ"……殿下のお気に入りであるアカシックグミのシークレットフレーバーです。滅多に出ない事から、出たら"奇跡を起こせる"と言われる程です」

 

ペック「……ちなみにどれ位の頻度で出て来るんだ?」

 

クローネ「……発売した100年間で、目の前の物もカウントすると……3件です」

 

ペック「約30年で1件って……」

 

 30年に一つのグミ――信じられない奇跡の様なグミを子ルーリは僕達に差し出した。

 

子ルーリ「アカーシャに隠れてる時にグミを食べようとしてたら入ってたチュン。”奇跡を起こせる”って言うから……おねいしゃまを助けるおにいしゃん達がこれを食べて、絶対成功しますようにって!奇跡が起きますようにって!」

 

駆「……子ルーリ、分かった」

 

種「お兄ちゃん、それ……半分頂戴」

 

駆「うん……はい、種」

 

駆・種「「せ~の……はむっ!」」

 

 種に受け取ったグミの半分を渡すと、僕達は同時にグミを口の中へ放り込む。ゆっくりと味わうように咀嚼を繰り返すと、口の中に甘い果物の味が広がる。恐らくアカシック王国の果物なのだろうが、味としては――複数の果物が混じったミックスジュースの様な味だ。苺、オレンジ、葡萄、レモン、メロン、桃、マンゴー、パイン、リンゴ、キウイとグレープフルーツかな。少なくとも僕の味覚で判別できるだけでもかなりの数のフルーツの味がする。

 

種「……美味しい。とっても……とっても美味しい。笑顔になるくらい……とっても美味しい!」ニコッ

 

駆「”デリシャス”で……”スマイル”……かな」

 

種「うん!”デリシャスマイル”!」

 

駆「何だよ、それ!」ニコッ

 

子ルーリ「えへへ~!……チュン?」

 

……ギュウ

 

 グミを味わう僕らを見て微笑む子ルーリを種が抱きしめる。僕もそれに続いて子ルーリと種をそのうえから抱きしめると、種は子ルーリに優しく語り掛ける。

 

種「ありがとう、子ルーリ……これからもいい子にね。あなたのくれた奇跡で、あなたのお姉ちゃんを助けてくるからね」

 

子ルーリ「おねえしゃん……チュン」

 

チュッ!

 

種「ふえっ///!?」

 

子ルーリ「おにいしゃんも……チュン」

 

チュッ!

 

 種は子ルーリに感謝の言葉を贈る。すると、子ルーリは種にくちづけを返す。そして、子ルーリは僕の頬にも、その小さな唇でくちづけをしてくれた。

 

子ルーリ「また会えますようにって言う……姫の祝福チュン。おねいしゃまを助けたら……また……また会えるチュン?」

 

種「当たり前でしょ!もう友達なんだから!今度は助けたコルーリも連れて来てあげる!楽しみにしててなさいね!」

 

駆「ああ、きっと……きっと会えるさ。これが”さよなら”じゃないんだから」

 

子ルーリ「そう……そうチュンね!”さよなら”じゃないチュンね!」

 

 そう言って微笑んだ子ルーリは駆け足でペック達の元へと戻ると、再び僕達の方へ向き直る。

 

子ル―リ「おにいしゃん!おねえしゃん!……”またね”チュン!!!」

 

種「うん!またね!……またね!!!」

 

駆「またね、子ルーリ!」

 

 ”またね”――と再会の願いを込めた別れの言葉を交わした子ルーリは、アカーシャの中へとペック達を連れて消える。そして、今まで見送ってもらっていた僕達は、初めて――”碧色の流れ星”を見送った。空を切り裂くほどの速さで駆け抜けて消えた流れ星――僕らはそれが見えなくなっても、それが消えた空を見つめた。

 

駆「・・・・・・種、大丈夫?」

 

種「・・・・・・うん、大丈夫。でも・・・・・・ちょっと待って」

 

 そう言う種の方へ視線を向けると、最後に子ルーリに向けていた笑顔のまま――一筋の涙を流していた。

 

 

2026年 時生家跡地

 

駆「まさか……ここだったなんてね」

 

 子ルーリ達を見送った後、僕らはコルーリの持つQaフォーンの反応がある場所へと向かった。その場所に辿り着いた時、僕は驚いた。その場所は僕達がこの未来に来て最初に向かった場所――僕と種の家があるはずの場所だったからだ。

 

種「でも、ここには何もないよ」

 

駆「いや、意識を研ぎ澄ますと……ある。Aqライトを感じれるか感じられないかの絶妙な量で壁を作ってるんだ。来たばかりの時に、動揺していたせいで感じることが出来なかったみたいだ。……不覚だったよ」

 

種「で、どうやって入るの?」

 

駆「どうせ未来の僕は、僕らがこの未来に戻って来た時点で分かってるはずだ。だったら……正面から行くだけだっ!!!!!」

 

ガンッ!!!!!

 

 僕は左手にAqライトを纏わせると、僕は思いっきり何もないはずの場所へ拳を叩きつける――すると。

 

パキッ!パキパキッ!!!パッキーーーーーン!!!!!

 

 今まで聳え立っていた壁は砕け、その奥に建物が現れた。それは間違いなく――僕と種の家だった。

 

種「お家、そのままだったんだ!早く入ろうよ、お兄ちゃん!」

 

ガチャ!ガチャガチャ!

 

種「鍵が掛かってる!お兄ちゃん、お家の鍵!」

 

駆「まさか元の時代に戻る前に、これを使うとはね」

 

 僕は種に言われる様に、2019年で使っていた家の鍵を取り出して鍵穴に差し込むと、迷いなく鍵を捻る。

 

……ガチャンッ!

 

 すると、玄関の鍵は"ガチャン"と言う音で開いた事を告げる。

 

駆「……開いた」

 

種「お兄ちゃん、入ろう」

 

駆「うん。……よし、行くよ」

 

 取手を引いて扉を開けて中に入る僕達。中の光景は僕達が最後に見た家の様子と全く変わりはない。なんなら、あの日から時間が止まったままの様にも感じる。僕はそんな様子の家に土足のままで上がり、リビングの方へと向かう。

 

駆「誰も……いない」

 

種「お兄ちゃん、これ!マグカップが洗ってあるよ!」

 

 警戒しながらもリビングに入った僕達。しかし、リビングの中に人はおらず、そこにあるのは使用した後のマグカップがスタンドに2つ掛けられているだけだ。リビング以外にコルーリ、そして未来の僕がいるとすれば……。

 

駆「僕の部屋へ行こう。僕がいるとすれば恐らく……」

 

種「しっ!静かにして!」

 

 急に静かにするように言う種。すると、静まり返った家の中で種は目を瞑って耳を澄ませる。すると、種は何が聞こえたのかを僕に知らせる。

 

種「聞こえた!コルーリの声!”助けて”って!お兄ちゃんの部屋の方から!!」

 

駆「ッ!!!」

 

 僕はその言葉を聞くとすぐに駆け出し、僕の部屋へと向かう。階段を数段抜かしで駆け上がり、曲がってすぐ左側にある部屋――そこが僕の部屋だ。僕は部屋の扉を勢いよく開くと、その先に僕の部屋はなく、豪華な大聖堂の内部が広がっている。そして、そこに僕達の仲間の姿を見つけた僕は、その名を叫んだ。

 

駆「コル―リッ!!!!!」

 

コル―リ「ッ!!……カケルッ!」

 

種「コルーリ、お待たせ!……って、ここお兄ちゃんの部屋じゃない!?しかも、何その恰好!?ウエディングドレスじゃん!?」

 

 種に言われて気付いたが、コルーリの恰好は彼女を思わせる青いウエディングドレス姿で……まるで”花嫁”を思わせる姿をしている。そして、その横にいる僕と同じ顔をした男”レクス”は、奴の着ていた黒のコートとは対照的な白いタキシードを身に着けていて、そして場所は大聖堂――まるで結婚式でもしていたようではないか。

 

駆「これは何の真似だ……”俺”?」

 

レクス「思ったより早かったな、”僕”。もう少しで誓いのキスまで済んだのに……お前のせいでお預けだよ」

 

駆「何の真似だって聞いてるんだっ!!!」

 

レクス「俺が、俺の花嫁に何をしたって構わないだろ?まあ、それはそうと……良く戻って来たよ、”僕”。俺の用意した世界は楽しめたか?まあ、その様子じゃなんとかなったとは思うがな」

 

駆「コルーリを攫ったのは、死んでしまったコルーリの代わりとしてか?!」

 

 僕の言葉を聞いたレクスは口角を少し上げてると、少し喜んだように僕へと言葉を返す。

 

レクス「ほ~……ちゃんと俺の事も調べてきた訳だ。で、お前は俺をどうする?」

 

駆「……アカシック王国で、お前を愛したコルーリに会った」

 

レクス「ッ!?……彼女は何て?」

 

駆「……”お前を私の所に連れて来て”って」

 

レクス「……そうか。それを聞けて……良かったよ。でも、俺にはまだやる事がある!」

 

 そう言うと、レクスはAqライトを出現させてコルーリを拘束し大聖堂の壁付近まで吹き飛ばすと、半径2mほどの半円の結界を作りコルーリを閉じ込める。

 

コル―リ「きゃあっ!?」

 

駆「コルーリッ!レクス、お前っ!!!」

 

レクス「悪いけど、”僕”……お前は後だ!」

 

シュンッ!!!

 

 コルーリを閉じ込めたすぐ後、レクスは僕に向かってAqライトを放つ。単純な直線状の光線だ。これなら避けられる!そう思った僕は避けようと身体を動かそうとした……が。

 

種「ごめんね、お兄ちゃん」

 

 僕の身体の主導権を――種が奪っていた。

 

駆『種っ!?何をしてるんだ!?攻撃されてるんだぞ!早く避けるんだ!!』

 

種「大丈夫だよ、お兄ちゃん」

 

 Qaウォッチから響く僕の言葉を無視して、種は避けようとしない。それどころか攻撃が向かってくる間、僕の身体が身に着けている装備を外し始めたのだ。QaフォーンS、Qaウォッチ、おばあちゃんのマフラー、そのうえ切り札の”ミラクルヴァ―ルライトまで外して床に落とす。レクスの光線はもう目の前――外そうと思っていたものをすべて外し終えた種は、抵抗することなく光線を胸に受けた――その瞬間。

 

バシュンッ!!!!!

 

駆「・・・・・・えっ?」

 

 強い衝撃が走った瞬間、僕の視界に種の背中が現れる。しかし、その種の背中が――どんどん遠くなっていく。

 

駆「た・・・・・・ね・・・・・・?がっ!?」

 

 壁にぶつかる衝撃を感じながら僕は考え、答えが出た。恐らく僕の身体から種だけが取り除かれ、僕の身体だけが――後方の壁へと吹き飛ばされたのだ。そんなこと考えていると、僕を囲むようにAqライトが広がり、円錐の結界を作り出す。しかも、一枚なんかじゃない――13重にもなる円錐の多重結界が僕を閉じ込めた。

 

種「……やっぱりこうなったね。大事な物を外して正解だったよ」

 

駆「種っ!種っ!!種っ!!!」

 

種「タネ、また嘘をついちゃった。一緒に戦おうって約束……守らなくてごめんね、駆。でも、安心して。タネの嘘は……これが最後だから」

 

 結界の中から呼ぶ僕を無視しながら、種は僕の身体から外した装備を自分に付け直す。QaフォーンS、Qaウォッチ、ミラクルヴァールライト、仕上げにおばあちゃんのマフラーを巻くと、種は笑顔で嘘をついた事を謝罪した。"一緒に戦おう"と言う約束――あの時、嘘をついたのは僕だけではなかった。種も――レクスに1人で挑もうと考えていたのだ。

 

駆「種っ!!!!種っ!!!!!」

 

ガンガンガンッ!!!!!

 

種「大丈夫!タネがぜ〜んぶ終わらせて来るから……そこで待っててよ」

 

 そう言うと、種は僕に背中を向けて進む出し、目の前にいる未来の僕ーーレクスの前に立つ。

 

レクス「流石だよ、種。俺がしたい事……分かったんだ」

 

種「全部じゃないよ。私に用があるって事しか分からない。でも、私と話をする為にお兄ちゃんと私を分離するかもとは思った。……で、私に何の用があるの?タネとしては、さっさとコルーリを返してもらって、さっさとカイザーンの奴を倒しに行きたい訳なんだよね」

 

レクス「分かった、手短に行こう。まずは……俺の提案について、お前の意見が聞きたい」

 

種「……提案?」

 

レクス「種、もう戦うのはやめて……"新しい人生"を送りたくないか?」

 

 レクスから種に出された提案――”新しい人生”。レクスと種――向かい合う二人は戦う前の最後の会話を始めた。

 

 

To the Next chapter……




いかがだったでしょうか?次回はレクスVSシード!ミラクルヴァ―ルライトの力で、シードが超覚醒!”銀河の種”がレクスと激突!乞うご期待ください!
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