【完結】劇場版 ヴァールハイト・プリキュア もう一つの未来!?王〈レクス〉と青翼の花嫁〈コルーリ〉!   作:32期

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ごきげんよう、32期です!今回はレクスVSダークドリーム+α《駆を助け隊(仮)》の戦闘と……お待たせしました!エクスの新形態の登場です!そして、消えたはずの”彼女達”の登場も見逃せません!ちょっと55人全員を書きだすのは、ちょっと骨が折れる作業だったので……すみません!描写としては全員集合なのですが、名前だしするのは数名です!お許しください!……おっと、長くなってしまいました!では、お楽しみください!

本日はキュアラブリーこと”愛乃めぐみ”ちゃんの誕生日です!10日、11日はブラックの”美墨なぎさ”ちゃん、キュアコスモの”ユニ”と連続ですね~!なぎさちゃん、ちょこっとでもオトナプリキュアに出ないかな~?期待してるんです!出てくれるかもって!まあ、無駄な期待だと思いますが。ユニもな……早く本編に戻ってスタプリ編に出してあげたいよ。もっと早く書かないと!めぐみちゃんは、最近ハピチャを再視聴してるんですけど、やっぱり、ポテンシャルがすげえ!プリキュアになるために他の全てをどこかに置いてきたのかってくらい強い。ブルーは許さないからな!思わせぶりな事して、めぐみちゃん泣かせやがって!はぁ~……では、3人共、お誕生日おめでとう!良い一年を!


チャプター14:プリキュアAS《オールスターズ》集合!究極のX《エクストリーム》!

side:駆

 

駆「ダークドリーム……ダークプリキュア、ノイズにデスパライアさん、ウエスタ―さん達も」

 

 目が潰されて真っ暗な視界の中、耳に届いてくる6名の声。僕の中でAqライトを抑えてくれていたDドリーム達が——僕を助けるために出て来てくれたのだ。

 

Dドリーム「大丈夫。駆、あなたは少し休んで……私達が奴を押さえているから」

 

ダークプリキュア「そう言う事だ。その間に次の作戦を立てていろ」

 

駆「……ありがとう……ございます」

 

サウラ―「今更、そんなふうに他人行儀にしないでほしいな」

 

ウエスタ―「そうだぞ。なんだかんだで、俺達もお前の中にいて長いからな」

 

 僕は——何とも言えない温かい言葉を受ける。敵であった事もある人達と、こんな風に話せるのは悪くない感覚だ。

 

駆「……可能な限りで良いです。時間を下さい。奴を倒す為の作戦を考える時間を」

 

Dドリーム「分かったわ!デスパライア様、駆の傍に居て下さい!あなたの力が私達の中で一番強い!駆の守りをお願いします!」

 

デスパライア「良かろう、引き受けた」

 

ノイズ「私は守りじゃなくていいのか?」

 

ダークプリキュア「お前は守ると言うガラじゃないだろう?」

 

ノイズ「それもそうだな!ならば、一番槍は貰っていく!!!」

 

 ノイズの気配がレクスの方へと向かっていく。ついに始まった——レクスとDドリーム達の戦いが。一秒だって無駄に出来ない!皆がくれたこの時間で——レクスを倒せる作戦を!僕は目の前に投げられたQaフォーンを拾って、ミラクルヴァ―ルライトがある胸ポケットに一緒にしまうと、すぐに作戦の思考を開始した。

 

 

side:コルーリ

 

レクス「作戦会議は終わったか。まずは……ノイズか!」

 

ノイズ「でぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

——ガンッ!!!!!

 

 ついに始まった、駆を守るDドリーム達とレクスの戦い。その始まりは、ノイズの突撃から始まった。黒い旋風の如きスピードでレクスに向かったノイズは、そのスピードを維持したまま、強靭な足を使って飛び蹴りの様にぶつかる。それに対して、レクスは左腕の前腕部を使って攻撃を受け止める。

 

ノイズ「お前は言ったな!お前は私と似ていると!この世界は”静寂”に満ちている!残るはお前の音だけだろう?!お前も自身の滅びを望んだだろう?!ならば、何故それをしない?!これがお前の望んだものではないか?!」

 

レクス「ああ、望んだとも……俺自身の滅びなら。でも、俺は俺自身で命を止める事は出来ない。約束があるからね。それに……静寂だってホントは嫌なんだ。でも、我慢するしかないんだ。奪ったものは戻せない。失くした物は帰ってこない……それでも我慢して俺はここにいる。”生きる”と言う約束を……果たし続ける為に」

 

 ノイズは、スイートプリキュアの時代で駆に言われた言葉を、レクスに対して問う。"世界全ての悲しみ"として世界の”悲しい声”を聴き続けた事で静寂を望み、最後には己すら消そうとしていたノイズに対し、駆は破滅願望を持つ自分に似ていると語っていた。恐らくノイズはレクスに対し、【残っているのはお前だけの筈なのに、どうして自滅しない?】と言っているのだろう。そして、その答えの返しは決まっていた。”生きる”——彼を愛した私がレクスに課した約束。それを守る為に——自身の命を終わらせる事をせず、生きる続ける。その願いを果たし続ける——と、レクスはノイズに答えを返す。その答えに——ノイズは激怒する。

 

ノイズ「ふざけるな!苦しみ続けて何になると言うのだ!!自分で消せぬと言うのなら……私が消してやろうっ!!!キエェェェェェッ!!!!!」

 

レクス「……はっ!!!!!」

 

——ガチッ!

 

ノイズ「な・・・・・・っ!?」

 

 再び怒りに任せた突撃を仕掛けようとするノイズに対し、レクスは左腕を前にかざすと——ノイズが空中に静止する。違う——ノイズだけじゃない。世界も静止している。私は——この感覚を知っている。時間停止だ——カケル達との旅で何度も感じた感覚だ。間違いない。レクスは、ノイズと世界の時間を止めてしまったのだ。

 

レクス「……ありがとう、ノイズ。俺を……消そうとしてくれて」ニコッ

 

ノイズ「何・・・・・・を・・・・・・っ!」

 

 レクスは静止したノイズに近付き——感謝の言葉を掛ける。しかも、その表情は——まるで心からの感謝を込めたような優しい微笑みで、その表情をまじかで見ていたノイズも、離れた所で見ていた私やタネ、Dドリーム達も動きを止めるくらい優しい表情をしている。その表情を見ることが出来ないのは——レクス本人によって目を潰されたカケルだけだろう。

 

レクス「ありがとう。本当にありがとう……それ以外の言葉が思いつかない。だから、言葉じゃなくて……行動で返させてくれ」

 

 そんな優しい表情でレクスは——ゆっくりと拳を握り。

 

レクス「君が望んだ静寂を……送らせてくれ」

 

ノイズ「き・・・・・・さま・・・・・・!」

 

レクス「安らかな静寂を……ノイズ」ニコッ

 

——ドンッ!——ファンッ

 

 真っ直ぐに拳を——ノイズへと下ろす。勢いよく打ち込まれたレクスの拳を受けたノイズは、一瞬で黒い粒子にされ——消滅する。跡形も残らず、成す術もなく、一方的にレクスの一撃を受けて消えた。この光景を見た者は——恐らく何が起きたのかをすぐには理解できないだろう。しかし、私には理解できた。あれこそがレクスとなった駆が、カイザーンすら葬り去った彼のAqライト完全覚醒者としての能力。あらゆる物をただ消しさる——”破壊”の力。その力を使って——ノイズを完全に消し去ったのだ。殴られた痛みも——理解できない早さで。

 

——ガチッ!

 

コル―リ「ッ!?・・・・・・時間が」

 

ウエスタ―「な、何だったんだ?ノイズに……何があったんだ?」

 

サウラ―「ウエスタ―、僕らは……とんでもない者を相手にしているようだ」

 

ダークプリキュア「まさか……ここまでとはな」

 

Dドリーム「それでも……やるしかないわ!」

 

 時間の静止が終わり、まだ状況を理解できない者もいる状態だが、唯一、理解できた事もある。レクスと言う存在が”異常”である事——だ。しかし、Dドリーム達は再びレクスに向かって攻撃を開始する。今度は1人じゃない。デスパライアを除く4人でレクスに挑んでいく。

 

レクス「今度は4人か……いいだろう。それじゃあ、行くぞ」

 

ダークプリキュア『プリキュア・ダークパワー・フォルティシモッ!!!』

 

レクス「ふんっ!!!」

 

バキンッ!!!!!

 

 ノイズの次に向かったのは——ダークプリキュア。ダークタクトを使った大技”プリキュア・ダークパワー・フォルティシモ”で、レクスに先制を仕掛ける。しかし、それをレクスは正面で迎え撃ち、タイミングよく裏拳をダークプリキュアの握るダークタクトに放つ。すると、ダークタクトはガラスをたたき割ったような音を立てて破壊される。

 

ダークプリキュア「ダークタクトがっ!?」

 

レクス「無意味な戦いだ。俺には勝てないと理解しているのに。そもそも、これは俺と”僕”の戦いなんだ。あなたにとっての”ムーンライト”との戦いと同じだ。邪魔をしないでもらいたい!」

 

ダークプリキュア「ならば、お前はきっと私だ!ムーンライトに固執していた私と同じ!何も救えなかった自分が、今を進む自分にとって代わろうとしているだけだろう!はぁっ!!!!!」

 

 ダークプリキュア——彼女はキュアムーンライトを倒すために生み出されたプリキュア。ムーンライトを倒す事で真のムーンライトになろうとした者。ムーンライトのクローンである自分が、本物のムーンライトを倒す事を目的にしていた。それをレクスに重ねているのだ。救えなかった未来のレクスが、やり直しの利く過去のカケルを倒す事で——全てを救える”時生 駆”になろうとしていると。その言葉をぶつけると共に、ダークプリキュアの右目にある”金色の瞳”が開く。それによって発生した衝撃波がレクスに襲い掛かる——はずだったが。

 

レクス「・・・・・・」

 

ダークプリキュア「ば、馬鹿な!?」

 

 レクスに——何も起こっていなかった。衝撃波は確かに出ているのに、レクスは何のダメージも受けている様子がない。しかも、その衝撃波の中を普通に歩き、ダークプリキュアに近付いていくではないか。

 

レクス「……勘違いしないでくれ。俺はあんたと同じ”偽物”じゃない。俺は”本物”だよ……とって代わりたいんじゃない。弱い”僕”じゃ何も救えない。だから消したいだけだ。全てを救いたいのは否定しないが……自分が救われたい訳じゃない。俺の命なんて安い物さ。全てを守れて、そのために俺の命が必要なら喜んで捧げよう。”生きる”って約束だけど……きっと彼女だって、『世界を見捨てるなんて”時生 駆”じゃない』って、言うと思うから」ニコッ

 

ダークプリキュア「くっ!」

 

レクス「俺と”僕”の戦いに巻き込んでごめんなさい。今……楽にしてあげますよ」

 

コル―リ「危ないっ!」

 

Dドリーム「はぁっ!!!!!ダークプリキュア、下がるわよ!」

 

 ダークプリキュアに攻撃を仕掛けようとするレクス。その危険を察知して、Dドリームが光弾をレクスの足元に放つ。爆風によって舞い上がった煙でレクスの視界を奪い、Dドリームはダークプリキュアを救助して一時後方に下がる。舞い上がっていた煙が晴れ、無傷のレクスの姿が現れ始めると、今度はラビリンスの幹部の二人”ウエスター”と”サウラー”がレクスに立ち向かう。

 

ウエスター「レクスッ!!!!!」

 

レクス「ッ!!……ウエスターさん」

 

ウエスター「こんな事はやめろ!過去のお前を痛めつけて何になるんだ!協力すればもっといい方法が浮かぶかもしれないじゃないか!イースやプリキュア達はそうしていた!お前だって俺達を助けた時はそうしていたじゃないか!くっ!!!サウラー!こいつは俺が押さえる!ホホエミーナを!」

 

サウラー「分かった!ホホエミーナ、われに力を!」

 

ホホエミーナ『ホホエミーナ!』

 

 レクスの両手を握り合う様に押さえて動きを制限するウエスターの指示で、サウラーは自身が出した白いダイヤを使って”ホホエミーナ”と言う大きな白いオタマジャクシに天使の翼が生えた様な生物を召喚する。

 

サウラー「君の事が分かるなんて言わない!しかし、君の行動が意味のある物だとは思えない。いがみ合っても”笑い合いたい”と言う思いが生まれる事もある!君の本当の気持ちを思い出せ!」

 

レクス「・・・・・・」

 

 ウエスターとサウラー——ラビリンスの幹部であったが、フレッシュプリキュアと和解し、ラビリンスの再興に繋げた人達。プリキュアとの出会いが彼らの心を変えた。その経験は、レクスとよく似ている。レクスもプリキュアとの出会いと別れを経験し、触れ合う事の優しさを、夢の大切に思う心を取り戻してきた。二人の様に、プリキュアに変えられた人物なのだ。だからこそ、二人はレクスに必死に呼びかけている。自分たちがプリキュアにしてもらった事を、同じく受けたであろう彼が思い出すように。

 

ウエスター「ふふっ……そうだ。大人しく……ッ!?」

 

——ファンッ!

 

ウエスター「う、うわああっ!!!!!」

 

サウラ―「ウエスターッ!!!!!」

 

レクス「あなた達の意見も分かりますよ。でも、それは……何も知らない”無知”だからこそ言える意見だ」

 

 ウエスターに両手を握られ、大人しくしていたと思われていたレクスだが、次の瞬間——レクスはウエスターに握られていた両手で、ウエスターの両手を握り潰して消滅させる。そして、自分に掛けられていた言葉に対し、また自分の意志を返していく。

 

レクス「”時生 駆”同士が接触してしまうと存在は不安定になる。そうなれば、俺がコルーリ達の生きる世界を救くっても、”僕”がカイザーンを倒しても、”救った存在《この場合の時生 駆》”が不安定で事象を確固たるものに出来ず、世界に大きな矛盾を与え、結果を歪めてしまいかねない。”俺”と言うカイザーンを一人で倒した”時生 駆”と言う決定事項がある以上、カイザーンを倒し、世界を救う”時生 駆”は一人だけでなくてはならない。そうじゃないと辻褄が合わないからです。……でも、そうやって”協力してもいいんじゃないか?”って言ってくれて……嬉しかったです、ウエスターさん」

 

——ズシャッ!

 

ウエスター「レ……クスッ!!」

 

レクス「ありがとう、ウエスターさん。あなたと一緒に、ドーナツを食べたかったです」ニコッ

 

——ファンッ

 

サウラー「くっ!!!ホホエミーナ、奴を拘束しろっ!!!!!」

 

 レクスの手刀が——ウエスターの胸部を貫く。そして、すぐにその身体を粒子に戻して消滅する。ノイズと同じように消えるウエスタ―を見て、サウラーは自身の整った顔に怒りを浮かべて、自身の使役するホホエミーナに指示をする。

 

ホホエミーナ「二ッコニコーーーーーッ!!!!!」

 

レクス「やかま……しいっ!!!!!」

 

——ブワンッ!!!!!

 

ホホエミーナ「ニッ!?!?!?」

 

——ファンッ!!!!!

 

 向かってくるホホエミーナに対し、レクスは威圧するような強い語気と共に——衝撃波を放つ。それを真正面から受けてしまったホホエミーナは——レクスに触れる事なく、跡形もなく消滅した。それを確認したレクスは、無防備になったサウラーに向かって、語り掛けながら近付いていく。

 

サウラー「な……っ!?」

 

レクス「サウラーさん、俺の気持ちは変わりません。俺は……これからを生きるコルーリを救いたい。種に……当たり前の幸せを与えてやりたい。プリキュアさん達を救って、彼女たちが普通に生きていられるようにしたい。そして、そんな皆が生きられる世界を救いたい。ただ……それだけなんだ。俺以外の全てが幸せになってくれれば、それで良いんだ。皆が……笑ってくれればそれで良いんだ。俺と笑い合う必要なんかない……でも、俺の事を ってくれて、ありがとうございました。久しぶりですよ、叱ってもらったの。ずっと……一人だったので」ニコッ

 

サウラ―「ッ!!……そうかい。それは……良かったよ」ニコッ

 

レクス「さようなら、サウラーさん」ニコッ

 

——ファンッ

 

 レクスの言葉に、怒りを示したサウラーの顔が——最後に優しい微笑みをつくる。無抵抗になったサウラーに対し、レクスは彼の横を通り過ぎる様に歩いていく際に、彼の左肩に触れる。すると、ノイズ、ウエスターの様に、彼の身体も——消滅した。

 

レクス「残りは……3人。おい!気配で状況は分かってるよな、”僕”!お前のせいで、お前を庇ったやつらが消えてくぞ!!跡形もなく消えていくぞっ!!!お前が弱いから消えていくぞっ!!!!お前が何もできないから、俺に全員が消されるぞっ!!!!!」

 

駆「ッ!!」ガタッ

 

 ノイズ、ウエスター、サウラー——ここまでに半分の戦士がレクスの手で消滅させられた。ぶつかるダークプリキュア達に感謝や謝罪をしているが、その大きすぎる力で、彼らの言葉を、力を——完膚なきまでに叩き潰していく。この様は——一方的な”蹂躙”と変わりない。それも、それを全て笑顔でこなしている姿に——言いようのない不気味さを感じる程だ。その状況を、カケルも目が見えない代わりに気配で感じている。だって、一人、また一人と消えていく度に——カケルが驚愕の表情を浮かべるからだ。それが分かっているレクスは、その状況をカケルの耳に届くように大声で煽り、彼の精神に更なる負荷を加えていく。一方的だ——レクスの力が強すぎて、戦ってくれているDドリーム達では時間稼ぎにもならない。ここまでで稼げた時間は——僅か”3分"程。カケルが作戦を満足に考える時間なんて——レクスは与えてくれない。

 

Dドリーム「良い、ダークプリキュア?」

 

ダークプリキュア 「構わん。元より、消えぬなどとは考えていない」

 

Dドリーム「……そうね、その通りだわ。行くわよっ!」

 

Dドリーム・ダークプリキュア 「「はああっ!!!!!」」

 

——シュンッ!シュンッ!

 

 Dドリームとダークプリキュアは二人で何かを確認し合うと、同時に光弾をレクスへと放つ。そして、それに合わせて二人は左右に散開し、Dドリームが右側、ダークプリキュア が左側と——レクスを挟み込む位置につく。光弾を牽制にした左右からの"挟み撃ち"——二人はこれを仕掛けようとしていたのだ。

 

レクス「……無駄な事を」

 

——ファンッ!

 

 しかし、光弾はレクスに触れた瞬間に消滅し——。

 

Dドリーム・ダークプリキュア 「「でえぇぇぇぇぇっ!!!!!」」

 

レクス「……はぁっ!!!!!」

 

——ガチッ!

 

Dドリーム「そ、そん……な!?」

 

ダークドリーム「また時間停止か!?くっ!」

 

 両手を広げて、左右の二人にそれぞれ腕を伸ばすレクスによって、今度は向かってくるDドリーム達だけの時間が止まる。静止した2人をそれぞれ眺めた後、レクスはその足を進めて、カケルの元へと歩き始める。そして、それを阻むように——カケルを守る最後の砦であるナイトメアの首領”デスパライア”が、レクスの前に立つ。

 

デスパライア「それが、お前が求めた力か?万物を破壊し消し去る力……それが、お前がプリキュアを救う為に求めたものなのか?その力はお前を救ったか?私もお前の様に求めたが……救われることはなかった。お前はどうだ……レクス?」

 

 デスパライア——自身の力の衰えを恐れ、永遠の命を手にしようとしたナイトメアの首領。彼女は実際に永遠の命をドリームコレットによって手に入れたが、その心に安定は訪れなかった。レクスが振るう力に対して、デスパライアは問う。”時生 駆”として求めた”プリキュアを助けるための力”は——そのような力だったのか?——と。求めた理由は違えど、同じ様に何かを求めた者同士として、また大きな力を手にした者同士として、それは自分が求めたもので、それが自分を救ったのかと——救われなかったデスパライアは、目の前のレクスに答えを求める。その問いに——レクスは無表情で返す。

 

レクス「最悪の力ですよ。俺はこんな力を……求めてなんかいなかった。愛する人と家族、尊敬する人々を犠牲に払って手に入れた力に何の意味もないですよ。プリキュアさん達の為に求めた力を手に入れるのに、守りたい人たちを失うなんて馬鹿けてる。それに……この力を手に入れたせいで奪い続けてばかりだし、俺自身も……18歳から老化が止まり、怪我も出来ない。人並みの機能はほとんど残っていない。俺、ここまで戦ってきてますけど……Aqライトのコート以外は殆ど”生身”なんですよ?変身して防御力が上がってる訳でもないんです。それでも、その気になれば五感も切り離せるし、何もしないで世界の一生が終わるまで生きて行けるでしょう。”不老不死”なんて……いらないのに」

 

デスパライア「……”死”が恋しいのか?」

 

レクス「……そうですね。恋しい……かもしれないです。まあ、そうなったのだから仕方ないでしょう。それに俺は……あなたとは違いますから」

 

デスパライア「私と違う・・・・・・ッ!?」

 

——ゴォォォォォオオオオオオッ!!!!!

 

駆「うっ!?!?!?」

 

 レクスの身体でうごめき始めるAqライト。凝縮してコートとなっていたAqライトが解放され、それが放つ気配は——結界の中にいる私にも分かる”絶望”を、否が応でも理解させてくる。当然、それを直接うけているDドリーム達は恐怖で身体を強張らせ、何よりAqライトの気配に敏感で視覚が無くなり気配に頼り切っているなカケルは——身体が痙攣しているのではないかと言う程の震えと、猛烈な吐き気に襲われている。皆が恐怖し黙る事で出来た静寂に——。

 

——ドンッ!!!!!

 

 まるで——強大な生物が足踏みでもしたかの様な轟音が響く。この瞬間、この空間で動いているのは——1人だけだ。そう、ただ1人——。

 

レクス「・・・・・・」

 

——ドンッ!!!!!

 

 恐怖で動けないデスパライアと、今だ身体の震えを止められないカケルに歩を進める——レクスだけ。先程まで軽かったはずの歩みとは違う。恐ろしく重い歩みで一歩を進めながら——レクスはデスパライアの疑問に答え始めた。

 

レクス「俺は……この力を振るう事に躊躇しないし、恐怖する事なんてない。そして、あなたの様に死を恐れたりしない」

 

——ドンッ!!!!!

 

レクス「むしろ、”死”に……”救い”すら感じます」

 

——ドンッ!!!!!

 

レクス「俺は……あなたが羨ましいですよ。あなたは不老不死ですが、俺に消される事が出来る……楽になれる」

 

——ドンッ!!!!!

 

レクス「でも、俺は……俺を楽にしてくれる奴に出会えない。でも……今だけは……」ボソッ

 

デスパライア「まさか、お前はっ!?」

 

——ゴォォォォォオオオオオオッ!!!!!

 

 デスパライアの正面に着き、何かを小言で話すレクス。その言葉を聞いたデスパライアは、何かに気付いた様な表情をして何かを口にしようとするが、次の瞬間——レクスの纏っているAqライトが、まるで巨大な蛇の頭のような形になり、デスパライアを捕らえる。レクスから伸びていく大蛇の身体は、大聖堂の天井まで伸びていき——そこで静止する。

 

レクス「……それ以上言うなら、楽に消すのはやめです。ゆっくりと溶かすように消してやる。”死”をしっかりと自覚できるようにな。あなたが恐れ、逃げたがっていた”死”が……目の前にいた事を悔やむがいい」

 

デスパライア「そうか……これが”死”か。……少年」

 

駆「ッ!?」ガタガタッ!

 

デスパライア「確かに……未来のお前は強い。しかし、奴が無くし……お前が持っている”本当の強さ”がお前にはある。……分かるな?」

 

駆「ッ!!……はい」コクッ

 

 Aqライトの大蛇によってゆっくりと消されていくデスパライアは、最後にカケルへと言葉を残す。その言葉を聞いたカケルは小さく頷くと、先程までの身体の震えは消え——表情に小さな闘志が宿ったように変わる。

 

デスパライア「そうか。……レクスよ」

 

レクス「……はい」

 

デスパライア「救われると良いな、お前も」

 

レクス「はい、ありがとう……ございます」ニコッ

 

——ファンッ

 

 大蛇に飲み込まれていく様に消えていったデスパライア。彼女を消す時のレクスの顔は——やはり笑顔だった。

 

レクス「残りは……2人だ」

 

Dドリーム・ダークプリキュア「「くっ!」」

 

レクス「おい!いいのか、”僕”?お前を守ろうとしている奴らが全員消えるぞ!そこで震えているだけ……」

 

——シュンッ!!!!!

 

レクス「……か?」

 

 後方に留まるDドリーム達に向き直るレクス。《最後の二人を消してやる》とカケルに煽りを掛けている途中、レクスの両サイドを”何か”が通り抜ける。

 

ダークプリキュア「あれは……”手”か!」

 

Dドリーム「ええ、Aqライトの手。レクスじゃない……まさか!」

 

駆「ッ!!」

 

レクス「”僕”か!」

 

 カケルによって伸ばされたAqライトの手。それはDドリーム、ダークプリキュアへと伸びていき——彼女達を掴むと——。

 

駆「二人共、戻って下さい!」

 

——シュンッ!シュンッ!

 

 二人を自身の方に引き込み、自分の中へと戻してしまった。これでは——カケルを守る者がいなくなってしまう。自分一人で——戦わなければいけなくなってしまう。まさか、レクスを倒す策が見つかったからこその行動なのだろうか?私は、頭の中でその行動の真意を理解しようとしていると、レクスはカケルへ近付き、遂に彼の目の前へたどり着いた。

 

レクス「何のつもりだ?二人を助ける時、俺に攻撃していれば、ダメージを与えられたかもしれないのに」

 

駆「これ以上……失いたくないんだ。もう……僕のせいで失うなんて沢山だ!」

 

レクス「……そうか。安心……しろっ!!!!!」

 

駆「ぐっ!?があっ!?!?」

 

レクス「俺に消されて楽になる。もう失う事もない。お前が守りたかったものは俺に守られて……時生 駆以外の全てが救われる。良いエンディングだと思わないか?ああ、お前には……最低のエンディングか?まあ、お前みたいな弱い”敗者”には相応しいだろ」

 

 レクスの右腕によって胸倉を力いっぱい掴まれて宙吊りにされるカケル。カケルが呼吸を上手く出来なくなる程に力を込めたまま、レクスはカケルに話しかける。

 

駆「があっ!?!?がああっ!?!?!?」

 

 しかし、カケルは残った左腕を垂らし、抵抗も出来ずに苦しんでいる。このままだと——カケルが死んでしまう!

 

コル―リ「レクス、やめて下さい!カケルが死んでしまいます!!やめてっ!!!私はどうなってもいいですからっ!!!!!」

 

レクス「あばよ、”僕”……敗者に相応しいエンディングだ!何も救えないお前にピッタリだろうよっ!!!」

 

 必死にレクスに懇願する私。”彼を死なせないで”と、”私はどうなってもいいから”と——レクスの手を止めるために声を張り上げて叫ぶ——その時。

 

種「負けないでっ!!!!!」

 

 今まで泣いていた——タネの声が響く。今も涙を流し、立ち上がる事だって出来ない程に疲弊しているが、それを感じさせないくらいの大きな声で——カケルに声を届けようとする。

 

種「お兄ちゃん、負けないでっ!!!!!」

 

種「お兄ちゃんっ!!!!!」

 

種「負けないでーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 

——ピクッ

 

 ありったけの思いが込められた私とタネの声が——きっとカケルに届いてくれる!私はそう信じて——両手を合わせて祈り出す。

 

 

side:駆

 

レクス「俺に消されて楽になる。もう失う事もない。お前が守りたかったものは俺に守られて……時生 駆以外の全てが救われる。良いエンディングだと思わないか?ああ、お前には……最低のエンディングか?まあ、お前みたいな弱い”敗者”には相応しいだろ」

 

駆「があっ!?!?がああっ!?!?!?」

 

 真っ暗で何も見えないまま——僕は、レクスに胸倉を掴まれて宙吊りにされている。

 

駆(息が出来なくて……苦しい!)

 

——レクス、やめて下さい!カケルが死んでしまいます!!やめてっ!!!私はどうなってもいいですからっ!!!!!

 

駆(コルーリ……ダメだ!そんな事、言わないで!絶対に……助けるから!)

 

 僕の耳に届いてくる——コルーリの悲痛な声。まだ諦めてはいけないと言う事を——僕は、僕の心に刻み付ける。

 

レクス「あばよ、”僕”……敗者に相応しいエンディングだ!何も救えないお前にピッタリだろうよっ!!!」

 

駆(なんとしても……レクスを倒さないと!どうすれば良い!?どうすれば……!?)

 

——負けないでっ!!!!!

 

駆(・・・・・・種?)

 

——お兄ちゃんっ!!!!!

 

駆(・・・・・・種っ!)

 

——負けないでーーーーーーーーーーっ!!!!!

 

駆(……ああ、種……分かったよ。絶対に負けないっ!!!もう……考えるのやめたっ!!!!!)

 

——ピクッ

 

 僕は左手に——ゆっくりと力を込める。

 

 

side:レクス

 

レクス「消え・・・・・・ん?」

 

——ペタッ、ペタッ

 

 最後の一撃を加えようとした瞬間、自分の身体を触るような感触がある事に気付くレクス。触っていたのは——過去の自分。彼が何かを探すように自分の身体を触って来ているが、レクスは動揺などしない。その行動も自分に対しての抵抗と考えたレクスは、その抵抗すら無意味である事を分からせてやろうと煽りを再開する。

 

レクス「なんだ?まだ抵抗するつもりか?俺達の諦めの悪さはよく分かってるぜ、”僕”。でも、いいのか?そんなに触ったら……俺のAqライトで消されるかもしれないぞ?」

 

——ペタッ、ペタッ

 

 しかし、恐怖心を煽る為の言葉を無視して、過去の自分は俺の身体に触れてくる——そして。

 

——ペタッ、ペタッ——ピタッ

 

 過去の自分の残った左腕が目的の場所を見つけたのか——その動きを止める。その場所は——自分の”胸倉”。最後まで一矢報いるつもりだろうか?しかし、自分の胸倉に掛けた奴の指は、確実に崩壊し始めている。力を籠めれば指は崩壊し、自分に攻撃する為の武器をみすみす捨てる事になる。その様な愚行を——”俺達《時生 駆》”はしない。これは自分を動揺させるためのブラフであり、助かろうとするための布石の筈——レクスはそう考え、過去の自分を更に追い込むために、ブラフを崩す行動をとる。

 

レクス「ほう……その気かよ。だが、そんなものでは……」

 

駆「でぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

——ガンッ!!!!!

 

 過去の自分が仕掛けたのは、胸倉を掴んで身体を引き寄せて放った——”頭突き”。信じられない行動だった。”時生 駆”なら——こんな考えなしの行動は避けるはずだ。自分と接触する以上、崩壊のリスクがあり、そのうえで攻撃に使う部位を、急所である頭を使った”頭突き”なんて。頭は崩壊すれば死ぬ可能性だってある。しかし、過去の自分はそれを仕掛け——その一撃は自分の頭部に叩き込まれた。

 

レクス「……なっ!?」

 

——ピキッ!

 

 頭部から全身に駆け抜ける——砕けるような痛み。Aqライトのコートから剥き出しになっていた頭部を狙った奇襲により、俺は——ここで初めてのダメージを受ける。

 

レクス「ッ!?!?!このっ!!!!!」

 

——バンッ!!!!!

 

駆「がはッ!?!?!?」

 

——カラッ!カラカランッ!

 

 レクスは、彼の人生で経験したどんな痛みよりも耐え難い痛みによって、レクスは宙吊りにした過去の自分を思い切り前方の壁に投げつける。勢いよくぶつかった過去の自分の衝撃はかなりものであったようで、奴が胸ポケットにしまっていたミラクルライトが飛び出し、地面に転がってしまう程だ。

 

駆「かはっ!げほっ!げほっ!!!はぁ……!はぁ……!」

 

——ズリッ——ズリッ

 

 うつぶせに倒れ、数回の咳をして呼吸を整えると——過去の自分は左手一本の力で身体をゆっくりと前に進め始める。指は、先ほどの頭突きを仕掛ける際に俺のAqライトを力一杯握った為に崩壊し、残っているのは”人差し指一本”のみ。床に引っ掛ける指もなく、尺取れるほどの身体の部位も残っていない。それでも、奴は身体を前に進めようとする。レクスは、彼がどうしてそこまでして前に進むのかを考え、彼が向かおうとする先に目を向ける。そこに落ちいていたのは——。

 

レクス「ミラクルライト……か」

 

 やはり、過去の自分の切り札は——ミラクルライト。それを取る為に過去の自分は進んでいる。しかし、レクスはそれを止めようとはしない。それを取っても——自分を超える事は出来ない。自分の持つ”強さ”に——確かな自信があるから、止まる必要がないのだ。

 

駆「……ねえ?”俺”は……時生 駆の……”本当の強さ”を……知ってる?」

 

 その時、途切れ途切れの声で、ゆっくりと身体をミラクルライトへと進めながら——過去の自分が語り掛けてくる。差し詰め、ミラクルライトを拾うまでの時間稼ぎのつもりだろう。レクスは、それを理解しながらも手を出さず——彼の言葉に返答する。

 

レクス「ああ、知ってるとも。時生 駆の強さは……この”Aqライト”さ。世界を書き換え、万物を破壊し尽くす事が出来る力。絶望と滅びによってもたらされた……俺が弱かったせいで、俺が一人で戦えなかったから生まれた犠牲で目覚めた力!!”弱さ”を捨てて……俺が手に入れた”時生 駆”の力だっ!!!!!」

 

駆「それは……違うっ!!!!!」

 

 満身創痍の過去の自分から返される——全力の否定。お前に何が分かる?俺のおかげでそこにいる分際で——何が分かる?レクスは心の内に再び湧きだす怒りを隠しながら、今度はレクスが過去の自分に問う。

 

レクス「なら……お前に分かるのか、”僕”?弱いお前に……”本当の強さ”が分かるのか?」

 

駆「分かるよ。だって……僕は……”弱い”から」

 

 ”弱いから”——だから、”本当の強さ”が分かると言うのか?レクスは言葉を挟む事をせず——過去の自分の言葉を待つ。

 

駆「Aqライトも……”時生 駆”の力だ。だけど、Aqライトは……”力”であって、”強さ”じゃない」

 

レクス「じゃあ、何なんだよ?時生 駆の……”強さ”って」

 

駆「僕は……”俺”が言うみたいに……弱いよ。誰かの力を借りなきゃ……何にも出来ない。プリキュアになる時も、戦う時も……種や、コルーリ、プリキュアさんがいたから戦えた。ダークドリームやダークプリキュア達もそうだ。僕は……いろんな人たちと手を、力を合わせてきた。その度に……その人たちの”思い”を受け取って来たんだ!一人の力は……ほんの僅かな物だけど、重ね合わせれば……無限の力になる!!多くの人と繋いだ手がっ!!!受け取った”思い”が……僕を強くしてくれるっ!!!一人じゃ何も出来ない……時生 駆の”弱さ”こそ、時生 駆の……皆と力を合わせてどこまでも強くなれる……”本当の強さ”なんだっ!!!!!弱さをただ”弱さ”として捨てたお前には分からないっ!!!!!お前が嫌う……”弱い”僕だから分かるっ!!!!!僕は今だって……っ!!!!!」

 

——ズイッ!!!!!

 

駆「一人じゃ……ないっ!!!!!」

 

 【自分が捨てた”弱さ”が、”本当の強さ”】——その言葉を吠えながら、過去の自分はミラクルライトに人差し指を掛ける——しかし。

 

駆「指に……力が……」

 

 過去の自分は、ミラクルライトの点灯ボタンを押せなかった。当たり前だ。ミラクルライトがある場所まで5メートル程度とはいえ、過去の自分は人差し指だけを引っかかりにして、身体を進めていた。下半身がないとはいえ、上半身は体重の6割を占めている。それを左腕一本、人差し指で這いずって来るだけでもかなりの負担だ。現に、奴の人差し指は血まみれで、爪も折れてしまっている。感覚があるのかも怪しい。

 

レクス「……はぁ~。もういいよ、お前は頑張った……賞賛してやってもいい。だから……」

 

 ——その時だった。

 

——ピカ―――――ンッ!!!!!

 

レクス「なっ!?この光は……キュアエクスになった時の!?一体、何……が?」

 

 過去の俺から巻き起こる——”七色の光”。かつて、時生 駆がキュアエクスになった時に出て来た物と同じ光。何が起きたのかを確かめる為に、溢れ出る光から、その原因である過去の自分へと視線を戻した時——。

 

レクス「・・・・・・あ、あなたは!?」

 

 存在するはずのない——”彼女達”がいた。

 

 

side:駆

 

駆(押さなくちゃいけないのに……力が入らない!)

 

 最後の希望のスイッチが目の前にあるのに押せないなんて!ミラクルヴァ―ルライトに掛けた人差し指に力が入らない事に——僕は憤りを感じている。

 

駆(僕は……負けられないんだ!)

 

コル―リ『私はどうなってもいいですからっ!!!!!』

 

駆(そんな事……コルーリ、君にさせたくない!)

 

種『負けないでーーーーーーーーーーっ!!!!!』

 

駆(負けたりしない!大事な妹の願いなら……絶対に負けたりしない!!!)

 

 僕の守りたい——大切な人達の言葉をもう一度思い出す。さっき決めた覚悟を——もう一回、力に変える。そう——心に決めた瞬間。

 

——ピトッ

 

 僕の掛けていた人差し指に——何かが触れる。いや、”誰か”が触れる。気配が突然現れた事に驚いた僕は、視覚がないのも忘れて——ゆっくりとその気配のある方へ顔を向ける。その時、僕の伽藍洞になった瞼の奥に——。

 

レクス「・・・・・・あ、あなたは!?」

 

エール『……』ニコッ

 

駆「キュア……エール?」

 

 カイザーンに消され、世界にも、僕の中にいないはずのプリキュアの一人——キュアエールが視界に映し出される。膝を付いて身体を低くし、僕の人差し指に彼女の人差し指を重ねながら、変わらない優しい笑顔で——彼女は僕を見つめている。すると、彼女の唇が何かを口ずさむ。声が出ないのだろうか——声は聞こえない。それでも——彼女は繰り返し何かを口ずさみ続ける。僕は読唇術の要領で、彼女の言葉を一文字ずつ読み解いていく。

 

エール『……』【フ】

 

エール『……』【レ】

 

エール『……』【フ】

 

エール『……!』【レ!】

 

駆「フレ……フレ?はなさんの……”エール”!」

 

 フレフレ!——エールが僕に送ってくれていたのは、彼女がいつも送ってくれていた心からの”エール”だった。僕の心に温かいものが少しずつ湧いてくるのを感じると——今度は、人差し指に重みが加わる。

 

アンジュ『……』

 

エトワール『……』

 

マシェリ『……』

 

アムール『……』

 

駆「アンジュ!エトワール!マシェリ!アムール!皆さん、僕を……助けてくれるんですか?」

 

HUGっと!プリキュア『『『『『……ッ!』』』』』コクッ!

 

 僕の視界に、また新しいプリキュアが映し出される。すると、エールがまた何かを口ずさむ。それを読み解くと、【私だけじゃないよ!】と、読み取れた。その瞬間、彼女の言葉に答えるように——次々とプリキュアが僕の視界に現れる。その数は、HUGっと!プリキュアからMax Heart——僕が出会ってきた全てのプリキュア”総勢55人”。皆が僕の指や手の平に、その手を重ね——僕を助けてくれようとしている。ならば、答えなくちゃ!種にも!コルーリにも!!プリキュアさん達にもっ!!!僕は、プリキュアさん達の力を借りて、ミラクルヴァ―ルライトのスイッチを——。

 

駆「うおぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

——ポチッ!

 

 押した。

 

——ピカ―――――ンッ!!!!!

 

 爆発するような光が溢れ出しながら、ライトに光が灯る。その影響なのだろうか——僕の身体の傷が回復していくだけでなく、崩壊してしまったはずの僕の部位までも元に戻る。身体に戻って来た感覚に従い、僕はゆっくりと立ち上がり——瞼を開ける。しっかりと見えてくる大聖堂の内装、その奥で驚愕の表情をするレクス、捕らえられてしまった種とコルーリに、僕の傍らにいるプリキュアオールスターズの皆さん。

 

——ギュッ!

 

駆「ッ!?ブ、ブラック?」

 

——キュッ!

 

駆「ホワイトも?」

 

 僕の肩を左右から掴んでくるブラックとホワイト。彼女たちの唇が何かを告げている。

 

ブラック【駆君は、すごいよね!最初から世界の為に戦えるんだもん。私達は最初からそんな事出来なかったのにさ】

 

駆「きゅ、急になんですか?じゃ、じゃあ、最初は何のために戦ったんですか?」

 

ブラック【目の前で……”助けて”って言われちゃったから……かな。それから、自分たちの”当たり前”を守りたかったんだ】

 

ホワイト【普通の学校生活、家族に友達……あっ!ブラックは……”恋”もかしらね♪】

 

ブラック【ちょっ!?ホワイトッ!いきなり変な事を言わないでよ!つ、つまり!目の前の守りたい人たちから守ったの!私達の”当たり前”を守りたかったの!駆君も……”世界”とかの前に、守りたいものがあるでしょ?」

 

 ブラックの言葉に——僕は、すぐに頷く。

 

駆「はい……あります。僕の……大切な家族と仲間!」

 

ブラック【よ~し!だったら、その当たり前を守る為に、私達の全部!使っちゃいなよ、駆君!】

 

駆「ぜ、”全部”……ですか!?」

 

ホワイト【ええ、ここにいるプリキュアのみんなが、それを許してるわ。それに……私達の”思い”は、あなたの心に託したもの。だから、駆君の思うままに】

 

ブラック【そうそう!《お借りします!》なんて遠慮しないでさ!全っっっっっ部!駆君が使っちゃって!』

 

駆「僕の思うままに……なら!」

 

——シュシュシュシュンッ!!!!!

 

駆「よし、行くぞっ!!!!!」

 

 僕の思いに答えてか、QaフォーンSから次々と——ここまで集めてきた各時代のアイテムたちが飛び出すと、各チームの上で止まる。それを確認すると、僕はミラクルヴァ―ルライトのダイヤルを一段上げてライトを灯し、Qaウォッチにスキャンする。

 

Qaライト:〈Overflow〉

 

 そして、すぐさまQaフォーンSをスキャンし——。

 

Qaフォーン:マスターセーフティー【Shutdown】、Qaフォーン”002”……リンケージ!〈スーパープリキュアップデート!〉

 

駆『プリキュアプリケーション!マスターアップ!!』

 

スーパーQaライト:フルアクティベーション……〈Ready?〉

 

駆『インストーーーーール!!!』

 

 QaフォーンS内の変化した変身プリキュアプリに親指を添え、ミラクルヴァ―ルライトを空に掲げ——僕は高らかに宣言する。

 

駆「全てのプリキュアさん……皆さんの全て、頂きますっ!!!!!」〈タップ〉

 

 変身プリキュアプリをタップした瞬間、各チームのプリキュアがそれぞれのアイテムと一つになり、色褪せていたアイテムに光を戻す。すると、僕の胸から13本の青いリボンが伸びて行き、そのアイテムたちを掴み——僕の中へと取り込んでいく。

 

——ドクンッ!!!!!

 

駆「うっ!?!?ぐうぅっ!?!?!?」

 

 今まで、Qaフォーン経由で使用してきたプリキュアさん達のエネルギーを、直接身体の中に取り込んだ僕。Qaフィールの中で爆発の様に膨れ上がるエネルギーが、元からあるAqライトを体外へと押し出してくる。そして、放出されたAqライトは僕の身体に絡みつき——黒いコートの形になる。

 

コル―リ「あ、あれは……!」

 

レクス「奇しくも……俺と”同じ”ってか」

 

種「ッ!!……違うっ!”光”が……くるっ!!!」

 

——パキッ!

 

 種も僕と同じように、僕の中に溢れる力を感じているのだろう。そんな種の言葉通り、僕のAqライトの黒コートに似つかわしくない”白いヒビ”が走る。

 

コル―リ「黒いコートに……白いヒビが!」

 

——ピキピキッ!!

 

種「きた!きたっ!!ありったけの光がっ!!!」

 

——ピキピキピキッ!!!

 

駆「うおぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

——パッキーーーーーンッ!!!!!

 

 砕けた”黒”の奥から現れるのは——何物にも汚されず、どんな色にも染まれる事の出来る”白”。祖母譲りの黒い髪はそのままに、それとは対照的な祖父の形見と同じ”白い色のコート”、その中には正面に白字で”X”と刻まれた黒のコンプレッションウェア、ロングパンツは動き易いように隙間がないタイプで、靴も機能性重視のスニーカータイプ。両手には純白のフルフィンガーグローブ、両手首に青のリボンが巻かれ、左手首のリボンはQaウォッチと一体化している。またワンポイントとしてグローブ、スニーカーに黒く”X”が刻まれてある他、心臓部分にはX型の銀のブローチが以前と同じようについているのだが——そこに”懐中時計一個分”くらいの穴が開いている。

 

エクス?「まだだ、まだ足りない……これも!」

 

レクス「ッ!?割れた破片を……いや、そいつはAqライトか!」

 

エクス?「これも僕の力の一つだしね……よっと」

 

 周囲に散らばった黒い破片——もといAqライトを一本に束ね、マフラー代わりに首に巻き付ける。しかし、これでも完成じゃない。僕は、仕舞っておいたおじいちゃんの懐中時計を取り出して、胸のブローチに嵌める。見事に——シンデレラフィットだ。

 

レクス「……祝わねえぞ、俺は」

 

エクス?「祝って欲しい訳じゃない……って、あれれ?な、なにこれ!?」

 

 僕は右手で前髪をかきあげて、レクスを睨もう——としたのだが、かきあげた前髪が急に光り出す。近くにあった大聖堂の銀の蝋燭立てで反射した姿を見てみると、その部分だけメッシュを入れたようになってしまった。色は右から”ピンク”、”赤”、”黄色”、”緑”、”青”、”紫”の6色だ。でも、キリが悪いし——全部合わせて”虹色”の7色と言う事にしよう。

 

レクス「何だよ、締まらねえな……まあいい。おい、もういいのか?もういいなら、さっさと名乗れよ」

 

エクス?「ああ、お望みとあらば……な!」

 

——バサッ!

 

エクストリーム「重なる思いが未来を超える!キュア エクストリーム!」

 

 コートをマントの様に翻し、僕は新たなエクスの名を名乗る。プリキュアさん達の全ての思いを受け継ぎ、ただ目の前の大切な人を守る為に生まれた究極のX《エクス》——エクストリームと!

 

 

To the Next chapter……




いかがだったでしょうか?一応、プリキュアが何で出て来たのか?とかについては設定をちゃんと考えてあるんですけど……本編に関わる重要な要因なのでもう少し内緒にしておきます!嘘じゃないよ!考えてありますからね!次回は、エクストリームとなったエクスとレクスの決着。エクストリームの胸で針を刻む懐中時計が0時を刻んだ先に待つ……2人の結末は!?乞うご期待ください!


のぞみ「映画か……。最近は、仕事で一杯一杯だったしな……席は……ここだね」

……シー――ン

のぞみ「りんちゃん達、仕事が終わってから来るって言ってたし……もう少し待ってようかな」

すみません。お隣、良いでしょうか?

のぞみ「えっ?は、はい!どうぞ!」

レクス「どうも」

のぞみ(あれ?隣の人……映画に出てる男の人!?)

レクス「あの……」

のぞみ「は、はい!?」(どうしよう!?何か気に障る事しちゃった!?)

レクス「お久しぶりです、のぞみ先生」

のぞみ「……えっ?も、もしかして……私の教え子のお兄さんとか?」

レクス「いえ、俺は……あなたの教え子です」

のぞみ「えっ!?あ、あの……私は小学校の教師で、教え子でこんなに大きい子は……」

レクス「ああ、ごめんなさい。説明不足でした。俺は、あなたが”中学校の教師”になった未来の教え子なので、厳密には違います」

のぞみ「私が中学校の教師になった……未来?」

レクス「パラレルワールドって奴です。でも、小学校の教師になったのぞみ先生の方が落ち着いた感じなのは驚きました。僕の知ってるのぞみ先生は……中学生の時のあなたとあまり変わらないので」

のぞみ「えっ!?嘘っ!?私、カッコいい先生像を頑張ってやってるのに!?」

レクス「あははっ!……のぞみ先生」

のぞみ「な、何?」

レクス「……救えなかったんですか、教え子の女の子?」

のぞみ「ッ!?……分かるんだ。うん、その子の夢の為にね……色々な方法を考えたんだけど、どうすることも出来なかった。プリキュアの時は……出来ない事なんてないと思ってた。でも、今の私は……」

レクス「人間は、何時だって選択を迫られる。選ぶ度に……選ばなかった方を切り捨てなくてはいけない。大人は特にですよね。責任があるから身勝手な行動をとれない。俺も……切り捨てたくない物を、たくさん切り捨ててきました」

のぞみ「でも……でもね。その子は、夢を諦めないって……ダンスを続けるって言ったの。だから、私も!もっともっといい先生になるって決めたの!」

レクス「そうですか。それは良かった。俺も……悔いの残らないようにしますよ。では、さようなら……のぞみ先生」

のぞみ「待って!あなたの名前……なんて言うの?」

レクス「……あなたが知る必要はない」
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