テイルズオブアライズ トロフィー「絶望の荊」獲得RTA レナ人チャート 作:完走したい天邪鬼
「何をしている!」
考えるより先に体が動いた。
患者を背に庇うため、白衣のレナ人に駆け寄る。
剣を抜かなかったのは我ながら良い判断だった。
おそらくこのレナ人がミハグサールの
仮に剣を抜いていれば間違いなく戦闘になっただろう。そうなれば、後ろの患者は守れない。
「......話は後だ」
リィヤーがこちらを流し見ると、風に弾き飛ばされた。
まるで風が爆発したかのようだ。
「大丈夫か?アルフェン」
「ああ......すまない」
キサラに支えられなかったら、昇降機にぶつかっていただろう。
「少し痛むよ。耐えて」
噛み殺した苦悶の声が響く。
堪えられないという様子でロウが駆け出すが、俺と同じように弾き飛ばされる。
どうするか思考を巡らせている間に変化が起きた。
〈虚水〉になっていたはずの脚に色が戻っていく。
「どういうことだ......?」
「〈虚水〉化が治っていく......!」
ミキゥダの身に起きた〈虚水〉化の時間が巻き戻っているようだった。
〈虚水〉化は治すことができるのか?
やがて脚に色が宿る。〈虚水〉化していたとは思えないほど健康的だ。
「お疲れ様。ついでに背骨の歪みも直しておいたよ」
「ありがとう......ございます......」
「体力を消費しているだろう。ニズまで運ぼう」
メズメルドと、リィヤーが声をかけると鳥型ズーグルがやってきた。
先ほど箱を下ろしていた個体とは別だ。箱を下ろしていたズーグルとは大きさが違う。
今来たズーグルの方が二回りほど大きい。
背に患者を乗せ、リィヤーに固定されると昇降機周辺の吹き抜けから飛び去って行った。
リィヤーは飛び立ったことを見送ると、近くにあった椅子に座りこちらを見た。
「さて、お待たせしたね。カラグリアの炎の剣御一行、君たちの話を聞こうか」
「お前がミハグサールの
「自己紹介が遅れたね。私はリィヤー・ウィルフィリス。研究者であり、ミハグサールの
正面から見ると、どこかで会ったことがあるように感じた。
シオンに最初にあったときの感覚に似ている。
だが、シオンに会ったことがないのにまさか
いや、ミハグサールで育ったのならあり得るのか?......街並みには見覚えがなかったが。
「先程の治癒術、どういう仕組みなのだ?星霊力が放出されていたが、ヘルガイの果実を使ったのか?」
「当然さテュオハリム卿。果実をメナンシアに送る際に使い方は教えたはずだが」
ヘルガイの果実が治療用だと?ダナ人から星霊力を放出させ〈虚水〉に変えるだけのものではないのか?
「ヘルガイの果実はダナ人を星霊力に変えるものではないのかね?」
「......驚いた。苗木すら求めていながら正規の使い方を知らないとは。.......改めて説明すると、ヘルガイの果実は研究用に開発した薬の効果を和らげたものだ。効果は摂取対象の星霊力均衡を崩すこと。種族による効力の差はない」
「ダナ人にしか効かないんじゃないのかよ?」
「見かけ上、ダナ人によく効くのは事実だが、それは星霊力を扱う術がなく抵抗できないからだ。そも、摂取対象を星霊力に変えるだけなら元の研究薬を使った方が効率が良い。あの中途半端な効果を考慮すれば、使い道は治療以外にないと思うのだが」
「ヘルガイの果実を開発したのはあなたではないのか?」
「あれは3年ほど前にレネギスから送られたものだ。開発者を知りたいならレネギスに問い合わせたまえ。ダナ人の君でも、テュオハリム卿を通せば容易いだろう」
それにしてもリィヤーが俺たちを見る目が気になる。俺たちも、さっきの患者も、ズーグルにも同じ目で見ている。温度を感じない目。だが無価値と見ているわけではないと思う。
ただすべてに対して平等なのだ。人も動物も植物にすらも。
目が合うと、心すら見透かされているようで少し怖い。
「研究について教えていただくことは可能かね?」
「勿論だとも。だが相応に長くなる。君たちは私の研究について基礎すら知らないだろう?」
そうしてリィヤーが語ったのは星霊力に関する研究の推移。
星霊術の扱い方に始まり星霊力の特性や物質の構成、星霊力を扱う素質に〈虚水〉と多岐にわたる。
星霊力の研究、かなり広い範囲の話だと思っていたが想像以上だ。
──なるほど。いい傾向。
なぜか、カラグリアで名前を思い出した時に見た夢が脳裏をよぎる。
「──つまり〈虚水〉とは......っと、少し話しすぎたね。研究のことになると止まらなくなるのは私の悪癖だ」
「その研究で今までどれだけ人の命を犠牲にした?」
見るもの全てが無価値だと言いたげな冷め切った瞳。嗤うという形容が似合う狂気が
冷静に考えれば、会ったことがあるはずがないとわかっている。だが、それでも。どうしても夢の人物と重なって見える。
目の前の人物は、どちらも
「炎の剣、君は少し勘違いをしている。君は死を悪だと認識しているね?たしかに命を無為にするのは罪だが、自ら命を捧げることは美徳だ。そも、私の研究に対する協力は彼らが自分から望み出ている。いわば献身だ」
「殺しているのは変わらないだろ」
「穏やかではないことを言うね、少年。たしかに、彼らの献身のおかげで実験が
「実験......だと?」
「そうとも。先ほど見せた治癒術も献身あっての成果だ。彼らには辛い役回りをさせてしまったが、その献身によって
「仮にそれが本当なのだとしても、実験されて体を変えられて良い理由にはならない。命を脅かされるなんて
「ならばどうする?他領のように力に訴えるか?幸いにも今此処には君達が気にする実験動物はいない。君は好きに暴れることができるだろう」
そう言うと、立ち上がり俺たちに向き合う。
武器らしいものは見えないが、いつでも戦闘できるということか。
「その場合、仮にも3人の
額に紋章が輝く。詠唱もなくあれほどの突風を起こせる星霊術の使い手だ。
「その紋章......ッ!」
リンウェルの声が響く。押し込めた感情が爆発するのを堪えているような苦しい声だ。
「......とうとう見つけた!父さんと母さんの仇!!」
「ちょっ」
「リンウェル!?」
憎悪に塗れたリンウェルの声が聞こえると同時に光の星霊術が肩を掠めていった。
不意打ちに近いリンウェルの攻撃はしかし、リィヤーの肌で滑るように逸らされ後方の壁に当たって爆ぜた。
よく見るとリィヤーの体に風が渦巻いているのが見える。あの風で逸らしたのだろうか。
「術が逸れた......?」
「この術構成はダナの魔法使いか。となると、君はあの時
「ってことはリンウェルの家族は......」
「殺す......!!絶対に殺す!!」
「リンウェル!」
「邪魔しないで!私はこのために今まで生きてきたんだ!邪魔するならあんたも殺す!!」
逸らされた術より強力な術が打ち込まれる。しかし、リィヤーに当たることはなかった。
ロウが身をもって術を止めたからだ。
だが、あの一撃はやはり重いのか、大きく後ろに弾かれた。