テイルズオブアライズ トロフィー「絶望の荊」獲得RTA レナ人チャート 作:完走したい天邪鬼
年末年始のゴタゴタを片付けていたら小説の書き方を忘れた
どれだけ時間がかかっても完走するのでご安心を。投げっぱなしにはしません。
それでは本年もよろしくお願いします。
「シオン.....ちょっといいか?」
リィヤーに会う前に食事を摂った場所で一夜を明かすことにした。
夜番も兼ねて少しシオンと話しておきたかった。
「なにかしら?」
「その......」
たき火を囲む。
リィヤーとシオンは知り合いだったみたいだから、少しリィヤーについて聞いておきたい。
だがあんなことがあった後だ。思い返すのもつらいだろうし、どう切り出したものか......。
「リィヤーのことね?」
「......ああ。だが」
「別にいいわよ、気にしなくても。そうね。どこから話そうかしら」
そう話すシオンの顔には怯えや不安は残っていなかった。
「そうね.......改めて言う必要はないでしょうけど、あの子は研究者よ。今も昔も変わらない」
そうして始まった話はある意味ではありふれた話だった。
「私がレネギスの研究室にいたって言う話はしたわね?」
「ああ。〈荊〉のせいで色々あったって聞いた」
「私がリィヤーに会ったのはその〈荊〉研究の一環だったわ。10年前かしら」
「実験して研究して、また実験して。とても正気とは思えない環境だったけど、それでも私にとって大切な時間だった」
触れる者を無差別に傷つけてしまうが故の孤独の中で、それでも寄り添おうとしてくれる人物。
共感はできないが、理解はできる。きっと大きな救いになる。
自分の事が何もかもわからなかった俺にそれでも良いと言ってくれたドクがどれだけ救いになったか。
きっとシオンにとってのリィヤーは俺にとってのドクなのだろう。
......戦えるという点ではジルファの方が近いのだろうか?
「大切な友達だったんだな」
「そうね。あの子だけだった。〈荊〉に触れても恐怖しなかったのはあの子しかいなかった」
「〈荊〉に?」
「研究のためと言って激痛を感じているはずなのに何度も何度もね」
「それは......」
「もちろん何度も止めたわ。でもどれだけ止めても無視して触れて、そのたびに"一歩進んだ。まだ触れられた"って嬉しそうに話すの」
〈荊〉がどれだけの痛みを与えるのか、痛覚がない俺にはわからない。
だが、シオンに触れた時のネアズの反応を見る限り、相当なものだろう。
それこそそのまま死んだとしてもおかしくない程かもしれない。
「でもおかげで〈荊〉を消す方法もわかった」
「レナス=アルマ......だったか」
「ええ。
「......だからシオンは」
「まさかあの子が
〈荊〉から解放されるために恩人と戦う......。〈荊〉から解放されたい。でも恩人に銃を向けたくない。両方大切だからこその葛藤か。
たしかに、何かの間違いでドクやジルファと敵対した時、躊躇いなく剣を向けられるかと聞かれると難しいな。
「なぁ、シオン」
「心配しなくても次は私も戦うわ。そしてあの子を止める」
そう話すシオンは覚悟を決めた人間の顔をしていた。
「あの子が目的のためならどんな無茶もできることは知っていた。知っていた上で私は止めなかった。だから、もうこれ以上誰も犠牲にしないように何をしてでも止める。リンウェルみたいな子を増やさないためにもね。それが私の責任よ」
そういうとシオンはいつものように夜食を用意し始めた。
メナンシアでミルクを入手してからよく作っている、たしかクッキー......と言ったか。
「それに、あの子に聞きたいこともあるし」
「......シオンは強いな」
「あら、ここまで一緒に戦ってきて知らなかったの?」
私よりリンウェルの方が危ういわよ。気にかけてあげなさい。
そう言って微笑む彼女の姿は、まるで張りつめた糸のようで。
なぜか心の奥のどこかがざわついた。
「リンウェル?」
「あ......ごめん。起こしちゃった?」
なんとなしに目が覚めてうまく寝付けなかったから夜風を浴びに行く。
するとリンウェルが1人で小さなたき火を静かに眺めていた。
フルルの気配もない。
「眠れないのか?」
「うん......まあね」
「......リィヤーのことか?」
無言でうなづくリンウェル。
なんとなく放っておけなくて一緒にたき火を囲む。
ただ静かにたき火を眺める。
「その......ロウは.....さ」
「おう」
「なんであの時、止めたの?」
思わずリンウェルを見る。迷子みたいな顔で火を見ている。
......あの時ってリィヤーに会った時だよな。
「なんでって......うまく言えないけど、あのままじゃまずいと思ってよ」
「あんたは自分の父親の復讐をしたのに?」
「そりゃそうだけどよ。その......後悔しそうだったし」
寂しそうな顔で泣きそうな目になった。
「別に復讐するなとは言わねえよ。あいつは悪だ。なにがあっても人を実験動物扱いするなんて最低だ。しかも犠牲にした命を本人の献身だと言い切るとか最悪だ」
「なら」
「それでもバエフォンはリィヤーの研究は希望だって言ってた」
それがどうしても引っかかる。
本当に今まで大勢殺しているなら、ニズの人々がわからないはずがない。
〈漆黒の翼〉だってデダイム入れて3人しかいなかった。ほかにも抵抗組織があるとしても、3人は少なすぎる。
「復讐して殺すにしても、その辺を知ってからでもいいんじゃないかって。そう思った」
「そっか」
とりあえず、俺が答えられるのはこれくらいだ。
後はリンウェルが自分で答えを見つけるしかない。
「......私は......わかんないよ。今まで復讐だけで生きてきたんだ。もし本当にバエフォン達の言う通りだとしたら、私はどうすればいいの?」
「リンウェル......」
「もしまたリィヤーと戦うことになったらどんな顔して戦えばいいの?わかんないよ」
「憎いなら憎いままでもいいんじゃねぇか?」
「え?」
「俺はお前を止めたけど、憎むなとは言わない」
きっちり復讐を終えている俺が、復讐を否定したら意味わからないしな。
「それに、シスロディアで親父が殺されたときさ。シオンが言ってたんだ。憎しみは力をくれるって」
いまでも思い出せる。レナのくせにそんなことって怒った記憶と一緒に。
「あの時は意味がわからなかった。いや、今でもシオンが何であんなこと言ったのかわかんねえ。でも、心の支えは必要だろ」
「......」
「復讐を支えにするなら、その後を考えておくといいぜ。別に仇と一緒に死のうってわけでもないだろ?」
「復讐の後......」
もしかしたら俺も今のリンウェルみたいになったかもしれない。
親父の死に際でもし言葉を交わせなかったら。想像もしたくないが、今ここにいなかったかもしれない。
「そっか。......そうだね」
「そろそろ夜明けだ。キサラたちも起きてくるし、みんなにも話してみるのもありだと思うぜ」
こんな時に上手く力になってやれない自分が情けなくて。
アルフェンやシオンなら力になれたと思うと悔しくて。
リンウェルの顔を見ることができなかった。