テイルズオブアライズ トロフィー「絶望の荊」獲得RTA レナ人チャート   作:完走したい天邪鬼

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戦闘描写難しい......遅くなってごめんね。


第24話 復讐

初めて星霊術を"怖い(きれい)"と感じたのは、あの夜だった。

昼が奪われ、雪が積もり続けるシスロディア。

自分の指先すら見えない闇に浮かぶ領将(スルド)の紋章。星のように煌めく星霊力。断続する衝撃。

 

それらを見て心の底から怖い(きれい)と感じたのを覚えている。

そして、ずっと続くと思っていた私の退屈な日常が崩れ落ちていく音がした。

 

肌を突き刺す寒さと冷たい闇に紛れるようにひっそりと独りで暮らしていた頃にメネックに出会って、〈銀の剣〉に入った。

1人で生きていくのは寂しいし、いろいろ限界だったんだ。

 

シスロディアで暮らすようになって、領将(スルド)の統治と光り目(レナ)の怖さを知った。

 

ある日、こわい顔をしたメネックに連れられて、弱ったレナがダナに嬲られている所を見た。

 

──なぜ君が星霊術を扱えるのかは聞かない。だが星霊術を扱えることは隠せ。どんな理由があれ子どもの死は絶対に避けねばならない。

 

私だって死にたいわけじゃない。だからメネックの提案に従った。

きっと星霊術を扱えることがバレたら、私刑にされるのは目に見えていたから。

でもそのせいで、仲間にすら気を抜けない状況になって、鬱憤が溜まっていったんだと思う。

いつのまにか胸の内に燻っていた黒い感情が徐々に、でも確実に熱を増していた。

知らないうちに復讐だけを糧に生きるようになっていった。

 

 

 

やがてアルフェン達と出会って、ジルファに嗜められてようやく自分の憎悪を自覚した。

その頃にはもう自分だけじゃ止まれないほどに憎悪は激しく燃えていたんだ。

 

憎かった。私の日常(故郷)を壊した領将(スルド)が。

怖かった。レナ相手にどこまでも冷酷になれる自分が。

だからガナベルトと対峙した時、憎悪の果てが見えなくて恐ろしかった。

 

いつまでこの憎悪を抱えれば良いのか。

簡単に捨てることが出来ればよっぽど良かった。でも捨てるなんて出来るわけがなかった。

どうしようもなかったからアルフェン達について行くことにした。

ダナの解放を目指すなら全ての領将(スルド)と会える。そうすれば近いうちに仇も見つかる予感があったし、正解だった。

 

リィヤー・ウィルフィリス。

ようやく見つけた一族の仇は、最強の星霊術士で、ミハグサールの英雄で、シオンの友達だった。

気が付いたら攻撃していた。

不意をつくわけでもなく、詠唱による威力の増幅をするでもなく。

ただ憎悪の赴くまま、真もなければ信も無い、ただただ虚しい、激情だけを込めて撃っていた。

そんな半端な攻撃が通じる訳もなく難なく防がれて、ならばときちんと狙えばロウに止められた。

そうしたら心がぐちゃぐちゃになって、気がついたらキャンプで火を眺めていた。

日が昇る直前にやってきたロウに愚痴って、起きてきたキサラに慰められて、アルフェンに諌められた。

そして、シオンの話を聞いて理性が復讐を躊躇させた。

復讐しても何も生まない。それどころか折角ダナとレナが共存しているミハグサールが崩壊する。ただ私がすっきりするだけ。ただ私が人殺しになるだけだ。

だったら、復讐はせずに償わせた方がいいんじゃないか。

 

 

 

でも。

それでも、リィヤーの声を聴くと憎悪が燃え盛って頭が真っ白になるんだ。

一度燃えた黒い炎は。私は鎮められない。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

メスメルドに乗り空を舞うリィヤーが放つ無尽蔵の星霊術を必死に避ける。

詠唱省略で術名のみを唱えている癖にその威力は私の術に並ぶとも劣らない。

認めたくないけど、星霊術の練度はおそらく一番。他の領将(スルド)や私達と比べてもそう。たった一言囁くだけで10や20も術が発動するなんて普通じゃない。こと星霊術に限れば最強と謳われるのも頷ける。

 

全力で避けながら詠唱を続ける。空を飛び続けるメズメルドを落とすための術。さっきからシオンが何度も何発も撃ち込んだり男衆が跳んで攻撃してもびくともしてない。今まで戦った中で一番頑丈なズーグルだ。

だけど落とす。今までシオンの狙撃が通用しない飛ぶズーグルは私が落としてきた。

でも一族に伝わる術じゃ駄目だった。

通じなかったんだ。

ずっと練ってきた復讐の術は、リィヤーの肌を撫でるだけで傷一つつけることはできなかったんだ。

 

「そろそろ終わらせよう。君たちに決定打は無く、この戦いで得るものはない」

 

星霊力が集まっていく。今までとは比べ物にならない攻撃が来る。

全員に同時に飛んでくる風の刃も火球も氷柱も、リィヤーにとってはただの遊びだったんだ。

 

でも、詠唱があるなら止められる。

だから落とす。自分じゃ納められなかった黒い炎を話しても否定はせずにいてくれた皆のために。

 

「星に満ちる地水火風──」

 

星霊力の流れを読んで手繰る。

 

 

「──双世(そうせ)(あわ)せて光と闇──」

 

リィヤーの術は難解だ。

詠唱省略は当たり前。1つの詠唱で複数の術を成立させるのもお手の物。

1つの言葉に3つ以上の意味を持たせる離れ業もやってのける。

 

「──占めて()属性、我が元に──」

 

研究者だとか言っても、領将(スルド)を冠するだけはある。

テュオハリムが星霊術において最強と称するのも理解できる。

でも。

 

「──(かたど)るは(うつろ)の牢獄──」

 

星霊術を扱う以上、必ず綻びが生まれる。

どれだけ詠唱を省略し、言葉を重ねても変わらない。

それに、言葉を重ねる技術は執政官が扱っていたのを既に見ている。

だから見逃さない。綻びを探す。

 

「──顕現するは原初の(かい)──」

 

この船で見た研究レポートの中身を思い出す。

星霊術の制御はレナ、星霊力の扱いはダナ(私達)の方が適性があると書かれていた。

理由は血中に含まれるナントカって話らしい。

だったら、リィヤーの扱う難解な術だろうと術になる前の星霊力の状態なら干渉できるはず。

 

「──虚無と永劫を()かし──」

 

見つけた。

絡繰りのように無駄のないリィヤーの術の中で、たった一つの綻び。

重ねられた言葉の中に隠されていた綻び。

執政官と戦っていなかったらきっと見つけられなかった。

 

手繰る。手繰る。微かな綻びから術の核まで手繰る。

そのまま制御を奪って叩き込む!

 

「やらせない!シオン!!」

 

奪った術は、まさしく破壊だった。

空間を切り取り、事象を拒絶し、ただ飲み込み圧壊する。

こんな力、人が使えていいの......?

 

術の制御が覚束ない。思わず膝をつく。

制御しきれなかった一瞬でメズメルドの4枚ある翼のうち1枚が潰れてた。

ロウの拳すら弾くほどの硬く強靭だった翼がただの肉塊に成り果てていた。

 

「リンウェル!?」

「私は大丈夫......!早く!」

 

少しでも制御を緩めればみんな飲まれる。

私達だけじゃない。この船も海も全部だ。

 

「落ちろぉぉぉぉ!!」

 

アルフェンの炎の剣がメズメルドの砕けた翼を焼く。

傷を抉られ墜ちるメズメルドからリィヤーが降り立ち、術を構える。

 

「メズメルドを墜とすとは。なら「やらせるかよ!!リンウェル!」」

 

ロウがリィヤーの風の壁を砕き、膝をつかせる。

メズメルドがリィヤーの元へ向かって突進して来る。

 

初めてできた明確な隙。

奪った術の形を変えてエクステンドゲートの準備を整える。

 

「シオン!」

 

シオンと目が合う。

それでいいの?って聞かれた気がした。

本当は私の手で決着を付けたい。

でもそれは皆を道連れに心中するのと同じだ。

だから、大丈夫。

 

メズメルドがリィヤーを攫い上空へ飛び出す。

私たちに背を向けて、完全に逃げの姿勢だ。

これを逃せば泥沼になる。リィヤーには〈虚水〉を使った奇跡みたいな治癒術があるんだ。

 

「星霊力全開!」

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

シオンの銃から星霊力の奔流が放たれる。

今までの全戦闘で放った中で、最も暴力的で最も静かな黒の奔流にメズメルドが呑まれて──。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

メズメルドからリィヤーが投げ出される。

今、目の前に受け身も取らず無防備な領将(スルド)がいる。

ずっと探していた憎い、憎い相手。

 

「父さんと母さんの仇」

 

星霊力も感じない。今ならきっと術一つ当てるだけで殺せる。

千載一遇のチャンス。

 

視界の端でロウがアルフェンに止められていた。

 

「殺さないよ」

「リンウェル......」

「憎いよ。そんな簡単には捨てられない。けど、ここで殺したって気が晴れるのは今だけだって......そう思った。だから、殺さない。捕まえてちゃんとした裁きを受けさせる」

「献身だなんて言わせない。ニズの現状もダナとレナの共存だって関係ない。......ただ罪を罪として償わせる。それだけだよ」

 

これで、いいんだよね?父さん、母さん。

 

「そこまで拘るのならば、いいだろう。執政官が用意した裁く場があったはず。領将(スルド)たる私の変わりはテュオハリム卿に務めてもらおう。なに、メナンシアの評判は風で聞いている。文句は出ないはずだ」

「承知した。それと、卿の研究についてだが──」

 

テュオハリムの言葉を遮るように、船を囲んで水柱が上がった。

リィヤーが星霊術で船を支えたのか、海面が荒れている割に揺れは少ない。

そして、そのうちの1本が甲板に落ちて海水が私たちを襲う。

もともと飛沫(しぶき)で濡れていた服が完全にダメになった。寒い。

 

 

溢れた海水が掃けた後、甲板に新たな人影。

それはニズに到着する前に襲って来た、あの怪しい剣士だった。

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