人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!!   作:なちょす

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GWは(投稿)無いです。
投稿頻度上げるって前回言ったそばからコレとかマジ?お前もう船降りろ。

デジたんの育成で初めて温泉旅行券を当てました。嬉し過ぎて凄く嬉しいです。
「2人で温泉旅行⋯⋯大丈夫、ですよね。」
アグネスデジタルがそう呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
「心配しなくても良い。朝まで語り尽くそうな。なんたって、俺達は戦友なんだ。だから⋯⋯これを。」
そうして、戸惑う彼女の前に指輪を持っていき───。

ジリリリリリッ!
はっ、夢か⋯⋯今日はアグネスデジタルにとって大事なレース(ry

怪文書書いたら本文と混ざるのでここまでです。いいね?


第1R : *むてき の チームアップ

「では、全員揃ったという事で⋯⋯エキシビジョンレースについての説明を再開させて頂きます。」

 

 

 あの後おどおどした動きで部屋に入ってきたクロフネは、後輩ちゃんの隣に座った。チラチラとこちらに目を向けては俯き、スーパークリークに諭されて⋯⋯と言うのを繰り返している。デジタルも思わぬ来客に落ち着かない様子で、どこか目線が泳いでいた。

 

 そんな様子を見て何かを察してくれたのか、ヨシエさんに話題を振ってくれたのはカフェだった。

 

 

「その⋯⋯エキシビジョン?と言うのは、私達が競うんでしょうか⋯⋯?全員得意な距離やバ場が違うと思うんですが⋯⋯。」

「そうですね。なので今回は皆さんが競うのでは無く、1つのチームとなって、私が用意したウマ娘達に挑んでもらいます。」

「⋯⋯アオハル杯のマルチプレイっすね。」

 

 

 後輩ちゃんの言葉にヨシエさんは頷いた。

 ふむ⋯アオハル杯⋯⋯分からん。いや名前自体は知っているんだが、どんな内容なのかが分からない。何かこう⋯⋯エモの波動を感じさせるレース内容なのだろうか。デジタルが出ていたら死ぬ程喜びそうなレースだな。

 

 あっ、いかん。ヨシエさんがめっちゃ見てる。俺がアオハル杯も知らないにわかトレーナーだと言う事がバレているらしい。キョドるとすぐバレるとか、洞察力完ストしてんなこの人⋯⋯。

 頭を悩ませていると、モルモット君が"あっ"と声を上げた。

 

 

「そういえば勇者御一行さんって、その時世界を飛んでましたよね。」

「あぁ、ですね。先輩らの活躍はウチも見てました。」

「そ、そうなのか⋯⋯?」

「香港カップで他所の国のウマ娘達泣かせたやつですよね?」

「いや言い方。合ってるけど⋯⋯つーか思い出したぞ。その時期って後輩ちゃんも樫本さんとバチバチ決めこいて、たづなさん泣かせてただろ。『どうしたらいいですか?』って香港まで電話来たんだからな。」

「ちょっと記憶無いですね。」

⋯⋯うそつき。キレ散らかしてたクセに。

「アンタこういう時だけ口開くのな?」

「痛い痛い!ほっぺ伸びるッ!伸びるからぁッ!!」

 

 

 デジタル、ときめくんじゃない。何だかんだ平常運転だなお前。

 

 まぁ要するに⋯⋯俺達が世界で大暴れしている時に開催されていたのが、皆の言うアオハル杯らしい。

 モルモット君に説明を求めると、簡潔に言うならチーム対抗戦。各距離3人まででメンバーを組み、人数が足りない所も臨時でフリーのウマ娘達をメンバーにして競い合っていたのだとか。そこで樫本さん率いる優勝候補、チーム『ファースト』相手に完全完封完勝したのが隣のヒト娘。やっぱキレるとヤベーなこのラノベ主人公。

 

 

「今回の聖蹄祭はファン感謝祭も兼ねています。より多くの方達を学園に招く為、皆さんの力をお借りしたいんです。」

 

 

 そう言ってヨシエさんは、用意していた資料を配り始めた。

 

 

「タイムスケジュールに関しては今後他のトレーナーや教員、教官一同にも周知する予定です。今皆さんに関係あるのは最後のページですね。」

「特別指導体験⋯ですか⋯⋯?」

「ファンと言うのは、何もレースを見に来てくださる人達だけではありません。いつかはトレセンの門を潜り、自身の夢を叶える為に努力し続けるウマ娘(原石)達もまたファンの1人です。今世間から注目を集めている皆さんの指導を受けられるなら、彼女達にとってもまたとない機会でしょう。」

「そんで⋯⋯それが終わったら、エキシビジョンと。」

「えぇ。ただし今回1番大切なのは勝敗ではありません。人を集めるという事⋯⋯それからここに居る皆さん含めて、訪れた全ての方が楽しめるレースにするという事です。」

「大丈夫だと思いますよ。」

 

 

 後輩ちゃんの一言に、ヨシエさんは微笑んだ。どちらもウマ娘第1主義の思考がある為、あまり言葉にしなくとも内心はウキウキなのだろう。モルモット君やカフェも珍しく乗り気である。

 そういう事なら勇者御一行も幼きウマ娘達の為に脱ごうじゃないか。ヌッ?字面が犯罪のそれだ。ひと肌、ひと肌脱ぐだけである。

 

 しかし集客か⋯⋯幸いにも芝マイルとダート、長距離は既に事足りている。3チーム内からメンバーを選べと言うのなら、短距離ならカレンがいるし、中距離なら後輩ちゃんの所やアグネスタキオンの様な切り札もあるが⋯⋯。

 

 

「あの⋯⋯ヨシエさん。」

「何でしょう。」

「ここに居る3人は決まりとして、短距離と中距離は少し時間を貰っても良いですか?確かに俺達のチームから選出しても良いんですが、それぞれの距離に適した人材がいると思うんです。期待されたチームなら自分達でも良いかもしれないですけど、トレセンには色々な子達が居ますから⋯⋯その道のプロともチームアップした方が、集客面においては効果が有るかと。」

「ふむ⋯⋯確かに。その適した人材に心当たりが有ると見てもよろしいですか?」

「その辺も大丈夫ですよ。この人、なんか知らないすけどウマ娘達と交流広いんで。」

「ですね。アグネスデジタルさんだけじゃなくトレーナーさんも含めて、勇者御一行は彼女達から注目されていますから。色々な意味で。」

 

 

 色々な意味ってなんだ。

 あっ、あっ!ヨシエさんの目力強くなった!!何で!?えっ、今のもダメだった!?何がダメでしたか女王陛下!?すっ、すみません⋯⋯女性の気持ちが分からなくてすみません⋯童貞ですみません⋯⋯凹む。

 

 

「そういう事ならよろしくお願いします。こちらとしても、今回の聖蹄祭は必ず成功させたいので。では⋯⋯すみませんが、後の事は御三方にお任せしますね。あぁ、そうだ。カフェさん。」

「はい⋯⋯?」

長距離(貴女)には特別な相手をご用意します。退屈はさせませんからね。」

 

 

 そう言って笑った彼女は、カフェの少し上をじっと見つめた。そこに居る"誰か"に話しかけるように、ふっと頬を緩ませる。

 

 

「よろしくお願いします⋯⋯"お友だち"。それでは。」

 

 

 そう言って部屋を後にした。

 えっ?あの人"お友だち"見えてんの?今挨拶したよね?カフェがあんなに驚いてるのを初めて見た気がする。あの反応、多分件の"お友だち"すらビックリしてるんじゃないだろうか⋯⋯やっぱ、おっかねぇな⋯⋯ヨシエさん。

 

 まっ、まぁ⋯⋯何はともあれ、トレセンが誇る(自分で言うのも恥ずかしいが)この3人がチームアップというわけで。いつもアッセンブルしてるヒーロー物で言うならば、キャプテン米国とアイアン男とマイティーなンーみたいなもの。即ちドリームチーム。デジタルとクロフネは互いに⋯⋯うん、距離感がある。まずは軽く挨拶でもして場を和ませようじゃないか。率先して挨拶、これ年長者の使命。

 

 

「じゃあ⋯⋯その。取り敢えずこれからどうぞよろしくって事で。クロフネも───。」

「ひぇあいっ!!??」

 

 

 名前を呼んだ瞬間に後輩ちゃんを差し出された。ふふっ、もはや反応が拒絶のそれである。凹む。

 そしてクソほど近いな後輩ちゃん。差し出されても俺にどうしろと?

 

 

「何アタシを盾にしてんだコラ。挨拶から始まる魔法を知らねーのかアンタは。」

「ぽ⋯⋯ぽぽぽぽーん⋯⋯。」

「実は余裕あるだろ。」

「いやぁでも、この様子なら大丈夫じゃないでしょうか。僕達結構良いチームだと思いますよ。先程の話だと、残りの2枠は勇者御一行さんにお任せするって形になりそうですけど⋯⋯。」

「おぅ、それで良いぞ。こっちからも相手方のトレーナーに連絡してみるからさ。」

 

 

 とは言っても、1人はまず確定だろう。あの子はこんなに美味しい役は絶対に断らない筈だ。となると気になるのはもう1人だが⋯⋯まぁ連絡してからだな。もしダメでも、そういうのが好きそうな世界の怪鳥もいる事だし。

 

 

「あの〜⋯⋯トレーナーさん。」

「どうしました?クリークさん。」

「そろそろ皆で企画の打ち合わせをしたいので、お先に失礼しますね。」

「ん、もうそんな時間ですか。分かりました。この芦毛も連れて行ってください。」

「何かあるのか?」

「ウチのチーム、特別指導体験とは別で子供らの面倒見る事になってるんですよ。」

「あぁ、そう言えばカフェとタキオンも喫茶をやるんだよね。そろそろ準備を進めなくて大丈夫かい?」

「はい⋯⋯期間には余裕がありますし⋯⋯。」

「でもこの間タキオンが店で出す新薬がどうって言ってたけど。」

「今すぐ戻ります。」

 

 

 一礼したカフェは急ぎ足で部屋を後にした。クリークに連れられて、クロフネも部屋を出ていく。一瞬こちらを振り向いたが、まだまだ距離を縮めるのは大変そうだ⋯⋯なんだかんだ初めてだもんな。こうして会うのは。

 思う所があるのはデジタルも同じ⋯⋯僅かに下を向いて逡巡している様だった。

 時間が解決するのかもしれない。だが折角こうして同じチームになり、トレセンのトップが用意する強敵達とぶつかろうと言うのだ。出来ることなら当人達には話をしてもらいたいし、その手助けが出来るなら何だってしてやりたい。

 

 そんな事を考えていると、デジタルが重く口を開いた。

 

 

「トレーナーさん。」

「どうした?」

「あの子⋯⋯やっぱり推せますよねぇ⋯⋯。」

「あぁ、推せ⋯⋯なに?」

「だって見ました!?あのキュートなおめめ!かつて見た時より逞しくなったお身体!色白の美肌!サラリとした芦毛の髪!元からアタシの中の推しランキングトップレベルに入っていたのに間近で見た時の感動と興奮⋯⋯はぁ⋯⋯たまりませんよねぇ⋯しゅき⋯⋯。」

「⋯⋯ヨダレ出てんぞ。」

 

 

 もしかしてさ⋯⋯真面目な顔して、ただぶっ倒れないように踏ん張ってただけなの?マジ?ちょっと真面目にあれこれ考えてた俺の時間と決意どうしてくれんのよ。後輩ちゃんとモルモット君居なかったら秒で耳に指突っ込んでたからな。

 

 

「ふっ⋯⋯はははっ!やっぱり半端ないっすね、先輩方は。アタシらも、ちょっとは気が楽になります。」

 

 

 そう言うなりソファーから立ち上がった後輩ちゃんは、俺とモルモット君に一礼した。

 

 

「じゃ、取り敢えずお世話になりますんで。よろしくお願いします。」

「おぅ。こっちこそよろしくな。クロフネにもそう言っておいてくれ。」

「楽しいレースにしましょうね。あっはははぁっはっふーッ!!

 

 

 それからすぐにモルモット君も部屋を後にし、俺とデジタルだけが残された。

 まさかのタイミングでまさかのサプライズではあったが、取り敢えずは大丈夫そうだろう。俺達のやる事は変わらないんだ。

 

 

「取り敢えず⋯⋯メンバー候補に連絡だな。」

「ですね。頑張りましょう。」

 

 

 そう言って笑うデジタル。その瞳には、有記念の時と同じ⋯⋯俺の知らない勇者の姿があったように見えた。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 疲れた。

 いや、開口一番でこれはなんとも情けないのだが⋯⋯本当に疲れた。こんなに歩く羽目になるとは思わなんだ⋯⋯。

 

 あの後デジタルもオペラオー率いるテイエム歌劇団の手伝いとかで抜け、マヤは生徒会の手伝いに行き、カレンとボーノは後輩ちゃんの手伝いに駆り出され⋯⋯三十路のオッサンはただ1人、学園中を歩き回っていた。

 こういう時に限って目的の人物が捕まらないんだ。ウマ娘だけじゃなくてトレーナーもである。何度行き違いすれ違いの連鎖を繰り広げたことか。

 

 結果としては、どちらもあっさり承諾してくれたというオチ。なので後はヨシエさんに送る選手名簿の作成だけなのだが⋯⋯。

 

 

「ムリ⋯久しぶりにこんな疲れ方したわ⋯⋯。」

 

 

 パソコンを立ち上げたは良いが、まるで作業出来ん。可愛い成分をぬいぐるみで摂取してもまだ足りない。新人ちゃん達も帰っちゃったし。

 薄ぼんやりとデスクトップを眺める。壁紙はエンパイア・ステート・ビルと、ニューヨークの街並みである。都会の生活はあまり慣れないが、それでも好きな物は別枠なわけで。

 1度でいいから登ってみたいよなぁ⋯⋯蜘蛛柄タイツのヒーローだって登ってるし。でもどうせ行くならチームの子達も連れて行きたいしなぁ⋯⋯ふぁ⋯眠くなってきた⋯⋯。

 

 

「お兄ちゃん、おつかれ?♡」

 

 

 ヌッ!!

 耳元で囁かれるスイートカップケーキばりの甘い声から繰り出される圧倒的ASMRは、まさにカワイイ的童貞殺しの小宇宙(ディストピア)。後ろから手を回してくるこの密着度。萌えたら炎上(もえ)ると言わんばかりの理不尽な距離感。そして何より背中に当たる"カレン"と"チャン"。

 

 エンパイアならぬええ(ぱい)や!!これにはポニーちゃん改め、俺の親愛なる隣人しょっぱい駄男(ダーマン)もセンスをビンビンに働かせざるを得ない!!いや、どっちかと言えばヴィランだな。ヴィランヴィランだ。アッハッハッハッハッ!!えっ?

 

 

「カレン、残ってたのか?」

「ずっと居たのに、お兄ちゃんってば気づいてくれないんだもん。カレン寂しかったな〜?」

「ん、それは悪かった⋯⋯ゴメンな?」

「良いよ♪お兄ちゃんはまだお仕事?」

「あぁ⋯⋯でもカレンのおかげで元気になってきた。」

「あはっ、ホント?無理しちゃダメだからね♡」

「ありがとうな。」

 

 

 色々と元気だよ。お兄ちゃん、やっぱり童貞なんだな⋯⋯これで元気になるんだもん、単純すぎでしょ⋯⋯。

 しかしさっきから背中に当たってる感触のせいで話に集中出来ん。カレン、お兄ちゃんが理性で本能を押さえつけてる間に少し距離を空けてくれると助かる。凄く助かる。

 

 

「これ⋯⋯レースの出走表?」

 

 

 パソコンの画面を見ようと、カレンは若干前にもたれかかってきた。

 アーッ!!お客様困ります!その体勢は余計に押し当たってしまいます!それ以上はいけない!お前のぷよぷよが2(チュー)するとこっちだって大連鎖フィーバータイムなんだ!炎上(ファイヤー)冷たい眼(アイスストーム)!ばよえ〜ん!社会的にばたんきゅ〜⋯⋯。あっ、待ってめっちゃいい匂いする。

 

 

「クロフネ⋯⋯。」

「どした?」

「ううん、なんでも。ただこのクロフネちゃんって⋯⋯ちょっと運命的な何かを感じるなって。」

 

 

 クロフネッ!逃げろ!なんか分からんが目を付けられたぞっ!!俺にはもう止められねぇからなッ!!

 

 

「今度の聖蹄祭で、このチームがレースするんだ。ヨシエさんに送ろうと思ってな。」

「あっ、そうなんだ⋯⋯これ、勝てるチームいるのかな?」

「いやぁ⋯⋯どうだろうな。」

 

 

 苦笑したカレン。

 意見を出しておいて、自分でもそう思うよ。チーム名未定のドリームチーム。後輩ちゃんやモルモット君も文句無しと言ってくれた、間違い無くベストメンバーの名前が並んだ選手名簿を、俺はヨシエさんへと送った。

 

 

 

 

 

宛先 : ヨシエさん

件名 : 聖蹄祭エキシビジョンレースへの出走選手

 

短距離 : サクラバクシンオー

マイル(芝) : アグネスデジタル

中距離 : サイレンススズカ

長距離 : マンハッタンカフェ

マイル(ダート) : クロフネ




勇者御一行のひみつ
ロリコン : 実は、謎の同人作家『どぼめじろう』先生の大ファン。

デジたん : 実は、スカウトされた時の事を結構夢に見る。誰が聞いてもプロポーズだった。

カレンちゃん : 実は、寝ぼけたお兄ちゃんに耳カバーを外された過去を持つ。正直かなり効いた。

マヤちゃん : 実は、トレーナーちゃんが三十路になったので大人のラブロマンス映画を毎日観ては眠れない。

ボーノ : 実は、トレーナーさんの為にフラワーちゃんとキャラ弁作りに夢中。聖徳太子か足利義満で悩んでいる。


次回、『第2R : *テイエムかげきだん が あらわれた』
聖蹄祭準備期間編です。GW前に間に合えばお会いしましょう。

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