人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!!   作:なちょす

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まず初めに、独身兄貴たち皆様にはお礼を言わせて頂きたく⋯⋯UA20万到達しましたありがとうございますッ!お"ッ♡作者も達するッ!達するッ!!

こんな小説書いて達するとか⋯この作者すげぇ変態だゾ⋯⋯?そうだよ。(セルフ便乗)

続いて謝罪をさせて頂きたく。昂る興奮を抑えられなかったので予定を変更して今回の話を先にお送りします。1番好きな世代なのでクソ長くなりました。99世代のアニメ化とか涙が出、出ますよ⋯⋯ッ!


第2R : *テイエムかげきだん が あらわれた

4つの星が空を奔る。片田舎の街の、売れない画家の、イーゼルに立て掛けられた濃紺のキャンバス。そこに撒き散らされた色とりどり、大小様々な輝き。星空と呼ぶにはあまりに色が多くて、それ故に誰一人として同じものは無い星空。

 

画家は空を仰ぐ。

 

初めに落ちたのは、何よりも強い輝きを放つ一等星。

次に光を失ったのは、誰をも等しく照らす優しい頂の星。

残った2つはまだ奔る。互いに競い合い、螺旋を描き、輝きを放ち続けながら、どこまでも⋯⋯いつまでも奔るのだ。

 

新月の夜───輝く者は出会った。

語り合った夢がある。

共に示そうとした道がある。

誰にも譲れない物がある。

 

新月の夜───堕ちた者は向き合った。

共には行けぬと。

道など最初から違っていたのだと。

それは夢物語だったのだと。

 

なればこそ⋯⋯お前と私、どちらか1人になるしかないのだろう。

 

 

「⋯⋯テイエムオペラオー。貴方は眩し過ぎる。その光が、存在が、何もかもが。この夜を彩る星々の光さえも殺していく。奪っていく。」

「それは違うね。星の光とは、この覇王ただ1人を照らすものだ。だからこそ、より1層の輝きを放つのだよ。一等星の名を持つ君なら、理解してくれると思っていたが⋯⋯。」

「出来ないし、するつもりも無い。私の命は夜と共にある。この星々と共に生きている。だから───貴方を討つわ。」

「そうか⋯⋯ならば受け入れるさ。嗚呼、闇夜に愛された一等星よ!その煌々とした輝きすらも、覇王の前に跪かせてみせよう!!」

 

 

新月の夜───2人は剣を抜く。

さらば、と想いを込めて。

確かにあったはずの友情に別れを告げて。

 

決別⋯⋯されど笑み。そうして互いの剣がぶつかりあう時───。

 

 

 

 

「グッフ。ヴゥッフ。」

 

 

 

 

1匹のタヌキが迷い込んだ。

 

 

 

 

「はーいストップでーす!!」

「あっ、あぁ〜!その子、あの、ごっごごごごめんなさい〜!!」

 

 

 メイショウドトウの謝罪が舞台に反響する。彼女の顔見知りだろうタヌキと言えば、アヤベの足元をウロウロしてはチラリと顔を伺い、再びウロウロ⋯⋯アヤベはただ身動き取れずにいた。

 

 かと思えば、今度はオペラオーの足元をウロウロと。

 うむ、茶色い毛玉が動いておるわ。

 

 

「何ッ!?ドトウ、君までもが僕の敵に回るというのか!?」

「え?えぇ〜〜〜ッ!?ち、ちち違いますよ〜!!」

「ふむ⋯⋯どうやら僕の美しさは、星々を魅了するだけでなく野生の嫉妬心すら昂らせてしまうということか⋯⋯おぉ、何という罪!だが!これが僕の罪なら甘んじて受け入れようじゃないかッ!さぁ来たまえメイショウドトウ!そしてチュウショウドトウ!」

 

 

 その中小企業みたいなのはタヌキの事か?

 

 

「はぁ〜⋯⋯オペラオーさんとドトウさん⋯同じ夢を志し、無二の友として契りを結んだ2人が今ここで決闘を⋯⋯なんて⋯なんて禁断の展開ッ!こりゃもうスポットライトは2人を照らしだす恒星の光!アタシも全力でいかせて頂きますぅッ!!」

「落ち着けデジタル。それミラーボールのスイッチだ。」

 

 

 高笑いを続けるオペラオー。パニックのあまり謎の手の動きをしたドトウ。タヌキを撫で続けるアヤベ。それを見て笑うトップロード。ミラーボールを回すデジタル。収拾つかん。動物と触れ合えるクラブかここは。

 音響兼、照明係兼、特別演出兼、フライヤー制作etc.担当の愛バは、鼻息荒く機材のダイヤルを弄り回している。お前そこまでやったらいよいよオタクじゃないよ。ジョブだよ?

 

 テイエム歌劇団⋯⋯トレセン学園非公式の広報活動。こうなった事の発端はつい先日の事。

 

 珍しくテイエムオペラオーがトレーナー室を訪ねてきたかと思えば、聖蹄祭で行う特別演目のお披露目に招待しようとの話だったのでやって来たわけだ。蓋を開けてみればそれはお披露目などではなく、ただ現状を見て気になる点があれば言って欲しいとの事⋯⋯つまり、客観的な感想を貰いたかったらしい。言葉足らずのオペラオーに半ば強引に連れてこられた感じになった為、トップロードが凄く申し訳なさそうにしていた。うん、そこは良いんだ。

 

 問題は今の段階でツッコミどころしかないという点である。台本とかね。

 あらすじやプロローグ的なものはまだ分かる。売れない画家が夢に見る星達の物語。(その星達と言うのが、この世代の4人)

 丁度アヤベがオペラオーと決別する、舞台でもそこそこ後半に差し掛かる部分だが───スタートからここまでの間で、分厚い台本に台詞は無い。なんなら動きの指示も無い。ただ一言───。

 

『オペちゃんに合わせよう!!』

 

 台本とは?

 いやね⋯⋯脚本:ハルウララって書いてたからもしかしてとは思ったよ?出来ても何かこう、ぽわぽわした暖かストーリーかなって思うじゃん?まさか無いとは思わねぇだろ。

 

 だがそれでしっかりと劇になっているのは、やはりこのメンバーならではという事だろう。

 

 度々ドトウが起こしてくれる失敗(スパイス)も全部劇に繋げるオペラオーの適応力、そのオペラオーに合わせるアヤベのアドリブ、それらを統括してデジタルに指示を出してくれるトップロード。ここには居ないが、黄金世代に囲まれて"もぎり"と客引きの練習をしているだろうウララちゃん。デジタル曰く、大きさと速度がバラバラではあるが同じピッチの歯車なのがこの世代との事。分かるような分からないような⋯⋯。

 

 

「一旦休憩にしましょうか。」

「ん⋯⋯だな。」

 

 

 トップロードの一声に同意。なんだかんだ長い事練習していたから、ここらが良い区切りだろう。タヌキをドトウに任せ、オペラオーとアヤベはこちらへ戻ってきた。

 

 

「良いね!凄く良い。僕の美しさを一際輝かせてくれるデジタル君の技術とアヤベさんの演技には賞賛の拍手を贈りたいよ。」

「あっ、あっ、そんな、勿体ないお言葉ぁ⋯⋯!」

「それにしても意外だな。アヤベはこういうのに参加するのは絶対拒否するって思ってたよ。やっぱり同期の間柄だからか?」

「⋯⋯別に。オペラオーをボコボコに出来るからやってるだけ。」

「あははっ!アヤベさん、劇に入り込む為に意識高めでやってますもんね!」

「えっ?」

「えっ?」

『⋯⋯⋯⋯えっ?』

「よーし、この話はここまでだ。」

 

 

 ややこしい事になる前に終わらせねば。ただ1つ分かるのは、アヤベを怒らせてはいけないという事である。後でウチのカワイイ妹に色々聞いておかねば⋯⋯。

 

 

「時にデジタル君のトレーナー君。」

「どうした?オペ。」

「君達は同じ舞台に上がらないのかい?」

「いや⋯⋯そういう柄じゃないしなぁ。舞台なら今のメンバーでも充分事足りてると思うが⋯⋯。」

「ふふっ、そうじゃないさ。僕が話しているのは、君達のレース(演目)の話だよ。まさか、ここがカーテンコールとは言わないだろう?」

 

 

 オペラオーがこちらを見る。世紀末覇王と呼ばれたその力強い瞳には、期待と慈しみが含まれていた。

 

 

「僕達はトゥインクル・シリーズを走り終えた。君達に敗れたこともあるし、1度はこの王冠も脱いだ。だからこそ、次の舞台で共に競う事を望んでいる。それは僕やドトウだけでなく、アヤベさんやトップロードさんもね。」

 

 

 後ろで作業をしている相棒の方を見れば、作業の手を止めてぼんやりとしていた。こちらの目線に気付いたのか、何やらバツの悪そう顔で笑っている。

 気にするなよ相棒⋯⋯分かってるさ。

 

 

「すまん⋯⋯まだそっちには行けない。俺には俺の、あいつにはあいつのやり残した事───やるべき事があるんだ。お互いにそれが何なのかは、多分分かってないけどな。」

「構わないよ。僕も急かしているわけじゃないさ。ただ⋯⋯それに付随する事を、一つだけ覚えておいて欲しいんだ。」

 

 

 凛とした笑みを浮かべて、オペラオーは静かに言い放った。

 

 

「───セントエルモの火は灯された。」

「⋯⋯何だ?」

「それってあれですよね。聖エラスムスが由来の⋯⋯船乗りのおまじない?言い伝えでしたっけ。確か聖人が神に祈りを捧げると嵐が止んで、船の帆柱に青い炎を踊らせたって言う。」

「ありがとうトップロード。それで⋯⋯それに何の関係が?」

「僕とドトウが君達と競った天皇賞・秋⋯⋯あの日戦っていたのは、僕らだけでは無いと言う事だよ。」

「ふむ⋯⋯嵐⋯船乗り⋯⋯。」

「まだ弱かったが、確かに炎は2つ踊っていた。さしずめディオスクロイというところだね。」

 

 

 ディオスクロイ───ギリシャ神話に登場する双子の神。星座に纏わる話に詳しいアドマイヤベガ曰く、セントエルモの火が2つ灯った時は、その名を冠するカストールとポリュデウケースの名で呼ばれる事もあるらしい。

 

 あの天皇賞・秋は雨だった。それこそウマ娘達が普段のポテンシャルを十二分に発揮出来るかどうかという程の大雨。どんなバ場状態だろうと、ものともせず走り切れるデジタルに回ってきた最大級の得。あれを嵐と比喩するのならば⋯⋯船乗り、そして火の灯った船は⋯⋯。

 

 思考するこちらを他所に、オペラオーはいつものように仰々しく声を上げた。

 

 

「かくして、かの者は大海原へと旅立った!それは終わる事の無い旅路だろう!世界を駆けた旅人の背を追う為か、はたまた自身の幻影(・・・・・)に知らしめる為か───どちらにせよ、君たちの旅路の向こう側で僕らは待っているさ。」

「オペラオー⋯⋯。」

「そしてその時こそ、新たな覇王⋯⋯新生ニュー覇王になった僕が!横にドトウを添えて!再び君たちと相見えようじゃないか!ハーッハッハッハ!!」

 

 

 高笑いをしながらオペラオーは背を向ける。そうして再び、静かに口を開いた。

 

 

「君達の新たな演目に、期待しているよ。」

 

 

 歩き出したオペラオーの背中は、世紀末覇王の名に違わない程の尊大さと強さを秘めていた。

 他者を受け入れ、その全てを肯定し、自身の存在が誰かの壁になる⋯⋯それが分かった上でもなお真正面から全てを打ち砕く。自分こそが覇王だと信じて疑わないウマ娘。だからこそ、人はその走りに夢を見るのだろう。

 

 ふっと肩で息を吐いたアドマイヤベガは、呆れた顔でオペラオーの後ろ姿を見ていた。

 

 

「オペラオーは⋯⋯いつだってそう。賑やかして、他人を巻き込んで、好き勝手に意味が分からない事を言いまくって⋯⋯疲れるわ。」

「随分手厳しいというか⋯⋯ふふっ、ボロクソだな。」

「そうね。でも⋯⋯どれだけ意味の分からない事を言っていたとしても───。」

 

 

 目を逸らした彼女は、優しい声で続けた。

 

 

「意味の無い事は、言わない。」

「⋯⋯あぁ、そうだな。」

 

 

 それは彼女なりの信頼の表れだろう。同期であり、共にクラシック戦線を走り抜けてきた彼女⋯⋯いや、彼女ら(この世代)にしか分からない、オペラオーに対する心情。

 

『じゃあ。』と言って、アヤベは立ち去ろうとする。

 

 セントエルモの火は灯された。

 船乗りの性格を考えるなら⋯⋯恐らく近い内に、2つの炎は激しく燃え上がるだろう。それは自身の乗り込む船すら焼き尽くす程の業火になる。

 ならばこちらも出来る事をやらなくてはならない。後腐れも後悔も無いように、出し惜しみはしない。

 

 持てる全てを出し切って、あいつの先輩として(・・・・・・・・・)真正面から叩き潰す。

 

 その為には今ここを立ち去ろうとしている一等星さんの力も借りたいのが正直な所なので、取り敢えず待って貰わなければ。

 

 

「アヤベ。実は頼みが───。」

「嫌。」

 

 

 ⋯⋯⋯⋯あれ?

 

 

「あの。」

「嫌。」

「まだ何も⋯⋯。」

「嫌。」

「⋯⋯アヤベさん。」

「絶対に嫌。」

 

 

 あっ、あれぇ⋯⋯??

 おかしい。アヤベが話を聞いてくれない。な、何故だ?

 

『アヤベさんは優しいから、押せばイケルよ♪』と、ニッコニコだったカレンの笑顔が頭をよぎる。妹よ、話が違うぞ。どこ押しても鉄壁の城塞なんだがどう攻めろと?お兄ちゃん冗談抜きで、目の前の一等星さんと心の距離が光年単位で離れている気がするんだが。

 

 

「えっと⋯⋯ち、因みに⋯どうして?」

「どうして⋯⋯?身に、覚えは?」

 

 

 こちらをゆっくり振り向いたアヤベの顔は、苦虫を噛み潰したような顔───もとい、ゴミを見る眼である。

 

 まっ、待て!これ本気モード(ガチ切れ)じゃねぇか!?何だって俺はこう⋯⋯、えぇいッ、思い出せ!今すぐ思い出せ俺!

 

 そういえばこの前、布団のふわふわ具合を確認してる最中に寝落ちしたとかで、耳だけ布団から飛び出た彼女のオフショットがカレンから送られてきた事があった。ご丁寧に寝顔のアップ付きで。デジタルと2人で奇声を上げながら悶死しかけたのだが⋯⋯えっ、それ?バレてんの?

 いやまさかぁ⋯⋯仮にバレていたとしたらデジタルとカレンも呼んで皆で今頃正座コースだ。皆保存したから皆共犯。

 

 後は⋯⋯カレンが三女神像前で意識を失った時にやった、『Shall we danceの構え』とか言うクソほど恥ずかしい決めポーズ。二度とやらねぇと心に決めたあれ。あれをアヤベに教わったぐらいである。

 

 あっ、やべぇ。

 

 

「⋯⋯思い出した、って顔してるわね。」

「その節は⋯⋯あの⋯大変お世話になりました⋯⋯。」

「あの後⋯⋯オペラオーに見つかって。巻き込まれた歌劇の中でやらされて。カレンさんに写真を撮られて。ファンサービスでもやる羽目になって───。」

「はいっ、すみませんでした!!」

 

 

 良い大人が、とかそんなものはクソ喰らえである。全力謝罪しかないだろう。それ程までに実際やると恥ずかしかったポーズなのだ、あれは。簡単に世に出していいものでは無い。そもそも何でそんなものを教わろうとしたのか、あの日の俺に聞いてやりたい。

 

 アヤベさんはこう言っているのだ。

 

 あんな辱めをさせた責任を取れと。

 謝罪だけで済むはずが無いだろうと。

 布団乾燥機の1つでも献上しろと。

 

 その通りでございます⋯⋯ヒヒン⋯⋯。

 

 

「まぁまぁ⋯⋯ここは1つ、お話を聞くだけでも良いんじゃないですか?私もさっきお願いされましたけど、アヤベさんにとってもメリットがあるかもしれないですよ!」

 

 

 そう言ってくれたのは、後ろで見ていたナリタトップロードだった。

 あれ⋯⋯俺君に何かお願いしたっけ?いや、ちゃんと後で面と向かってお願いしようとしていた事は確かにあるのだが⋯⋯。

 

 チラリとトップロードの方を見ると、彼女はパチリとウィンクをしてくれた。

 

 

トッ、トップロードッ!!!!

 

 

 お前はっ、お前というウマ娘は⋯⋯!バクシンオーといいお前さんといい、委員長というのはどうしてこうもおデコがチャーミングな聖人ばかりなんだ!ありがとう!本当にありがとうッ!今まであまり接点無かったけど、もはや俺の心のトップロードだ!後でおデコ触らせてくれ!!

 

 あっ、許可無くお触りしたらデジタルに怒られるんだった。寧ろこの世代に対しては誰に許可を取っても怒られそう。

 

 

「⋯⋯そうなの?」

「あぁ!もちろん!前のような変なお願いじゃないぞ!!」

「じゃあ⋯⋯聞くだけなら。あとは内容によるから。」

「な、何も難しい事じゃないよ。ウチのデジタルと併走をして欲しいんだ。」

「併走?」

「ほら、聖蹄祭の最終日にエキシビションをやるだろ?最近デジタルは表立ってレースに出てないから慣れさせようと思ってな。最終直線で突き刺さるようなアヤベの末脚を、デジタルにも経験させたい。」

「⋯⋯。」

 

 

 あっ、考えてる。よし、よし!イケるぞ俺!とちるなよ!絶対にとちるなよ!!

 

 

「それに気にならないか?君の同期2人を打ち破って、戦場を選ばない勇者だなんて呼ばれているウマ娘の底力を。あいつは⋯⋯強いぞ?」

「⋯⋯そう。良いわよ。」

 

 

 おっしゃぁぁああいッ!!ネゴシエーション完了!!これも全部ファインプレーを決めてくれたトップロードのおかげだ!後でおデコにしっぺさせてくれ。

 

 

「ついでみたいになって申し訳ないんだが⋯⋯トップロードもよろしくな。」

「任せて下さい。ご期待には答えてみせますよ。オペラオーちゃんとドトウちゃんを打ち倒した子からも、勉強させて貰いますね!」

「あぁ、存分に。」

「ところで⋯⋯念の為に聞いておきたいのだけれど。」

「どうした?何でも聞いてくれ。」

「私が走るメリットって何?」

 

 

 ⋯⋯あっ、考えてなかった。

 そう言えばメリットがあるかもって言ってたもんな。すっかり終わったと思って油断してたわ。

 

 どうすんだボケェッ!ここまで来て『えっ?無いよ?』とか言えるわけねぇだろうが!

 アヤベの事だ、恐らくは無いなら無いでも引き受けてはくれるだろう。しかし頼むなら頼むなりの誠意があるし、アヤベのモチベーションに関わるものなら殊更大切な事。何としてでも彼女には全力で向かってきて貰いたいのだ。

 

 ク、クソ⋯⋯折角交渉成功まで漕ぎ着けたのに、最後の最後で失敗とかしたくない⋯⋯トッ、トプロ⋯そんな、『もう一声!』みたいな期待の眼差しで見ないでくれ⋯⋯何も浮かんでないんだ⋯助けて⋯⋯。

 

 

「⋯⋯じっ⋯。」

「じ?」

「自慢ッ、出来るぞ。」

 

 

 僅かにアヤベさんの目が見開かれた。

 そりゃそうでしょうよ。バカみたいな理由だもの。なんだ自慢出来るって。誰に自慢すんだ。

 えぇい、ままよ!デジタルの凄さを俺が自慢してやろうじゃないか!本末転倒、これ如何に。

 

 

「2000人以上いるトレセン学園のウマ娘。その中でもダートデビューから芝G1を取って、海外だって勝って、適正距離外の3000m級長距離レースを取ったウマ娘は⋯⋯アグネスデジタルただ1人だ。"唯一抜きん出て並ぶ者無し"。そんなのを相手にしたら、アヤベにとっても大切な誰かに出来る自慢話になると思わないか?」

 

 

 半ばやけっぱちである。それでも目の前の一等星は⋯⋯アドマイヤベガは、確かに笑った。上を見上げ、遠くの誰かに誰かに思いを馳せる様に。

 

 ふっ、と短く息を吐いて再びこちらを向いたその眼には、有り余るほどの闘志が満ち満ちていた。

 

 

「そう⋯⋯ね。きっと語らうには、充分過ぎるほど⋯⋯予定が決まったら教えて。そのただ1人を、私は必ず捉えてみせるわ。」

 

 

 そう言って手を上げたアヤベは、クールビューティに去っていった。

 

 あっぶねぇッ!!OK貰えた!えっ、貰えたよな?ギリギリだったよな!?怖かったよぉ⋯⋯ふぇぇ⋯⋯キッショ!!!!

 

 トップロードもアヤベの後を追って休憩へと行った。ありがとう、ナリタトップロード。ありがとう、心のトップロード。後でおデコに何かさせてくれ。ところで肉と米、どっちが好きだ?

 

 

「トレーナーさぁん、少し手伝って貰いたいんですが⋯⋯。」

「ん?おぅ、良いぞ。」

 

 

 ひょっこり機材の中から顔を出したのは我が半身、勇者デジタル。

 

 

「どうしました?何か嬉しそうですね。」

 

 

 どうしたもこうしたも、この短時間に完璧なまでのネゴシエーションを済ましてトップロードと関わりを持ち、アヤベにもレースの併走を依頼出来たのだ。三十路はもはやウッキウキなんだよ。お前にも俺の華麗な交渉術を見せてやりたかったくらいだ。ふふっ⋯⋯何したかって言われたら何もしてないんだが。

 

 

「デジタル喜べ、アヤベとトップロードの2人と併走が決まったぞ!」

「へっ?な、何故にそんな大御所2人と⋯⋯?」

「そりゃもう俺の華麗な話術と誠意がだな───。」

「あっ、また土下座しました?」

「何だまたって。俺がいつ土下座したんだ。」

保健室(教会)を作る時に理事長様に一緒にしましたよね?」

「なにィ?⋯⋯したわ。ヌゥ、どうも最近忘れっぽいらしい。」

「んもぅトレーナーさんってば、しっかりして下さいね。」

 

 

『アッハハハハハ!!』

 

 

「歳⋯ですかね⋯⋯。」

「やめ⋯⋯そういう事⋯やめろよ⋯⋯。」

 

 

 相棒の言葉に恐怖心を覚えつつ、小突き合いながら2人で機材の調整を進めたのだった。




テイエム歌劇団(ウララちゃんは諸事情によりお休みです。)

オペラオー(リュージ担当) : 言わずと知れた世紀末覇王。劇の合間に人生楽しんでる女。すぐアヤベさんに絡みに行く女。正月から飛んでどっか行く女。ふざけ倒してるのに物事や他人が抱えている悩みの本質は誰よりも早く捉えている為、どこまでが演技なのかが分からない。ぶっちゃけオペは全部知ってるんじゃねぇかな⋯⋯。

アヤベさん(ふわふわビューティー担当) : 背負ってるものが重すぎて1人だけ別ゲームしてる女。カレンチャンとのてぇてぇ絡みで好きだったけど、育成シナリオで涙腺全部持ってかれた。カワカミ以上にボロ泣きした。ウマソウルについてやユメに関する設定・考察は大体アヤベさんからインスピ貰いました。ありがとう。布団乾燥機いる?

トプロ(語彙力担当) : カワイイデコ助。原作もモブ顔とか言われてたけどスタイルは絶対にモブじゃない。絶対にモブじゃない(大2言)。生き様も主人公。同世代が弱くなかった証明代わりに後の名馬達とガチンコし続けるとか何⋯⋯?勝ち数が全てじゃない事を教えてくれた、まさに心のトップロード。小学生以下の語彙力、そのままでいて。

ドトウ(タヌキとヤギ担当) : オペラオーのライバルにして右腕にして臣下にして野生動物達の王。色んな失敗をするけど諦めが悪いのが取り柄のとっても良い子。どの育成シナリオに出てきても1人だけシンデレラストーリーやってるし歌も歌うから実質デレマス。歌声凄く綺麗で⋯その⋯⋯凄い⋯綺麗です。


次回、『第3R : *おおきな えいゆう Rob Roy』
久しぶりのロリコン節フルスロットル回です。
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