人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!!   作:なちょす

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ウチのデジたん、ゼファーの育成シナリオ実装前に尻尾ハグをロリコンにしてるんですよ。頬チューする前に。
そして尻尾ハグとは"大切な人"とか"愛情表現"とか大胆ないっぱいちゅきLOVEだっち行為なわけです。
つまりそういう事。良いね?良い。(暴論)
ただしお互いが無自覚でそういう感情持ちでは無い為発展しません。俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます。(去勢)

嫁が尻尾ハグ1回で済ますわけねぇだろもっとやるしやらせるぞ俺はお前!特別R待ってろお前俺は書くぞオラッ!!
結婚しろッ!!!!!!!!!


エキシビジョン : 待ちわびた鼓動

『ここで先頭入れ替わってシンボリルドルフ!!しかし1バ身後方にマンハッタンカフェ、序盤からハイペースだったとは思えない速度で前を狙っている!超ロングスパートがいよいよ皇帝を追い詰めるか!?』

 

 

「異常ですよ、皇帝は。もうカフェには止められません。」

 

 

 モルが隣でそんな事を言いながら笑っている。えっ、怖い。

 スズカとオフサイドのレースが終わり、長距離の部が始まった。カフェの相手としてヨシエさんが用意した特別な相手と言うのは、先程まで人参の着ぐるみで会場内を勇往邁進していたシンボリルドルフ。驚きはしたが、ヨシエさんの事だから考えても見れば妥当というか当たり前というか⋯⋯何より人参の格好をしてたインパクトの方が強かった。

 

 出だしから早々に飛ばしていたカフェは、1500m付近から徐々に速度を上げていった。元々"無限のスタミナ"なんて言われるほど疲れ知らずな彼女。3000m走ってちょっと疲れてる程度しか疲労が無いのはそれこそ異常なワケで、ウチのマヤちゃんがやられた時も実は同じパターンで捕まっている。

 仕掛けを早めればジリ貧で潰され、カフェに合わせればトップスピードの差で逃げ切られる。どの脚質でも満遍なくこなせるマヤちゃんが、どの脚質の作戦を練っても偶にしか勝てない。そもそもカフェは、レースに出ている相手など誰1人見ていない。

 "お友だち"が自分の前に居ると言う事実だけで走っているのだ。

 

 要するに異質。掴み所がまるで無い影のようなウマ娘。そんな影を、トレセン学園の皇帝は相手取っている───"鎧袖一触"の一言で。

 

 

『シンボリルドルフが今先頭でゴール!マンハッタンカフェ相手に3バ身差をつけての勝利!これで"T☆K☆G"と"ベジタリアン"が共に2勝2敗となりました!』

 

 

 "カフェの元に行きます"とだけ言い残して、モルはこの場を後にした。

 シンボリルドルフ⋯⋯本気では無かったとは言え、マルゼンスキーと互角の接戦を繰り広げたその実力は確かなものだ。もし彼女と走った所で相棒は厳しいかもしれん。いつかそういう日が来たらの話だが、『ポラリス』の面々とも戦えるようにしておきたいのが本心だ。

 その為にはやはり───。

 

 

「デジタルだな。」

「はい?」

「ヌンッ!?お、お前いつからそこに⋯⋯!?」

「レース中ずっと居ましたけど⋯⋯。」

 

 

 流石普段から見えないフィルター越しにウマ娘達を舐め回すように見ているHENTAI。まるで気配が察知出来なかった⋯⋯いや違うな。普段腕の中(定位置)に収まってるからだわ。ちょっと腕の中(定位置)来いお前。

 

 

「どう思う?ルドルフの走り。」

「⋯⋯ヨシエさんは、きっと会長さんを走らせたくないと思いますよ。レース中、会長さんは仕掛け所を2回見送っていました。最後のスパートも、ここだって思ったタイミングからワンテンポ遅かったんです。思った所で身体がついて行っていません。きっとピーク(・・・)が来てるかと⋯⋯だから、暫くお休みするんじゃないでしょうか。次に走るとしたら───。」

「⋯⋯引退レース、か?」

 

 

 デジタルは俯いた。今までトレセン学園の象徴として上に立ち続けた皇帝の限界。それでも尚カフェ相手に勝利した意地。モルが言っていた異常という言葉の意味も、何となく分かる気がする。

 となれば⋯⋯マルゼンスキーも、恐らくは。

 

 

「んっ⋯⋯電話だ。もしもーし、後輩ちゃん。」

『ども。先輩、そっちにデジタルさん居ません?ウチのクロにちょっと会って欲しいんですけど。』

「おぅ、良いぞ。けど急にどした?」

『深い意味は無いです。ただまぁ⋯⋯"憧れた相手"から声掛けられたら、アイツぶっちぎると思うんで。』

「はいよー。デジタル、後輩ちゃんが控え室に来てくれってさ。お前イチオシの後輩もしっかり推してきな。」

「えっ!?良いんですか!?ひょお〜〜〜!!クロフネちゃぁあああん、今参りますぞ〜〜!!」

 

 

 相も変わらずのウマ娘オタク、耳をぴょこつかせやがって可愛いなコイツ。だが───。

 

 

「⋯⋯なぁ。俺に隠してることあるだろ。」

⋯⋯えっ?

 

 

 喜びながら向かおうとしていたデジタルは身体を強ばらせ、恐る恐るこちらを振り向いた。

 心のどこかで嘘だと思いたかったけど⋯⋯真っ黒じゃねぇか。

 

 

「心当たりは⋯⋯ある。お前がレースの後に上を向いてた事も、関係あるんだろ。多分、さ⋯⋯俺が今までお前に背負わせてたんだよな。」

「っ⋯⋯あの、ち、違っ⋯⋯アタシは⋯⋯。」

「安心しろって。今は何も聞かないし、何も言わない。内緒にしてくれているのは、お前なりに考えてくれたんだろ?だから⋯⋯お前が言いたくなった時でいい。その時は俺に教えてくれ。」

「トレーナーさん⋯⋯はいっ。」

 

 

 そう言って、デジタルは控え室へと向かった。

 心が痛い。言いたくなった時でいいなど、よくもまぁそんなでまかせ(・・・・)が口から飛び出すものだ。

 

 何はともあれ⋯⋯ダートのレースは勿論ダートコースで行われる為、ここからは少しばかり移動しなくてはならない。向こうは向こうで観客が満員の為、現在芝のコースに居る観客達はライブ中継で観戦することになる。関係者はまた別の話なので、取り敢えずはそこに向かいたいのだが⋯⋯。

 

 後ろからの圧が凄い。3人組の圧が⋯⋯ヒェッ、変なのがいっぱい居る⋯⋯。

 

 

「Yo!Yo!Yo!そこのダンディーそれでいいのかYo!」

「ちぇけ。ちぇけ。ぼん。」

 

 

 ダボダボのパーカーにつばがフラットなキャップ。そして顔のバランスに不釣り合いなほどのクソデカサングラスを装備したファル子ことスマートファルコン。どこに売ってんだそれ。

 ブルボンはサングラスこそ付けていないが、何があったかは想像出来る断線してボロボロのヘッドホンを首から下げていた。HIPHOPに対する偏見そのままコーデしましたと言わんばかりの全身装備である。しかもこれが午前のライブ衣装という迷走っぷり。

 そしてそんな2人の横に無言で佇む、『quiet』の名札をぶら下げた緑のお野菜。そこは『silence』じゃねぇのかよ。

 

 

「3人はどういう集まりなんだっけ?」

「今をときめくウマドルユニット、『逃げ切りシスターズ』だYo!」

「ちぇけ。」

「⋯⋯ツッコまんよ"DJ.AKAONI"。それでいいのかってのは、デジタルへの先延ばしの事か?」

「そうなの!あのねトレーナーさん⋯⋯きっとトレーナーさんが1番分かってると思うんだけど、デジタルちゃんって色んな事に気を使ってくれるでしょ?」

「まぁ。それがアイツらしさでもあるし。」

「今ね、デジタルちゃんは凄く苦しんでる。ずっと1人で戦ってきたの。先延ばしちゃうと、これからも1人で戦わなくちゃいけないんだよ!自分でもどうしたらいいのか分からなくなった気持ちと⋯⋯そんなの、凄く辛いと思うな⋯⋯。」

 

 

 本当に良く見ていると思うが、ファル子はそういうウマ娘。だからこそ、彼女のファンでありライバルでもあるデジタルの事を気にかけてくれている。それはとても嬉しい事だし、勿論俺もそう思っている。

 

 

「ありがとうな、ファル子。でも大丈夫。先延ばしなんて元よりしてやらん(・・・・・・・・)。本心を聞くのも道を正すのも、汚れ役を買うのも⋯⋯全部トレーナーの仕事。俺の仕事だ。他の誰かにやらせるつもりは無いし、自分のやる事をやるよ。」

 

 

 相棒の事は知っている。きっと簡単には話してくれないだろう。

 だからこそ、俺はアイツにとって1番最悪なタイミングで聞き出す。もっと良いやり方はあるかも知れない。後輩ちゃんやヨシエさんなら、他のやり方で出来るかもしれない。けれど俺にはこれ以外思いつかなかった。俺がデジタルだったら、きっとこれで話が出来ると信じているからだ。逃げ道なんか最初から用意してやらねぇ。バカなやり方でバカな男の声をぶつけてやるつもりだ。

 

 

「うん⋯⋯信じてるね、トレーナーさん。」

「あぁ。それで⋯⋯さっきからユラユラどうした、ミホノちぇけぼん。」

「シェケナブルボンです。」

「なんて?」

「ブルボンちゃんが1番ライブを盛り上げてくれたの!ヘリオスちゃんとかトレーナーさんに色々聞いたんだって!1発かましちゃいなYo!」

「煽るのは止めたげなさいよ⋯⋯。」

HIGH & LOWいつだってフロア沸かすサイボーグ︎ ︎ ︎ ︎ ︎坂路からの向上に沸き立つ細胞︎ ︎ ︎ ︎ ︎アイツは才能?ちゃちな言い訳ダセェな噛み付くぞ(Say,BOW)︎ ︎ ︎ ︎ ︎惰性の要因(ファクター)ぶっちぎって最高速(ファスター) ︎ ︎ ︎ ︎ラップの命令(オーダー)寄越した仮性のマスター

「お黙りッ!!お前ライブで"仮性のマスター"とか言ってないだろうな!?」

「⋯?⋯⋯⋯。⋯⋯?」

「どこ見てんだ。」

 

 

 ライスッ!ライスーッ!!ミホノブルボン特別アドバイザー資格保持者の力を貸してくれぇッ!!

 後輩ちゃんから預かったブルボンがどんどん変な方向に成長し始めてる⋯⋯中身幼女め、どんだけ学習能力高いんだよ。

 いや、そもそもブルボンが今の性格に至ったのはあの娘のせいと言うのが大半だが。

 

 ⋯⋯取り敢えず移動だ移動。レースが始まっちまうよ。

 ヌッ。お野菜が袖を引っ張ってくる。

 

 

⋯⋯キュウリらしいです。スズカンバーって言われました。どうですか?

「どうですかって言われても⋯⋯。」

負けたから着ることになりました。どうですか?

「ゴメンって⋯⋯俺も知らなかったんだよそのルール⋯⋯全員分あるなんて思わなくて⋯⋯。」

どうですか?

「圧が凄いんだよ!ゴメンって!⋯⋯あとな。多分それ、ズッキーニだぞ。」

嘘でしょ。

 

 

 silence(沈黙の)ズッキーニの肩に、ゆっくり近付いてきた玉ねぎがそっと手を乗せた。

 何してんだよオフサイド。

 

 

 

 

 

「あっ!見て見てトレーナーさん!クロフネちゃん出て来たよ!」

 

 

 お野菜に捕まってしまったもののレースには間に合った。

 ファル子の声で特別ステージに目をやると、クロフネはマイルカップぶりに見る勝負服を着ていた。芦毛の髪は後輩ちゃんと同じ様に後ろで束ね、耳飾りも後輩ちゃんのピアスと同じデザイン。黄色と白ベースの上下に黒と青のアクセントが散りばめられた彼女だけの勝負服───顔イカつッ!

 

 俺やデジタルの前であんなにぴーぴー泣いていたウマ娘と同じ人物には到底思えない程イカつい。寧ろただの後輩ちゃん。相棒⋯⋯お前何言ったの?お前の勇者バフってウチのチーム以外にも影響する感じ?パッシブスキル?

 

 そしてクロフネの前に立つのは、地方から飛び出して重賞を悉く荒らしてきたウマ娘。レースの歴史や常識すらも自身の走りで変えてしまった、まさに古兵───『芦毛の灰被り(シンデレラグレイ)』。

 

 

『いよいよエキシビジョンレースも最後のレースです!泣いても笑っても決着のダート部門、クロフネVSオグリキャップだぁーーーっ!!』

 

 

 会場のボルテージなど言うまでもなく、ドえらいこっちゃだ。オグリキャップが有記念で見せたその走りは、『神はいる』とまで言われたのだから。

 皆の期待に応える事──それを走る力に変えるオグリキャップに、クロフネがどう走るのかは分からない。実際クロフネがダートのG1に出たという話も聞かないし、俺も彼女の走りはまだしっかり見れていないんだ。アオハル杯だって知らなかったし⋯⋯。

 

 

「ダート界隈が盛り上がってくれて嬉しいな♪みんなみ〜んな強くて凄い子ばっかりだもん。」

「重賞9連勝に年内無敗。中距離ならデジタルからも逃げ切る"赤鬼"がそれ言うとおっかねぇな。」

今は(・・)ファル子だよ!真っ直ぐ想いをぶつけてくれる皆と走れるのはとっても楽しいし嬉しいから。」

「そうか⋯⋯ところでトレーナーには真っ直ぐ想いをぶつけられました?」

「うるしゃ〜い☆」

 

 

 いたっ、痛い⋯⋯ポカポカ叩いてくるんじゃないよ。陥没する。それはそうといつまでも立って見ているワケにはいかない。

 早いとこ関係者席に───来たは良いが。カレンチャン貯金箱3つ並んでるけどここじゃねぇだろうな。デジタルとヨシエさんと俺の分で丁度3つ必要だけど、ここじゃねぇよな⋯⋯ッ!?俺嫌だぞ!?ここ座るの!ヤベー団体様の席だろコレ!どんな顔して教え子の貯金箱抱えて座ればいいんだよ!絶対ヨシエさんの仕業だろ!?2人共居ないんだから俺だけ被害被るじゃねぇかチクショー!!

 

 立ち往生している俺の横から、今のクロフネと同じくイカつい顔をした娘がひょっこり現れた。

 

 

「ども。デジタルさん助かりました。」

「おぅ、おかえり後輩ちゃん⋯⋯あっ、座るんだ⋯クロフネはどうよ?」

「聞きます?控え室で3回気絶した話。ただまぁ調子はどうかって言われたら⋯⋯負ける要素無いっすね。仮に相手がアンタんとこの担当でも。」

「何?この。」

 

 

 珍しく笑いながら煽りよるわ小娘め。ウチのデジがそんな簡単に負けるかってんだ。

 クロフネだって緊張して⋯⋯あれ大丈夫?ガン飛ばしてない?

 

 キタちゃんからマイクを受け取ったオグリが、ゆっくりとその歩みをクロフネに近づけて行った。会場が徐々に静まりを見せるほどの圧は流石怪物である。

 

 

『⋯⋯1つ、言わせて欲しい』

『⋯⋯はい。』

『お腹が減っていないか?』

 

 

 誰もがすっ転んだのは言うまでも無い。

 

 

『顔が強ばっている。緊張している時は、何かを食べるといい。実は私もお腹が空いていてな⋯⋯レースが終わったら、タマがご馳走してくれるらしい。一緒にどうだろうか?』

『えっ、良いんですか⋯⋯?正直腹ペコです。』

『ふふっ、そうか。それは良かった。ならこの勝負を楽しもう。君の事はヨシエさんから聞いている。私の心も、もう待ちきれなくてウズウズしているんだ。だから───本気で勝ちに行くぞ。』

『お願いします。私には───勝ちたい人が居ますから。止まってなんかいられません。怪物を打ち倒すのは私です。』

 

 

 クロフネと眼が合った気がした。ひぇっ⋯⋯やっぱ後輩ちゃんじゃねぇか⋯隣からも視線を感じるし⋯⋯ひぇっ、クロフネじゃねぇか⋯⋯。

 セントエルモの火は灯された。少し前にオペラオーが言っていたのは、やはりこう言う事だったらしい。ならば後はクロフネの走り次第⋯⋯そして、俺が相棒を"本物"に出来るかどうかだ。

 

 

『両者がゲートに入りまして、今───スタートです!おぉっとこれは両者横並びでのスタート!』

『クロフネもオグリも早めに出てるね。こうなると、オグリの圧にどれだけ冷静でいられるかが大事だと思うよ。』

 

 

 横並びとは言え、ほんの僅かにクロフネが前に出ているだろうか。そうなると相手の出方こそ伺いやすいが、テイオーが言うように怪物の気迫を受け続けなければならない。

 デジタルも一度だけオグリとは競った事がある。安田記念のレコードホルダー同士、得意距離も脚質もほぼ同じ2人だ。最終的にはデジタルの気合い勝ちではあったものの、正直今までで1番実力が拮抗していたとは思う。

 

 人の想いを背負って走るウマ娘と、人の応援を力に変えるウマ娘。その在り方は似ているようで違う。オグリの怖い所は、周りから与えられるその応援が姿を変えて、怪物みたいなプレッシャーが放たれることだ。

 その中でも"自分が勝つ"と言う決してブレない意志が何より恐ろしく、そんな彼女だからこそ人は夢を見る。

 

 相手は間違い無く、歴史すら変えてしまった伝説級⋯⋯だから頑張れ、クロフネ。

 

 

『オグリキャップ、やや前方の様子を気にしているようですね。』

『うん⋯⋯気になるだろうね。アオハル杯の走りはあったけど、実際クロフネのダートに関しては情報が少ないから。武蔵野Sへの出走も回避した事があるし、今は牽制しながら様子見が良いかな。』

『成程。依然先頭クロフネのままレースが進んでいます。間もなく第3コーナーに───ちょっ、えっ!?ク、クロフネ加速!上がってきた上がってきた!オグリキャップがここで第3コーナーに差し掛かりますが、クロフネが今第3コーナーを抜けました!!(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 ⋯⋯⋯⋯はっ?

 

 

「おいおい後輩ちゃん!あの子暴走してねぇか!?いくら何でもスパート早すぎんだろ!」

「ありゃ気迫に当てられてますね。ウケる。」

「いやいやいや!ウケとる場合ちゃうで!?」

「タマさんに怒られますよそのキャラ。確かにアオハルでもあんな事しなかったですけど、"勇者様のおかげ"って事で1つ。」

「えぇ⋯⋯。」

 

 

 何でなん?ウチ関係無いやん⋯⋯デジタル、お前本当に何言っちゃったの?

 あぁほらッ!オグリのやつ笑ってんじゃん!!怖っ!もうハチャメチャに迫って来てんじゃん!幾らダートがクロフネにとってベストマッチだからっつっても、無茶だって!観客もザワついてるし、あんなの記録保持者ばっかりなダート面子だってやらねぇよ!!

 

 

「あー、腰痛った⋯⋯間に合ったっぽい?」

「ヨシエさん⋯⋯生きてたんですね。」

「いぇーい。かっ飛ばしてるねーあの子。"蓋世之才"なんて言う位だから、そんな事だろうとは思ったけど。あー、あー、『ポラリス』に業務連絡。レース終了後は結果発表のアナウンス無しでよろしくー。」

 

 

 無線を片手にそう指示を出しながら、彼女は携帯を取り出しては続けて連絡を入れていた。

 

 

「もしも〜し。どうだ凄いでしょ、今の子達。2日間楽しんでくれた?うん、手筈通りに⋯⋯お仕事引き受けてくれてありがとね。」

 

 

 

『縮まらない縮まらない!第3コーナーを抜けたままクロフネが先頭!何というウマ娘だ!?オグリキャップが6バ身差から追いかけるが、未だ差は2バ身!これがダート界の超新星!"舶来の衝撃"!!クロフネ今先頭でゴーーーールッ!!!!』

 

 

 

 ⋯⋯勝っちゃった。いや嬉しいけど。嬉しいんだけれども。

 後輩ちゃんの手前カッコつけてあれこれ言っちゃったよ⋯⋯勝てる未来見えねぇ〜〜〜〜⋯⋯。

 

 第3コーナー手前からゴール板を抜けるまで、ダートコースには地面を強く抉ったクロフネの足跡が残っている。スマートファルコン、コパノリッキー、ホッコータルマエ⋯⋯ダートを走る子達には、誰をも唸らせ、納得させるだけの記録を叩き出してきた子達が居る。だがクロフネのそれは、記憶に焼き付くほど鮮烈な衝撃だ。そしてそれを証明するだけの実力。誰が呼んだか"舶来の衝撃"は、その名前が伊達では無い事を教えてくれた。

 

 

「そんじゃ、ちょっくらクロのとこ行ってきま。」

「お、おぅ、行ってらっしゃい⋯⋯。」

「へいへーい、勇者ビビってるー。」

「べっつにぃ〜!?ほ、ほら!さっさと行ってやれって!!」

「りょ。あっそうだ先輩。」

「んだよ⋯⋯。」

「後で大事な話がありますから。じゃ。」

 

 

 ⋯⋯何だし。

 っべーなマジで⋯⋯ウマ娘同士の実力もそうだが、トレーナーとしての能力がそもそも段違い。今まで使ってきた作戦など、後輩ちゃんは徹底的に潰しに来るだろうし⋯⋯俺の考えなど通用する相手じゃない。

 本当にもう───。

 

 

「どうしましょう、ヨシエさん⋯⋯。」

「急に話振らないでよ。知らんし。それと前々から言おうと思ってたんだけど、私と2人の時ぐらいその畏まった態度と話し方するのやめない?もう知らない仲じゃないし、正直ゾッとするんだけど。」

「⋯⋯善処するよチクショー。」

 

 

 だって怖ぇんだよ。昔毎日の様に喧嘩してた仲とは思えないぐらい今のこの人何やらかすか分からねぇんだもん⋯⋯あっ、俺が丸くなったのかもしれない。多分そう。ウチの可愛い娘達のおかげで毎日ポニーちゃんが元気だから⋯⋯お前が元気になったら終わりだぞ?寝てろ。

 

 ふとヨシエさんの方を見れば、彼女は観客席の何処かに目を向けたまま笑っていた。

 

 

「ねぇ、聖蹄祭終わったんだし2ショ撮ろうよ。ギャルみたいに、指を内側にしてピース。」

「えぇ⋯⋯ぴ、ピース⋯⋯。」

「じゃあ次は観客席に向かって。なるべくあの上辺りにギャルピース!」

「ギャルピース⋯⋯。」

「はい、そのまま人差し指畳んでー。」

「人差し指畳んで──いやダメでしょこれ。やっちゃったけど。ほ、ほら⋯⋯何かめっちゃこっちにガン飛ばしてる人ら居るじゃん⋯⋯知り合い?」

「知り合いってか理事会。」

「ふざっけんなお前ッ!!お偉方に中指立てちまったじゃねぇかよッ!」

 

 

 この女マジで⋯⋯ッ!!

 

 

「まぁまぁ落ち着きなって。私だって理事会が全員嫌いなわけじゃないよ?1番トップの奴、あのド真ん中でふんぞり返ってるクソがシンザン絡みの張本人で、やたらと自分の意見を押し通したがる自己中野郎なのよ。」

「だから⋯⋯まだ手伝えないって言ったばかりだろうが。」

「分かってるってば。でもねぇ⋯⋯私聞いちゃったんだよねぇ⋯⋯あの男、『勇者御一行』の事を成績残してるだけで距離感が不誠実とか、SNSにかまけてレースに本気じゃないとか言っちゃってるところ。」

「⋯⋯⋯⋯何だと?」

「ちゃんと説明したんだよ?信頼関係の上で成り立った成績だから良いんじゃない、とか。SNSだって、カレンちゃんもマヤちゃんもボーノちゃんも⋯⋯得意分野を活かしてウマ娘達やレースを盛り上げてくれてるし、とか。でも納得してないみたいでさぁ⋯⋯もしかしたらアンタだけじゃなくて、可愛い教え子達に直接対応が来るかもしれないわけなのよ。だってそういう事平気でやる奴だし?」

 

 

 俺らからすれば上司より遥かに上の存在。大人だってそんな話を切り出されたらYESとしか言えない立場関係である。

 対応と言うのはつまり⋯⋯注意喚起的な何かそういうのだろう。ウチの担当達は思春期真っ只中のうら若き乙女達。距離感がバグっているからと言って第3者が立場を武器にあれこれ言うのは非常に面白くないし、俺の監視の目がある中で自由にやって貰ってるのだから余計なお世話だ。いや、監視されてる側かもしれないが⋯⋯。

 

 大体、その距離感を正しつつ大人を揶揄うと怖い目に合うと教えるのは俺とポニーちゃんの役目であり、当初の目的だ。違う、ポニーちゃんは黙ってろ。

 

 

「きっと皆悲しい顔すると思うんだ⋯⋯1人の独裁でそんなギスギスした関係になるのは、バカらしいって思わない?」

「⋯⋯バカらしいよなぁ。」

っ⋯⋯色んな事して頑張って勧誘してきたのにねぇ。何よりも、デジタルちゃんがアンタの定位置から居なくなるかもしれないんだから許せなくない?」

「許せねぇよなぁ。」

ん"っ⋯くっ⋯⋯じゃ、じゃあどうするのが良いと思う?」

「潰すしかねぇよなぁッ!!」

「ダ、ダメだお腹痛い⋯⋯!ちょっとは疑う事覚えろって!私が嘘ついてて、良いように使おうとしてたらどうすんだよ!ロリ達に命かけすぎだっつーの!!」

「ハゲ絡みで嘘ついた事無いだろ。そんぐらい分かってんだよ。」

 

 

 考え出したら理事会には無性に腹が立ってきた。今だって何か笑って指差しやがる。横の奴ならまだしも、俺まで差される筋合いは無ぇんだよ。確かに人見下したり好きそうな顔だもんな、あのオッサン。

 

 彼女程では無いが、俺だってシンザン絡みの件では思う事がある。世話になった人達でもあるし───。

 

 だがッ!それ以上に自分のお気に入りに手を出されるのが気に入らない。俺のロリ達──違う、語弊。俺の担当達だぞ。手伝えないとは言ったが、『勇者御一行』を天秤にかけられるのなら話は別だ。

 

 

「ひーっ、ひーっ⋯⋯死ぬ程笑ったわ⋯⋯。」

「手伝っても良いけど、俺は"最推し"と担当達を最優先するからな。」

最初(ハナ)からそれで良いって言ってんじゃん。お好きにどうぞー。」

「それともう1つ、絶対守って貰う条件が有る。」

「何よ偉そうに。」

(つら)いとかヤベェってなったらちゃんと言えよ。すぐ手伝うから。」

 

 

 ⋯⋯⋯⋯何だ、きょっとーんとして──アカン、今究極に恥ずかしい事言った。あっ、あっ、そうだ絶対そうだ!!

 

 だって今のどぼ先生の恋愛漫画で見たからッ!!

 

 急に冷静になってきた⋯⋯うわ、うっわ、三十路が恥ずかしい!!木の下に埋まりたい!!だからあれ程感情的になるなと昔っから───!

 

 

「口説いてんの?ロリコンが烏滸(おこ)がましくない?」

「寝言は寝て言えよクソ女。あと俺はロリコンじゃない。」

 

 

 そんな事は無かった。1周回って安心感すら覚えるこの悪態、本気で頭を心配されているらしい。張り倒すぞお前。

 あっ、おまっ、何腕引っ張って⋯⋯黙って携帯のインカメ起動すんな、ったくよぉ⋯⋯。

 

 

『ギャルピース。』

 

 

 画面の中で真顔の俺達。その後ろで、こちらを向いた栗毛のウマ娘が───俺達にとっては何よりも大切だった『神さま』が笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ、マーちゃんも写ってる。

 




ある意味最凶タッグ。これからもド派手に喧嘩するし、富野節が炸裂してたまにガンダムに乗るけどじゃれ合いという事で⋯⋯あっ、クソ女は既に未練タラタラの負けヒロインなのでデレたり√に入ったりはしません。どんな距離感だとしても別にデレたりとかは有りません。多分。見たい人が居たらデレる。


次回───『決戦 : スーパーカー』


勇者に道を示すのはいつだって王。
嫁の為、ロリコンが愛を叫びます。君が好きダート叫びたい(芝マイル

お気に入り3000件突破してました。物好き兄貴たち、ありがとナス!!何にも用意してないけど⋯⋯えっ、どうする?全裸で天ぷらでも作る?
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