人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!! 作:なちょす
3章は2部構成の予定。
名探偵マヤちゃん爆誕。夏合宿を舞台に、ロリコンが愛の告白をしたという人物を巡る大騒動。報連相をしないとこうなるぞと学べる社会教育的全編勘違いコメディーの第1部──『激動のミチ子ちゃん編』。
ドイツ産まれにしてフランスのモンジューを友に持つ"ライネルブリッツ(オリウマ娘)"が、天才マヤちゃんと日本のウマ娘達に牙(綿100%)を剥くコメディー有りシリアヌ有りな第2部──『雷撃の情動編』。
天才児が理解っちゃった!(理解ってない)したり、ロリコンが掛かっちゃった!(掛かってる)したり、デジたんが胃痛に悩まされたり、魔女が勇者御一行を一網打尽にしたり、RobRoy.──したり、サイボーグがバグり散らかしたり色々やりますやらかします。
カレンちゃんは横になる。
レース後、俺とデジタルはトレーナー室へと戻って来た。ぱかプチだらけのソファーの上で相棒は落ち込み⋯⋯いやもうすっっっごい凹み方してる。俺が度々後輩ちゃんのとこでナーバスポニーちゃんになるレベルとは比較にならない程にはガチ凹みだ。
取り敢えずはさっきまでグズグズに泣きじゃくっていたので厨房から飲み物でも取ってきてやろうかと思っていたのだが⋯⋯戻って来たらアイツ、ソファーの上で体育座りしちゃってんの。
いや、凹んでるんだよ。間違いなく心がボッキボキにへし折れてんだよ。だがそれはそれとして⋯⋯制服で体育座りはやめない?
お前それ、スカートの中見えんぞ。直下着じゃないとは言え目のやり場に困る。
そう思った矢先、相棒はスーッと脚を下に降ろして耳絞ってるッ!!
だから声に出すなって言ってんだろバカタレッ!!お前どこの世界に『スカートの中丸見えーる』って思春期真っ只中な女子中等部に直接言う奴が居るんだよ!!ここに居たわ。凹む。
「あ、あの、デジタル⋯⋯今のは違うんだ、本当に。別に見えてたワケじゃないし見ようとしたワケでも無くて⋯⋯なんだ⋯⋯こ、こちらウララちゃん絶賛のにんじんジュースになりまーす⋯⋯。」
あかん、終わった。今からちょっと真面目なお話モード、やる時はやるポニーちゃんとして奮起しようとしていたにもかかわらずこの体たらく。そう言うとこだぞ俺。
辞職願は持ったな!?行くぞ!!
「⋯⋯なぁ。何か言っていいんだぞ。その⋯⋯勝手に色んな事言った俺に対してとか⋯い、今の発言とか⋯⋯文句無いの⋯⋯?」
「⋯⋯トレーナーさんは、無いんですか⋯⋯?」
「俺?何で俺がお前に。」
「だって、トレーナーさんも分かってるじゃないですか。アタシがもっと早く判断してれば⋯⋯自分からトレーナーさんに担当になって欲しいって言ってれば、お父さんの事⋯⋯間に合ったって。」
「ん⋯⋯まぁ。」
「なら、言えばいいじゃないですか。『お前のせいだ』って───痛っ。」
凹むデジタルの前にしゃがんでデコピンしてやった。
「⋯⋯え?えっ?」
「他には。何か言いたい事あんだろ。」
「⋯⋯⋯マルゼンスキーさんにも負けました。最後に楽しかった、って⋯⋯また、トレーナーさんのしたかった事、叶えてあげられなかったんですよ。アタシはいっぱいして貰ったのに、何にも返せなくて⋯⋯担当がアタシじゃなかったら、こんな事にならなかったのに───痛ったァッ!!あーッ!おデコがァーッ!!」
思いっっっきりデコピンしてやった。
何を言うかと思えばバカヤロー。俺は文句言えっつったのにもかかわらず、やれ自分のせいだ、自分が担当じゃなきゃ良かったとかバカヤロー。
⋯⋯言わせちまった俺も大概バカ野郎だが。
「お前2度とそんな事言うなよ。俺の前でも、誰の前でも。こっちはお前に返しきれないほど恩も有るし、感謝もしてんだよ。」
「なんで⋯⋯そんなのおかしいじゃないですか⋯⋯。」
「おかしくない。」
「おかしいです。」
「おかしくないって。」
「おかしいですよッ!」
「おかしくメェッフッ!!」
ぱかプチぬいぐるみを顔面に押し当てられた。なんだその反撃。痛くも痒くも無いけどよりによってカレンチャンのクソデカぬいぐるみを顔面に当てるんじゃないよ。前から思ってたけど、お前カレンの事俺に対するリーサルウェポンみたいに扱ってるだろ。それはそう。効果はバツグンだ。
本人が見てたらドえらい事になってたからなお前。笑顔なのが余計に修羅場みたいな空気感醸し出してるじゃねぇか。ぬいぐるみなのに。
圧が凄い。そして素材が良い。
「おかしいです⋯⋯なんでそんな事言えるんですか⋯⋯なんで、そんな事言うんですか⋯⋯。責めてくれても良いじゃないですか。」
「そしたら気が楽か?じゃあ幾らでも責めてやるからそのベビースキンなモチモチ頬っぺ差し出せオラッ!オラッ!!」
両手でぐにぐにと頬っぺを揉みくちゃにしてやれば、デジタルは何かを言ってるがさっぱり聞き取れない。いやもう⋯⋯悪いけど、聞かんぞ俺は。俺がちゃんと言わない限り、コイツはいつまでも自分で自分を責め立てる。冗談じゃねぇ。
「なにしゅるんれふは⋯⋯!」
「この美少女がよォ⋯⋯口を開けば自虐ばっかしやがってよォ⋯⋯お前は何でも出来て、他人に優しくて、強くて、可愛くて、いつだってカッコイイ奴だって俺は知ってんのによォ⋯⋯ずっとお前だけに背負わせて、悪かったな。」
「トレーナーひゃん⋯⋯。」
「なぁ。少し話をさせてくれないか?お前がずっと気にかけてくれていた親父の話をさ。」
デジタルの顔を解放した後、俺は改めて持ってきた飲み物をデジタルに握らせ、隣に座り直した。
「あの人な⋯⋯典型的な昔気質の頑固者で、精神論とか平気で実行するような人だったんだ。『男ならメソメソするな』、『ヘコ垂れる前に気合い入れろ』ってよ。俺がトレーナーになるって言い出した時、あの人は絶対に首を縦に振らなかった。認めようとしてくれなかったんだ。ようやくトレーナーになって、病気の親父のとこに見舞いに行ったらさ⋯⋯あの人、なんて言ったと思う?『そんな事言う為に1人で来たのか』、『お前が言うトレーナーってのは、なって終わりか』って言われたんだ。流石に頭に来たもんで、今に見てろ、ふざけんなって言っちまった。それが⋯⋯最後の言葉だったんだけどな。」
思い返してみても後悔しかないというか、無駄に突っ張ってたとは思う。
隣を見れば、デジタルはまた俯いていた。もう終わった事、過ぎ去った事⋯⋯俺自身の問題なのに、握り締めた拳に涙を落としてくれていた。
気にするなって言っても、きっとデジタルの性分なんだろう。そういう所がお前らしくて好きな部分でもあるが⋯⋯俺は、何もお前にそんな顔してもらいたかったんじゃない。
「お前に話してないのはここからだ。良いかな?」
「⋯⋯はいっ。」
「俺さ⋯⋯お前が阪神JFで勝った時、泣いたろ?あの時確かにワケ分かんない感情になって、帰ってきたお前に何か言おうとしたのに何も言えなくて⋯⋯でも、ワリとすぐに気付いたよ───⋯⋯死ぬ程嬉しかったんだよな。」
「っ⋯⋯トレーナー、さん⋯⋯。」
「『自分が担当に必要とされているなら、愛されてるって思えたなら、どうしても我慢出来なくなった時ぐらいは泣いていい』って、1度だけ親父に教えて貰った事があるんだ。子供の時の話な?けどその時全部分かったっつーか⋯⋯そういや親父、首を縦に振らなかったけど、1度だって俺にトレーナーは無理だなんて言わなかったなって。」
病院で俺にあんな事言ったのも、自分の事など気にしなくていいからさっさと1人立ちしろって事だったのかもしれない。だから帰ってくるなら1人じゃなくて、担当と一緒に勝ち星でもあげてから来いって言いたかったんじゃねぇかなって⋯⋯何となく思う。
ああいう不器用な所と言うか言葉足らずな部分、間違い無く俺も受け継いでんだろうなぁ⋯⋯。
「だからデジタル⋯⋯あの日お前に言いたかったのは、お礼なんだ。俺を"トレーナー"に引き戻してくれた。親父が教えてくれた大事な事を思い出させてくれた。色々足りなくて駄目な俺でも、一緒に居るって言ってくれた事や勝ち続けるって言ってくれた事⋯⋯それが本当に嬉しかったんだよ。だからありがとな、相棒。」
「ちが⋯⋯ちがいますよっ⋯ア、アタシは、そんなじゃなくてっ⋯⋯アタシは⋯⋯。」
「違わないさ。」
「ちがいますよ⋯⋯。」
「違わないって。」
「違いますって!」
「違わメェッフッ!!」
だからカレンを武器にするなって言ってんだろお前ッ!ぬいぐるみとは言え本人並みの愛嬌と魔力が込められてるんだから!何でぬいぐるみのクセにめっちゃいい匂いするんだコレ。本人と違わぬ彩フレグランス⋯⋯えっ怖⋯⋯違う違うそうじゃない。話題を変えられてしまう。検証は後にしろポニーちゃん。
「アタシはッ!トレーナーさんの夢も叶えられなくてッ!いつだって余所見ばっかりでッ!自分勝手で、弱くて、どうしようも無くて⋯⋯!トレーナーさんは、ずっとアタシの事を気にかけていたのに、アタシは自分の事ばっかりで⋯⋯お礼を言われるような事なんかしてないんです!言われたくないんです!言われたら⋯アタシは⋯⋯どうすれば、良いんですかぁ⋯⋯。」
見た事も無い必死な剣幕で、今もずっと自分を責めるように捲し立てて⋯⋯デジタルは、また涙を流し始めた。
一体どれだけの想いを抱え込んでいたのか。3年以上という期間を考えれば、その考えはもう簡単には変わらないのかもしれない。それ程までにデジタルは自分の心に重責を背負わせている。『やらなくちゃならない』という言葉を呪いのように唱え続けて、意志の鎖で雁字搦めになって⋯⋯。
遅かったのかもしれない⋯⋯もう、普通に話をして解決出来るような状態じゃなかった。
まぁこっちは普通じゃねぇけどなッ!変わり者のトレーナーだけどなッ!!
「〇✕クイズしようぜ。」
「⋯⋯へっ?」
「第1問!アグネスデジタルは勇者御一行のエースであるが、カレンチャンが実質的なボスである。〇か✕か?」
「えっ?えっ?⋯⋯ま、〇⋯です。」
「ピンポーン。やっぱりそう思う?俺もなの。」
「あの⋯⋯。」
「どうした?」
「情緒、バグりそうなんですが⋯⋯。」
「そうか。第2問!」
「えぇ⋯⋯。」
何か言いたげな顔をしているが無駄だぞ。出題者が問題始めたんだから大人しく聞いてろお前。
「トレーナーの夢は親父に良い格好を見せたかった事、マルゼンスキーをチームに入れたかった事である。〇か✕か?」
「⋯⋯〇、です。」
「はーい残念賞。後で寮にタワシ送っとくからアグネスのヤベー方と仲良く使いなさい。第3問!」
「ま、待って下さい!」
「待ちません。答え合わせはこの問題の後にまとめて行います。あちこち余所見して担当を見ない事は自分勝手でいけない事である。〇か✕か?」
「〇ですっ!!」
「✕です。何年変態やってきてるんだお前。愛でるぞ。」
「っ⋯⋯、⋯⋯!」
最早言葉が出てこない程の情緒らしい。泣きじゃくっていた為に目元が真っ赤になっていたデジタルは、必死に何か言葉を探しているようにも思えた。
因みに俺が同じ事されたらキレる自信が有るし、後輩ちゃんも多分キレるし、ヨシエさんにやったら恐らく刑事事件になる。モルは⋯⋯まぁ光るだろ。
「お前が一生懸命守り抜いてくれた俺の夢はな⋯⋯厳密に言えば、夢じゃなかったんだ。改めてちゃんと伝えなかったからお前だけを苦しめちまった⋯⋯お前がウマ娘観察に俺を連れ出してくれた日から。お前が俺のスカウトにOKを出してくれた時から、夢は変わってたんだよ。」
「⋯⋯じゃあ⋯トレーナーさんの本当の夢って、なんなんですか⋯⋯?」
「あー⋯⋯実は、もう言ってるんだ。スカウトした時に。」
「えっ⋯⋯?」
⋯⋯そうか。ピンと来てないか。結構言い直すの恥ずかしいんだぞこれ。あの時はまだ年齢的にも勢い的にもイける!って思ってたから言っちゃったけど⋯⋯か、構わん!知るか!
「俺は、俺を変えてくれたウマ娘と一緒に居たい。これから先の夢や未来を、好きになったウマ娘の隣でずっと過ごしていたい───それだけだ。」
「⋯⋯〜〜〜っ!」
ほれ見ろ。だからちょっと恥ずかしかったんだ。もにょもにょしないでくれ相棒。三十路、結構ダメージ。己の羞恥心が首を締めにかかってる。
要するにお前はずっと俺の最推しだぞ☆というニュアンスなのだが、まぁそこは長年連れ添ったパートナー。理解しているだろう。なんたってもう1人の僕であり半身。そうでなければ今頃勇者御一行の面々と手を組み、ポニーちゃんがさよならバイバイしていた筈だからな!
「それとな⋯⋯あちこち余所見するのが悪い事だってお前は言ったけど──お前の好きな物はなんだ?」
「それは⋯ウ、ウマ娘ちゃん達⋯⋯ですけど⋯⋯。」
「ならここはどこだ?」
「トレセン学園です⋯⋯。」
「そう!天下の中央トレセン学園だッ!!」
勢いよく立ち上がると、相棒はその小さな身体を僅かにビクッと跳ねらせた。何だかヒートアップしてきたかもしれん。えぇい、止まるな俺。止まるなポニーちゃん。押して押して
「在学生徒2000人以上!あちこちでお前のパワーの源、ウマ娘達のてぇてぇが繰り広げられている、言わばウマ娘オタクにとっての
「ちっ⋯⋯違わないです⋯⋯。」
「青春の中で繰り広げられるライバル関係も、夢を追い求めてひたむきに努力を重ねる姿も見放題!不純な動機で結構!己のエゴで結構!そんなウマ娘達を支えるのが勇者御一行!そうだろ同士!?」
「そっ、そうですともっ!!」
「なら⋯⋯めいっぱい余所見しな。あちこち寄り道して、尊み感じて、萌えパワーチャージをフルMAXにして満足したら───隣を見ろ。お前の相棒が、いつだって尊みに共感してやるから。」
俺は、デジタルを強く抱き締めた。
「今までと何も変わらない。失うものなんてあるものかよ。そうだろ⋯⋯同士?」
「トレ、ナー⋯さん⋯⋯。」
「⋯⋯なぁ。楽しかったか?3年間。ちゃんと、自分が見たいもの⋯⋯見てこれたか?」
「見れ、ました⋯⋯見れましたぁ⋯⋯っ!」
「なら良い。それで充分だ。俺をお前の"最推し"でいさせてくれ。お前の"勇者"でいさせてくれ。俺はお前の⋯⋯戦友なんだから。」
背中に細い両腕が回された。小さく嗚咽を零しながら、それでも身体にグッと巻き付いてくる腕は力強い。僅かに痛いが、それはコイツが抱えて来た痛みの万分の1にも満たないだろう。
⋯⋯思えば、デジタルから返されたのは初めてかもしれない。いつだって俺が勝手に盛りあがって感謝をして、あれこれしてきたワケなのだが⋯⋯それも結局は一方的な信頼。ヨシエさんの言ってた通りだ。
だが───今、分かった。
アグネスデジタルはもう、誰にも負けない。こいつは誰よりも強くて優しいウマ娘だ。希望とか願いとか信頼じゃなくて、そう確信している。
気の済むまで泣けよ相棒。したらまた仕切り直しだ。俺達勇者御一行の、ちゃんとした道を作らなきゃな。
「⋯⋯あの⋯もう、大丈夫です。」
「おぅ。スカッとしたか?」
「はいっ。」
良い顔しちゃってまぁ⋯⋯こっちは今になってちょっと冷静になってきたぞお前。
恥っっっっず!!!!
えっ!?何してんの三十路が!歳を考えろ歳を!お前感情に身を任せたら毎度自滅してる事に何故気付かないッ!昔からそうじゃん⋯⋯ハゲに悪態付いてた時も、ヨシエさんの胸倉掴んじゃった時も⋯⋯バカは死んでも治らんのかもしれん⋯⋯ヒヒン。
転げ回りたい気持ちに悶々としている中、トレーナー室の扉が3度ノックされた。
「どうぞー。」
『⋯⋯⋯。』
「ん?開いてますよー?」
返答は無い。何だし。ちょっと怖いから止めろし。
ゆっくりと近付いて扉を開けた瞬間───俺は言葉を失った。
「あの〜⋯⋯勇者御一行のトレーナー室って、ここで良かったかしら⋯⋯?」
恐る恐ると言うか申し訳なさそうにと言うか⋯⋯とにかくそんな自信なさげな声で、目の前に立つ
「⋯⋯どっ、どうした?マルゼンスキー。」
「えっと、ね?私もさっき⋯本当にさっき聞かされたし、デジタルちゃんに最後って言った手前恥ずかしいのだけれど⋯⋯昨日付けで勇者御一行に移籍されてたみたいなのよね〜⋯⋯だからその⋯⋯あ、挨拶?的な?」
「⋯⋯⋯⋯はい?」
「あっ、あれ!?だってさっきヨシエちゃんがそう言ってたわよ!?もう書類は渡してるからって───。」
ダッシュでテーブルの上に投げ捨てていた封筒を取りに行き、中から1枚の紙を取り出した。
勇者御一行殿。当人の強い希望により、以下のウマ娘の特別移籍を承認する
・マルゼンスキー
横からひょっこり顔を覗かせたデジタルもスンッ⋯としている。聞いてた?と視線を送れば、Noと首を横に振られた。だよな⋯⋯俺も聞いてないんだ。
1周回って冷静になった頭が、今までのヨシエさんの発言を整理してくれている。
『代わりに───お話は出来たみたいですよ。誰かさんのお陰でシービーちゃんとマルゼンちゃんの2人と話をして、皆それぞれの道を行こうとしてる。』
『自分達が"勇者御一行"なら、楽しませる要因になるかもって思わなかったかね?ん?ん?』
『ラブレター。』
『私、嘘って大好きなんですよ。』
「やりやがったなあの女〜〜〜ッ!!!!」
何が昨日付けだコノヤロー!この書類の日付
一緒に飲みに行ってマルゼンとハゲ先輩を電話させたのが聖蹄祭の準備が始まってから⋯⋯その後シービーも含めて3人で話をしたのなら恐らく2〜3週間前⋯⋯って事はよぉ⋯⋯!
俺だけじゃなくてマルゼンとハゲ先輩と、書類の承認してくれたやよいちゃんにも纏めて嘘ついて移籍を押し通しやがったなアイツ!!
本人の気持ちが最優先って言ってたじゃん!言った奴がガン無視してんじゃん!何してくれちゃってんのマジでっ!?
「⋯⋯マルゼン。正直今何が何だか分からん。どうやら半年前からウチに移籍してたらしい。」
「半年⋯⋯えっ、半年前っ!?」
「だ、だから1つだけ教えてくれ⋯⋯良いの?本当に?」
「えっと⋯⋯まぁ、そうね。そこに関しては本当かな。実は結構前から思ってたりしていたのだけれど⋯⋯今更言い出すのもちょっと、ね?」
⋯⋯要するに、だ。
本人の気持ちなんかとっくに理解してて。
特別移籍願を出した時、すれ違ったままの俺とデジタルが怪物にとどめを刺すと言ったばっかりにレースする事を見越されて。
更には今日デジタルが吹っ切れる事を前提に、あわよくばマルゼンスキーも触発させてパーペキに仕上げた状態でウチに明け渡すと。
半年前からそう算段立てていたわけだ。
それはもう人間の所業じゃねぇんだよ。未来予知でも持ってんのかあの人。
⋯⋯あー畜生⋯掌の上でゴロゴロ弄ばれたのによぉ⋯⋯心臓がバクバクしっぱなしだ。今クソ程にやけてんだろうなぁ、俺。
「⋯⋯マルゼンスキー。お前は勇者御一行のマルゼンスキーで、良いんだよな?本当に⋯⋯本当に、良いんだよなっ?」
「⋯⋯えぇ。これからよろしくね。
「いょおおおっし!!よし!よし!よぉしッ!!やったなデジタル!お前のおかげだ!お前が居てくれたからだ相棒ッ!!」
「いえ、今回は本当に何も耳ーーーッ!あっ、あっ、耳は止めてください耳はぁーッ!!」
許して欲しい。もうなんか、物凄く浮ついてるのだ。いや浮ついてなくても指は突っ込むけど。
あっそうだ。なら最後にぶん投げられた鍵もそういう事だろうか。
「なぁマルゼン。これ何か分かるか?車のキーっぽいんだが⋯⋯。」
「あっ⋯⋯。」
俺から鍵を受け取った彼女は、大切そうに両手で包んで目を伏せた。
「これは⋯⋯あの人からの贈り物よ。"スーパーカーなら必要だろ"って、願掛けみたいなものね。レプリカだけれど⋯⋯次に私の事を見てくれる人がいるなら渡してやれって言われたわ。だから⋯⋯改めて、私から君に渡させて頂戴。」
「⋯⋯そっ、か⋯なら、有難く受け取らせてもらうよ。にしても『
「えっ?そんなの書いてたかしら⋯⋯。」
「いやここに───あぁ、そういう事か。」
よくよくキーホルダーを見てみれば、隅の方に小さな顔マークが描かれていた。デフォルメされたボブヘアー、小憎たらしい笑みの似顔絵⋯⋯1度は自分も面倒を見たからこそ、マルゼンスキーへ最後に送った餞別の言葉代わりだろう。
あの性格だ。間違い無くやるわな───1番弟子さんよ。
よし!
「勇者御一行の新しい門出だな!じゃあ景気付けに三本締めで───。」
「あっ、トレーナーさんの携帯鳴ってますよ。」
「何だし。次から次へと⋯⋯後輩ちゃん?もしもーし。」
『ども。先輩今どこに居ます?』
「トレーナー室。デジタルとマルゼンも一緒だよ。どした?」
『なら丁度良かった。正門に来て貰えません?迎えのリムジン来てるんで。』
⋯⋯⋯⋯はっ?
アグネスデジタル(勇者) : 遂に完成したヤベー奴四天王の1人。どのぐらいヤベーかと言われれば、限界越えウマソウルに的場ソウル(マイルCS)と四位ソウル(香港C)と最強白井ソウルに"最推し"からのクソデカ感情、"最推し"へのクソデカ感情が交わったパーフェクトロリ。まさにウルトラソウル。うわようじょつよい。黄金の精神に"領域"に『キミと勝ちたい』持ち。可能性の剣を携えて、勇者は次の戦場へ───向けられた憧れの眼差しと対峙する。
マルゼンスキー(激マブ) : 遂に仲間になったヤベー奴四天王の1人。ここまで無敗記録更新中。ピークかと思ったら勇者バフで何か進化しちゃったスーパーカーっていうかリニアモーターカー。シリアス?もうねぇよそんなもん。今後の章において勇者御一行を纏めてくれる貴重な大人のお姉さん(学生)。大体ロリコンとトレンディドラマしたりバカップルしたり桜色のあの子とバチバチ決めこいたりと、色々予定している為今後の活躍に乞うご期待。
次回、『最終R : 世界を駆ける愛しのキミへ』
世話になったと言ったな。あれは嘘だ。次回が2章の最終話で御座います。
羅針盤を回せ。
航路を決めろ。
旅人の背を追う者に祝福を。