人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!! 作:なちょす
Part.1は何度かお知らせした通り、全編コメディーです。でもカレンちゃんは情緒滅茶苦茶にされるし、マヤちゃんは死闘を繰り広げるし、デジたんは胃薬を噛み砕く。そんな事とはいざ知らず、男は往く。これが渚の光源氏。
プロローグ : マヤ、聴いちゃった!
「もーいーくつ寝ーるとー♪」
『なーつーがっしゅーくー♪』
即興の歌に、隣を歩くカレンちゃんとボーノちゃんが合わせてくれる。
そう───来週からとうとう夏合宿が始まるの!今年はマルゼンちゃんとロブロイちゃんが一緒の初めての夏合宿。しかもスイープちゃんも来てくれるんだって!
さらにさらにヨシエちゃんのチームからも、なんとキタちゃんがゲスト参加!ヨシエちゃんは会長さんやテイオーちゃんと用事があるから行けないって言ってたから、ちょっと寂しいけど⋯⋯でもその分、トレーナーちゃんがたっくさん楽しい事考えてくれるよね!
「トレーナーちゃん、今年も最後に水鉄砲大会やってくれるかな〜!去年はボーノちゃんが大活躍してたから、今年はマヤが勝ちたい!」
「『水ちゃんこでドスコイ!』って言いながら、お兄ちゃんの顔に水浴びせてたね〜♪」
「うん!トレーナーさんがね〜、『鍋も鉄砲だからセーフ!』って言ってくれてね〜!」
「鍋も鉄砲⋯⋯⋯⋯そっかー!」
ゴメンねボーノちゃん、ちょっとマヤ分かんなかった。
でもボーノちゃんとトレーナーちゃんが分かってれば問題無いよね!トレーナーちゃんが分かってるかは置いておいて!
うちのチームの合宿はオンとオフの切り替わりがハッキリしてる。練習する時はとことんするけど、そうじゃない時は全力で遊んじゃおうってスタイルだから、皆夏祭り用の浴衣だったり海で遊ぶ用の水着だったり⋯⋯準備する物は色々。
今年の夏は───ううん、今年こそは!ぜ〜〜〜〜ったいに、トレーナーちゃんの事ドキドキさせてみせるんだから!!
「スイープちゃんが来る事、多分お兄ちゃんはまだ知らないだろうし⋯⋯あははっ、喜ぶんだろうなぁ♪」
「ね〜!後でフラワーちゃんにも声掛けてみよっかな!」
そんなお話をしながら、マヤ達はトレーナー室まで来た。
部屋の中からはトレーナーちゃんの声が⋯⋯誰かとお話してる?でもトレーナーちゃん以外の声は聴こえないし⋯⋯電話っぽいけど、お仕事かな。
そうして、カレンちゃんがドアノブに手を掛けた時だった。
『いつまでその話引っ張るんだよ⋯⋯だ、だから告白した件は悪かったって⋯⋯。』
悲鳴をあげたドアノブが、扉にサヨナラをした。
何が起きたか分からなくて、ボーノちゃんと顔を見合せて⋯⋯ようやくトレーナーちゃんが、聞き捨てならない爆弾発言をしたんだって理解して。ふとカレンちゃんの方を見ると、扉から手を離して立ちすくんでいた。笑顔で⋯⋯でも手にドアノブを持ったまま。
『夏合宿始まったら、顔見せぐらいはするから。ウチの新しいチームメンバーに挨拶しとくか?⋯⋯おぅ、別に。まぁその件だけは伝えとくさ。じゃあまたな、ミチコちゃん───好きかどうか聞いてくんじゃねぇよッ!
「どすっこーいッ!!」
カレンちゃんの表情から何かを察したのか、ボーノちゃんが扉に張り手をした。勢いよく開いた扉の向こうでは、電話を片手にトレーナーちゃんがビックリしてて⋯⋯何も言わないまま、カレンちゃんはぱかプチぬいぐるみで埋まったソファーにちょこんと座った。
「何?何??えっ⋯⋯授業、お疲れさん。」
「うん⋯⋯それは⋯⋯うん。」
「ど、どうした?カレンも何だか調子が悪そうだけど⋯⋯。」
トレーナーちゃんの声に振り向いたカレンちゃんは、何も言わずにニコニコ笑っているだけだった。
あっ、トレーナーちゃんちょっと怖がってる。
「あ、あのねトレーナーちゃん!今回の夏合宿なんだけど、実はスイープちゃんも一緒なの!」
「えっ!?そっ、そうか⋯そうか⋯⋯ふふっ。」
「それでね⋯⋯えーっ、と⋯⋯参加してあげるんだから迎えに来なさいって言ってたよ!」
「しょ〜〜〜うがないな〜〜〜!!じゃあちょっと行ってくるから、皆はゆっくりしててな!帰ってきたらミーティングだ!ヒュー!ドアノブもげとるやんけッ!!」
そんな事一言も言ってなかったけど。
ゴメンねスイープちゃん、トレーナーちゃん⋯⋯でも今は、マヤ達大変なの。気持ちをどこに向けたらいいか分からないし、何よりカレンちゃんが⋯⋯。
「あっ、カレン───何かあったら、すぐ言ってくれよな?俺はちゃんとお前さんの事も見てる。お前さんの言葉や気持ちは、俺にとって大事な物だからさ。」
頭にそっと手を乗せながらそう言って、トレーナーちゃんが居なくなったお部屋。誰も何も言えない空気の中、カレンちゃんがようやくソファーで横になってぬいぐるみに顔を埋めていた。
「⋯⋯グスっ。」
泣いちゃった!!!!あのカレンちゃんが!!!!
人前で絶対に弱みを見せないって言われてたカレンちゃんが⋯⋯お耳へにゃへにゃになってる⋯⋯。
トレーナーちゃん⋯⋯この間、『カレンに弱点とか無いのかな?』って言ってたけどね。マヤ、本当は大きな声で言いたかったんだよ?
弱点が何言ってるの、って。
さっきのも状況が状況じゃなかったらパーフェクトだったんだけどな⋯⋯このチーム、大体トレーナーちゃんが弱点なのに本人がまるで気付いてないし⋯⋯あっ、どうしよう、マヤも悲しくなってきちゃった。
「あらあら、皆どうしたの?何か扉も壊れてるけど⋯⋯。」
「ステータス:『悲観』を検知。恐らくは先程廊下で転んでいたマスターからの精神攻撃によるものかと思われます。」
「マルゼンちゃん⋯ブルボンさん⋯⋯。」
「もし良かったら、お姉さんがお話聞いてあげる♪」
重苦しい空気の中、そう言ってくれるマルゼンちゃんが物凄く大人びて見えた。ううん、きっともう大人のお姉さんだよね⋯⋯だってトレーナーちゃん、マルゼンちゃんの事凄い頼りにしてるし⋯⋯この間も買い出しに行ってきたらしいし⋯⋯。
やっぱりマヤ達だけじゃどうにも出来ないから、マルゼンちゃんにさっきの事を話してみた。
「そういう事!パーペキに把握したわ!ふふっ、トレーナー君も大人の男性だもの。あの性格だし、色恋話の1つや2つ出てくるわよね。」
「マルゼンちゃんは⋯⋯悲しくならない?」
「えっ?私?そうね⋯⋯だってあの人が皆の事置いていくだなんて思わないもの。そ・れ・に!聞いた感じだと昔の話っぽいじゃない?悲観的にならなくてもバッチグー!元気だして行きましょ!」
笑顔でそう言い切れるのは、やっぱり大人だからかな⋯⋯でも、うん。そう言われるとそんな気がしてきた!そうだよね!カレンちゃんもちょっとお耳が戻ってるし、大丈夫大丈夫!!
「お疲れ様です〜。はふぅ⋯⋯本日も皆様方の美しいご尊顔を拝む事が出来る幸せ⋯⋯デジたん、世界に感謝致します⋯⋯ありがてぇ⋯⋯。ですが、ほんの少々いつもより重めの気が漂っているのもまた確か。ふむ───
あっ⋯⋯そうだ。そうだよデジタルちゃん!!多分デジタルちゃんが知ったら1番ダメージ大きいよ!!どっ、どうしよう⋯⋯内緒にした方が⋯でも隠し事したらデジタルちゃん傷ついちゃうかもしれないし⋯⋯えぇ⋯トレーナーちゃぁん⋯⋯転んだりぶつかったりしてる場合じゃないよ〜!!
「皆青春の真っ只中なのよ。トレーナー君、電話で昔告白した相手とお話してたみたいでね。それを皆が聴いちゃったらしくて。」
「えっ!?マルゼンちゃん言っちゃうの!?」
「隠すよりは良いかなぁって思って⋯⋯皆可愛いわよね♪」
「最&高です。しかし成程⋯⋯納得しました。それで扉があんな事になってるんですねぇ⋯⋯ではトレーナーさんに直して貰いましょうか。」
そう言って笑ったデジタルちゃんは鞄を置いて、ホワイトボードにおっきなハートマークを書いた。その下にトレーナーちゃんの顔写真を貼って、ハートの中にはマヤ達皆の顔写真。そうして言ったの。
「はい、これがあの人の脳内です。その⋯⋯僭越ながら申し上げますと、あの人大概別の事考えていても基本的に皆さんの事ガチ推し勢と言いますか。好きすぎて最早離れるとか絶対に無理だと思いますよ?絶対に。絶ッッッ対に。」
「説得力と念押しが凄いわね。」
「流石チームリーダー。」
「いえいえ⋯⋯と、とにもかくにも!余程の事が無い限りは大丈夫です!ぶっちゃけますと、あの人の"
「そっか⋯⋯じゃあミチコちゃんって言う人にも、もう1回アタック掛けたりは無いって事だね!」
「ミチコ、さん⋯⋯?」
その名前を聞いた瞬間、デジタルちゃんは顔が真っ青になっていった。あっ、マヤ分かっちゃった。今余程の事が起きたっぽい。
「あぁ、そういう、あっあっ⋯⋯おぁあーーーッ!!」
「デジタルちゃんどうしたの!?大丈夫だよね!?余程の事が無い限りって今言ったもんね!?」
「えぁ、あの、大丈夫、大丈夫です、本当に大丈夫なんです!」
「さっきまでの説得力0だよ!?ほら見て、カレンちゃんなんてもうぬいぐるみに埋もれすぎて尻尾とお耳しか見えないの!安心させて!!」
「その人は、ああああの⋯⋯ゆ、勇者御一行を応援して下さってて、お料理上手で、お話が上手くて⋯⋯それだけなんですぅーーーッ!!」
「あっ!デジタルちゃん!!」
扉を破壊して逃げるように、デジタルちゃんは居なくなった。
1番トレーナーちゃんと関わりの深いデジタルちゃんが見せた本気の動揺に、カレンちゃんも完全に埋まって⋯⋯えっ、待ってそんなにあったの?ぬいぐるみ多過ぎない?じゃなくて!!
ボーノちゃんは考え事してて、マルゼンちゃんは困った様に笑って⋯⋯ブルボンさんは
えっ⋯⋯どうすればいいの?
「どしたーおデジ───扉吹っ飛んどるやんけッ!!」
「トレーナーちゃんが戻ってきちゃった⋯⋯じゃなくって!えっと、えっと⋯⋯ブルボンさん、取り敢えずホワイトボード誤魔化して!!」
「任務了解。これより『改ざん行為』を行います。」
「聞こえが悪いよ!カレンちゃんは───あっ、戻ってる。」
「大丈夫よマヤちゃん。トレーナー君の事だもん、逆に堂々としてた方が伝わるわ。多分。」
「そうかなぁ!?」
そうしてる間にも廊下からトレーナーちゃん達の声が近づいてくる!お、おかしいところは無いよね!?い、いつも通り⋯⋯いつも通りのマヤで⋯⋯トレーナーちゃん達が入って来たら、ニコニコ笑顔で───!
「そういう事だから、アンタ達は今日からアタシの使い魔よ!!返事は"はい"か"ワン"!」
『ワン!!』
待って、マヤついていけてない。
今のバタバタしてた一瞬で何があったの?
何でトレーナーちゃん、顔に土付いてるの?刺さってた?
何でデジタルちゃんがトレーナーちゃんをお姫様抱っこしてるの??
そして何で2人ともノリノリでスイープちゃんと主従関係を結ぶ状態に発展するの??
あれ、もしかしてマヤ⋯⋯そんなに物事分かってないのかな⋯⋯。
困った様に笑っていたロブロイちゃんが部屋に入るなりこっちを向いて固まった。それに続いてスイープちゃんも⋯⋯何だろう。
「⋯⋯ねぇ。アンタ、チームでどんな立場なの?」
「えっ?普通にトレーナーだけ⋯ど⋯⋯。」
もしかして───。
固まったトレーナーちゃんを見て、部屋に居た全員がホワイトボードの方を向いた。
さっきまで大きな♡マークで囲われてたチームの顔写真は、今度は△で囲われてる。ペンを持ったブルボンさんが満足気な顔で、『改ざん完了しました。』って言ってるけど⋯⋯ブルボンさん。
それ、食物連鎖だよ。
何とかしなくちゃ。
そう思うのに、時間は掛からなかった。あれから1週間が過ぎて、"ミチコちゃん"についての話は挙がらなかったけれど⋯⋯マヤもカレンちゃんも、そしてデジタルちゃんも。或いは平気に見えてたブルボンさんも。
みんなみんな、合宿所へ向かうバスの中では空気が重かった。ロブロイちゃんは直接聞いてなかったけれど、流石に何かを察してくれたのか、ずっとメガネが光ってて顔色が分からなかった。
もし───もしも"ミチコちゃん"って言う人が、
ヨシエちゃんみたいに、絶っっっっ対トレーナーちゃんの事好きなのに距離感が分からなくて喧嘩した後でこっそり凹んでるタイプだったら───大人同士の関係は、マヤ達がどうこうできる問題じゃない⋯⋯。でも、だからこそ⋯⋯そういうお話があるのなら、トレーナーちゃんにはきちんとお話して貰いたいって思う。だから⋯⋯。
「マヤが何とかするんだ。」
「あの⋯⋯マヤノさん?」
「安心してデジタルちゃん。マヤが、キチンとトレーナーちゃんとお話するから。先ずは情報収集!それから協力してくれそうな子達にもお願いして、後は───。」
「ヒェッ⋯⋯あ、じゃ、じゃあ⋯⋯アタシもトレーナーさんとお話を⋯⋯。」
「それは待って!!」
「何故ッ!?」
「だって⋯⋯皆、デジタルちゃんのこと大事に思ってるから。だから待ってて。デジタルちゃんは───最後にビシッと決めてくれれば良いからね!」
「トドメをさせとッ!?しかし⋯いや、あの⋯⋯はいっ!!」
デジタルちゃんはニッコリ笑ってお返事してくれた。顔色は青いままだけど、心配無いって言うのはこれから行動で見せなきゃね!
そうしてバスは合宿所に到着した。
今回は勇者御一行に加えてスイープちゃんとキタちゃん、それから急遽トレーナーちゃんから紹介されたカワカミちゃんも一緒な計13人の大所帯。皆それぞれがバスから降りた所で、先にトレーナーちゃんと一緒に移動してたマルゼンちゃんのスーパーカーが目に入っ───。
「長旅お疲れさん。あっ、荷物置いたら例年通り自由時間だぞ!」
「待ってたわよ〜!ささっ、今日は目一杯遊んじゃいましょ♪」
「トレーナーちゃん⋯⋯マルゼンちゃん⋯⋯何でもうビッショビショなの?」
手に水鉄砲を持って、ハートのサングラスを掛けた2人がやって来た。
駐車場に。
水着で。
ビショビショのまま。
大人ってなんだろう。
「───夏の誘惑に、さ。」
「そうね───渚が私達を呼んでいたの。」
「そっか⋯⋯じゃあ、しょうがないね。」
「明日からガッチリ練習だからな。その分今日はとことん羽目を外して⋯⋯カレン?どうしばぼぼぼぼがぼん!!」
笑顔のカレンちゃんは、トレーナーちゃんが持ってた水鉄砲を躊躇いなく顔に発射した。勢い凄いね。
夏合宿⋯⋯大丈夫かなぁ?
マヤちゃん(初心) : 走る星谷ちゃん。パパはトップガン。二つ名欲しくて全脚質使った兄貴たちは絶対に居る。原案が好きな兄貴も絶対居る。フィギュア予約した兄貴も(ry。大体何でも閃いちゃうけど、ことロリコン絡みはクソデカデバフがかかる為何も閃かないロリ。ヨシエさんにとって唯一の天敵。Part.1のコメディー&シリアル担当にしてPart.2の翼担当。マヤに夢中になっちゃった?ブタ箱行きだね♡
次回、『第1R : ユーコピー?マイポニー!』
マヤちゃんの事は理解している(してない)ロリコンと、トレーナーちゃんの事は分かってる(分かってない)マヤちゃんの手に汗握る電撃心理戦が始まる。
レジェンドレース─VS.マヤノトップガン─見てろよ見てろよ〜?
3章はロリコン目線からのウマ娘目線。ボケにボケをかますとこう事故る。